NRC在学中
お昼休み、食堂で監督生が真剣な表情でエースとデュースに言った。
「最近やたらウツボ先輩が絡んでくる……」
「ウツボ先輩ってどっちの?」
ウツボの人魚の先輩は確かにいるが双子のため、どちらを言っているのかエースは監督生に尋ねた。
「気紛れな見るからにやべぇ方」
「あーはいはい、フロイド先輩の方ね」
「監督生、リーチ先輩に何かしたのか?」
「何か……」
監督生は過去の出来事を思い返した。
* * *
「オレがどの授業受けたいか当ててみて、ジェイドなら絶対当てるよ」
選択式で学年が混ざる授業でフロイドが監督生に問いかけた。
「あたしはリーチ先輩じゃないし、ウツボ先輩の受けたい授業に興味はないから、さよなら」
しかし、監督生は手をヒラヒラと振ってフロイドの横をサッと通り過ぎようとした。
「ヤダー、オレは小エビちゃんと一緒の授業がいい!」
「それならそっちがあたしに合わせなさい!」
* * *
「……ってことがあったけど」
監督生がそう言うと、エースもデュースも恐ろしいものを見るように監督生を見た。
「お前、あのフロイド先輩に何言ってんの?!」
「監督生、よく生きてたな……」
「そう? 結局同じ授業受けてニコニコしてたけど……」
「すごかったんだゾ……しがみつくフロイドを子分がズルズル引きずりながら歩いてたんだゾ」
ケロッとした表情をした監督生の横でグリムがげっそりした表情で補足の説明をした。
「あと、足のサイズの話になって……」
* * *
「は? 小エビちゃん、足のサイズ23cm?」
「ええ、そうだけど……それが何か?」
監督生がバイトのためにオクタヴィネル寮の制服のサイズを書いた紙を見て、フロイドが驚いた。
「え? 小エビちゃんこんなちっせぇ足で立ってんの? 歩いてんの? ヤバくね?」
「自分で考えて、立って歩いて、前へ進んでますけど? 立派な足がついてるから」
監督生が自分の足をフロイドに見せるように出すと、フロイドは怯えた。
「足首ほっそ! 小エビちゃん、足が折れちゃう!」
それ以降、フロイドは監督生を抱っこして運ぼうとするようになった。
そして、監督生は「そんな簡単に折れてたまるか!」と言ってフロイドに肘鉄を喰らわせるようになった。
* * *
「……ということもあったわね」
「監督生、キュッと絞めるタイミングを狙われてんじゃね?」
「そうなのかしら?」
「あのリーチ先輩に攻撃を喰らわせて生きてる奴初めて見たな……」
フロイドの機嫌が良いときならまだしも機嫌が悪いときは絶対に死ぬなとエースとデュースは想像してゾッとした。
「じゃあ、最近あたしに向かって口をパカッて開けてるのは……」
「お前のことを噛み殺してやる的な?」
「ウツボの歯ってすごいギザギザしてるもんな」
「この前ウツボ先輩があたしに向かって口をパカッて開いたからお腹空いてるのかと思って偶然持ってたキャンディーを『えいっ!』って捻じ込んじゃったわね……」
「だ・か・ら! お前は何やってんだよ!」
「不機嫌にならなかったのか?」
「不満そうな顔でガリガリとキャンディーを噛んでたけど……」
監督生がそこまで言うと、近くからクスクスと笑う声が聞こえた。
「すみません、面白……楽しそうな話が聞こえたので、つい……」
それは話題に上がってたウツボの片割れ……見るからにやばくはないけど結局やべぇ方のジェイドが現れた。
「監督生さん、ウツボの習性についてご存じですか?」
「ウツボの捌き方と料理の仕方ならご存じだけど」
むしろなんでそんなことを知ってるんだとエースとデュースは思ったけど黙っていた。
「……それでは監督生さん、口を開けてもらっていいですか?」
「え? 何の罠?」
「ふふ、罠ではありません。きっとすぐに面白いものが見えますよ」
監督生はよく分からないけど、ジェイドに向かって口を開こうとした……その瞬間――
「ダメーーーーー!!」
フロイドがすごいスピードで現れて監督生の口を手で塞いだ。
「小エビちゃん! ジェイドのことが好きなの?!」
「もごもご」
監督生は質問に答えたいが口が塞がれていて言葉にならない。
「あ、ごめん小エビちゃん」
フロイドがパッと手を離して監督生は質問に答える。
「好きか嫌いかで言えば、どうでもいい」
「好きか嫌いかで言ってねー」
「第三の選択肢が突然現れたな」
フロイドはエースとデュースのツッコミをスルーして、ホッと安堵した。
「ウツボ先輩、口を開くことに何か意味があるのね?」
監督生がフロイドに尋ねた。
フロイドは視線を何度かさ迷わせた後、決意したように監督生の手を握って言う。
「小エビちゃん! オレの番になって!」
「は?」
「え!」
「な!」
「なんだってーーーーー!!」
食堂中に大きな声が響き渡った。
この後、男子生徒の間で『フロイドは監督生と恋人になれるのか?』という賭けが始まった。
多くの生徒が『フロイドの気紛れに耐えられなくてフラれる』『人間と人魚の恋は難しい』『リア充は許さない!』などの理由でフラれる方に賭ける方が多かった……が、結局フロイドと監督生は付き合い始めた。
その賭けの勝者となった幼馴染のタコと片割れのウツボは賞金が手に入ったらしい。
「このお金どうします?」
「僕の夢を叶えるには圧倒的に足りませんね。まぁ、所詮は学生の賭け事ですし、あの二人の結婚式の祝い品のときに使えばいいんじゃないですか」
「それはいいですね」
