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苦手な人がいる。
その人は5つ年上で、一級呪術師。名前を七海建人という。十割呪法の使い手で、線分したとき7:3の点を強制的に相手の弱点とする。なんとも細かい術式だな、と初めて聞いた(聞かされた)時に思ったものだ。
諸事情により私が高専に入学したのが普通より2年も遅れてしまったせいか、彼と一緒に任務に向かうことは今まで一度も無かった。が、最近、術式の相性が良いと考えられたのか、この約1ヶ月、4回も2人で組まされている。
確かに、インテリ系の見た目に反しゴリゴリの近接格闘タイプである七海さんと、圧倒的に後方支援系の私とが組まされるのは理に適っているのだが、残念ながらめちゃくちゃとっつきにくくて困っている。
七海さんは、いつも冷静で言動に無駄が無くて、テンションは基本的に一定。表情もあまり変わらない。任務が終わるとサッサと帰ってしまうし、あの独特のサングラスも相まって人間っぽくない。……といっても出会ってから間もないし、冷たい人、というわけでもなさそうなので、もう少し経ったら親しくなれるかなぁ、なんて思っているのだが、いかんせん彼の目の前に立つと、とても緊張するのだ。
補助監督さんたちからの評判も良いし、「珍しいくらい善人」だと聞いていたので、彼のかなり素っ気ない態度は、もしかすると私が何がしてしまったせいなのかも、と思わずにはいられない。
それはさておき今はーー
「やっほー綺羅!元気だった?僕と離れて寂しくなかった?」
「ええと、それは無いですかね」
ーー呪術界最強さんに絡まれている方が問題である。
五条さんには縁あって高専時代からお世話になっていて、任務でもたまに組む事があった。私の術式は他人の術式を強化することもできるため、最強を更にバフしてみよう、というなんとも恐ろしい意向があったらしい。そのせいで地獄を見たが。(今思うと、それは建前で単にお守りを付けたかっただけかもしれない……なんてね)
談話室でお茶を飲みながら静かに寛ぐ私の至福の一時は、残念ながらハイテンションな最強さんのせいで潰れることになった。
「ねえ綺羅、僕のこと尊敬してるって言ってくれたんでしょ?七海から聞いたよ!」
「都合の良い解釈はしないでください。確かに術師としては尊敬してますが五条さん自体は正直あまり尊敬してませんよ?」
「酷くない?」
「分かったなら離れてください……ただでさえ顔面ネックウォーマーって見てるだけで暑苦しいんです」
「酷過ぎない?僕結構ちゃんと面倒見てあげたよね?」
「それに関しては感謝していますが」
「もっと感謝しろよ」
感謝できる案件より面倒事の方が圧倒的に多かったんだよな……。心の中でぼやく。正直なところ、五条さんにお世話になった日々は思い出したくない。
「そういえば五条さんはなんで顔面ネックウォーマーなんですか?サングラスとか、他にも目を隠す方法あるじゃないですか」
「ん?ああ、昔はサングラスだったよ。今でもオフの時はサングラスのこともあるしね」
「そうなんですか」
「やっぱ動く時にサングラスだと落ちちゃったりしてね〜。これだとそういうことがないワケ」
「なるほど」
確かに普通の眼鏡だと動きにくいかも。そういえば七海さんも鼻で固定するタイプで落ちにくそうだった。(私がアレを着けたら秒で落ちる自信があるが)
そういうことなら仕方ない……いや、仕方ないのか?仕方ないことないのでは……と自問自答していると、五条さんは、ほら、とスマホの写真を見せてきた。受け取って見てみると、なるほど、サングラスをかけている。制服を着ているから、学生時代だろう。
「髪型も違うし、結構雰囲気違いますね」
「そう?見た目は今とあんま変わらない気がするけど」
「そうなんですか?雰囲気の違いはネックウォーマーのせいですかね」
「そろそろネックウォーマーっていうのやめろよお前。目隠しだよ、めーかーくーし!」
写真は記念写真か何かだろうか、他にも色んな人が映っていた。見覚えのない人はもしかして故人だったりするのだろうか……とも思いながら見ていると1人の男の子が目に留まった。
