吐露(3月)
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日差しだけはだいぶ暖かくなってきた春先の空気の中。
山本は、震える手で受験票を握りしめるツナの横に立っていた。
ツナは受験番号である6桁の数字をぶつぶつと呟きながら、掲示板を必死に見ていく。すでに自身の番号を見つけた獄寺も、推薦入学なので付き添いに来ただけの山本も、その番号を一緒になって探す。
不意にその数字が山本の目に飛び込み、グッと体温が上がる。同時にツナが体を震わせた。
「……あ、あったー!!」
「10代目!やりましたね!!」
「やったな、ツナ!おんなじ高校だぜ!」
「うん、うん!本当にありがとう!よかったぁ……!」
勢いのまま親友の肩を抱き、3人で大喜びをする。
仮に学校が違ったからといって彼らとの距離を生ませる気はさらさらないが、一緒に過ごせるならそれに越したことはない。
視界の端で、炎真たちも笑顔を浮かべていた。薫が泣いているが、あれは間違いなくうれし泣きだ、よかった。
それから顔を動かして、レイを探す。
少し離れたところで、彼女はクロームと共に緊張した面持ちで掲示板を見ていた。先に肩の力が抜けたのはクロームだった。クロームはすぐにレイの顔を手元と確認し、もう一度掲示板をにらみ始める。
数秒後、レイの顔がぱあっと輝いた。それから隣にいるクロームと顔を見合わせ、心底嬉しそうに笑い合った。
彼女たちのところに、京子と花も寄ってきた。あの2人も無事に合格したようで、顔は晴れやかだ。
新生活も、きっと賑やかになることだろう。
ぱち、とレイと目が合った。春の陽をたくさん取り込んでキラキラと輝いているその目が、山本を見て誇らしげに細くなった。
「ほんっとーにありがとう!獄寺君のお陰だよ!」
「そんな……、10代目の努力と実力の結果ですって!」
「家庭教師に対する感謝はねぇのか?」
「いや、その、チャントアリマス」
本日何回目かもわからないツナと獄寺の応酬に、新たにリボーンが加わった。何回も飽きずに繰り返しているが、山本も見ていて楽しいし嬉しいしで止める気はない。
合格発表の後、学校に報告してから少しだけ足を延ばして、制服のままファミリーレストランに寄った。安堵を伴う強烈な脱力感が、ボックス席に充満している。
山本自身は推薦で先に進路が決まっていた身ではあったが、だからこそ、同じ地点に立てていないことでちょっとした寂しさや不安を抱えていた。同時に、一般入試を行う側からすれば、それが贅沢な感情であることも分かっていたので表に出さないようにもしていたが。
テーブルの向かいでは緊張から解放された炎真が机に突っ伏している。
その横の薫もやや呆けた顔でテーブルに置かれた大皿のフライドポテトに手を伸ばしていた。
「あ、スカルからメールだ」
「そういえばスカルって、まだそっちに顔出してるんだっけ?」
「うん、週一で来るよ。ね、薫」
「昨日もいたな」
「入り浸ってるじゃねぇか」
「レギュラーメンバーになってない……?」
ゆるい会話を聞きながら、山本は視線をスライドさせる。
すぐ近くの別のボックス席では、見知った女子たちがおしゃべりに興じている。誰が呼んだのかハルも加わっており、ずいぶんと楽しそうだ。
大皿のポテトとソフトドリンクだけが乗った男子のテーブルとは違い、女子のテーブルはパフェやケーキが乗っていてずいぶんと華やかに見える。
レイもチーズケーキをフォークで崩しながら、SHIT・P!にその頬を突かれている。
レイに遠慮なく触れることのできるSHIT・P!に、いいなぁ、としょうもないことを考えてしまった。
女子に囲まれているレイは、単体で見る時よりもさらに中性的に見える。身長も伸びたようだし、前はあった人への不慣れさも消え、空気も非常に落ち着いたものになった。
結果、相変わらずどころか、前にも増して性別を間違えられるようになっている。
それでも、ケーキを口に運ぶときのあどけなさや、花に話しかけられて返すその笑顔は、かわいい。
その笑顔を見ながら、バレンタインの前日に告げられた言葉を思い出す。
『山本と同じ高校に行けるように、あと少し頑張るよ』
本当に同じ高校に行けることになった、その喜びをそっと噛み締める。
同時に、気持ちを伝えたいという思いが、ふつふつと湧いてきた。
レイがまだ混乱しているようだから、急に距離を詰めたら驚きそうだから、受験の前に気持ちを揺さぶるのはよくないから……。
様々な理由を付けては抑え込んでいた言葉を、もう手渡してしまっても許されるだろうか。
高校に入学してしまえば、山本はこれまで以上に野球に打ち込むことになる。それは間違いない。
レイとの手合わせは続けていきたいが、本格手に部活が始まれば、これまでより時間が取れなくなるのは確実だ。
クラスが分かれる可能性もあるし、一緒に下校することもなかなか難しくなるだろう。
部活を引退してからの、この半年が特別だったのだ。
だから、できるなら高校入学までに決着をつけてしまいたい。
「オレ、もうちょっと食べたくなってきちゃった。みんなどうする?」
小さな焦燥が胸を焼き始めたが、ツナの呟きで意識を引き戻される。
