新門紅丸
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どうしてこうなった……?
私は抱え込まれるようにして紅さんに捕らえられていた。
きついお酒の匂いと触れたところから伝わる熱すぎる体温。どうやら珍しく本気で酔っているらしい。
「紅さん、水持って来ますから離してください」
「いらねェ」
イヤイヤと首を振って紅さんはぎゅうっと私を抱きしめる。まるで駄々をこねる大きな子どもだ。頭上から聞こえる吐息はだんだんとゆっくりになってきて、困った、全く身動きが取れない。
このまま抱き枕状態で寝られたらどうしよう。
酔っているから仕方がないとはいえ、こんなところを誰かに見られたら、一気に噂が広まって町中の人に弄られるのが目に見えている。
私はともかく、浅草を束ねる彼にとってはあらぬ噂を立てられるのは良くないだろう。
「どこにも行かないからとりあえず離しましょ、ね? いいこだから」
言い聞かせるように背中をぽんぽんと叩くと、「ガキ扱いすんじゃねェ」と言いながらも、わずかに力が弱められる。
やっと自由になった上体を起こすと、ゆったりと瞬きする紅い瞳と目が合った。
「……させろ」
「え?」
「ちゅうさせろ」
「……はあぁ⁉︎」
ちゅうって、口吸い⁉︎キス⁉︎接吻⁉︎
何を言ってるんだこの酔っ払い。
困惑する私をよそに、彼はゆっくりと眠そうな笑顔を近づけてくる。
そしてーー。
「……何の真似だ」
不服そうに眉間に皺を寄せて、私の両手のひら越しに笑顔の紅さんが言う。
「それはこっちの台詞ですよ! 急に何するんですか!」
酔っている癖に的確に唇を狙って来やがって、とは言えず、私は少しでも距離を取ろうと両手で彼の顔を押した。
「何って、ちゅうだ。ちゅう」
「そういうのは懸想人とするもんです。好いてもいない相手にしちゃだめなんですよ。特に初めては大事に……」
「なら問題ねェな」
「だからぁ……ひゃう⁉︎」
人の話聞いてました? と詰問するより先にぺろりと紅さんが私の手のひらを舐めた。
思わぬ感触に怯んでいると、その隙に両手を絡め取られる。
「べに、さん」
「いい加減させろ」
再び綺麗な顔が近付いてきて、思わず目を瞑る。
自由も奪われて、もう逃げられない。
諦めて口を固く閉じ、来るであろう感触に備える。しかし待てど暮らせど何も起きなかった。
恐る恐る目を開けると、そこにはすぅすぅと寝息を立てる紅さんがいて。
「うそ、寝落ち……?」
キスされる、と一人身構えていたのが恥ずかしい。けれどあどけない寝顔を見ていたら、何だかどうでもよくなってしまった。
困った人。きっと明日にはこのことを忘れてるんだろうな。
酔っ払いの戯言に振り回されるこっちの身にもなってほしい、と私は眠る愉快王の頬を軽く抓った。へにゃりと口角が緩むだけで反応はない。
もしあのままキスされていたらどうなっていたのだろう。
ついあったかもしれないその後を想像してしまって、顔が熱を持つのを感じた。
だめだめ。やっぱり初めては好きな人とじゃないと。
私は上がった熱を冷ますように、ぶんぶんと邪念を振り払うのだった。
私は抱え込まれるようにして紅さんに捕らえられていた。
きついお酒の匂いと触れたところから伝わる熱すぎる体温。どうやら珍しく本気で酔っているらしい。
「紅さん、水持って来ますから離してください」
「いらねェ」
イヤイヤと首を振って紅さんはぎゅうっと私を抱きしめる。まるで駄々をこねる大きな子どもだ。頭上から聞こえる吐息はだんだんとゆっくりになってきて、困った、全く身動きが取れない。
このまま抱き枕状態で寝られたらどうしよう。
酔っているから仕方がないとはいえ、こんなところを誰かに見られたら、一気に噂が広まって町中の人に弄られるのが目に見えている。
私はともかく、浅草を束ねる彼にとってはあらぬ噂を立てられるのは良くないだろう。
「どこにも行かないからとりあえず離しましょ、ね? いいこだから」
言い聞かせるように背中をぽんぽんと叩くと、「ガキ扱いすんじゃねェ」と言いながらも、わずかに力が弱められる。
やっと自由になった上体を起こすと、ゆったりと瞬きする紅い瞳と目が合った。
「……させろ」
「え?」
「ちゅうさせろ」
「……はあぁ⁉︎」
ちゅうって、口吸い⁉︎キス⁉︎接吻⁉︎
何を言ってるんだこの酔っ払い。
困惑する私をよそに、彼はゆっくりと眠そうな笑顔を近づけてくる。
そしてーー。
「……何の真似だ」
不服そうに眉間に皺を寄せて、私の両手のひら越しに笑顔の紅さんが言う。
「それはこっちの台詞ですよ! 急に何するんですか!」
酔っている癖に的確に唇を狙って来やがって、とは言えず、私は少しでも距離を取ろうと両手で彼の顔を押した。
「何って、ちゅうだ。ちゅう」
「そういうのは懸想人とするもんです。好いてもいない相手にしちゃだめなんですよ。特に初めては大事に……」
「なら問題ねェな」
「だからぁ……ひゃう⁉︎」
人の話聞いてました? と詰問するより先にぺろりと紅さんが私の手のひらを舐めた。
思わぬ感触に怯んでいると、その隙に両手を絡め取られる。
「べに、さん」
「いい加減させろ」
再び綺麗な顔が近付いてきて、思わず目を瞑る。
自由も奪われて、もう逃げられない。
諦めて口を固く閉じ、来るであろう感触に備える。しかし待てど暮らせど何も起きなかった。
恐る恐る目を開けると、そこにはすぅすぅと寝息を立てる紅さんがいて。
「うそ、寝落ち……?」
キスされる、と一人身構えていたのが恥ずかしい。けれどあどけない寝顔を見ていたら、何だかどうでもよくなってしまった。
困った人。きっと明日にはこのことを忘れてるんだろうな。
酔っ払いの戯言に振り回されるこっちの身にもなってほしい、と私は眠る愉快王の頬を軽く抓った。へにゃりと口角が緩むだけで反応はない。
もしあのままキスされていたらどうなっていたのだろう。
ついあったかもしれないその後を想像してしまって、顔が熱を持つのを感じた。
だめだめ。やっぱり初めては好きな人とじゃないと。
私は上がった熱を冷ますように、ぶんぶんと邪念を振り払うのだった。