新門紅丸
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大晦日の夜は紅白を観ながら紺兄さんお手製の年越し蕎麦を食べて、みんなで新しい年の始まりを待つ。
遠くで鳴るのは除夜の鐘。それを聞きつつ私はみかんを一房口に入れた。じゅわっと甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がって、やっぱりぬくぬくのおこたに入って食べるみかんは最高に美味しい。煩悩まみれと言われようがこればっかりはやめられない。
そしてそれは私だけではないようで。みかんを剥いていると、小さな手が二つ伸びてきた。
「甘ェやつよこせよ姉御」
「すっぱかったら承知しねェからな」
「はいはい」
今食べたのは甘いから大丈夫、と半分に分けてヒカゲとヒナタの手に乗せてやる。さっきからこの調子で実は最初の一房しか食べれていない。またすぐ双子にたかられるだろうから早く次のを剥かないと、と色の良いみかんに手を伸ばすと、隣から大きな手のひらが差し出された。
「え」
紅ちゃんの手だった。徳利を取ろうとして力尽きたのか、炬燵に伏せて寝息を立てている。
「「わかー?」」
「若、寝ちまったのか」
「今日は朝からずっと飲んでたもんね」
にぱにぱと眠る愉快王の手のひらにみかんを一房置いて、残りをまた双子たちに分けてやった。テレビの向こうでは今年も残すところあと数十秒と告げている。
「やべーぞコンロ、早く立ちやがれ!」
「おいおい、急になんだってンだ」
「カウントダウンが終わる瞬間にジャンプすんだよ!」
「かうんとだうん……?」
「「いいから黙って飛びやがれ‼︎」」
テレビの前に立つのは紺兄さん。そして彼の両手をヒカゲとヒナタがそれぞれ掴んで、来たるその瞬間に備えている。私も昔、紅ちゃんとやったなぁ。
今年の終わり、そして新しい年の始まり。そのどちらでもある瞬間には、何か特別なことをしたくなる。
『十、九、八、七ーー』
カウントダウンが始まった。ヒカゲとヒナタ、そして紺兄さんの背中も心なしかそわそわしている。
『三、二、一、』
年に一度訪れる、その一瞬。
三人の背中を見守っていたはずの私の視界に飛び込んで来たのは、不揃いな赤い虹彩だった。
ぐい、と身体を引き寄せられて、言葉を発する間もなく唇を塞がれる。
みかんの香りとお酒の味にくらりとして慌てて彼の胸板を押すと、目を細めた紅ちゃんがわざとらしく音を立てて離れていった。
「おーい姉御、ちゃんと見てたかー?」
「ごっ、ごめん、見てなかった」
「何だよしっかり焼き付けとけよー!」
バクバクと心臓はうるさかったが、双子たちにはバレていなかったようでホッとする。キッと隣を睨みつけると紅ちゃんは何事もなかったかのように再び炬燵に伏せていて、けれど私の咎める視線に気付き、ニヤリと口端を上げた。
「どうした。顔が赤いんじゃねェか」
「……誰のせいよ」
思わぬ新年の幕開けに、まだ心臓がドキドキしている。らしくないとは思うけど、せっかくなら何か特別なことを、と思うのは彼も同じだったみたいだ。
遠くで鳴るのは除夜の鐘。それを聞きつつ私はみかんを一房口に入れた。じゅわっと甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がって、やっぱりぬくぬくのおこたに入って食べるみかんは最高に美味しい。煩悩まみれと言われようがこればっかりはやめられない。
そしてそれは私だけではないようで。みかんを剥いていると、小さな手が二つ伸びてきた。
「甘ェやつよこせよ姉御」
「すっぱかったら承知しねェからな」
「はいはい」
今食べたのは甘いから大丈夫、と半分に分けてヒカゲとヒナタの手に乗せてやる。さっきからこの調子で実は最初の一房しか食べれていない。またすぐ双子にたかられるだろうから早く次のを剥かないと、と色の良いみかんに手を伸ばすと、隣から大きな手のひらが差し出された。
「え」
紅ちゃんの手だった。徳利を取ろうとして力尽きたのか、炬燵に伏せて寝息を立てている。
「「わかー?」」
「若、寝ちまったのか」
「今日は朝からずっと飲んでたもんね」
にぱにぱと眠る愉快王の手のひらにみかんを一房置いて、残りをまた双子たちに分けてやった。テレビの向こうでは今年も残すところあと数十秒と告げている。
「やべーぞコンロ、早く立ちやがれ!」
「おいおい、急になんだってンだ」
「カウントダウンが終わる瞬間にジャンプすんだよ!」
「かうんとだうん……?」
「「いいから黙って飛びやがれ‼︎」」
テレビの前に立つのは紺兄さん。そして彼の両手をヒカゲとヒナタがそれぞれ掴んで、来たるその瞬間に備えている。私も昔、紅ちゃんとやったなぁ。
今年の終わり、そして新しい年の始まり。そのどちらでもある瞬間には、何か特別なことをしたくなる。
『十、九、八、七ーー』
カウントダウンが始まった。ヒカゲとヒナタ、そして紺兄さんの背中も心なしかそわそわしている。
『三、二、一、』
年に一度訪れる、その一瞬。
三人の背中を見守っていたはずの私の視界に飛び込んで来たのは、不揃いな赤い虹彩だった。
ぐい、と身体を引き寄せられて、言葉を発する間もなく唇を塞がれる。
みかんの香りとお酒の味にくらりとして慌てて彼の胸板を押すと、目を細めた紅ちゃんがわざとらしく音を立てて離れていった。
「おーい姉御、ちゃんと見てたかー?」
「ごっ、ごめん、見てなかった」
「何だよしっかり焼き付けとけよー!」
バクバクと心臓はうるさかったが、双子たちにはバレていなかったようでホッとする。キッと隣を睨みつけると紅ちゃんは何事もなかったかのように再び炬燵に伏せていて、けれど私の咎める視線に気付き、ニヤリと口端を上げた。
「どうした。顔が赤いんじゃねェか」
「……誰のせいよ」
思わぬ新年の幕開けに、まだ心臓がドキドキしている。らしくないとは思うけど、せっかくなら何か特別なことを、と思うのは彼も同じだったみたいだ。