新門紅丸
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幼馴染のあいつと恋仲になった。
やっと。やっとだ。だというのに、あいつは少しでも触ろうもンなら、ぴゃっと、猫みてェに逃げやがる。
嫌われてンのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないらしい。
それを知ったのは、つい最近のことだが。
「酒、付き合え」
一升瓶を持ってあいつに声をかける。「まだ夕方だよ」などと返ってきたが、遅かれ早かれ飲むのだから同じことだ。
詰所の縁側に並んで座り、宵の口から酒を飲み始める。月が顔を出す頃には二人してすっかり出来上がっているのが常だった。あいつは酔うと頬を赤く染めて、くだらねェことでけたけたとよく笑うようになる。
いつもそうしてりゃいいのに。
横顔を眺めながらそんなことを考えていると、視線に気づいたあいつがこっちを向いた。「なぁに?」とふにゃりとやわらかい笑みを浮かべて俺を見るものだから、人の気も知らねェでと舌打ちしたくなる。けど、まだだ。もう少し。
酒を一、二杯呷り、柱にもたれて目を閉じる。
「紅ちゃん、こんなところで寝たら風邪ひくよ?」
「……寝てねェ」
「紅ちゃんってば」
「……」
静寂が辺りを満たす。しばらくすると、抱えていた一升瓶が離れる気配がした。
指にひんやりとやわらかいものが触れる。あいつの指だ。恐る恐る、様子を窺うように近づいてきたそれは俺の指先にからみ、輪郭をなぞったりやわく握ったりしていた。
やがて「好きよ」とあいつが囁く。消え入りそうな声で、何度も、何度も。
知ったのは偶然だった。あの日も同じように夕方から飲んで、寝こけていた時にたまたま目が覚めて。
それからは、あいつから触れてきて欲しいがために飲みに誘っていると言っても過言じゃない。
「好き」
そう言って、あいつが指先に込めた力をほんの少しだけ強めた。思わず握り返しそうになって、耐えたつもりだったが、敏感なあいつは何かを感じとったらしく、ぴゃっと飛び跳ねるように手を離した。
クソ、と内心舌打ちをする。さっきまでそこにあったぬくもりが夜の冷気に攫われていく。
今日はここまでか。
そろそろ起きるかと考えていると、じぃっとあいつがこっちを覗き込んでいることに気づいた。そのまま素知らぬふりをしていると、ゆっくり音もなく近づいてきて、再びあいつの指先が俺のに触れた。指先だけからめて満足げに酒を飲んでいる。
猫かよ。
近づけば逃げ出して、離れればあっちから近づいてきやがって。このまま捕まえるのは簡単だ。だがもうしばらく、この宵の一時を楽しむのも悪くねェと、そう思った。
やっと。やっとだ。だというのに、あいつは少しでも触ろうもンなら、ぴゃっと、猫みてェに逃げやがる。
嫌われてンのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないらしい。
それを知ったのは、つい最近のことだが。
「酒、付き合え」
一升瓶を持ってあいつに声をかける。「まだ夕方だよ」などと返ってきたが、遅かれ早かれ飲むのだから同じことだ。
詰所の縁側に並んで座り、宵の口から酒を飲み始める。月が顔を出す頃には二人してすっかり出来上がっているのが常だった。あいつは酔うと頬を赤く染めて、くだらねェことでけたけたとよく笑うようになる。
いつもそうしてりゃいいのに。
横顔を眺めながらそんなことを考えていると、視線に気づいたあいつがこっちを向いた。「なぁに?」とふにゃりとやわらかい笑みを浮かべて俺を見るものだから、人の気も知らねェでと舌打ちしたくなる。けど、まだだ。もう少し。
酒を一、二杯呷り、柱にもたれて目を閉じる。
「紅ちゃん、こんなところで寝たら風邪ひくよ?」
「……寝てねェ」
「紅ちゃんってば」
「……」
静寂が辺りを満たす。しばらくすると、抱えていた一升瓶が離れる気配がした。
指にひんやりとやわらかいものが触れる。あいつの指だ。恐る恐る、様子を窺うように近づいてきたそれは俺の指先にからみ、輪郭をなぞったりやわく握ったりしていた。
やがて「好きよ」とあいつが囁く。消え入りそうな声で、何度も、何度も。
知ったのは偶然だった。あの日も同じように夕方から飲んで、寝こけていた時にたまたま目が覚めて。
それからは、あいつから触れてきて欲しいがために飲みに誘っていると言っても過言じゃない。
「好き」
そう言って、あいつが指先に込めた力をほんの少しだけ強めた。思わず握り返しそうになって、耐えたつもりだったが、敏感なあいつは何かを感じとったらしく、ぴゃっと飛び跳ねるように手を離した。
クソ、と内心舌打ちをする。さっきまでそこにあったぬくもりが夜の冷気に攫われていく。
今日はここまでか。
そろそろ起きるかと考えていると、じぃっとあいつがこっちを覗き込んでいることに気づいた。そのまま素知らぬふりをしていると、ゆっくり音もなく近づいてきて、再びあいつの指先が俺のに触れた。指先だけからめて満足げに酒を飲んでいる。
猫かよ。
近づけば逃げ出して、離れればあっちから近づいてきやがって。このまま捕まえるのは簡単だ。だがもうしばらく、この宵の一時を楽しむのも悪くねェと、そう思った。