胸中(1月その2)
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「あーっ、終わった!」
「珍しく集中できたな、満点じゃねぇが正答率も悪くない。休憩にするか」
「やったぁ……」
リボーンはまた少し伸びた脚を組んて答案用紙の採点を爆速で終え、満足げに笑みを浮かべた。
ツナは大きく息を吐いて机に突っ伏す。
「ガウ」
「お前寝ぐせついてるじゃん」
空気が緩んだのを察してか、先ほどまでベッドに転がっていたナッツがすり寄ってきた。たてがみに手を突っ込んで耳周りを掻いてやる。
「休憩するか」というリボーンの言葉に倣い、2人と1匹で1階のリビングへ向かう。
子ども達は公園へ遊びに行き、奈々とレイは夕飯の買い出しに、ビアンキは奈々達とは別で食材を買いに出て行った。いつもは騒がしい家なのに、今は暖房と冷蔵庫の音だけがじんわりと響いている。
ちらりと見た窓の外は、重たい雲で覆われていて、白い塊がパラパラと舞い落ちている。雪だ。
昨晩から降り続いている雪は解けず、久々の積雪で庭が覆われていた。
ぼんやりと空を眺めていたら、ピンポーンとインターホンが鳴り響いた。我に返ってモニターを見れば、そこには懐かしい顔が立っていて、ツナは走って玄関に向かう。
扉を開けると、パッとその顔が上がって頭の上の雪が散る。青い瞳と目が合った。
「バジル君!」
「沢田殿!」
「久しぶり!」
代理戦争以来の再開に、自然と顔がほころぶ。遅れて飛び出てきたナッツが嬉しそうにバジルに飛びついた。
「ちゃおっす。元気にしてたか?」
「ご無沙汰しております。拙者も親方様もつつがなく」
ナッツを撫でるバジルは、リボーンにも頭を下げた。そして、不思議そうに玄関の奥をのぞき込む。
「静かですね」
「ちょうどみんな出ちゃってるんだ、オレしかいないよ」
シンとした我が家は確かに珍しい。しかし、そろそろ母達が返ってきそうだ。連絡がないかと携帯電話を開いた瞬間、タッとナッツが駆け出した。
「あ、おい!」
そのまま角を曲がっていったナッツを追いかけると、声が聞こえた。
「ガウ!」
「ただいまナッツ。ツナはどうした?」
「なんだ、レイか……」
曲がり角を覗けば、ナッツがレイの足元にまとわりついていた。
白いマフラーを緩く巻いているレイは、黒い髪に白い斑点を乗せたまま両手にパンパンの買い物袋を持っている。しかし、母やビアンキの姿はない。
「おかえり。母さんたちは?」
「ただいま。まだ買い足りないんだって。先にある程度持ってきた」
ガサガサと音を立てながらレイは角を曲がり、我が家と、そしてその前に立つバジルを見た。レイの目が丸くなる。バジルも「あ」と小さく声を漏らした。
やっぱり知り合いだったか、世間は狭いもんな。
そうツナは納得したが、どうにも2人の様子がおかしい。おかしいというか、距離を測りかねているような、困惑の色が濃かった。
「知り合いじゃないの?」
「いや、その」
「何と言いますか……」
「よかった、CEDEFだったんだ……」
「あなたもキャバッローネの方だったのですね」
数分にわたる静かな攻防戦は、ツナの「キャバッローネとCEDEFって関わりないの?」という質問で幕を閉じた。
肩の力が抜けて笑顔を浮かべるレイとバジルに、ツナだけがついていけない。
「どういうこと?」
「お会いしたのがキャバッローネのフロント企業内だったもので……」
「フロント企業?」
「マフィアが運営してる一般企業のことです。いわゆるダミー企業ですね」
聞けばフロント企業は裏社会と無関係の人の出入りも多く、そこで何度か互いを見かけつつも「はたして相手がマフィアなのか、一般人なのか」の区別がつかずにいたのだという。
足元でニヤついているリボーンに「分かってたなら教えてやれよ」と言えば、「だってこっちの方が面白いんだもん」とぶりっ子が返ってきた。
リボーンに苦笑いを浮かべながら、バジルが改めてレイと向き合った。
「では、改めまして。拙者はCEDEFのバジリコンと申します。気軽にバジルとお呼びください」
