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若葉松短編集

「チョロ松にーーさーーーん!!」
 ドゥーン! と突進してくる十四松をとりあえず受け止めると、にぱっと笑顔を浮かべた。
「どうしたの十四松。……ていうか、お前実は眠いだろ、お昼寝したら?」
 少し目元が赤い十四松に言う。
「まだ寝たくないっす……」
「ワガママ言うなよ……目元赤いぞ」
 十四松は僕の服の裾をぎゅっと掴むと
「じゃあ寝れるようにしてほしー、です」
 なんておねだりしてきた。可愛い。
「はぁ……ホットミルクでも作ってやるから待ってろ」
「いいの!? チョロ松兄さんのミルク好きっす!」
 ため息をつきながら鍋に牛乳を入れて火にかける。十四松はワクワクしながら鍋と僕を交互に見つめているが、あっためて蜂蜜入れるだけなんだけどな?
「わはー、ふつふつしてるー」
 まあ、十四松がたのしそうだからいいか。
 沸騰したら蜂蜜を多めに入れる。とろりと黄金色の蜜が鍋に落ちる。
「こんなもんかなぁ」
 適当にスプーンで一口味見する。僕には甘すぎるくらいで十四松にはちょうどいい。マグカップに注いで十四松に渡す。
「ちゃんと冷ましてから飲めよ!」
「ありがとー、チョロ松兄さん」
 嬉しそうにホットミルクを飲む十四松を見ながらなんとなく達成感がした。
「ふあ……飲んだら眠くなってきた……」
「布団で寝ろよ?」
 空になったマグカップを洗いながら十四松を上の階に促すと、十四松はいやいやと首を横に振る。
「はぁ……ほら、上行くよ」
 カップを置いて十四松を上の部屋に引っ張ってあがる。もう、手がかかるなぁ。
 部屋についてとりあえず布団に寝かせると、十四松は僕の腕を引っ張ってきて一緒に布団に倒れ込んだ。
 ばふりと音をたてて沈み込む。
「ちょ、十四松」
「一緒にねよ? きもちーよ?」
 溶けるようなくらい幸せそうな笑顔で言われて、とりあえず十四松が寝るまで一緒にいるか、と思った。

「あれ、チョロ松と、十四松………」
 猫と遊んで帰ってきたら、布団で幸せそうに二人が眠っていた。十四松に布団を蹴られたのか、若干チョロ松が寒そうにしている。
「……おやすみ」
 掛け布団を二人にかけて、そっと襖をしめておれは二階を後にした。
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