原作未来編ifルート
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レイと恋人になってから2週間ほど。
まだまだ恋人としてはぎこちない。それでも長年友人だったからこそ、距離やテンポはだいぶ揃えられてきた。
さらに、拠点全体の喧騒も、二重の記憶を抱えたことによる精神的な混乱もだいぶ落ち着いてきた。
だからこそ、そろそろちゃんと伝えに行かなくてはと、山本はツナの執務室に赴いている。
ここならツナだけでなく獄寺もいることだろう。そして部外者の出入りも少ない。
「ツナ、入るぜ」
「なにー?」
ノックの後に緩い返事が返ってくる。
こんな優しい声を返す男があれだけの大立ち回りをしたんだよなぁ、と不思議な気分になる。
ツナは休憩していたのか、デスクから立ち上がっていた。室内には、やはり獄寺もいて、彼はツナが片付けたであろう書類を確認している。そしてほかに人は見当たらない。
伝えるのなら今だ。
気恥ずかしさを押し込めて、山本は親友2人に重くならない程度の声色で伝える。
「少し前に瀬切と恋人になったの、お前らにはちゃんと伝えとこうと思ってさ」
さらっと告げると、ツナも獄寺も目を点にして動かなくなった。そりゃ急にこんなこと言われたら驚くよな、と山本は納得する。
が、ツナが発した言葉に、山本も凍り付くこととなった。
「え……?付き合ってなかったの?オレ、てっきり……高校の時から……」
3人の間に沈黙が落ちる。少ししてからツナが震えながら口を開く。
「え、違うの?オレの勘違い?マジで?」
ツナは軽くパニックに陥っているようだ、顔色も悪い。いや、こちらだって内心大パニックなわけだが。
目の前の親友が何を言っているのか、よく分からない。よく分からないが、とんでもないことを言っているし、とんでもない勘違いをしていることだけはなんとなく分かる。
混乱による凍結の中で真っ先に動いたのは獄寺だった。ズカズカと山本に近付いて胸倉を掴んできた。
「10代目が気を遣ってテメェと瀬切の休みが合うように調整してくださってたことに気付いてねぇのか!?2人揃って!?」
至近距離でガンつけて、変に裏返った声を飛ばしながら山本を揺さぶってくる。
いや、獄寺にガンを飛ばされるなんて慣れっこだし、何より今はそんなことどうだっていい。
「は!?んなことしてたのか!?」
「されてたんだよ!テメェらのために!!」
なんだその気遣い、と山本は口をパクパクと開閉させる。
気付けるわけがない。ただの友人と、理由なく予定を調整したり確認しあう訳もない。それぞれが自由に休日を満喫していただけだ。
唖然とする山本を見たツナは「うわー!めっちゃ恥ずかしいことしてたじゃんオレ!!」と叫び、頭を抱えて蹲ってしまった。
ツナが蹲った直後、部屋にノックの音が飛び込んだ。返事もないのに扉が開く。
入ってきたのは数枚の紙を持ったレイと、一冊の本を抱えたクロームだった。
「ツナ、入るよ。……何してるんだ?」
ツナの喉から「ひょお」と奇怪な音が漏れた。
話題の渦中たる人間のうちのもう片方が入ってきたことで、混沌と化していた男3人は完全に思考停止に陥る。
ツナは蹲ったまま、獄寺は山本の胸倉を掴んだまま、山本は獄寺に胸倉を掴まれたまま、硬直。
馬鹿みたいな光景を、レイとクロームが怪訝そうに眺める。
少ししてから2人は顔を見合わせた。レイは呆れたような溜息を吐いてから卓上に書類を置き、「これ、ヴァリアーから。明日までに見とけって」とツナに向かって言い放つ。クロームも「これ、返すね。ありがとう」と言って持っていた本を本棚にしまった。
そのままツッコミもなく、レイはクロームと共に部屋を出ていった。
「レイとクロームが恋人だと思ってる人も多いじゃん?」
ツナは椅子に座ってレイが持ってきた書類を眺めながら話し始める。
確かにその通りで、身長が伸びて170cm程度あるレイと、中学時代からそこまで伸びておらず160cmに満たないクローム。並ぶと、カップルとしてちょうどいい具合の身長差になる。
