「イデア先輩の将来の夢は何ですか？」
彼女が突然僕に問いかけた。
「そんなのS.T.Y.Xに……」
「それはイデア先輩がしたい事じゃなくて、周囲の人がイデア先輩にして欲しい事でしょう？」
「……」
「イデア先輩、将来何がしたい？」
　僕が将来したいこと――
「……オルトと一緒に自由に外の世界へ冒険したい」
「それはとても素敵なことね」
　僕の子供みたいな夢を馬鹿にせず、優しく微笑んだ彼女を見てなんだか目頭が熱くなったような気がした。
「君も将来の夢ってあるの？」
顔を見られないように素っ気なく監督生に尋ねた。
「あたしに将来ってあるのかしらね？」
「どういうこと？」
「問題が山積み過ぎて今のことが精一杯で将来のことが本当に分からないの……。元の世界に帰れるのか、もしも帰れなかったらここを卒業したらどこへ行けばいいのか……」
　彼女は異世界から来たという。どうやって来たのかもどうやって帰るのかも分からない。
　確かにそんな家族も居場所もない彼女には将来のことを考える余裕も無いだろう。
「じゃあ、卒業したらうちに来る？」
　言葉に出した後にハッとした。
　彼女を見ると驚いた表情で固まっている。
「違う！　あ、いや違わないけど！　でも、あんなに大変な目にあった場所なんて嫌だよね！　お忘れくだされ！！」
　僕が早口でそう言うと、彼女は声を出して笑った。
「あはは！　卒業後の進路を心配してたらすぐに決まっちゃった！　イデア先輩、あたし機械弱いからよろしくね！」

　将来、自分の息子から「遅くなったけど新婚旅行＆家族旅行にでも行ってこい！」と送り出され、イデアは短い期間ではあるが嘆きの島の外へ旅に出ることになる。
　その隣にはイデアの愛しい妻と弟がいたそうな……。

「二人ともどこへ行きたい？」
「僕、自然いっぱいな場所で冒険したいな！」
「……野宿は嫌だから自然の多い場所のホテルの予約取りますわ」