「ボクは瀬切レイ。色々あって小さいころからキャバッローネにお世話になっていた。今はツナの……、ボンゴレファミリーに。これからよろしく、バジル」
レイとバジルが握手を交わす。
未だ友人達にファミリーだなんだと言われる違和感を拭えない。静かに眉を顰めるツナを気にすることなく、レイは「これ片付けないと」と買い物袋を指す。
「そんなに買ったのに、母さんまだ買うのかよ」
「おじさんから帰るって連絡があったんだって。気合が入ってる」
「ああ、まあ、そうだよな……」
バジルが来日した時点で家光が帰ってくる可能性は考えていた。
秋に9代目からもらった手紙にも、家光の帰郷の時期について相談があって、それには「じゃあ冬がいいです」と回答した記憶がある。
冬にした理由は特にはない。すぐ会いたいわけではないが、何となく中学を卒業する前には顔を見ておきたいなというくらいの話だった。
代理戦争での一騎打ちを経て、昔ほどのわだかまりはもうない。しかし長く家を空けている父親に対する息子の気持ちは変わらず複雑なものだった。
ツナとレイの会話を聞いていたバジルが「おじさん……」とつぶやく。
「もしや、沢田殿と瀬切殿は……」
「そうそう、オレ達従兄妹なんだ」
そうだったのですね、とバジルが頷く。
「親方様は全くそんなそぶりを……。しかし、確かに立場上大っぴらにはできませんね」
「うん。でも、ずっと気に掛けてくれてたんだ。おじさんだって忙しいのに」
親愛を隠さないレイの表情に、また少し、ツナの中にある家光への感情の角が取れていく。同時に湧き上がってくる気恥ずかしさをごまかすように、ツナはバジルに手招きをする。
「とりあえず上がってよ」
「では、お邪魔します」
レイの持った買い物袋の中身をしまい、バジルがくれた土産の数々をダイニングテーブルに並べる。
「こんだけの量、よくあの紙袋に詰められたね……。この瓶何?」
「バルサミコ酢です」
「あ、ボクこれ好き」
「そのチョコなら2箱ありますので是非」
同い年3人でお土産を広げていると、玄関が騒がしくなってきた。ドアが開く音がして、母を先頭にどやどやと複数人がリビングにやってくる。
「ただいま!たくさん買えたわよー!……あらぁ、バジル君!」
「ご無沙汰しております」
レイに負けず劣らず大荷物を抱えた奈々は来訪者に気付き、驚きの後に笑顔を浮かべた。
「元気だった?」
「はい!あ、お土産です」
「こんなにたくさん!そうだ、あなたもお夕飯食べていってね」
「ありがとうございます!」
奈々の後からビアンキとイーピンが入ってきて、さらにその後ろからもう1人が静かに姿を現した。
すらりとスーツを着こなして現れたのは、これまた懐かしい顔だった。
「ラル!?」
「久しいな、沢田。腑抜けていないか?」
目の前のラルはパンツスーツだった。日本の行動を歩くなら、いつもの服よりこちらの方が目立たないと分かってはいるが、少し見慣れない。
ラルと会うのも代理戦争以来だ。本当ならコロネロとの結婚式に招待されていたが、結局喧嘩に喧嘩を重ねて挙式を延期し続けている。
「コロネロはどうした」
「イタリアのどこかにいる」
「もしかして、またケンカしたの……?」
「そろそろ式場のキャンセル料の方が高くついてんじゃねぇか?」
「うるさい」
リボーンの指摘に苛立ちを隠さない顔でラルがそっぽを向いてしまう。そんなラルを見ながら、レイがツナの腕を軽く突いた。
「あの人、ラル・ミルチって言った?本当に?」
「ラルのこと知ってんの?」
「た、たぶん」
「コソコソしてんじゃねえ、はっきり喋れ」
「いてっ」
ツナにぼそぼそと話しかけていたレイの脛を、リボーンが容赦なく蹴り飛ばした。脛を軽くさすり、レイは一歩ラルに近付く。
「あの……」
「ん?瀬切か」
「本当にラル?」
「そうだ。……ああ、呪いが解けてから会うのは初めてだったな」
レイの困惑は、ラルの見慣れない姿にあったらしい。ツナにとってのラル・ミルチは大人の姿だったが、レイにとっては赤ん坊の姿の方が見慣れていたようだ。
「レイとラル、知り合いだったんだ」
「うん」
「有事の際に家光と連絡が取れなくなった場合は、オレがこいつの一時的な身元引受人になっていた。こいつが日本に来たから不要になったがな」
