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「ああああああああああああ……」
だって、初恋って、キラキラしてふわふわしてて、きっと相手は王子様みたいに優しい人で、素敵で素敵で仕方がないものだと思っていた。思って、いた!のに!
「うわああああああああああん!!!」
こんなことって、こんなことってあるの?そんなの非道い、神さまの意地悪。悪趣味。無慈悲。私の純情を弄ばないでください。
布団の上でジタバタ悶えていたらじんわり涙が押し寄せてきて、やるせない気持ちで天井を睨み付ける。どうしてこうなったんだ。
そもそもなんで、そう、よりによって、相手が髪も歯もギザギザしてて、王子というより野獣、いやもはやダークサイド感あると言っても過言じゃないし、物言いもぶっきらぼうだし女心絶対分かんないし、とにかく!ない!!
一瞬脳裏に彼と並んで仲睦まじげな様子が描かれたが、恥ずかしさでひいいいい、と頭をぶんぶん振った。違う、違うの、そうじゃないんだ。
そう、ほら、カゲは友達だし……クラスも一年の時一緒になって、意外と仲良くなって、その縁あってボーダーでもたまにランク戦してくれるし……ん?ボーダー??ちょっっっっと待て。
「刺さるやないかい!!!」
なぜエセ関西弁?知らんわ。いやんなこたどーだっていいんだ、問題は……
カゲへの好意を自覚した今、感情が!恐らく!好きという感情が!!刺さるということである!!!
やだなにこのスーパーハードモードな初恋……せめてモテモテイケメン代表:犬飼とかにしとくべきだった……いややっぱアイツはねぇな。色々と底知れなさすぎて日本海溝レベルだし。そもそも論でそういう目で見れないし。……いや!カゲを!!そういう目でずっと見て来てた訳では無いんだけどね!!??
虚空を見つめながら必要の無い言い訳を捲し立てるのは正直かなり虚しい。が、このザワザワと騒ぐ心が勝手にそうしているので仕方あるまい。ちっきしょー、もう泣きたい。
とりあえず、接触は出来るだけ避けて……(クラス違って良かった……)、ランク戦も控えて……。それにしてもカゲのあれってどのくらいの距離まで有効なんだろう。流石にこの距離(私の家からカゲんち)で刺さるなんてことはないだろうけど、正直たぶん遠くから見るだけでアウトだ。……いや、遠くに見えるくらいだったら恐らく感情は「喜」、つまりセーフ。もしこっち見られても手を振れば誤魔化せるだろう。問題は誤魔化し続けることが出来るか否か、だ。なんだか頭脳戦みたいになってきたな……。
しかしこれをやり遂げねば私はある意味公開処刑だ、やるぞ!
「……それで、カゲを避けていると」
「はい……」
おっかしいな、鋼くんに速攻でバレた。今日はカゲは来ないと遊真くんから聞いていたので安心してランク戦に行ったら鋼くんがいて、なんだかバツが悪くてつい逃げようとしたら捕まった。流石No.4アタッカー……動きが良いことで……!
この約2週間、私はよくやったと思う。まず登校時刻と下校時刻をずらし、よくカゲとすれ違う廊下を避け、カゲのことを考えそうになったら急いでランク戦の戦績を思い出して感情を書き換える。たまたま会ってしまったら、色々と言い訳してそそくさと別れる(恐らくこの時、感情は「しまった!」だろう)。ボーダーに行く時間もずらしたし、ゾエさんにご飯(かげうらでお好み焼き)に誘われても断った。全てはこの感情がバレないために!
……が、流石に不自然だったのだろう、こうして鋼に捕まったということは。(必殺倒置法!)
