新門紅丸
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「紅ちゃん、ここ切れてる」
ふと彼の唇に赤い筋が入っているのを見つけた。炎の近くにいることが多いせいか耐性はあっても、乾燥しやすいのだろう。皮膚の薄い部分は、季節に関わらずひび割れることがある。
どこだか分かるように自分の唇を指先でとんとんと叩いて見せると、紅ちゃんは自分のに手を伸ばして「あァ」とひび割れをなぞった。
そしてそのまま、べっ、と舌を伸ばす。
「ちょ、ちょっと待って紅ちゃん」
「これくらい舐めときゃ治る」
「今はいいかもしれないけど、ひどくなったりひび割れが癖になったりするから我慢して。ね?」
私としては彼の唇が痛々しくひび割れるのをそう何度も見たくない。「じゃあどうしろってンだ」と不機嫌な虹彩に見下ろされ、私は持っていた巾着に手を差し入れた。
ちょうどいいものがある。薬ではないけれど、唇の乾燥を防いでくれる優れものだ。
「ンだそりゃ?」
取り出した小さな容器を彼は訝しげに見つめた。
「りっぷばぁむっていってね。この前茉希ちゃんに貰ったの」
皇国のものと知って僅かに表情が曇ったが、第八の子からの贈り物と聞いて強く出られないらしい。何か言いたげに口を開いたかと思えば、すぐにばつが悪そうに頭を掻いていた。
りっぷばぁむを塗らせてくれるまでもうひと押し、といったところか。
「私も塗ってるけど、結構良いんだよ。これ使い始めてから乾燥知らずなんだから」
我ながら皇国りっぷばぁむのまわし者みたいな台詞になってしまったなと思う。紅ちゃんはしげしげと私の唇を見つめ(改めてじっくり見られると恥ずかしいのだが)、嘘は言ってないと判断したのか「ン」と身を屈めた。
よかった、素直に聞いてくれた。思いの外すんなり事が運び、安堵の息を漏らす。
りっぷばぁむの蓋を開けて薬指にこっくりとしたくりーむを乗せると、ふわりと甘い蜂蜜の香りが漂ってきた。
そっと彼の頬に手を添えて、体温で温まったくりーむを唇へ。指先を近付けると、じっと赤い瞳がこちらを見つめていて、思わずどきりと心臓が跳ねる。
こんな風に近くで見つめられるのは、決まってそういう雰囲気の時だ。
長い前髪から覗く、熱っぽい視線。抵抗する間もなく手首を掴まれて、ゆっくりと吐息ごと飲み込まれる。
今はその時じゃないのに、つい重ねてしまうのは、彼の顔がそれくらい近くにあるから、で……?
「っ⁈」
鼻先が触れそうになって反射的に下がるも手遅れだった。抱き寄せられて口を塞がれる。離れたと思いきや角度を変えて食むような口付けを数度。
ちゅ、と音を立てて離れた彼は至極満足げな表情を浮かべ、濡れたようにしっとりとした唇をつり上げていた。
「俺ァこれで十分だ」
してやられた私は色んな意味で真っ赤になって怒ったのだが、味を占めた彼がその後も事あるごとに「乾燥した」と求めてくるのを、この時はまだ知らない。
ふと彼の唇に赤い筋が入っているのを見つけた。炎の近くにいることが多いせいか耐性はあっても、乾燥しやすいのだろう。皮膚の薄い部分は、季節に関わらずひび割れることがある。
どこだか分かるように自分の唇を指先でとんとんと叩いて見せると、紅ちゃんは自分のに手を伸ばして「あァ」とひび割れをなぞった。
そしてそのまま、べっ、と舌を伸ばす。
「ちょ、ちょっと待って紅ちゃん」
「これくらい舐めときゃ治る」
「今はいいかもしれないけど、ひどくなったりひび割れが癖になったりするから我慢して。ね?」
私としては彼の唇が痛々しくひび割れるのをそう何度も見たくない。「じゃあどうしろってンだ」と不機嫌な虹彩に見下ろされ、私は持っていた巾着に手を差し入れた。
ちょうどいいものがある。薬ではないけれど、唇の乾燥を防いでくれる優れものだ。
「ンだそりゃ?」
取り出した小さな容器を彼は訝しげに見つめた。
「りっぷばぁむっていってね。この前茉希ちゃんに貰ったの」
皇国のものと知って僅かに表情が曇ったが、第八の子からの贈り物と聞いて強く出られないらしい。何か言いたげに口を開いたかと思えば、すぐにばつが悪そうに頭を掻いていた。
りっぷばぁむを塗らせてくれるまでもうひと押し、といったところか。
「私も塗ってるけど、結構良いんだよ。これ使い始めてから乾燥知らずなんだから」
我ながら皇国りっぷばぁむのまわし者みたいな台詞になってしまったなと思う。紅ちゃんはしげしげと私の唇を見つめ(改めてじっくり見られると恥ずかしいのだが)、嘘は言ってないと判断したのか「ン」と身を屈めた。
よかった、素直に聞いてくれた。思いの外すんなり事が運び、安堵の息を漏らす。
りっぷばぁむの蓋を開けて薬指にこっくりとしたくりーむを乗せると、ふわりと甘い蜂蜜の香りが漂ってきた。
そっと彼の頬に手を添えて、体温で温まったくりーむを唇へ。指先を近付けると、じっと赤い瞳がこちらを見つめていて、思わずどきりと心臓が跳ねる。
こんな風に近くで見つめられるのは、決まってそういう雰囲気の時だ。
長い前髪から覗く、熱っぽい視線。抵抗する間もなく手首を掴まれて、ゆっくりと吐息ごと飲み込まれる。
今はその時じゃないのに、つい重ねてしまうのは、彼の顔がそれくらい近くにあるから、で……?
「っ⁈」
鼻先が触れそうになって反射的に下がるも手遅れだった。抱き寄せられて口を塞がれる。離れたと思いきや角度を変えて食むような口付けを数度。
ちゅ、と音を立てて離れた彼は至極満足げな表情を浮かべ、濡れたようにしっとりとした唇をつり上げていた。
「俺ァこれで十分だ」
してやられた私は色んな意味で真っ赤になって怒ったのだが、味を占めた彼がその後も事あるごとに「乾燥した」と求めてくるのを、この時はまだ知らない。