さらにはレイは自身を男に見せており、同性同士である物理的な距離の近さや気安さも加味すれば、2人が恋人に見えるのも無理はなかった。
2年ほど前に本人にその話をしたら「訂正するのも面倒だし、クロームの虫よけにもなるからこのままでいいよ。後ろに六道さんがいるっていうのに、命知らずもいるもんだよなぁ」とのことで、全く気にしていないどころか、あえて放置しているようだった。
「オレさ、それはあくまでもメリットを踏まえたカモフラージュで、『レイは本当は山本と付き合ってるんだよなぁ』って思ってたんだよ」
言葉は発していないが、ツナの横で腕を組んだままこちらをにらんでいる獄寺も、おそらく同じ勘違いをしていたのだろう。
そんな風にずっと生暖かく見守ってきた山本とレイが恋人でもなんでもなかった、と知っただけでこれだ。
勢い余って体だけヤケクソで重ねてましたなんて聞いたら、多分ツナは失神するし、獄寺はキレる。非常に理不尽な話だが。
黙っておこう。言わなくても、知らなくてもいいことはこの世界にたくさんある。
「そもそも、なんでオレとアイツが付き合ってるって思ったんだよ?」
ため息すら吐けずにそう訊けば、ツナと獄寺は顔を見合わせて「なん、でだっけ……?」「……さあ?」と首を傾げ始めた。
ツナはともかく、獄寺もとは。
「まさか、特に理由なく付き合ってると思ってたのか?」
「いやまあそうなんだけど、2人が両思いなのは普通にわかってたじゃん。ねえ?」
「はい」
「は?嘘だろ?……つーかオレでも瀬切でも、直接訊けばよかったじゃねーか」
山本の言葉に、ツナが「ぐっ」と言葉に詰まらせた。かと思えば、バンッと机に突っ伏して声を上げた。
「いつか教えてくれると思ってたんだよ!なのに山本からもレイからも全然何も言われなくて寂しくってさぁ!そしたら、そもそも付き合ってなかった!!」
「流石に付き合ったらお前らには言うって!つーか瀬切なんてお前んち住んでたんだから、隠せるわけねぇだろ!」
「ごもっともぉ……!」
「10代目、お顔をあげてください!コイツらならやりかねません!」
机から額の離れないツナの背中に手を当てながら、じっとりと獄寺が睨み付けてくる。
「やんねぇよ!」と反論すれば「どうだか」と返ってきた。
そんな獄寺の腕を軽く叩いてなだめながら、ツナが顔を上げてちょっと笑いながら言った。
「いや、まあ、でもよかったよ。ここまで本当に長かったね、おめでとう。ちなみに結婚はちゃんと報告してよ?数年後に入籍知りましたとかマジで嫌だからね?」
「だから黙ってねぇって!」
その晩、山本はレイに昼間の出来事を話した。
ツナと獄寺に交際の報告をしたこと自体は、彼女も「まあ、必要だな。ボクもクロームには今度伝えるよ」と納得していた。
がしかし、「あいつら、オレらがもう付き合ってると思ってたぜ」という山本の言葉には「…は?」と呆然とした。
「……なんで?」
「オレらが高校の時から両想いっぽく見えたからって」
「ほかには?」
「それだけ」
「それだけ!?嘘だろ!」
「マジ」
「一緒に住んでたのにツナに言わないわけないだろ!獄寺だってよく家に来てたのに隠す意味なんて……!」
レイは素っ頓狂な声で山本にくってかかるが、こちらに文句を言われても困る。
「オレもそう言ったんだけどなぁ…」
そう返せば、レイは「今度ツナのところに行く」と据わった目で呟いた。
有言実行。後日、レイはツナを詰めに行った。もちろんそこには山本と獄寺もいる。
「どうしてそんなふざけた勘違いをしてたんだ」
立ったまま腕を組んで呆れ顔のレイと、執務用の椅子に座りながらも従妹の圧に屈しそうなツナ。果たしてどちらが上司なのか、全くわからない。
「……照れて言ってくれてないだけだと思ってた」
ツナはレイ相手だからか、山本の時よりも妙に言い訳が子どもっぽい。
「照れてるだけで言わないわけないだろ!キミたちに隠し通せるわけもないし、隠す気もない!そんな不義理なことしない!」