「この人イケメンですね」
「ん?どれ?」
「この……微妙に嫌がってる感じの人」
「えー、僕の方がナイスガイでしょ」
「ナイスガイって言葉に謝って下さい。あえて言うならグッドルッキングガイですね」
「ん?もしかしてナイスなのを見た目に限られた……?」
「もしかしなくてもそうです。しかしこの人の顔、本当にキレイですね……羨ましい」
「え、綺羅、それ誰かホントに分かんないの?」
「はい?」
どういうことだろう?首を傾げる。もしかして有名な人なのだろうか。でも、こんな人居たっけ……?目付きは少々悪いとはいえ、ここまで端正なお顔立ちなら絶対忘れないと思うんだけど……でもこのめっちゃシワ寄ってる眉間には見覚えがあるような……。
うんうん唸っていると部屋のドアが開いた。
「……五条さん。何をなさっているんですか」
「おおー、七海ぃ!ナイスタイミング!お前ちょっとグラサン外せよ」
「嫌です」
スパァン!という効果音が聞こえそうなくらい一瞬でぶった斬った七海さん。いいぞ、もっとやれ!みたいな気分になりながら、写真の男の子と比べてみる。背は高いし、髪も金色、どことなく角ばった印象を受ける顔立ち……なるほど。
「この人七海さんだったんですね」
「そうそう!雰囲気とかは結構そのままじゃない?」
「確かに。七海さん、絶対サングラス外した方が良いですよ、この顔を隠すのは勿体無いです!」
「この顔って……五条さん、一体何を見せたんですか」
「高専の時の七海の写真。綺羅めっちゃ褒めてたよ」
楽しそうにサムズアップする五条さん。対する七海さんは不審そうに眉を寄せた。もしかして気に障ってしまっただろうか。私は慌てて、面白がってた訳ではないとか、素直な感想だとか必死に言葉を並べたのだが、五条さんは余計なことを言うし、七海さんの眉間のシワは深くなるばかりだった。
散々引っ掻き回すだけ引っ掻き回して五条さんは談話室を出て行った。残された私は改めて七海さんに事情を話した。熱々だった私のお茶は、多分もう冷めている。
「……というわけで、もとはサングラス談議だったんです。すみません、私が変なこと言い始めたせいで」
「いえ。あの人の言動には慣れています」
「そういえば一つ後輩でしたっけ」
「ええ。高専の時からよく絡まれていました」
「それは最悪ですね……私なんて知り合ってからそこまで経ってないのにもう辟易としてます」
「そうだったんですね」
淡々と頷く七海さんの顔をよくよく見てみる。サングラスに注目すると人間味が薄いけど、隠された目元を意識すると、やっぱり綺麗だ。サングラスを外したらどんな感じなんだろう。でも、五条さんに外せって言われた時、断る速度は光を超えてたしなぁ。そんなことを考えていたら、七海さんはこちらをチラリと見て口を開いた。
「てっきりお二人は付き合ってらっしゃるのかと思っていました」
予想だにしなかった一言に思考が一瞬停止した。おつきあい、オツキアイ……お付き合い??
「……えっ?2人って、もしかして私と五条さんですか?」
「はい。仲が良いと聞いていたので」
「いやぁ、無いですね。ありえない」
「そうだったんですね。良かったです」
「え?」
何が?と聞けば良いのは分かっているのだが、上手く声が出ない。良かった、って、何が?五条さんと付き合ってなくて、七海さんにとって、「良かった」とは?何も言えず口をパクパクしている私を見て、七海さんは少し笑った。暗いサングラス越しの瞳に射抜かれる。見られてる、と思って更に頬が熱くなったのが分かった。頬だけなんかじゃない。全身が火照ったように熱い。
「……七海さん、実は意地悪だったりしますか?」
「そうかもしれません。五条さんほどでは無いと思いますが」
そう言って、何事も無かったかのようにコーヒーサーバーに向かう七海さんの背中を見ながら、これはちょっとヤバいかもしれないと手で顔を覆っていたのは、絶対に秘密なのである。
そして、次の日、任務に向かう車に乗り込んだ私が、先に乗っていた七海さんのノーサングラス姿を見て動揺し、車の天井に頭をぶつけてしまったのは、また別の話。
(それ逆に緊張するんですけど……!?)