「昨日遊真が『ミョウジセンパイにカゲセンパイが来るか聞かれたのに、ミョウジセンパイが来ないとは……』って言ってて」
「あああ遊真余計なことを言うでない!!いや口止めしなかった私も悪いけどさ!!」
「……なるほど、話はだいたい分かった」
「うわっ荒船!!??いつからそこに!?」
「お前らが後から来たんだよ」
「最初からいたの!?気付いた時に声掛けてよ!」
「悪い悪い」
後ろの席からこちらの席に移りながら、悪びれなく荒船は笑った。謝罪の念ゼロだなこれは。人の話を盗み聞きするとは悪趣味な。
「もういいや……2人も協力してよ」
「開き直ったな」
鋼くんにからかい半分に視線を寄越され、そうでなきゃやってられっかこの状況!とコップをタァンッ!と机に叩き付ける。なお、コップは紙製であるため周りの人の耳にも優しいはずだ。多分。
「けどこの状況、かなりお前の分が悪いな……俺らが手助けしても、結局カゲを避けることには変わりないし」
「ウッそんな的確に急所突かないでよ鋼くん……こっちだって必死なんだよ……」
「ってことは、これはもうアレしか無いな、ミョウジ」
「アレ……?」
「告白だろ」
「それが出来たら苦労しねぇよ……!」
もう一度机タァンッしたい衝動に駆られまくったがなんとか堪えた。私偉い。偉いついでにこのスーパーハードモードな恋愛をどうにかしてください神様鋼様荒船様。
「……けど、お前はそれでいいのか?」
「えっ?」
「成就させたいもんじゃねーの?」
「そうだな。それに、どっちみちカゲの知るところになるし、早めに覚悟決めた方が良いと思う」
荒船と鋼くんに正論で諭され、う、と押し黙る。そう、永遠にカゲを避け続けることはできない。もし本気でカゲから離れるのなら、ボーダーを辞める他無いだろう。……記憶封印処置をして。
でも、ボーダーを辞めたい訳でも、カゲから離れたい訳でもない。私は、前と同じように、ただみんなと喋って、戦って、笑って———そんなふうにしていつも通り、一緒に過ごしたいだけだ。
だんまりの私を、2人が生温かい目で見てくる。保護者か?保護者なのか?
「確か好意に気付いたのは2週間前か……何がきっかけだったんだ?その前はどう思ってたんだ?」
「う……それ、答えなきゃだめ?」
「いや、単純な好奇心」
「俺も聞いてみたいな」
鋼くんにまで促され、私は視線を彷徨わせる。別にそんな大したことじゃないよ、ともごもご答えると、2人はへぇ、と言いながら口角を上げた。バレてしまった時点で分かってはいたが、完全に遊ばれている。……この2人からは逃げられなさそうだ。観念して口を開く。
「こないださ、カゲにお礼したいってC級の……可愛い子がいてさ」
「ふぅん?」
「影浦隊の部屋まで案内してあげて、緊張するから着いてきてくださいって言われたからそのまま私も一緒に入って見守ってたんだけど」
「ど?」
「最初は優しいねぇ、良い子だねぇ、分かってもらえる子で良かったねぇって思ってたのに……なんかこう……ね?」
「へぇぇぇ〜?」
「ねえ!!面白がりすぎでしょ!!」
「まあ実際面白いもんは面白いんだから仕方ないだろ」
またまた一切悪びれることなくはは、と荒船が笑ったので全力で頬をつねっておいた。なお、お互いトリオン体なので大した問題はない。多分。
「それで、どうやって告白するつもりなんだ?」
「それが問題だよねぇ……鋼くんだったらどんなふうに告白されたい?」
「俺?真剣に言ってくれたならどんな告白でも嬉しいと思うけど……荒船は?」
「んー、好きな子だったらかなぁ、オレは。でも告白はされるよりしたい派だな」
「好きな子……から……?? じゃあ私は一体全体どうすれば……」
顔からサアッと血の気が引くのが分かった。そんなの完全に手詰まりじゃないか。だって相手はカゲ、感情受信体質持ち。告白する前に好感度を上げておくことは今更できない。
「まあ、大丈夫だろ」
「うわぁ……突然めっちゃ適当になったね。他人事だからって薄情だよ」
「いやいや、そこまで適当には言ってねえって」
「そうだな、ナマエはカゲとずっと仲良かったし。付き合う相手としてしっくり来るかな」
「えっ鋼くんほんと……?信じていい……?」
「……えっと、俺はそう思うよ」
困ったように眉を下げて笑う鋼くんに多少申し訳なさを感じつつ、なんだか……なんだか勇気が出てくるような気がした。
「ありがと、私頑張るね。最終手段としてボーダーやめて記憶処理って手もあるし」
「おまえマジか」
「それはちょっと」
「冗談!」
お前ならやりかねん、と思っていそうな2人から目を逸らしつつ、椅子から立ち上がる。うん、もう迷いはない。
「今日はありがと、今度なにか奢らせて」
「おう、また結果教えろよ」
「応援してる」
「ありがとう、またラインする!」
さて……2人に話を聞いてもらってかなりすっきりしたが、それでも「告白」なんていう大きすぎる壁が目の前に立ちはだかっていることには変わりない。そう、問題はどう伝えるかである。まずは2人きりになれるところ、告白に相応しい雰囲気があること、あとはなにがあるかなぁ……。あとはサイドエフェクト対策。
……とか思っていたはずなんですけどね!! 今の私の状況を説明しましょう。なぜかカゲと全力鬼ごっこしてる!!