「山本にも言われました!ごめんってば!」
ツナの謝罪に怒りを消しかけたレイは、急にハッと息を呑んだ。
どうしたのだろうか。ツナも不思議そうに恐る恐るレイの顔を見上げる。
しばらく硬直したレイは、その顔を強張らせて机に手をつき、ツナに詰め寄った。
「おばさんには……?変なこと言ってないよな?」
レイのおばさん、つまり自身の母の話題を出されたツナは、ギシリと体を硬直させる。嫌な予感がしてきた。
「……ツナ?」
従妹の圧に屈したのか、ツナは視線を泳がせながら弱々しく口を開く。
「……母さんには昔『レイちゃんて好きな子いるの?』って聞かれて『好きな子どころか付き合ってるよ』って伝えちゃってます」
はわ、とレイの喉から息が漏れたのが聞こえた。
山本まで巻き込まれた。とんでもない時限爆弾にめまいがする。
「ツナ!!」
「本当にごめん!!」
レイの悲鳴のような怒鳴り声と、ボスでありながら勢いよく頭を下げるツナ。
もうめちゃくちゃだった。
「本当にふざけるなよ!バカ!」
「謝ってんだからもういいだろ!」
「よくない!」
「なんだよ!レイだって高3のクリスマスに山本と会ってただろ!?あんなの誰だって付き合ってると思うって!」
「手合わせって言っただろ!?」
「表向きは手合わせて実際はデートだと思うだろ!」
「思うな!!」
ギャーギャーと喚き合う従兄妹を横目に、山本は遠い目をする。
高校2年の春先からだろうか。
沢田家に遊びに行ってツナの母親と顔を合わせるたび、彼女はレイの好きな食べ物や最近の家での過ごし方を教えてくれていた。
当時はただ自分の好きな子の知らない一面を聞いて、喜びと微かな切なさを噛みしめていただけに過ぎなかった。
が、あれはつまり、そういうお節介だったのか。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、山本は顔を右手で覆って大きくため息を吐く。
隣に立つ獄寺から「とりあえず改めてご挨拶へ行ってこい」と脇腹を肘で突かれた。
まだまだ恋人としてはぎこちない。それでも長年友人だったからこそ、距離やテンポはだいぶ揃えられてきた。
さらに、拠点全体の喧騒も、二重の記憶を抱えたことによる精神的な混乱もだいぶ落ち着いてきた。
だからこそ、そろそろちゃんと伝えに行かなくてはと、山本はツナの執務室に赴いている。
ここならツナだけでなく獄寺もいることだろう。そして部外者の出入りも少ない。
「ツナ、入るぜ」
「なにー?」
ノックの後に緩い返事が返ってくる。
こんな優しい声を返す男があれだけの大立ち回りをしたんだよなぁ、と不思議な気分になる。
ツナは休憩していたのか、デスクから立ち上がっていた。室内には、やはり獄寺もいて、彼はツナが片付けたであろう書類を確認している。そしてほかに人は見当たらない。
伝えるのなら今だ。
気恥ずかしさを押し込めて、山本は親友2人に重くならない程度の声色で伝える。
「少し前に瀬切と恋人になったの、お前らにはちゃんと伝えとこうと思ってさ」
さらっと告げると、ツナも獄寺も目を点にして動かなくなった。そりゃ急にこんなこと言われたら驚くよな、と山本は納得する。
が、ツナが発した言葉に、山本も凍り付くこととなった。
「え……?付き合ってなかったの?オレ、てっきり……高校の時から……」
3人の間に沈黙が落ちる。少ししてからツナが震えながら口を開く。
「え、違うの?オレの勘違い?マジで?」
ツナは軽くパニックに陥っているようだ、顔色も悪い。いや、こちらだって内心大パニックなわけだが。
目の前の親友が何を言っているのか、よく分からない。よく分からないが、とんでもないことを言っているし、とんでもない勘違いをしていることだけはなんとなく分かる。
混乱による凍結の中で真っ先に動いたのは獄寺だった。ズカズカと山本に近付いて胸倉を掴んできた。
「10代目が気を遣ってテメェと瀬切の休みが合うように調整してくださってたことに気付いてねぇのか!?2人揃って!?」