(▪ とっつきにくいと思って距離を取っていたがサングラス外した写真を五条に見せられて「ええ⁉︎誰ですかこのイケメン!!」「えー、僕の方がナイスガイでしょ」「ナイスガイって言葉に謝って下さい。あえて言うならグッドルッキングガイですね」「ん?もしかしてナイスなのを見た目に限られた……?」「もしかしなくてもそうです。しかしこの金髪碧眼イケメンさんは一体全体誰なんですか?」「え、綺羅、最近いつも一緒にいるじゃん」「へ?」「……五条さん、何をなさっているんですか」「おおー!七海ぃ!ナイスタイミング!」的なお話)
その人は5つ年上で、一級呪術師。名前を七海建人という。十割呪法の使い手で、線分したとき7:3の点を強制的に相手の弱点とする。なんとも細かい術式だな、と初めて聞いた(聞かされた)時に思ったものだ。
諸事情により私が高専に入学したのが普通より2年も遅れてしまったせいか、彼と一緒に任務に向かうことは今まで一度も無かった。が、最近、術式の相性が良いと考えられたのか、この約1ヶ月、4回も2人で組まされている。
確かに、インテリ系の見た目に反しゴリゴリの近接格闘タイプである七海さんと、圧倒的に後方支援系の私とが組まされるのは理に適っているのだが、残念ながらめちゃくちゃとっつきにくくて困っている。
七海さんは、いつも冷静で言動に無駄が無くて、テンションは基本的に一定。表情もあまり変わらない。任務が終わるとサッサと帰ってしまうし、あの独特のサングラスも相まって人間っぽくない。……といっても出会ってから間もないし、冷たい人、というわけでもなさそうなので、もう少し経ったら親しくなれるかなぁ、なんて思っているのだが、いかんせん彼の目の前に立つと、とても緊張するのだ。
補助監督さんたちからの評判も良いし、「珍しいくらい善人」だと聞いていたので、彼のかなり素っ気ない態度は、もしかすると私が何がしてしまったせいなのかも、と思わずにはいられない。
それはさておき今はーー
「やっほー綺羅!元気だった?僕と離れて寂しくなかった?」
「ええと、それは無いですかね」
ーー呪術界最強さんに絡まれている方が問題である。
五条さんには縁あって高専時代からお世話になっていて、任務でもたまに組む事があった。私の術式は他人の術式を強化することもできるため、最強を更にバフしてみよう、というなんとも恐ろしい意向があったらしい。そのせいで地獄を見たが。(今思うと、それは建前で単にお守りを付けたかっただけかもしれない……なんてね)
談話室でお茶を飲みながら静かに寛ぐ私の至福の一時は、残念ながらハイテンションな最強さんのせいで潰れることになった。
「ねえ綺羅、僕のこと尊敬してるって言ってくれたんでしょ?七海から聞いたよ!」
「都合の良い解釈はしないでください。確かに術師としては尊敬してますが五条さん自体は正直あまり尊敬してませんよ?」
「酷くない?」
「分かったなら離れてください……ただでさえ顔面ネックウォーマーって見てるだけで暑苦しいんです」
「酷過ぎない?僕結構ちゃんと面倒見てあげたよね?」
「それに関しては感謝していますが」
「もっと感謝しろよ」
感謝できる案件より面倒事の方が圧倒的に多かったんだよな……。心の中でぼやく。正直なところ、五条さんにお世話になった日々は思い出したくない。
「そういえば五条さんはなんで顔面ネックウォーマーなんですか?サングラスとか、他にも目を隠す方法あるじゃないですか」
「ん?ああ、昔はサングラスだったよ。今でもオフの時はサングラスのこともあるしね」
「そうなんですか」
「やっぱ動く時にサングラスだと落ちちゃったりしてね〜。これだとそういうことがないワケ」
「なるほど」
確かに普通の眼鏡だと動きにくいかも。そういえば七海さんも鼻で固定するタイプで落ちにくそうだった。(私がアレを着けたら秒で落ちる自信があるが)
そういうことなら仕方ない……いや、仕方ないのか?仕方ないことないのでは……と自問自答していると、五条さんは、ほら、とスマホの写真を見せてきた。受け取って見てみると、なるほど、サングラスをかけている。制服を着ているから、学生時代だろう。
「髪型も違うし、結構雰囲気違いますね」
「そう?見た目は今とあんま変わらない気がするけど」
「そうなんですか?雰囲気の違いはネックウォーマーのせいですかね」
「そろそろネックウォーマーっていうのやめろよお前。目隠しだよ、めーかーくーし!」
写真は記念写真か何かだろうか、他にも色んな人が映っていた。見覚えのない人はもしかして故人だったりするのだろうか……とも思いながら見ていると1人の男の子が目に留まった。
「この人イケメンですね」
「ん?どれ?」
「この……微妙に嫌がってる感じの人」
