NRC在学中
あの紅蓮の花の騒動が終わり、夜に若き魔法士達の交流するための会が始まった。
「でも、魔法の使えない魔法士じゃないあたしには交流する意味って無いのよね……」
グリム専用アテンド役の監督生は人気のない壁の方で料理をモグモグと食べていた。グリムも監督生の隣で皿いっぱいに盛られた料理をガツガツ食べていた。
(食べてる間は問題を起こさないからグリム用に何か持ってくるか……)
花より団子なグリムは食べている間は目の前のご飯しか見えていないので、平和な時間を確保するため監督生は追加の料理を持ってこようとして、持っていたお皿とフォークを机の上に置いた。
「失礼。そこの麗しいレディ」
監督生の傍に来た男性が監督生の方に向かって声をかけた。
監督生が右を向くとガツガツ食べているグリムがいる。
監督生が左を向くと誰もいない。
はて?と監督生が首を傾げると、男性は微笑んだ。
「ははっ、あなたのことですよ」
「……あたし?」
監督生が自分のことを指差すと、男性は首を縦に振った。
(……なんてこと!?)
悲しいかな、監督生はナイトレイブンカレッジでほとんど女性扱いをされたことがなかったのである……男だと思われているから仕方ないといえば仕方ないのだけれども。
「一緒に踊っていただけませんか?」
男性から絵に描いたように綺麗で優雅な仕草で手を差し出されたが、監督生が応える前に動いた者がいた。
「すまないね」
リドルだ。仮面を着けていても溢れ出る威厳と目力がある。
「彼女はボクと踊る予定なんだ」
リドルはそう言うが、監督生に踊ろうと約束した事実はない。
しかしせっかくの助け舟に監督生は乗ることにした。
「はい、そうなんです! だから申し訳ありませんが……」
「ずっと壁の花になっていたので気になっていたんです。でも、パートナーがすでにいるのなら良かった」
そう言って去った男性を監督生は『ナイトレイブンカレッジにいると気付かないけど、気遣いの出来る男の人って本当にいるんだな……』と思いながら見送った。
「リドルさん、ありがとうございます」
「大したことはしていないよ」
「でも、助かったので……。ナイトレイブンカレッジにいると女性扱いされないので、驚いちゃいました」
「……」
話が途切れると、ゆったりとした音楽が流れ始める。
「……ワルツだね。監督生、手を」
リドルが監督生に手を差し出した。
「え?」
「踊ろう」
「……ガチですか?」
「ダンスのことなら心配いらないよ。キミのパートナーはこのボクなんだからね」
「リドルさんを信じてない訳じゃないんです。あたし自身のダンス技術が不安すぎるんです!」
監督生がそう言っても、リドルは手を引かない。
「うぅ……足を踏んでも怒らないでくださいね……」
「怒らないよ。それにボクがリードするんだから」
監督生はダンスを踊るために広い場所へリドルに手を引かれていく。
「ほら」
リドルの左の手のひらに監督生は右の手のひらをくっつけるようにして組んで、リドルは監督生の左肩の方に、監督生はリドルの右腕に手を添える。
「以前ステップを教えたのは覚えているかい?」
「覚えてますけど、実戦経験が少なすぎて超怖いです……」
「前に教えたときはきちんと出来ていたから、忘れてなければ大丈夫だよ。それにボクもフォローする。じゃあ、いくよ」
「お願いします!」
監督生は気合を入れて返事をした。
「ほう……」
「まあ、素敵……」
周囲でダンスを見ていた人はうっとりと見ていたが、監督生はいっぱいいっぱいだった。
(盆踊りって楽だったな……誰かの足を踏まなくて済むもの……)
ターンとかチェンジとか訳わからない……と監督生が現実逃避を始めそうになったとき、リドルが話しかける。
「監督生」
「……はい」
「今は仮面を着けているからキミのことを男だと思うのはうちの学校以外誰もいないし、うちの学校はダンスに興味がある人はあまりいない」
チラッと周囲を見ると、料理に夢中な人や交流に熱心な人ばかりでダンスを踊っている人やダンス会場を見ているナイトレイブンカレッジの生徒はいなかった。
「そうですね」
「だから今ボクがキミを女性扱いしても何も問題はない」
「そうです、ね?」
監督生は『ん?』と首を捻った。
「いつもと違う恰好で愛らしいと思うよ」
「愛らしい!?」
「普段まとめてる髪を下ろしているのも可愛い」
「か、かわっ!?」
逃げ出したくてもダンスを踊っているため逃げられない監督生は普段言われないことをリドルからオンパレードで言われて恥ずか死ぬかと思った。
演奏が終わり、リドルの褒め殺しが終わったとき、監督生の頬は赤薔薇のように真っ赤に染まっていたらしい。
「でも、魔法の使えない魔法士じゃないあたしには交流する意味って無いのよね……」
グリム専用アテンド役の監督生は人気のない壁の方で料理をモグモグと食べていた。グリムも監督生の隣で皿いっぱいに盛られた料理をガツガツ食べていた。
(食べてる間は問題を起こさないからグリム用に何か持ってくるか……)
花より団子なグリムは食べている間は目の前のご飯しか見えていないので、平和な時間を確保するため監督生は追加の料理を持ってこようとして、持っていたお皿とフォークを机の上に置いた。
「失礼。そこの麗しいレディ」
監督生の傍に来た男性が監督生の方に向かって声をかけた。
監督生が右を向くとガツガツ食べているグリムがいる。
監督生が左を向くと誰もいない。
はて?と監督生が首を傾げると、男性は微笑んだ。
「ははっ、あなたのことですよ」
「……あたし?」
監督生が自分のことを指差すと、男性は首を縦に振った。
(……なんてこと!?)