至近距離でガンつけて、変に裏返った声を飛ばしながら山本を揺さぶってくる。
いや、獄寺にガンを飛ばされるなんて慣れっこだし、何より今はそんなことどうだっていい。
「は!?んなことしてたのか!?」
「されてたんだよ!テメェらのために!!」
なんだその気遣い、と山本は口をパクパクと開閉させる。
気付けるわけがない。ただの友人と、理由なく予定を調整したり確認しあう訳もない。それぞれが自由に休日を満喫していただけだ。
唖然とする山本を見たツナは「うわー!めっちゃ恥ずかしいことしてたじゃんオレ!!」と叫び、頭を抱えて蹲ってしまった。
ツナが蹲った直後、部屋にノックの音が飛び込んだ。返事もないのに扉が開く。
入ってきたのは数枚の紙を持ったレイと、一冊の本を抱えたクロームだった。
「ツナ、入るよ。……何してるんだ?」
ツナの喉から「ひょお」と奇怪な音が漏れた。
話題の渦中たる人間のうちのもう片方が入ってきたことで、混沌と化していた男3人は完全に思考停止に陥る。
ツナは蹲ったまま、獄寺は山本の胸倉を掴んだまま、山本は獄寺に胸倉を掴まれたまま、硬直。
馬鹿みたいな光景を、レイとクロームが怪訝そうに眺める。
少ししてから2人は顔を見合わせた。レイは呆れたような溜息を吐いてから卓上に書類を置き、「これ、ヴァリアーから。明日までに見とけって」とツナに向かって言い放つ。クロームも「これ、返すね。ありがとう」と言って持っていた本を本棚にしまった。
そのままツッコミもなく、レイはクロームと共に部屋を出ていった。
「レイとクロームが恋人だと思ってる人も多いじゃん?」
ツナは椅子に座ってレイが持ってきた書類を眺めながら話し始める。
確かにその通りで、身長が伸びて170cm程度あるレイと、中学時代からそこまで伸びておらず160cmに満たないクローム。並ぶと、カップルとしてちょうどいい具合の身長差になる。
さらにはレイは自身を男に見せており、同性同士である物理的な距離の近さや気安さも加味すれば、2人が恋人に見えるのも無理はなかった。
2年ほど前に本人にその話をしたら「訂正するのも面倒だし、クロームの虫よけにもなるからこのままでいいよ。後ろに六道さんがいるっていうのに、命知らずもいるもんだよなぁ」とのことで、全く気にしていないどころか、あえて放置しているようだった。
「オレさ、それはあくまでもメリットを踏まえたカモフラージュで、『レイは本当は山本と付き合ってるんだよなぁ』って思ってたんだよ」
言葉は発していないが、ツナの横で腕を組んだままこちらをにらんでいる獄寺も、おそらく同じ勘違いをしていたのだろう。
そんな風にずっと生暖かく見守ってきた山本とレイが恋人でもなんでもなかった、と知っただけでこれだ。
勢い余って体だけヤケクソで重ねてましたなんて聞いたら、多分ツナは失神するし、獄寺はキレる。非常に理不尽な話だが。
黙っておこう。言わなくても、知らなくてもいいことはこの世界にたくさんある。
「そもそも、なんでオレとアイツが付き合ってるって思ったんだよ?」
ため息すら吐けずにそう訊けば、ツナと獄寺は顔を見合わせて「なん、でだっけ……?」「……さあ?」と首を傾げ始めた。
ツナはともかく、獄寺もとは。
「まさか、特に理由なく付き合ってると思ってたのか?」
「いやまあそうなんだけど、2人が両思いなのは普通にわかってたじゃん。ねえ?」
「はい」
「は?嘘だろ?……つーかオレでも瀬切でも、直接訊けばよかったじゃねーか」
山本の言葉に、ツナが「ぐっ」と言葉に詰まらせた。かと思えば、バンッと机に突っ伏して声を上げた。
「いつか教えてくれると思ってたんだよ!なのに山本からもレイからも全然何も言われなくて寂しくってさぁ!そしたら、そもそも付き合ってなかった!!」
「流石に付き合ったらお前らには言うって!つーか瀬切なんてお前んち住んでたんだから、隠せるわけねぇだろ!」
「ごもっともぉ……!」
「10代目、お顔をあげてください!コイツらならやりかねません!」