ありとあらゆる方法で撒こうとしてるけど全くダメ。完全に捉えられてる。なんで!
走りながらちら、とカゲの表情を伺う。非常に不機嫌な眼差しとカチリと目が合い、血の気が引く。こんな表情、初めてみた。
動揺が足に出た、と思ったらべしゃん!と全身に痛みが走った。目の前に床がある。どうやら転けてしまったようだった。
「……やっと捕まったか。おいこら、なに人のこと避けてんだ、ああ?」
「ごめ……ちがくて」
「何が?」
「その、」
目が泳ぐ。呼吸が整わない。そりゃさっき全力疾走してたし、今は絶対絶命のピンチだ。どうすれば。
間違いなく機嫌が悪いらしい、私の顔を覗き込んでいたカゲがむんずと私の顔を掴んだ。顎クイみたいなトキメキポーズではなく、頬をむぎゅうっと。そんなことでも、私の騒がしい心臓はよりはしゃぎ立てる。顔がカッと赤くなるのが分かった。
「……そ、その」
「……」
「避けたかったわけでは、なくて」
「……そうかよ」
「その……ですね……」
目が泳ぎまくる。汗が噴き出て、頬を掴まれているのも相まって完全に茹蛸状態だ。ああ、こんな時でもかっこいいんだなぁ、とか、汗臭くないかなとか、恥ずかしいとか、様々な感情が走馬灯の如く走っては消えていく。
はぁ、と、ため息を吐いたカゲが、私の頬を開放した。
「ぷは」
「怒ってるわけじゃねぇのか」
「ちがう、ちがう」
「はあ……なんだ、そういうことかよ」
どうやら何かに納得したようだ。ぶっきらぼうだけど優しい手付きで私を引っ張りあげてくれる。
「お前、今更か」
いまさら?
カゲの低い声が鼓膜を震わせ、頭がハテナで埋め尽くされて、ぼん!と爆ぜる。……今更!?
「ちょっ、ちょっと!カゲ!!ちょっと待ってタイム!」
「ああ?」
「ね、ねぇ、もももももしかしてもしかしなくても」
「はあ……こっちの身にもなれ、バカ」
そっぽを向くカゲの頬は多分私と同じくらい赤くて。とうの昔からしってるっつーのという呟きは何よりも甘やかだった。
だって、初恋って、キラキラしてふわふわしてて、きっと相手は王子様みたいに優しい人で、素敵で素敵で仕方がないものだと思っていた。思って、いた!のに!
「うわああああああああああん!!!」
こんなことって、こんなことってあるの?そんなの非道い、神さまの意地悪。悪趣味。無慈悲。私の純情を弄ばないでください。
布団の上でジタバタ悶えていたらじんわり涙が押し寄せてきて、やるせない気持ちで天井を睨み付ける。どうしてこうなったんだ。
そもそもなんで、そう、よりによって、相手が髪も歯もギザギザしてて、王子というより野獣、いやもはやダークサイド感あると言っても過言じゃないし、物言いもぶっきらぼうだし女心絶対分かんないし、とにかく!ない!!
一瞬脳裏に彼と並んで仲睦まじげな様子が描かれたが、恥ずかしさでひいいいい、と頭をぶんぶん振った。違う、違うの、そうじゃないんだ。
そう、ほら、カゲは友達だし……クラスも一年の時一緒になって、意外と仲良くなって、その縁あってボーダーでもたまにランク戦してくれるし……ん?ボーダー??ちょっっっっと待て。
「刺さるやないかい!!!」
なぜエセ関西弁?知らんわ。いやんなこたどーだっていいんだ、問題は……
カゲへの好意を自覚した今、感情が!恐らく!好きという感情が!!刺さるということである!!!
やだなにこのスーパーハードモードな初恋……せめてモテモテイケメン代表:犬飼とかにしとくべきだった……いややっぱアイツはねぇな。色々と底知れなさすぎて日本海溝レベルだし。そもそも論でそういう目で見れないし。……いや!カゲを!!そういう目でずっと見て来てた訳では無いんだけどね!!??
虚空を見つめながら必要の無い言い訳を捲し立てるのは正直かなり虚しい。が、このザワザワと騒ぐ心が勝手にそうしているので仕方あるまい。ちっきしょー、もう泣きたい。
とりあえず、接触は出来るだけ避けて……(クラス違って良かった……)、ランク戦も控えて……。それにしてもカゲのあれってどのくらいの距離まで有効なんだろう。流石にこの距離(私の家からカゲんち)で刺さるなんてことはないだろうけど、正直たぶん遠くから見るだけでアウトだ。……いや、遠くに見えるくらいだったら恐らく感情は「喜」、つまりセーフ。もしこっち見られても手を振れば誤魔化せるだろう。問題は誤魔化し続けることが出来るか否か、だ。なんだか頭脳戦みたいになってきたな……。
しかしこれをやり遂げねば私はある意味公開処刑だ、やるぞ!