じゃあレイのことも色々知ってるんだ、と言いかけてやめた。彼女がドールであることがどれほどの秘匿事項なのか分からない以上、軽はずみに話すことではないだろう。
仮にこの2人がそれに対して忌避感を示さないと分かっていてもだ。
相手の素性が分かって落ち着いたレイは、ラルに軽く近況を話している。ラルもぶっきらぼうながら、話は聞いてやっている。やはりあれで面倒見はいいのだろう。
どちらも中性的な立ち振る舞いではあるが、レイと比べるとラルの方がかなり女性的に見える。
体格の問題か、あるいはレイが人間ではないが故か。
「そういえばラル、親方様は?」
「そろそろ……」
「奈々ぁー!」
「……来たぞ」
すべてを貫通するような声量が家に響く。
ドスドスという足音とともに家光が現れ、奈々を抱きしめた。両親のこれはちょっと直視できない。
というか部下もいるのに。いや、イタリア人やイタリア育ちは気にしないのだろうか。
目を逸らせば、その光景を見てもまったく気にしないラルとバジル、むしろ嬉しそうに眺めているレイが目に入った。やはり気にしないのかもしれない。
ひとしきり妻を抱き締めた家光が、今度はツナとレイを見る。
逃げる間もなくレイと共にその腕に捕まった。奈々との抱擁で溶けた雪で服が湿っぽい。
「ツナー!レイ-!元気にしてたかー?」
「ちょっ、やめろって!」
「元気だよ」
ツナはもがくが、レイは隣で大人しくハグを受け入れている。そのせいで、まるでこの反応が恥ずかしいものに思えてきた。
そしていきなり体が離れたかと思ったら、家光はツナとレイの顔を交互にみて、ほんの少しだけ眉尻を下げながら笑顔を浮かべる。
「お前たち、本当にデカくなったな」
レイと顔を見合わせる。そうか、父は2人が並んでいるのを見るのは久しぶりなのか。
レイがふっと顔を和らげながら、家光を見て口を開いた。
「おじさん、本当にずっとありがとう。ボク、ちゃんと自分で選べたよ」
その言葉に家光は眼を少しだけ潤ませ、もう一度息子と姪を抱きしめた。
今度はツナも、10秒くらいはおとなしくしてやった。
「珍しく集中できたな、満点じゃねぇが正答率も悪くない。休憩にするか」
「やったぁ……」
リボーンはまた少し伸びた脚を組んて答案用紙の採点を爆速で終え、満足げに笑みを浮かべた。
ツナは大きく息を吐いて机に突っ伏す。
「ガウ」
「お前寝ぐせついてるじゃん」
空気が緩んだのを察してか、先ほどまでベッドに転がっていたナッツがすり寄ってきた。たてがみに手を突っ込んで耳周りを掻いてやる。
「休憩するか」というリボーンの言葉に倣い、2人と1匹で1階のリビングへ向かう。
子ども達は公園へ遊びに行き、奈々とレイは夕飯の買い出しに、ビアンキは奈々達とは別で食材を買いに出て行った。いつもは騒がしい家なのに、今は暖房と冷蔵庫の音だけがじんわりと響いている。
ちらりと見た窓の外は、重たい雲で覆われていて、白い塊がパラパラと舞い落ちている。雪だ。
昨晩から降り続いている雪は解けず、久々の積雪で庭が覆われていた。
ぼんやりと空を眺めていたら、ピンポーンとインターホンが鳴り響いた。我に返ってモニターを見れば、そこには懐かしい顔が立っていて、ツナは走って玄関に向かう。
扉を開けると、パッとその顔が上がって頭の上の雪が散る。青い瞳と目が合った。
「バジル君!」
「沢田殿!」
「久しぶり!」
代理戦争以来の再開に、自然と顔がほころぶ。遅れて飛び出てきたナッツが嬉しそうにバジルに飛びついた。
「ちゃおっす。元気にしてたか?」
「ご無沙汰しております。拙者も親方様もつつがなく」
ナッツを撫でるバジルは、リボーンにも頭を下げた。そして、不思議そうに玄関の奥をのぞき込む。
「静かですね」
「ちょうどみんな出ちゃってるんだ、オレしかいないよ」
シンとした我が家は確かに珍しい。しかし、そろそろ母達が返ってきそうだ。連絡がないかと携帯電話を開いた瞬間、タッとナッツが駆け出した。
「あ、おい!」
そのまま角を曲がっていったナッツを追いかけると、声が聞こえた。
「ガウ!」
