NRC在学中
ジェイドはオンボロ寮の監督生が気になっていた。
だからお近づきになりたいと思い、様々なアプローチを行ってきたが、ほぼ全て惨敗だった。
【監督生が勉強で悩んでいた場合】
「問題の解き方を教えましょうか?」
「クルーウェル先生か分かる誰かに尋ねるので結構でーす!」
【監督生が面倒な男に絡まれていた場合】
「お助けいたしましょうか?」
「自分で対処できるんで大丈夫でーす!」
ドカッ!
「ぐふっ!」
ドスッ!
「痛ぇ!」
監督生はナイトレイブンカレッジの生徒にしては素直で分からないことは人に尋ねることが出来たし、何故か喧嘩も強かった。
今までジェイドが行ったアプローチで成功したのは山を愛する会の活動で手に入れた大量のきのこを監督生にあげたことである。(ちなみに本当に対価がないのか何十回も確認された)
監督生は「食費が浮く!」と喜んでいたから、やはり世界を救うのは愛ときのこなのだとジェイドが思い始めた頃にそれは突然起きた。
「『お互いに一番好きなところを言わないと出られない部屋』?」
「噂では聞いたことありましたけど本当にあるとは思いませんでした」
監督生はその噂を知らないらしく首を傾げた。
「そんな噂あるの?」
「ええ。部屋の中にミッションが書いてあり、そのミッションをクリアしないといつまで経っても出られないそうです。ちなみに壁やドアを魔法で攻撃しても無効化されますね」
「うわぁ……じゃあ、このミッションやらなきゃいけないの……」
「そんなに難しいことですか? では、僕からいきましょう。あなたが僕の考えを軽々飛び越えていくところが好きです」
ピンポーン!
「あ、なんか正解音っぽいのが聞こえたわ……というか、そんなところが好きなの?」
「分かりきったことなんてつまらないでしょう?」
「……あたしはあなたを楽しませるつもりこれっぽっちもないんだけど」
「わざわざ僕を楽しませようとしてないのに面白いからいいんですよ。ほら、次はあなたの番ですよ」
「えっと……」
監督生は腕を組んでうんうんと唸った。
「……きのこをただでくれるところ?」
ブッブー!
(おや?)
ジェイドはてっきり監督生の言ったことで正解なのかと思っていたが、不正解の音が鳴った。
(監督生さんが僕のことで一番好きだと思うところ……)
ジェイドには正解が分からないからドキドキしながら監督生の答えを待つ。
そして監督生が閃いたようにハッと顔を上げた。
「分かった! あたしが一番好きだと思うのは――」
「え?」
監督生の答えを聞いてジェイドの思考回路が止まる中、ピンポーンという正解音が遠くで聞こえたような気がした。
ジェイドがモストロ・ラウンジのVIPルームに行くとアズールが書類を見ていて、フロイドがソファで寝転んでいた。
「あー、ジェイド遅ーい」
「一体どこに行っていたんです?」
「……監督生さんと出られない部屋の中にいました」
ジェイドの言葉でピタッと二人が動きを止めた。
「えー何々? オレのいないところで面白いことになってんじゃん」
「……それにしては落ち込んでますね、ジェイド」
ジェイドがオンボロ寮の監督生を気に入っていることを知っているアズールとフロイドは不思議に思った。今のジェイドは効果音をつけるとしたら『ズーン……』という音がつきそうなほど暗いオーラを纏っている。
「出られない部屋のミッションが『お互いに一番好きなところを言わないと出られない部屋』だったんですが、監督生さんが僕の一番好きなところが……」
ゴクリとアズールとフロイドはジェイドの言葉の続きを待った。
「飛行術の授業でしている飛ぶのが嫌そうな顔や高い所から落下したときの情けなさそうな顔だと言ったんです……」
「「ブッ!」」
アズールとフロイドは思わず吹き出し、アズールは口元を抑えマナーモードのように小刻みに震え、フロイドはバシバシとソファを手で叩きながら爆笑した。
「アハハ! 小エビちゃん良い趣味してる~!」
「笑い事じゃないですよ……僕が何でも出来るから、むしろ情けない姿が可愛くて好きだと言われて僕はどうすればいいんですか? これも全て僕が完璧すぎるせいで!」
「自分で言いますか、それ……。まぁ、それなら飛行術で監督生さんにアプローチすればいいんじゃないですか」
「……そうですね、アズールよりはマシですからね」
「よし、ジェイド表に出なさい。海の底に沈めてやります」
こうしてオクタヴィネル寮の寮長 VS. 副寮長で戦いが始まろうとしていた。
だからお近づきになりたいと思い、様々なアプローチを行ってきたが、ほぼ全て惨敗だった。
【監督生が勉強で悩んでいた場合】
「問題の解き方を教えましょうか?」
「クルーウェル先生か分かる誰かに尋ねるので結構でーす!」
【監督生が面倒な男に絡まれていた場合】
「お助けいたしましょうか?」
「自分で対処できるんで大丈夫でーす!」
ドカッ!