悲しいかな、監督生はナイトレイブンカレッジでほとんど女性扱いをされたことがなかったのである……男だと思われているから仕方ないといえば仕方ないのだけれども。
「一緒に踊っていただけませんか?」
男性から絵に描いたように綺麗で優雅な仕草で手を差し出されたが、監督生が応える前に動いた者がいた。
「すまないね」
リドルだ。仮面を着けていても溢れ出る威厳と目力がある。
「彼女はボクと踊る予定なんだ」
リドルはそう言うが、監督生に踊ろうと約束した事実はない。
しかしせっかくの助け舟に監督生は乗ることにした。
「はい、そうなんです! だから申し訳ありませんが……」
「ずっと壁の花になっていたので気になっていたんです。でも、パートナーがすでにいるのなら良かった」
そう言って去った男性を監督生は『ナイトレイブンカレッジにいると気付かないけど、気遣いの出来る男の人って本当にいるんだな……』と思いながら見送った。
「リドルさん、ありがとうございます」
「大したことはしていないよ」
「でも、助かったので……。ナイトレイブンカレッジにいると女性扱いされないので、驚いちゃいました」
「……」
話が途切れると、ゆったりとした音楽が流れ始める。
「……ワルツだね。監督生、手を」
リドルが監督生に手を差し出した。
「え?」
「踊ろう」
「……ガチですか?」
「ダンスのことなら心配いらないよ。キミのパートナーはこのボクなんだからね」
「リドルさんを信じてない訳じゃないんです。あたし自身のダンス技術が不安すぎるんです!」
監督生がそう言っても、リドルは手を引かない。
「うぅ……足を踏んでも怒らないでくださいね……」
「怒らないよ。それにボクがリードするんだから」
監督生はダンスを踊るために広い場所へリドルに手を引かれていく。
「ほら」
リドルの左の手のひらに監督生は右の手のひらをくっつけるようにして組んで、リドルは監督生の左肩の方に、監督生はリドルの右腕に手を添える。
「以前ステップを教えたのは覚えているかい?」
「覚えてますけど、実戦経験が少なすぎて超怖いです……」
「前に教えたときはきちんと出来ていたから、忘れてなければ大丈夫だよ。それにボクもフォローする。じゃあ、いくよ」
「お願いします!」
監督生は気合を入れて返事をした。
「ほう……」
「まあ、素敵……」
周囲でダンスを見ていた人はうっとりと見ていたが、監督生はいっぱいいっぱいだった。
(盆踊りって楽だったな……誰かの足を踏まなくて済むもの……)
ターンとかチェンジとか訳わからない……と監督生が現実逃避を始めそうになったとき、リドルが話しかける。
「監督生」
「……はい」
「今は仮面を着けているからキミのことを男だと思うのはうちの学校以外誰もいないし、うちの学校はダンスに興味がある人はあまりいない」
チラッと周囲を見ると、料理に夢中な人や交流に熱心な人ばかりでダンスを踊っている人やダンス会場を見ているナイトレイブンカレッジの生徒はいなかった。
「そうですね」
「だから今ボクがキミを女性扱いしても何も問題はない」
「そうです、ね?」
監督生は『ん?』と首を捻った。
「いつもと違う恰好で愛らしいと思うよ」
「愛らしい!?」
「普段まとめてる髪を下ろしているのも可愛い」
「か、かわっ!?」
逃げ出したくてもダンスを踊っているため逃げられない監督生は普段言われないことをリドルからオンパレードで言われて恥ずか死ぬかと思った。
演奏が終わり、リドルの褒め殺しが終わったとき、監督生の頬は赤薔薇のように真っ赤に染まっていたらしい。