新門紅丸
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねえ紅ちゃん、勝負しない?」
「あァ、勝負だァ?」
「うん。先に火が消えたら負け。負けたらそうだな。秘密を一つ、相手に打ち明けるなんてどう?」
蔵の奥で眠っていた、いつのものかもわからない線香花火。湿気て火が付くかどうかも怪しいそれを捨てる気にはなれなくて、詰所まで持ってきてしまった。
捨てるのは簡単だが、どうせなら最後にひと花咲かせてあげたい。そういう気持ちもあったのかもしれない。
埃被っていた線香花火は予想どおり火がつかなかったり、ついてもすぐに消えてしまったりで、嬉々として群がっていた双子たちもいつの間にかどこかへ行ってしまった。
なんだかんだ付き合いのいい紅ちゃんだけが今も隣で、湿気た花火に火を灯している。
そしてたくさんあった花火も残るは二本。
せっかくならと勝負を持ちかけてみたものの、
紅ちゃんには秘密があるとは思えない。仕方がないから私が勝ったら甘味を奢ってもらうか、今晩のおかずを一つ献上してもらうかにしておこう。
と思っていたのだが、私が提案するより先に、彼は「わかった」と花火を掻っ攫っていった。
了承したということは、紅ちゃんにも私に隠していることがあるのだ。そんな素振り、今までこれっぽっちもなかったのに。一体どんな秘密だろう。皆目検討がつかなくて、知りたいような、知りたくないような。
まあそれも、私が勝てばわかること。
「負けても文句は受け付けねェ」
「それはこっちの台詞」
紅ちゃんの瞳が淡く光り、宵の口に小さな赤が花開く。
パチパチと音を立てて消えることなく咲く二輪を見て、捨てなくてよかったと心のどこかで安堵した。そして咲き誇る姿が少しだけ羨ましく映る。
私もこうなれたらーー。
しばらくして満開だった炎の花はまばらに花弁を散らし、最後はぽとりと地面に吸い込まれていった。
それを見届けると、なにか物言いたげな彼と視線が絡む。
長いこと閉じ込めて、捨てられなかった想いを伝えるなら、今この時。
綺麗に、なんて贅沢は言わない。不恰好でも蕾のまま終わるよりずっといい。
たとえ受け入れられなくとも、募らせた想いに嘘はないのだから。
「あのね、紅ちゃん。私ーー」
どうせ散るなら、盛大に。積もり積もった想いの分だけ、咲き誇ってみせましょう。
「あァ、勝負だァ?」
「うん。先に火が消えたら負け。負けたらそうだな。秘密を一つ、相手に打ち明けるなんてどう?」
蔵の奥で眠っていた、いつのものかもわからない線香花火。湿気て火が付くかどうかも怪しいそれを捨てる気にはなれなくて、詰所まで持ってきてしまった。
捨てるのは簡単だが、どうせなら最後にひと花咲かせてあげたい。そういう気持ちもあったのかもしれない。
埃被っていた線香花火は予想どおり火がつかなかったり、ついてもすぐに消えてしまったりで、嬉々として群がっていた双子たちもいつの間にかどこかへ行ってしまった。
なんだかんだ付き合いのいい紅ちゃんだけが今も隣で、湿気た花火に火を灯している。
そしてたくさんあった花火も残るは二本。
せっかくならと勝負を持ちかけてみたものの、
紅ちゃんには秘密があるとは思えない。仕方がないから私が勝ったら甘味を奢ってもらうか、今晩のおかずを一つ献上してもらうかにしておこう。
と思っていたのだが、私が提案するより先に、彼は「わかった」と花火を掻っ攫っていった。
了承したということは、紅ちゃんにも私に隠していることがあるのだ。そんな素振り、今までこれっぽっちもなかったのに。一体どんな秘密だろう。皆目検討がつかなくて、知りたいような、知りたくないような。
まあそれも、私が勝てばわかること。
「負けても文句は受け付けねェ」
「それはこっちの台詞」
紅ちゃんの瞳が淡く光り、宵の口に小さな赤が花開く。
パチパチと音を立てて消えることなく咲く二輪を見て、捨てなくてよかったと心のどこかで安堵した。そして咲き誇る姿が少しだけ羨ましく映る。
私もこうなれたらーー。
しばらくして満開だった炎の花はまばらに花弁を散らし、最後はぽとりと地面に吸い込まれていった。
それを見届けると、なにか物言いたげな彼と視線が絡む。
長いこと閉じ込めて、捨てられなかった想いを伝えるなら、今この時。
綺麗に、なんて贅沢は言わない。不恰好でも蕾のまま終わるよりずっといい。
たとえ受け入れられなくとも、募らせた想いに嘘はないのだから。
「あのね、紅ちゃん。私ーー」
どうせ散るなら、盛大に。積もり積もった想いの分だけ、咲き誇ってみせましょう。