第1話:始まりのプロローグ
「し、し、侵入者です~!!!」
魔王城の広い廊下をバタバタと走る、魚のヒレらしき耳とコウモリに似た大きい翼をはやした魔物。
彼は城の一室に辿り着くと大きな音を立てて扉を開いた。
ーバァンッッ!!!
「ケルベリウス様ぁぁぁ!!!!!」
「ノックくらいしろ無礼者」
そう応えたのは赤いマントをまとい、色の濃い長髪で右目を隠し…頭部に獣のような耳がはえている背の高い男。
「申し訳ございません!!そ、それとっ!侵入者です!!!」
「状況は?」
「ハロディノ王国の新しい勇者です!!『新勇者』が『侵入者』ですよ!」
「くだらんことはいい。状況は?」
「その勇者、子供の癖に腕がたつようで上級レベルの魔法まで使っています!しかも!城内の扉や壁を破壊し、正規のルートをすべて無視して進んっぐわぁ!!?」
廊下から部屋の中へと放たれた攻撃魔法によって魔物は床に転がったが、ケルベリウスと呼ばれた魔王は無傷である。
攻撃魔法を放ったのはもちろん侵入してきた子供。
色素の薄い紫の髪を後ろでまとめ、その背中には大剣…小柄なので不釣り合いに見えるが立派な少年勇者だ。
「悪いけど、下っぱには用が無いんだ。」
「こざかしいガキめ…って痛ぁっ!!?ケルベリウス様!踏まないで!」
「ケルベリウス………アンタが…魔王なの?」
「いかにも。我の異名は【魔犬の王】」
魔犬の王ケルベリウスは部下を踏みながら、隠れていない鋭い左目を向けた……次の瞬間少年勇者は剣を手に走り出した。
「ならアンタを倒す!!くっらえぇぇー!!!」
「…ふっ」
魔犬の王は少年勇者の大剣を左手で簡単に受けとめ、続けて素早い動きで右手を振りかざし……
「ひっっさしぶり!!会いたかったぞぉフェンリア!こんなに早く来るなんてさっすが俺の子だ!!」
満面の笑みで少年勇者フェンリアの頭を撫でまくった。
「あの~…ケルベリウス様の?」
「そうだよ俺の子!かっわいいだろ?10年ぶりの再会だぞ!」
「……コイツ、本当に…って!手をどけろ鬱陶しい!!」
「お?反抗期?成長してる証拠だな~。でも父さん、ちょっと寂しいよ…」
「父さんとか言うなぁ!!僕は覚えてないし!それにアンタには聞きたいことが…」
「ごっめんな~!これから魔王会議だからまた今度な、はい転送♪」
「うわっ!?」
ケルベリウスが軽く手を上げるとフェンリアの回りに空間の歪みが発生する…魔法による強制ワープが発動したのだ。
「こんのっ…アホイヌ魔王ぉぉぉぉぉ!!!!」
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