ジョーカー ・52
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聖陽の影から抜けた後、俺は姿を隠すため再び地下へと潜った。ひっそりとやり過ごすつもりだったが、意外なことにここに住んでいる人間は少なくなかった。捨てられた子どもや、住むところを失った者、犯罪者みたいな奴も結構いた。太陽の光の届かないここは、身を隠すのにちょうどいいのだろう。
俺が女を知ったのはこの時期だ。そして割りかし不自由しなかった。ここにはそうやって金を稼ぐ女が多かったのだ。コツさえ掴めば向こうから擦り寄ってくるし、欲望のまま好きなだけ抱けた。だが、
「52、抱いて!」
こいつだけは別だった。いつだったか暴漢に襲われていたのを気まぐれで助けたら懐いてきた女。それからは俺の顔を見るなりこれだ。
「断る」
「んぐ、これで二五八敗目……」
数えてたのか。毎回毎回バカな奴。
「姉さんたちは抱くのに何で私は抱いてくれないのよ」
最初は細すぎてそんな気になれなかったから。けど今は、ちゃんと抱きたいからだ。気持ちがなくでも抱くことはできるが、いつの間にやらすっかりこいつに絆されてしまった俺は、抱くならこいつの望み通り、最高に気持ちよくしてやりたいと思っている。
理性も身体もぐちゃぐちゃのドロドロに溶かして、泣くほどよがらせて。俺のことしか考えられなくしてやりたい。
が、それにはまだ色々足りない。主に俺の経験とか技術とか、そういうものが。
こいつはそんな俺の気も知らず、毎日のように「抱いて」とせがんでくる。今までに何度誘いに乗ろうと思ったことか。けれどその度にまだ駄目だと自身に言い聞かせてきた。
いつか絶対に抱いてやる。最高に気持ちよかったって言わせてやる。
そう思っていたのにーー。
「おい、しっかりしろ。おい!」
ボロボロになったあいつを見つけたのはその数日後のことだった。鼻をつく鉄の臭いにいつかの光景が蘇る。嘘だ。やめてくれ。駆け寄ってあいつを抱き寄せると、力の抜けた人形みたいに不自然にくたりとしたが、まだ息はあった。弱々しく胸を上下させるあいつの身体は傷だらけで、しかしそれが俺を追っている奴らの仕業でないことは一目瞭然だった。奴らはこんなに雑に痕跡を残したりしない。恐らくはネザーに隠れ住む犯罪者あたりだろう。
早く医者に。震える手であいつを抱き上げようとすると、「52」と微かな声で呼ばれた。今にも消えてしまいそうで、必死に抱きしめる。
「あのね52。私いま、すっごく幸せ」
ふわり、と笑って。本当に幸せそうな顔であいつはそう言った。
何で今そんなこと言うんだよ。違ェだろ。
俺がお前を抱く時まで、その台詞は取っとけよ。
声も出せなくなったあいつの身体は、俺の腕の中で次第に冷たく、かたくなっていった。そして最後には、笑ったまま動かなくなった。
「……何勝手に満足してんだよ」
俺はお前を、こんな風に抱きたかったわけじゃない。
俺が女を知ったのはこの時期だ。そして割りかし不自由しなかった。ここにはそうやって金を稼ぐ女が多かったのだ。コツさえ掴めば向こうから擦り寄ってくるし、欲望のまま好きなだけ抱けた。だが、
「52、抱いて!」
こいつだけは別だった。いつだったか暴漢に襲われていたのを気まぐれで助けたら懐いてきた女。それからは俺の顔を見るなりこれだ。
「断る」
「んぐ、これで二五八敗目……」
数えてたのか。毎回毎回バカな奴。
「姉さんたちは抱くのに何で私は抱いてくれないのよ」
最初は細すぎてそんな気になれなかったから。けど今は、ちゃんと抱きたいからだ。気持ちがなくでも抱くことはできるが、いつの間にやらすっかりこいつに絆されてしまった俺は、抱くならこいつの望み通り、最高に気持ちよくしてやりたいと思っている。
理性も身体もぐちゃぐちゃのドロドロに溶かして、泣くほどよがらせて。俺のことしか考えられなくしてやりたい。
が、それにはまだ色々足りない。主に俺の経験とか技術とか、そういうものが。
こいつはそんな俺の気も知らず、毎日のように「抱いて」とせがんでくる。今までに何度誘いに乗ろうと思ったことか。けれどその度にまだ駄目だと自身に言い聞かせてきた。
いつか絶対に抱いてやる。最高に気持ちよかったって言わせてやる。
そう思っていたのにーー。
「おい、しっかりしろ。おい!」
ボロボロになったあいつを見つけたのはその数日後のことだった。鼻をつく鉄の臭いにいつかの光景が蘇る。嘘だ。やめてくれ。駆け寄ってあいつを抱き寄せると、力の抜けた人形みたいに不自然にくたりとしたが、まだ息はあった。弱々しく胸を上下させるあいつの身体は傷だらけで、しかしそれが俺を追っている奴らの仕業でないことは一目瞭然だった。奴らはこんなに雑に痕跡を残したりしない。恐らくはネザーに隠れ住む犯罪者あたりだろう。
早く医者に。震える手であいつを抱き上げようとすると、「52」と微かな声で呼ばれた。今にも消えてしまいそうで、必死に抱きしめる。
「あのね52。私いま、すっごく幸せ」
ふわり、と笑って。本当に幸せそうな顔であいつはそう言った。
何で今そんなこと言うんだよ。違ェだろ。
俺がお前を抱く時まで、その台詞は取っとけよ。
声も出せなくなったあいつの身体は、俺の腕の中で次第に冷たく、かたくなっていった。そして最後には、笑ったまま動かなくなった。
「……何勝手に満足してんだよ」
俺はお前を、こんな風に抱きたかったわけじゃない。
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