「えー、僕の方がナイスガイでしょ」
「ナイスガイって言葉に謝って下さい。あえて言うならグッドルッキングガイですね」
「ん?もしかしてナイスなのを見た目に限られた……?」
「もしかしなくてもそうです。しかしこの人の顔、本当にキレイですね……羨ましい」
「え、綺羅、それ誰かホントに分かんないの?」
「はい?」
どういうことだろう?首を傾げる。もしかして有名な人なのだろうか。でも、こんな人居たっけ……?目付きは少々悪いとはいえ、ここまで端正なお顔立ちなら絶対忘れないと思うんだけど……でもこのめっちゃシワ寄ってる眉間には見覚えがあるような……。
うんうん唸っていると部屋のドアが開いた。
「……五条さん。何をなさっているんですか」
「おおー、七海ぃ!ナイスタイミング!お前ちょっとグラサン外せよ」
「嫌です」
スパァン!という効果音が聞こえそうなくらい一瞬でぶった斬った七海さん。いいぞ、もっとやれ!みたいな気分になりながら、写真の男の子と比べてみる。背は高いし、髪も金色、どことなく角ばった印象を受ける顔立ち……なるほど。
「この人七海さんだったんですね」
「そうそう!雰囲気とかは結構そのままじゃない?」
「確かに。七海さん、絶対サングラス外した方が良いですよ、この顔を隠すのは勿体無いです!」
「この顔って……五条さん、一体何を見せたんですか」
「高専の時の七海の写真。綺羅めっちゃ褒めてたよ」
楽しそうにサムズアップする五条さん。対する七海さんは不審そうに眉を寄せた。もしかして気に障ってしまっただろうか。私は慌てて、面白がってた訳ではないとか、素直な感想だとか必死に言葉を並べたのだが、五条さんは余計なことを言うし、七海さんの眉間のシワは深くなるばかりだった。
散々引っ掻き回すだけ引っ掻き回して五条さんは談話室を出て行った。残された私は改めて七海さんに事情を話した。熱々だった私のお茶は、多分もう冷めている。
「……というわけで、もとはサングラス談議だったんです。すみません、私が変なこと言い始めたせいで」
「いえ。あの人の言動には慣れています」
「そういえば一つ後輩でしたっけ」
「ええ。高専の時からよく絡まれていました」
「それは最悪ですね……私なんて知り合ってからそこまで経ってないのにもう辟易としてます」
「そうだったんですね」
淡々と頷く七海さんの顔をよくよく見てみる。サングラスに注目すると人間味が薄いけど、隠された目元を意識すると、やっぱり綺麗だ。サングラスを外したらどんな感じなんだろう。でも、五条さんに外せって言われた時、断る速度は光を超えてたしなぁ。そんなことを考えていたら、七海さんはこちらをチラリと見て口を開いた。
「てっきりお二人は付き合ってらっしゃるのかと思っていました」
予想だにしなかった一言に思考が一瞬停止した。おつきあい、オツキアイ……お付き合い??
「……えっ?2人って、もしかして私と五条さんですか?」
「はい。仲が良いと聞いていたので」
「いやぁ、無いですね。ありえない」
「そうだったんですね。良かったです」
「え?」
何が?と聞けば良いのは分かっているのだが、上手く声が出ない。良かった、って、何が?五条さんと付き合ってなくて、七海さんにとって、「良かった」とは?何も言えず口をパクパクしている私を見て、七海さんは少し笑った。暗いサングラス越しの瞳に射抜かれる。見られてる、と思って更に頬が熱くなったのが分かった。頬だけなんかじゃない。全身が火照ったように熱い。
「……七海さん、実は意地悪だったりしますか?」
「そうかもしれません。五条さんほどでは無いと思いますが」
そう言って、何事も無かったかのようにコーヒーサーバーに向かう七海さんの背中を見ながら、これはちょっとヤバいかもしれないと手で顔を覆っていたのは、絶対に秘密なのである。
そして、次の日、任務に向かう車に乗り込んだ私が、先に乗っていた七海さんのノーサングラス姿を見て動揺し、車の天井に頭をぶつけてしまったのは、また別の話。
(それ逆に緊張するんですけど……!?)
(▪ とっつきにくいと思って距離を取っていたがサングラス外した写真を五条に見せられて「ええ⁉︎誰ですかこのイケメン!!」「えー、僕の方がナイスガイでしょ」「ナイスガイって言葉に謝って下さい。あえて言うならグッドルッキングガイですね」「ん?もしかしてナイスなのを見た目に限られた……?」「もしかしなくてもそうです。しかしこの金髪碧眼イケメンさんは一体全体誰なんですか?」「え、綺羅、最近いつも一緒にいるじゃん」「へ?」「……五条さん、何をなさっているんですか」「おおー!七海ぃ!ナイスタイミング!」的なお話)
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