山本も小腹が空いてきたのを自覚して、便乗すべくツナの開いたメニュー表を覗き込んだ。
山本は、震える手で受験票を握りしめるツナの横に立っていた。
ツナは受験番号である6桁の数字をぶつぶつと呟きながら、掲示板を必死に見ていく。すでに自身の番号を見つけた獄寺も、推薦入学なので付き添いに来ただけの山本も、その番号を一緒になって探す。
不意にその数字が山本の目に飛び込み、グッと体温が上がる。同時にツナが体を震わせた。
「……あ、あったー!!」
「10代目!やりましたね!!」
「やったな、ツナ!おんなじ高校だぜ!」
「うん、うん!本当にありがとう!よかったぁ……!」
勢いのまま親友の肩を抱き、3人で大喜びをする。
仮に学校が違ったからといって彼らとの距離を生ませる気はさらさらないが、一緒に過ごせるならそれに越したことはない。
視界の端で、炎真たちも笑顔を浮かべていた。薫が泣いているが、あれは間違いなくうれし泣きだ、よかった。
それから顔を動かして、レイを探す。
少し離れたところで、彼女はクロームと共に緊張した面持ちで掲示板を見ていた。先に肩の力が抜けたのはクロームだった。クロームはすぐにレイの顔を手元と確認し、もう一度掲示板をにらみ始める。
数秒後、レイの顔がぱあっと輝いた。それから隣にいるクロームと顔を見合わせ、心底嬉しそうに笑い合った。
彼女たちのところに、京子と花も寄ってきた。あの2人も無事に合格したようで、顔は晴れやかだ。
新生活も、きっと賑やかになることだろう。
ぱち、とレイと目が合った。春の陽をたくさん取り込んでキラキラと輝いているその目が、山本を見て誇らしげに細くなった。
「ほんっとーにありがとう!獄寺君のお陰だよ!」
「そんな……、10代目の努力と実力の結果ですって!」
「家庭教師に対する感謝はねぇのか?」
「いや、その、チャントアリマス」
本日何回目かもわからないツナと獄寺の応酬に、新たにリボーンが加わった。何回も飽きずに繰り返しているが、山本も見ていて楽しいし嬉しいしで止める気はない。
合格発表の後、学校に報告してから少しだけ足を延ばして、制服のままファミリーレストランに寄った。安堵を伴う強烈な脱力感が、ボックス席に充満している。
山本自身は推薦で先に進路が決まっていた身ではあったが、だからこそ、同じ地点に立てていないことでちょっとした寂しさや不安を抱えていた。同時に、一般入試を行う側からすれば、それが贅沢な感情であることも分かっていたので表に出さないようにもしていたが。
テーブルの向かいでは緊張から解放された炎真が机に突っ伏している。
その横の薫もやや呆けた顔でテーブルに置かれた大皿のフライドポテトに手を伸ばしていた。
「あ、スカルからメールだ」
「そういえばスカルって、まだそっちに顔出してるんだっけ?」
「うん、週一で来るよ。ね、薫」
「昨日もいたな」
「入り浸ってるじゃねぇか」
「レギュラーメンバーになってない……?」
ゆるい会話を聞きながら、山本は視線をスライドさせる。
すぐ近くの別のボックス席では、見知った女子たちがおしゃべりに興じている。誰が呼んだのかハルも加わっており、ずいぶんと楽しそうだ。
大皿のポテトとソフトドリンクだけが乗った男子のテーブルとは違い、女子のテーブルはパフェやケーキが乗っていてずいぶんと華やかに見える。
レイもチーズケーキをフォークで崩しながら、SHIT・P!にその頬を突かれている。
レイに遠慮なく触れることのできるSHIT・P!に、いいなぁ、としょうもないことを考えてしまった。
女子に囲まれているレイは、単体で見る時よりもさらに中性的に見える。身長も伸びたようだし、前はあった人への不慣れさも消え、空気も非常に落ち着いたものになった。
結果、相変わらずどころか、前にも増して性別を間違えられるようになっている。
それでも、ケーキを口に運ぶときのあどけなさや、花に話しかけられて返すその笑顔は、かわいい。
その笑顔を見ながら、バレンタインの前日に告げられた言葉を思い出す。
『山本と同じ高校に行けるように、あと少し頑張るよ』
本当に同じ高校に行けることになった、その喜びをそっと噛み締める。
同時に、気持ちを伝えたいという思いが、ふつふつと湧いてきた。
レイがまだ混乱しているようだから、急に距離を詰めたら驚きそうだから、受験の前に気持ちを揺さぶるのはよくないから……。
様々な理由を付けては抑え込んでいた言葉を、もう手渡してしまっても許されるだろうか。
高校に入学してしまえば、山本はこれまで以上に野球に打ち込むことになる。それは間違いない。
レイとの手合わせは続けていきたいが、本格手に部活が始まれば、これまでより時間が取れなくなるのは確実だ。
クラスが分かれる可能性もあるし、一緒に下校することもなかなか難しくなるだろう。
部活を引退してからの、この半年が特別だったのだ。
だから、できるなら高校入学までに決着をつけてしまいたい。
「オレ、もうちょっと食べたくなってきちゃった。みんなどうする?」
小さな焦燥が胸を焼き始めたが、ツナの呟きで意識を引き戻される。
山本も小腹が空いてきたのを自覚して、便乗すべくツナの開いたメニュー表を覗き込んだ。