「ただいまナッツ。ツナはどうした?」
「なんだ、レイか……」
曲がり角を覗けば、ナッツがレイの足元にまとわりついていた。
白いマフラーを緩く巻いているレイは、黒い髪に白い斑点を乗せたまま両手にパンパンの買い物袋を持っている。しかし、母やビアンキの姿はない。
「おかえり。母さんたちは?」
「ただいま。まだ買い足りないんだって。先にある程度持ってきた」
ガサガサと音を立てながらレイは角を曲がり、我が家と、そしてその前に立つバジルを見た。レイの目が丸くなる。バジルも「あ」と小さく声を漏らした。
やっぱり知り合いだったか、世間は狭いもんな。
そうツナは納得したが、どうにも2人の様子がおかしい。おかしいというか、距離を測りかねているような、困惑の色が濃かった。
「知り合いじゃないの?」
「いや、その」
「何と言いますか……」
「よかった、CEDEFだったんだ……」
「あなたもキャバッローネの方だったのですね」
数分にわたる静かな攻防戦は、ツナの「キャバッローネとCEDEFって関わりないの?」という質問で幕を閉じた。
肩の力が抜けて笑顔を浮かべるレイとバジルに、ツナだけがついていけない。
「どういうこと?」
「お会いしたのがキャバッローネのフロント企業内だったもので……」
「フロント企業?」
「マフィアが運営してる一般企業のことです。いわゆるダミー企業ですね」
聞けばフロント企業は裏社会と無関係の人の出入りも多く、そこで何度か互いを見かけつつも「はたして相手がマフィアなのか、一般人なのか」の区別がつかずにいたのだという。
足元でニヤついているリボーンに「分かってたなら教えてやれよ」と言えば、「だってこっちの方が面白いんだもん」とぶりっ子が返ってきた。
リボーンに苦笑いを浮かべながら、バジルが改めてレイと向き合った。
「では、改めまして。拙者はCEDEFのバジリコンと申します。気軽にバジルとお呼びください」
「ボクは瀬切レイ。色々あって小さいころからキャバッローネにお世話になっていた。今はツナの……、ボンゴレファミリーに。これからよろしく、バジル」
レイとバジルが握手を交わす。
未だ友人達にファミリーだなんだと言われる違和感を拭えない。静かに眉を顰めるツナを気にすることなく、レイは「これ片付けないと」と買い物袋を指す。
「そんなに買ったのに、母さんまだ買うのかよ」
「おじさんから帰るって連絡があったんだって。気合が入ってる」
「ああ、まあ、そうだよな……」
バジルが来日した時点で家光が帰ってくる可能性は考えていた。
秋に9代目からもらった手紙にも、家光の帰郷の時期について相談があって、それには「じゃあ冬がいいです」と回答した記憶がある。
冬にした理由は特にはない。すぐ会いたいわけではないが、何となく中学を卒業する前には顔を見ておきたいなというくらいの話だった。
代理戦争での一騎打ちを経て、昔ほどのわだかまりはもうない。しかし長く家を空けている父親に対する息子の気持ちは変わらず複雑なものだった。
ツナとレイの会話を聞いていたバジルが「おじさん……」とつぶやく。
「もしや、沢田殿と瀬切殿は……」
「そうそう、オレ達従兄妹なんだ」
そうだったのですね、とバジルが頷く。
「親方様は全くそんなそぶりを……。しかし、確かに立場上大っぴらにはできませんね」
「うん。でも、ずっと気に掛けてくれてたんだ。おじさんだって忙しいのに」
親愛を隠さないレイの表情に、また少し、ツナの中にある家光への感情の角が取れていく。同時に湧き上がってくる気恥ずかしさをごまかすように、ツナはバジルに手招きをする。
「とりあえず上がってよ」
「では、お邪魔します」
レイの持った買い物袋の中身をしまい、バジルがくれた土産の数々をダイニングテーブルに並べる。
「こんだけの量、よくあの紙袋に詰められたね……。この瓶何?」
「バルサミコ酢です」
「あ、ボクこれ好き」
「そのチョコなら2箱ありますので是非」
同い年3人でお土産を広げていると、玄関が騒がしくなってきた。ドアが開く音がして、母を先頭にどやどやと複数人がリビングにやってくる。
「ただいま!たくさん買えたわよー!……あらぁ、バジル君!」