「最近やたらウツボ先輩が絡んでくる……」
「ウツボ先輩ってどっちの?」
ウツボの人魚の先輩は確かにいるが双子のため、どちらを言っているのかエースは監督生に尋ねた。
「気紛れな見るからにやべぇ方」
「あーはいはい、フロイド先輩の方ね」
「監督生、リーチ先輩に何かしたのか?」
「何か……」
監督生は過去の出来事を思い返した。
* * *
「オレがどの授業受けたいか当ててみて、ジェイドなら絶対当てるよ」
選択式で学年が混ざる授業でフロイドが監督生に問いかけた。
「あたしはリーチ先輩じゃないし、ウツボ先輩の受けたい授業に興味はないから、さよなら」
しかし、監督生は手をヒラヒラと振ってフロイドの横をサッと通り過ぎようとした。
「ヤダー、オレは小エビちゃんと一緒の授業がいい!」
「それならそっちがあたしに合わせなさい!」
* * *
「……ってことがあったけど」
監督生がそう言うと、エースもデュースも恐ろしいものを見るように監督生を見た。
「お前、あのフロイド先輩に何言ってんの?!」
「監督生、よく生きてたな……」
「そう? 結局同じ授業受けてニコニコしてたけど……」
「すごかったんだゾ……しがみつくフロイドを子分がズルズル引きずりながら歩いてたんだゾ」
ケロッとした表情をした監督生の横でグリムがげっそりした表情で補足の説明をした。
「あと、足のサイズの話になって……」
* * *
「は? 小エビちゃん、足のサイズ23cm?」
「ええ、そうだけど……それが何か?」
監督生がバイトのためにオクタヴィネル寮の制服のサイズを書いた紙を見て、フロイドが驚いた。
「え? 小エビちゃんこんなちっせぇ足で立ってんの? 歩いてんの? ヤバくね?」
「自分で考えて、立って歩いて、前へ進んでますけど? 立派な足がついてるから」
監督生が自分の足をフロイドに見せるように出すと、フロイドは怯えた。
「足首ほっそ! 小エビちゃん、足が折れちゃう!」
それ以降、フロイドは監督生を抱っこして運ぼうとするようになった。
そして、監督生は「そんな簡単に折れてたまるか!」と言ってフロイドに肘鉄を喰らわせるようになった。
* * *
「……ということもあったわね」
「監督生、キュッと絞めるタイミングを狙われてんじゃね?」
「そうなのかしら?」
「あのリーチ先輩に攻撃を喰らわせて生きてる奴初めて見たな……」
フロイドの機嫌が良いときならまだしも機嫌が悪いときは絶対に死ぬなとエースとデュースは想像してゾッとした。
「じゃあ、最近あたしに向かって口をパカッて開けてるのは……」
「お前のことを噛み殺してやる的な?」
「ウツボの歯ってすごいギザギザしてるもんな」
「この前ウツボ先輩があたしに向かって口をパカッて開いたからお腹空いてるのかと思って偶然持ってたキャンディーを『えいっ!』って捻じ込んじゃったわね……」
「だ・か・ら! お前は何やってんだよ!」
「不機嫌にならなかったのか?」
「不満そうな顔でガリガリとキャンディーを噛んでたけど……」
監督生がそこまで言うと、近くからクスクスと笑う声が聞こえた。
「すみません、面白……楽しそうな話が聞こえたので、つい……」
それは話題に上がってたウツボの片割れ……見るからにやばくはないけど結局やべぇ方のジェイドが現れた。
「監督生さん、ウツボの習性についてご存じですか?」
「ウツボの捌き方と料理の仕方ならご存じだけど」
むしろなんでそんなことを知ってるんだとエースとデュースは思ったけど黙っていた。
「……それでは監督生さん、口を開けてもらっていいですか?」
「え? 何の罠?」
「ふふ、罠ではありません。きっとすぐに面白いものが見えますよ」
監督生はよく分からないけど、ジェイドに向かって口を開こうとした……その瞬間――
「ダメーーーーー!!」
フロイドがすごいスピードで現れて監督生の口を手で塞いだ。
「小エビちゃん! ジェイドのことが好きなの?!」
「もごもご」
監督生は質問に答えたいが口が塞がれていて言葉にならない。
「あ、ごめん小エビちゃん」
フロイドがパッと手を離して監督生は質問に答える。
「好きか嫌いかで言えば、どうでもいい」
「好きか嫌いかで言ってねー」
「第三の選択肢が突然現れたな」
フロイドはエースとデュースのツッコミをスルーして、ホッと安堵した。
「ウツボ先輩、口を開くことに何か意味があるのね?」
監督生がフロイドに尋ねた。
フロイドは視線を何度かさ迷わせた後、決意したように監督生の手を握って言う。
「小エビちゃん! オレの番になって!」
「は?」
「え!」
「な!」
「なんだってーーーーー!!」
食堂中に大きな声が響き渡った。
この後、男子生徒の間で『フロイドは監督生と恋人になれるのか?』という賭けが始まった。
多くの生徒が『フロイドの気紛れに耐えられなくてフラれる』『人間と人魚の恋は難しい』『リア充は許さない!』などの理由でフラれる方に賭ける方が多かった……が、結局フロイドと監督生は付き合い始めた。
その賭けの勝者となった幼馴染のタコと片割れのウツボは賞金が手に入ったらしい。
「このお金どうします?」
「僕の夢を叶えるには圧倒的に足りませんね。まぁ、所詮は学生の賭け事ですし、あの二人の結婚式の祝い品のときに使えばいいんじゃないですか」
「それはいいですね」
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