「ぐふっ!」
ドスッ!
「痛ぇ!」
監督生はナイトレイブンカレッジの生徒にしては素直で分からないことは人に尋ねることが出来たし、何故か喧嘩も強かった。
今までジェイドが行ったアプローチで成功したのは山を愛する会の活動で手に入れた大量のきのこを監督生にあげたことである。(ちなみに本当に対価がないのか何十回も確認された)
監督生は「食費が浮く!」と喜んでいたから、やはり世界を救うのは愛ときのこなのだとジェイドが思い始めた頃にそれは突然起きた。
「『お互いに一番好きなところを言わないと出られない部屋』?」
「噂では聞いたことありましたけど本当にあるとは思いませんでした」
監督生はその噂を知らないらしく首を傾げた。
「そんな噂あるの?」
「ええ。部屋の中にミッションが書いてあり、そのミッションをクリアしないといつまで経っても出られないそうです。ちなみに壁やドアを魔法で攻撃しても無効化されますね」
「うわぁ……じゃあ、このミッションやらなきゃいけないの……」
「そんなに難しいことですか? では、僕からいきましょう。あなたが僕の考えを軽々飛び越えていくところが好きです」
ピンポーン!
「あ、なんか正解音っぽいのが聞こえたわ……というか、そんなところが好きなの?」
「分かりきったことなんてつまらないでしょう?」
「……あたしはあなたを楽しませるつもりこれっぽっちもないんだけど」
「わざわざ僕を楽しませようとしてないのに面白いからいいんですよ。ほら、次はあなたの番ですよ」
「えっと……」
監督生は腕を組んでうんうんと唸った。
「……きのこをただでくれるところ?」
ブッブー!
(おや?)
ジェイドはてっきり監督生の言ったことで正解なのかと思っていたが、不正解の音が鳴った。
(監督生さんが僕のことで一番好きだと思うところ……)
ジェイドには正解が分からないからドキドキしながら監督生の答えを待つ。
そして監督生が閃いたようにハッと顔を上げた。
「分かった! あたしが一番好きだと思うのは――」
「え?」
監督生の答えを聞いてジェイドの思考回路が止まる中、ピンポーンという正解音が遠くで聞こえたような気がした。
ジェイドがモストロ・ラウンジのVIPルームに行くとアズールが書類を見ていて、フロイドがソファで寝転んでいた。
「あー、ジェイド遅ーい」
「一体どこに行っていたんです?」
「……監督生さんと出られない部屋の中にいました」
ジェイドの言葉でピタッと二人が動きを止めた。
「えー何々? オレのいないところで面白いことになってんじゃん」
「……それにしては落ち込んでますね、ジェイド」
ジェイドがオンボロ寮の監督生を気に入っていることを知っているアズールとフロイドは不思議に思った。今のジェイドは効果音をつけるとしたら『ズーン……』という音がつきそうなほど暗いオーラを纏っている。
「出られない部屋のミッションが『お互いに一番好きなところを言わないと出られない部屋』だったんですが、監督生さんが僕の一番好きなところが……」
ゴクリとアズールとフロイドはジェイドの言葉の続きを待った。
「飛行術の授業でしている飛ぶのが嫌そうな顔や高い所から落下したときの情けなさそうな顔だと言ったんです……」
「「ブッ!」」
アズールとフロイドは思わず吹き出し、アズールは口元を抑えマナーモードのように小刻みに震え、フロイドはバシバシとソファを手で叩きながら爆笑した。
「アハハ! 小エビちゃん良い趣味してる~!」
「笑い事じゃないですよ……僕が何でも出来るから、むしろ情けない姿が可愛くて好きだと言われて僕はどうすればいいんですか? これも全て僕が完璧すぎるせいで!」
「自分で言いますか、それ……。まぁ、それなら飛行術で監督生さんにアプローチすればいいんじゃないですか」
「……そうですね、アズールよりはマシですからね」
「よし、ジェイド表に出なさい。海の底に沈めてやります」
こうしてオクタヴィネル寮の寮長 VS. 副寮長で戦いが始まろうとしていた。
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