新門紅丸
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あんなに綺麗だった月が少しずつ欠けていく。初めて見たけれど不思議なものだ。全く見えなくなるのかと思いきや、影がかかったように光を失って、月が赤黒く染まって見える。
皆既月食というのだと、第八のリヒトさんが教えてくれた。原理は私には難しくて忘れてしまったけれど、珍しいものだから見ておいて損はないとのことだった。
ーー確かに、見ておいてよかったかも。
今日は月明かりが眩しいくらいの夜だった。なのに今は、さっきとは打って変わって、辺りは闇に包まれている。空には見慣れない赤銅の色をした月が浮かんでいて、まるで別世界に来てしまったような、そんな心地がしてくる。
「紅ちゃんは見なくていいの?」
「あ?」
「お月様」
「興味ねェ」
薄暗くてよく見えなかったが、ちゃぷりと水音が聞こえ、彼が酒瓶を傾けたのだろうことはわかった。
「そっか」
紅ちゃんは花よりだんご、お月様よりお酒らしい。きっとにぱにぱと笑いながらお酒を飲んでいるのだろう。せっかくなら一緒に皆既月食を見たかったけれど、彼に興味がないなら仕方ない。
再び窓辺から空を見上げる。あのお月様はどれくらいで元に戻るのかしら。戻らないなんてことは……さすがにない、よね? ずっとあのままはちょっと怖いなと思っていると、隣にとん、と何かが当たる気配がした。紅ちゃんだ。
「興味ないんじゃなかったの」
「気が変わった」
「そう」
その割に空を見ようとしない。じぃっとこちらを見つめてきて、顔が急に近くなる。
「……おい」
咄嗟に手が出してしまった。手のひら越しに紅ちゃんの不満げな声が聞こえてきて、その目は「手ェ早く退けろ」と雄弁に語っていた。でもそうはいかない。まだ詰所が寝静まるには些か早い時間だ。
「ダメだよ紅ちゃん。こんなところ、もし見られたりしたら……」
「誰も見やしねェよ。月だって見てねェんだからな」
ぐ、と力を込めて、遮っていた手をおろされる。ゆっくりと近づいてきた彼を受け止めながら薄く目を開けると、視界の端に映る月は未だ影に覆われていて、確かに今なら誰も見ていないと、そう思った。
皆既月食というのだと、第八のリヒトさんが教えてくれた。原理は私には難しくて忘れてしまったけれど、珍しいものだから見ておいて損はないとのことだった。
ーー確かに、見ておいてよかったかも。
今日は月明かりが眩しいくらいの夜だった。なのに今は、さっきとは打って変わって、辺りは闇に包まれている。空には見慣れない赤銅の色をした月が浮かんでいて、まるで別世界に来てしまったような、そんな心地がしてくる。
「紅ちゃんは見なくていいの?」
「あ?」
「お月様」
「興味ねェ」
薄暗くてよく見えなかったが、ちゃぷりと水音が聞こえ、彼が酒瓶を傾けたのだろうことはわかった。
「そっか」
紅ちゃんは花よりだんご、お月様よりお酒らしい。きっとにぱにぱと笑いながらお酒を飲んでいるのだろう。せっかくなら一緒に皆既月食を見たかったけれど、彼に興味がないなら仕方ない。
再び窓辺から空を見上げる。あのお月様はどれくらいで元に戻るのかしら。戻らないなんてことは……さすがにない、よね? ずっとあのままはちょっと怖いなと思っていると、隣にとん、と何かが当たる気配がした。紅ちゃんだ。
「興味ないんじゃなかったの」
「気が変わった」
「そう」
その割に空を見ようとしない。じぃっとこちらを見つめてきて、顔が急に近くなる。
「……おい」
咄嗟に手が出してしまった。手のひら越しに紅ちゃんの不満げな声が聞こえてきて、その目は「手ェ早く退けろ」と雄弁に語っていた。でもそうはいかない。まだ詰所が寝静まるには些か早い時間だ。
「ダメだよ紅ちゃん。こんなところ、もし見られたりしたら……」
「誰も見やしねェよ。月だって見てねェんだからな」
ぐ、と力を込めて、遮っていた手をおろされる。ゆっくりと近づいてきた彼を受け止めながら薄く目を開けると、視界の端に映る月は未だ影に覆われていて、確かに今なら誰も見ていないと、そう思った。