「……それで、カゲを避けていると」
「はい……」
おっかしいな、鋼くんに速攻でバレた。今日はカゲは来ないと遊真くんから聞いていたので安心してランク戦に行ったら鋼くんがいて、なんだかバツが悪くてつい逃げようとしたら捕まった。流石No.4アタッカー……動きが良いことで……!
この約2週間、私はよくやったと思う。まず登校時刻と下校時刻をずらし、よくカゲとすれ違う廊下を避け、カゲのことを考えそうになったら急いでランク戦の戦績を思い出して感情を書き換える。たまたま会ってしまったら、色々と言い訳してそそくさと別れる(恐らくこの時、感情は「しまった!」だろう)。ボーダーに行く時間もずらしたし、ゾエさんにご飯(かげうらでお好み焼き)に誘われても断った。全てはこの感情がバレないために!
……が、流石に不自然だったのだろう、こうして鋼に捕まったということは。(必殺倒置法!)
「昨日遊真が『ミョウジセンパイにカゲセンパイが来るか聞かれたのに、ミョウジセンパイが来ないとは……』って言ってて」
「あああ遊真余計なことを言うでない!!いや口止めしなかった私も悪いけどさ!!」
「……なるほど、話はだいたい分かった」
「うわっ荒船!!??いつからそこに!?」
「お前らが後から来たんだよ」
「最初からいたの!?気付いた時に声掛けてよ!」
「悪い悪い」
後ろの席からこちらの席に移りながら、悪びれなく荒船は笑った。謝罪の念ゼロだなこれは。人の話を盗み聞きするとは悪趣味な。
「もういいや……2人も協力してよ」
「開き直ったな」
鋼くんにからかい半分に視線を寄越され、そうでなきゃやってられっかこの状況!とコップをタァンッ!と机に叩き付ける。なお、コップは紙製であるため周りの人の耳にも優しいはずだ。多分。
「けどこの状況、かなりお前の分が悪いな……俺らが手助けしても、結局カゲを避けることには変わりないし」
「ウッそんな的確に急所突かないでよ鋼くん……こっちだって必死なんだよ……」
「ってことは、これはもうアレしか無いな、ミョウジ」
「アレ……?」
「告白だろ」
「それが出来たら苦労しねぇよ……!」
もう一度机タァンッしたい衝動に駆られまくったがなんとか堪えた。私偉い。偉いついでにこのスーパーハードモードな恋愛をどうにかしてください神様鋼様荒船様。
「……けど、お前はそれでいいのか?」
「えっ?」
「成就させたいもんじゃねーの?」
「そうだな。それに、どっちみちカゲの知るところになるし、早めに覚悟決めた方が良いと思う」
荒船と鋼くんに正論で諭され、う、と押し黙る。そう、永遠にカゲを避け続けることはできない。もし本気でカゲから離れるのなら、ボーダーを辞める他無いだろう。……記憶封印処置をして。
でも、ボーダーを辞めたい訳でも、カゲから離れたい訳でもない。私は、前と同じように、ただみんなと喋って、戦って、笑って———そんなふうにしていつも通り、一緒に過ごしたいだけだ。
だんまりの私を、2人が生温かい目で見てくる。保護者か?保護者なのか?