机から額の離れないツナの背中に手を当てながら、じっとりと獄寺が睨み付けてくる。
「やんねぇよ!」と反論すれば「どうだか」と返ってきた。
そんな獄寺の腕を軽く叩いてなだめながら、ツナが顔を上げてちょっと笑いながら言った。
「いや、まあ、でもよかったよ。ここまで本当に長かったね、おめでとう。ちなみに結婚はちゃんと報告してよ?数年後に入籍知りましたとかマジで嫌だからね?」
「だから黙ってねぇって!」
その晩、山本はレイに昼間の出来事を話した。
ツナと獄寺に交際の報告をしたこと自体は、彼女も「まあ、必要だな。ボクもクロームには今度伝えるよ」と納得していた。
がしかし、「あいつら、オレらがもう付き合ってると思ってたぜ」という山本の言葉には「…は?」と呆然とした。
「……なんで?」
「オレらが高校の時から両想いっぽく見えたからって」
「ほかには?」
「それだけ」
「それだけ!?嘘だろ!」
「マジ」
「一緒に住んでたのにツナに言わないわけないだろ!獄寺だってよく家に来てたのに隠す意味なんて……!」
レイは素っ頓狂な声で山本にくってかかるが、こちらに文句を言われても困る。
「オレもそう言ったんだけどなぁ…」
そう返せば、レイは「今度ツナのところに行く」と据わった目で呟いた。
有言実行。後日、レイはツナを詰めに行った。もちろんそこには山本と獄寺もいる。
「どうしてそんなふざけた勘違いをしてたんだ」
立ったまま腕を組んで呆れ顔のレイと、執務用の椅子に座りながらも従妹の圧に屈しそうなツナ。果たしてどちらが上司なのか、全くわからない。
「……照れて言ってくれてないだけだと思ってた」
ツナはレイ相手だからか、山本の時よりも妙に言い訳が子どもっぽい。
「照れてるだけで言わないわけないだろ!キミたちに隠し通せるわけもないし、隠す気もない!そんな不義理なことしない!」
「山本にも言われました!ごめんってば!」
ツナの謝罪に怒りを消しかけたレイは、急にハッと息を呑んだ。
どうしたのだろうか。ツナも不思議そうに恐る恐るレイの顔を見上げる。
しばらく硬直したレイは、その顔を強張らせて机に手をつき、ツナに詰め寄った。
「おばさんには……?変なこと言ってないよな?」
レイのおばさん、つまり自身の母の話題を出されたツナは、ギシリと体を硬直させる。嫌な予感がしてきた。
「……ツナ?」
従妹の圧に屈したのか、ツナは視線を泳がせながら弱々しく口を開く。
「……母さんには昔『レイちゃんて好きな子いるの?』って聞かれて『好きな子どころか付き合ってるよ』って伝えちゃってます」
はわ、とレイの喉から息が漏れたのが聞こえた。
山本まで巻き込まれた。とんでもない時限爆弾にめまいがする。
「ツナ!!」
「本当にごめん!!」
レイの悲鳴のような怒鳴り声と、ボスでありながら勢いよく頭を下げるツナ。
もうめちゃくちゃだった。
「本当にふざけるなよ!バカ!」
「謝ってんだからもういいだろ!」
「よくない!」
「なんだよ!レイだって高3のクリスマスに山本と会ってただろ!?あんなの誰だって付き合ってると思うって!」
「手合わせって言っただろ!?」
「表向きは手合わせて実際はデートだと思うだろ!」
「思うな!!」
ギャーギャーと喚き合う従兄妹を横目に、山本は遠い目をする。
高校2年の春先からだろうか。
沢田家に遊びに行ってツナの母親と顔を合わせるたび、彼女はレイの好きな食べ物や最近の家での過ごし方を教えてくれていた。
当時はただ自分の好きな子の知らない一面を聞いて、喜びと微かな切なさを噛みしめていただけに過ぎなかった。
が、あれはつまり、そういうお節介だったのか。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、山本は顔を右手で覆って大きくため息を吐く。
隣に立つ獄寺から「とりあえず改めてご挨拶へ行ってこい」と脇腹を肘で突かれた。
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