「ご無沙汰しております」
レイに負けず劣らず大荷物を抱えた奈々は来訪者に気付き、驚きの後に笑顔を浮かべた。
「元気だった?」
「はい!あ、お土産です」
「こんなにたくさん!そうだ、あなたもお夕飯食べていってね」
「ありがとうございます!」
奈々の後からビアンキとイーピンが入ってきて、さらにその後ろからもう1人が静かに姿を現した。
すらりとスーツを着こなして現れたのは、これまた懐かしい顔だった。
「ラル!?」
「久しいな、沢田。腑抜けていないか?」
目の前のラルはパンツスーツだった。日本の行動を歩くなら、いつもの服よりこちらの方が目立たないと分かってはいるが、少し見慣れない。
ラルと会うのも代理戦争以来だ。本当ならコロネロとの結婚式に招待されていたが、結局喧嘩に喧嘩を重ねて挙式を延期し続けている。
「コロネロはどうした」
「イタリアのどこかにいる」
「もしかして、またケンカしたの……?」
「そろそろ式場のキャンセル料の方が高くついてんじゃねぇか?」
「うるさい」
リボーンの指摘に苛立ちを隠さない顔でラルがそっぽを向いてしまう。そんなラルを見ながら、レイがツナの腕を軽く突いた。
「あの人、ラル・ミルチって言った?本当に?」
「ラルのこと知ってんの?」
「た、たぶん」
「コソコソしてんじゃねえ、はっきり喋れ」
「いてっ」
ツナにぼそぼそと話しかけていたレイの脛を、リボーンが容赦なく蹴り飛ばした。脛を軽くさすり、レイは一歩ラルに近付く。
「あの……」
「ん?瀬切か」
「本当にラル?」
「そうだ。……ああ、呪いが解けてから会うのは初めてだったな」
レイの困惑は、ラルの見慣れない姿にあったらしい。ツナにとってのラル・ミルチは大人の姿だったが、レイにとっては赤ん坊の姿の方が見慣れていたようだ。
「レイとラル、知り合いだったんだ」
「うん」
「有事の際に家光と連絡が取れなくなった場合は、オレがこいつの一時的な身元引受人になっていた。こいつが日本に来たから不要になったがな」
じゃあレイのことも色々知ってるんだ、と言いかけてやめた。彼女がドールであることがどれほどの秘匿事項なのか分からない以上、軽はずみに話すことではないだろう。
仮にこの2人がそれに対して忌避感を示さないと分かっていてもだ。
相手の素性が分かって落ち着いたレイは、ラルに軽く近況を話している。ラルもぶっきらぼうながら、話は聞いてやっている。やはりあれで面倒見はいいのだろう。
どちらも中性的な立ち振る舞いではあるが、レイと比べるとラルの方がかなり女性的に見える。
体格の問題か、あるいはレイが人間ではないが故か。
「そういえばラル、親方様は?」
「そろそろ……」
「奈々ぁー!」
「……来たぞ」
すべてを貫通するような声量が家に響く。
ドスドスという足音とともに家光が現れ、奈々を抱きしめた。両親のこれはちょっと直視できない。
というか部下もいるのに。いや、イタリア人やイタリア育ちは気にしないのだろうか。
目を逸らせば、その光景を見てもまったく気にしないラルとバジル、むしろ嬉しそうに眺めているレイが目に入った。やはり気にしないのかもしれない。
ひとしきり妻を抱き締めた家光が、今度はツナとレイを見る。
逃げる間もなくレイと共にその腕に捕まった。奈々との抱擁で溶けた雪で服が湿っぽい。
「ツナー!レイ-!元気にしてたかー?」
「ちょっ、やめろって!」
「元気だよ」
ツナはもがくが、レイは隣で大人しくハグを受け入れている。そのせいで、まるでこの反応が恥ずかしいものに思えてきた。
そしていきなり体が離れたかと思ったら、家光はツナとレイの顔を交互にみて、ほんの少しだけ眉尻を下げながら笑顔を浮かべる。
「お前たち、本当にデカくなったな」
レイと顔を見合わせる。そうか、父は2人が並んでいるのを見るのは久しぶりなのか。
レイがふっと顔を和らげながら、家光を見て口を開いた。
「おじさん、本当にずっとありがとう。ボク、ちゃんと自分で選べたよ」
その言葉に家光は眼を少しだけ潤ませ、もう一度息子と姪を抱きしめた。
今度はツナも、10秒くらいはおとなしくしてやった。