「確か好意に気付いたのは2週間前か……何がきっかけだったんだ?その前はどう思ってたんだ?」
「う……それ、答えなきゃだめ?」
「いや、単純な好奇心」
「俺も聞いてみたいな」
鋼くんにまで促され、私は視線を彷徨わせる。別にそんな大したことじゃないよ、ともごもご答えると、2人はへぇ、と言いながら口角を上げた。バレてしまった時点で分かってはいたが、完全に遊ばれている。……この2人からは逃げられなさそうだ。観念して口を開く。
「こないださ、カゲにお礼したいってC級の……可愛い子がいてさ」
「ふぅん?」
「影浦隊の部屋まで案内してあげて、緊張するから着いてきてくださいって言われたからそのまま私も一緒に入って見守ってたんだけど」
「ど?」
「最初は優しいねぇ、良い子だねぇ、分かってもらえる子で良かったねぇって思ってたのに……なんかこう……ね?」
「へぇぇぇ〜?」
「ねえ!!面白がりすぎでしょ!!」
「まあ実際面白いもんは面白いんだから仕方ないだろ」
またまた一切悪びれることなくはは、と荒船が笑ったので全力で頬をつねっておいた。なお、お互いトリオン体なので大した問題はない。多分。
「それで、どうやって告白するつもりなんだ?」
「それが問題だよねぇ……鋼くんだったらどんなふうに告白されたい?」
「俺?真剣に言ってくれたならどんな告白でも嬉しいと思うけど……荒船は?」
「んー、好きな子だったらかなぁ、オレは。でも告白はされるよりしたい派だな」
「好きな子……から……?? じゃあ私は一体全体どうすれば……」
顔からサアッと血の気が引くのが分かった。そんなの完全に手詰まりじゃないか。だって相手はカゲ、感情受信体質持ち。告白する前に好感度を上げておくことは今更できない。
「まあ、大丈夫だろ」
「うわぁ……突然めっちゃ適当になったね。他人事だからって薄情だよ」
「いやいや、そこまで適当には言ってねえって」
「そうだな、ナマエはカゲとずっと仲良かったし。付き合う相手としてしっくり来るかな」
「えっ鋼くんほんと……?信じていい……?」
「……えっと、俺はそう思うよ」
困ったように眉を下げて笑う鋼くんに多少申し訳なさを感じつつ、なんだか……なんだか勇気が出てくるような気がした。
「ありがと、私頑張るね。最終手段としてボーダーやめて記憶処理って手もあるし」
「おまえマジか」
「それはちょっと」
「冗談!」
お前ならやりかねん、と思っていそうな2人から目を逸らしつつ、椅子から立ち上がる。うん、もう迷いはない。
「今日はありがと、今度なにか奢らせて」
「おう、また結果教えろよ」
「応援してる」
「ありがとう、またラインする!」
さて……2人に話を聞いてもらってかなりすっきりしたが、それでも「告白」なんていう大きすぎる壁が目の前に立ちはだかっていることには変わりない。そう、問題はどう伝えるかである。まずは2人きりになれるところ、告白に相応しい雰囲気があること、あとはなにがあるかなぁ……。あとはサイドエフェクト対策。
……とか思っていたはずなんですけどね!! 今の私の状況を説明しましょう。なぜかカゲと全力鬼ごっこしてる!!
ありとあらゆる方法で撒こうとしてるけど全くダメ。完全に捉えられてる。なんで!
走りながらちら、とカゲの表情を伺う。非常に不機嫌な眼差しとカチリと目が合い、血の気が引く。こんな表情、初めてみた。
動揺が足に出た、と思ったらべしゃん!と全身に痛みが走った。目の前に床がある。どうやら転けてしまったようだった。
「……やっと捕まったか。おいこら、なに人のこと避けてんだ、ああ?」
「ごめ……ちがくて」
「何が?」
「その、」
目が泳ぐ。呼吸が整わない。そりゃさっき全力疾走してたし、今は絶対絶命のピンチだ。どうすれば。
間違いなく機嫌が悪いらしい、私の顔を覗き込んでいたカゲがむんずと私の顔を掴んだ。顎クイみたいなトキメキポーズではなく、頬をむぎゅうっと。そんなことでも、私の騒がしい心臓はよりはしゃぎ立てる。顔がカッと赤くなるのが分かった。
「……そ、その」
「……」
「避けたかったわけでは、なくて」
「……そうかよ」
「その……ですね……」
目が泳ぎまくる。汗が噴き出て、頬を掴まれているのも相まって完全に茹蛸状態だ。ああ、こんな時でもかっこいいんだなぁ、とか、汗臭くないかなとか、恥ずかしいとか、様々な感情が走馬灯の如く走っては消えていく。
はぁ、と、ため息を吐いたカゲが、私の頬を開放した。
「ぷは」
「怒ってるわけじゃねぇのか」
「ちがう、ちがう」
「はあ……なんだ、そういうことかよ」
どうやら何かに納得したようだ。ぶっきらぼうだけど優しい手付きで私を引っ張りあげてくれる。
「お前、今更か」
いまさら?
カゲの低い声が鼓膜を震わせ、頭がハテナで埋め尽くされて、ぼん!と爆ぜる。……今更!?
「ちょっ、ちょっと!カゲ!!ちょっと待ってタイム!」
「ああ?」
「ね、ねぇ、もももももしかしてもしかしなくても」
「はあ……こっちの身にもなれ、バカ」
そっぽを向くカゲの頬は多分私と同じくらい赤くて。とうの昔からしってるっつーのという呟きは何よりも甘やかだった。
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