新門紅丸
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すぅすぅと寝息を立てる恋人が愛おしくて頬が緩む。早くに目が覚めてしまったけれど、あどけない破壊王の寝顔が見られるのならそれも悪くない。
緩く回された腕から這い出して上体を起こす。彼の顔にかかった髪を避けてやると、指先が冷えていたからか、ぐずるように眉間に皺が寄った。
「ふふ、ごめんごめん」
小さく謝って、そこにひとつ口づけを落とす。すると寄っていた皺はすぐになくなって、元の幼い寝顔に戻る。
「可愛いなぁ」
起きてる彼には口が裂けても言えないけれど、眠っている今なら言いたい放題やりたい放題だ。さらりとした黒髪を梳いて、まぁるい頭を撫でて、起こさないように頬を突いてみたり。
楽しい。幾らでも見ていられる。でもそろそろ起きないと朝餉の支度に間に合わない。
このまま眺めていたい気持ちをぐっと押さえ、無防備なおでこに、最後にそっと唇を寄せる。よし。一人満足して布団から出ようとした刹那、ぐらりと視界が大きく揺れた。
「わっ⁈」
一瞬何が起こったのか分からなかった。寝ていたはずの彼が抱き寄せたのだと気付くのに数瞬。彼に乗り上げるような形になってしまって慌てて退こうとするも、背中に回った手がそれを許さなかった。
「ご、ごめ……」
薄く開かれた寝起きの赤はひどく不機嫌な色をしていた。きっと好き放題しすぎたからだ。まだ寝てていいよ、と申し訳なく零すと、つるりとしていた眉間に深い皺が刻まれるのが見えた。
「……そこじゃねェだろ」
「え?」
低く掠れた声が鼓膜を揺らす。微かに熱を纏ったその音に、自分の顔まで熱くなっていくようだった。
「いつから起きて……」
「さァな。随分好き勝手やってたみてェだが。で、俺の言った意味、分からねェこたァねェよな」
頭の後ろに回された手が容赦なく彼との距離を近付けてくる。抵抗しようにも私なんかの力じゃビクともしなくて、そのまま噛み付くように唇を奪われた。仕返しと言わんばかりに執拗に。呼吸すらままならない。
悪戯なんてするんじゃなかったと回らない頭で今更ながら後悔する。こんなの二倍三倍返しどころじゃない。
仕返しから解放されたのは私に力が入らなくなった頃で、へたりと彼の上で息を整えていると、口元が満足げにつり上がっているのが見えた。
やれ、とんでもない目に遭った。でも満足したなら、これでやっと朝餉の支度がーー。
「あの、紅ちゃん?」
「あ?」
「そろそろ離して欲しいんだけど」
身動きができないほど苦しいわけではなく、かといって抜け出せるほど緩められているわけでもない。どういうことかと目で訴えるも彼はにやにやと笑みを浮かべるばかりで、どうにも嫌な予感がした。そしてこういう予感は大体的中するものだ。
「何言ってやがる」
「な、何ってさっきちゃんとしたじゃない」
「あれは稽古をつけてやっただけだ。お前からはまだしてねェだろうが」
何てことだ。終わったと思っていた仕返しがまだ始まってすらいなかったなんて、どうか嘘だと言って欲しい。しかし一向に離してくれる気配はなく、私は諦めて横髪を耳にかけた。ゆっくりと彼に顔を近付ける。唇が触れる寸前、吐息とともに聞こえてきたのは「上手くやれたら離してやる」なんて台詞で。ああ、やっぱり悪戯なんてするものじゃない。
緩く回された腕から這い出して上体を起こす。彼の顔にかかった髪を避けてやると、指先が冷えていたからか、ぐずるように眉間に皺が寄った。
「ふふ、ごめんごめん」
小さく謝って、そこにひとつ口づけを落とす。すると寄っていた皺はすぐになくなって、元の幼い寝顔に戻る。
「可愛いなぁ」
起きてる彼には口が裂けても言えないけれど、眠っている今なら言いたい放題やりたい放題だ。さらりとした黒髪を梳いて、まぁるい頭を撫でて、起こさないように頬を突いてみたり。
楽しい。幾らでも見ていられる。でもそろそろ起きないと朝餉の支度に間に合わない。
このまま眺めていたい気持ちをぐっと押さえ、無防備なおでこに、最後にそっと唇を寄せる。よし。一人満足して布団から出ようとした刹那、ぐらりと視界が大きく揺れた。
「わっ⁈」
一瞬何が起こったのか分からなかった。寝ていたはずの彼が抱き寄せたのだと気付くのに数瞬。彼に乗り上げるような形になってしまって慌てて退こうとするも、背中に回った手がそれを許さなかった。
「ご、ごめ……」
薄く開かれた寝起きの赤はひどく不機嫌な色をしていた。きっと好き放題しすぎたからだ。まだ寝てていいよ、と申し訳なく零すと、つるりとしていた眉間に深い皺が刻まれるのが見えた。
「……そこじゃねェだろ」
「え?」
低く掠れた声が鼓膜を揺らす。微かに熱を纏ったその音に、自分の顔まで熱くなっていくようだった。
「いつから起きて……」
「さァな。随分好き勝手やってたみてェだが。で、俺の言った意味、分からねェこたァねェよな」
頭の後ろに回された手が容赦なく彼との距離を近付けてくる。抵抗しようにも私なんかの力じゃビクともしなくて、そのまま噛み付くように唇を奪われた。仕返しと言わんばかりに執拗に。呼吸すらままならない。
悪戯なんてするんじゃなかったと回らない頭で今更ながら後悔する。こんなの二倍三倍返しどころじゃない。
仕返しから解放されたのは私に力が入らなくなった頃で、へたりと彼の上で息を整えていると、口元が満足げにつり上がっているのが見えた。
やれ、とんでもない目に遭った。でも満足したなら、これでやっと朝餉の支度がーー。
「あの、紅ちゃん?」
「あ?」
「そろそろ離して欲しいんだけど」
身動きができないほど苦しいわけではなく、かといって抜け出せるほど緩められているわけでもない。どういうことかと目で訴えるも彼はにやにやと笑みを浮かべるばかりで、どうにも嫌な予感がした。そしてこういう予感は大体的中するものだ。
「何言ってやがる」
「な、何ってさっきちゃんとしたじゃない」
「あれは稽古をつけてやっただけだ。お前からはまだしてねェだろうが」
何てことだ。終わったと思っていた仕返しがまだ始まってすらいなかったなんて、どうか嘘だと言って欲しい。しかし一向に離してくれる気配はなく、私は諦めて横髪を耳にかけた。ゆっくりと彼に顔を近付ける。唇が触れる寸前、吐息とともに聞こえてきたのは「上手くやれたら離してやる」なんて台詞で。ああ、やっぱり悪戯なんてするものじゃない。