接触(12月)
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翌日の放課後。
「どうすっかなー……」
ツナに背中を押されて、とりあえず商店街に足を伸ばす。が、果たしてどこで何を買えばいいのか。
商店街を端から端まで歩く。パティスリー、本屋、ブティック、雑貨店、スポーツ用品店、生花店、手芸店等々。スポーツ用品店と本屋以外の客層はやはり女性だ。男一人で入るには少々気が引ける。
そもそも何を選べばいいのだろうか。
持っているかどうかは別としても高価なものはイタリアである程度見慣れていることだろうし、そもそも高いものは買えない、
恋人持ちの元チームメイトはちょっとしたアクセサリーやら、おそろいのバッグチャームやらを買ったらしいが、そもそも友人であり恋人ではない。
自分の気持ちはひとまず置いておいて、異性の友人に押し付けにならない程度のプレゼントとは何だろう。
うーん、と唸っていると、「山本君?」と声を掛けられた。
「クローム、笹川」
「難しい顔してどうしたの?」
紙袋を手にしたクロームと京子が、不思議そうに山本を見ている。山本同様、授業後にそのまま来たのか制服のままだ。
2人、特にクロームはレイと非常に仲がいい。山本の知らないレイの好みも知っているかもしれない。何よりプレゼントの知見は山本よりもありそうだ。
「あのさ、瀬切って何渡したら喜ぶと思う?」
友人の名前に2人が目を瞬かせる。そしてすぐに思い当たり、京子は「レイちゃんの誕生日プレゼント?」と笑みを浮かべた。
「私達もだよ。レイちゃんのプレゼント探してたんだ」
京子が手に持った紙袋を掲げた。重くはなさそうだが、体積はある。一方、クロームの紙袋は小さめだった。
「参考に何買ったか教えてくれね?」
「ぬいぐるみ!」
「私はポーチとしおり。あそことあそこで買ったの」
クロームが指さしたのは、山本が悩みながらも通り過ぎた雑貨店と本屋だった。
なるほど、そういうものを選ぶのかと舌を巻く。
ポーチとしおりは自力でたどり着いてもよかった。カバンをひっくり返して剣の手入れ用品を出している姿や、文章の勉強も兼ねて本を読んでいる姿を知っているじゃないか。
そしてぬいぐるみ。これは山本一人では思い至らない。
「黒川とかハルは?」
「ハルちゃんにはまだ話せてないし、花は今日塾だから分かんないなぁ……」
「そっか、教えてくれてサンキュ」
内心に生じた焦りを押し殺しながら感謝を告げる。
ヒントになるかと思いきや、逆にドツボにはまってしまったようだ。
何がいいのだろう。
ツナの口振りや普段のレイを見る限り、よほど外さなければ喜んではくれるはずだ。それでも、外さないだけなのは何となく嫌だった。ピッチャーとしてストライクを取るよりも、バッターとしてホームランを狙うよりも難しいように思えた。
黙り込んでしまった山本に、京子とクロームは顔を見合わせる。
「山本君はどんなものを渡したいの?」
「決まってねぇんだよな」
「じゃあ、レイにプレゼントをどうしてほしい?」
「え?」
クロームの質問に言葉が止まる。
「毎日使ってほしいとか、大事に飾っておいてほしいとか、見るたびに思い出してほしいとか……。相手が欲しいものを選ぶのも大事だけど、その人の本当に欲しいものなんてわからないから、私は相手にプレゼントをどうしてほしいかで選ぶのも、いいと、思う……」
山本と京子に凝視されたせいか、クロームの声が尻すぼみになっていく。耳を真っ赤にしながら俯いてしまった。
「私もそう思うよ」
「京子ちゃん……」
京子はそんなクロームの腕に手を置き、穏やかな笑みを浮かべて山本を見る。
「レイちゃんってぬいぐるみみたいな可愛いもの持ってるイメージ、あんまりないでしょ?」
「そうだな」
「でも私はレイちゃんがぬいぐるみを見たり触ったりしてほっこりしてほしいとか、そうしてるレイちゃんがいてくれたら嬉しいなと思ってこの子にしたの」
袋の中のぬいぐるみが返事をするように、紙袋が風に揺れる。
「ほしいものが分からないなら、その人に渡したいな、持っていてほしいなって思えるものをあげるのが一番だと思うよ。受け取る人の気持ちも大事だけど、渡す人の気持ちだって大事だもん」
「どうすっかなー……」
ツナに背中を押されて、とりあえず商店街に足を伸ばす。が、果たしてどこで何を買えばいいのか。
商店街を端から端まで歩く。パティスリー、本屋、ブティック、雑貨店、スポーツ用品店、生花店、手芸店等々。スポーツ用品店と本屋以外の客層はやはり女性だ。男一人で入るには少々気が引ける。
そもそも何を選べばいいのだろうか。
持っているかどうかは別としても高価なものはイタリアである程度見慣れていることだろうし、そもそも高いものは買えない、
恋人持ちの元チームメイトはちょっとしたアクセサリーやら、おそろいのバッグチャームやらを買ったらしいが、そもそも友人であり恋人ではない。
自分の気持ちはひとまず置いておいて、異性の友人に押し付けにならない程度のプレゼントとは何だろう。
うーん、と唸っていると、「山本君?」と声を掛けられた。
「クローム、笹川」
「難しい顔してどうしたの?」
紙袋を手にしたクロームと京子が、不思議そうに山本を見ている。山本同様、授業後にそのまま来たのか制服のままだ。
2人、特にクロームはレイと非常に仲がいい。山本の知らないレイの好みも知っているかもしれない。何よりプレゼントの知見は山本よりもありそうだ。
「あのさ、瀬切って何渡したら喜ぶと思う?」
友人の名前に2人が目を瞬かせる。そしてすぐに思い当たり、京子は「レイちゃんの誕生日プレゼント?」と笑みを浮かべた。
「私達もだよ。レイちゃんのプレゼント探してたんだ」
京子が手に持った紙袋を掲げた。重くはなさそうだが、体積はある。一方、クロームの紙袋は小さめだった。
「参考に何買ったか教えてくれね?」
「ぬいぐるみ!」
「私はポーチとしおり。あそことあそこで買ったの」
クロームが指さしたのは、山本が悩みながらも通り過ぎた雑貨店と本屋だった。
なるほど、そういうものを選ぶのかと舌を巻く。
ポーチとしおりは自力でたどり着いてもよかった。カバンをひっくり返して剣の手入れ用品を出している姿や、文章の勉強も兼ねて本を読んでいる姿を知っているじゃないか。
そしてぬいぐるみ。これは山本一人では思い至らない。
「黒川とかハルは?」
「ハルちゃんにはまだ話せてないし、花は今日塾だから分かんないなぁ……」
「そっか、教えてくれてサンキュ」
内心に生じた焦りを押し殺しながら感謝を告げる。
ヒントになるかと思いきや、逆にドツボにはまってしまったようだ。
何がいいのだろう。
ツナの口振りや普段のレイを見る限り、よほど外さなければ喜んではくれるはずだ。それでも、外さないだけなのは何となく嫌だった。ピッチャーとしてストライクを取るよりも、バッターとしてホームランを狙うよりも難しいように思えた。
黙り込んでしまった山本に、京子とクロームは顔を見合わせる。
「山本君はどんなものを渡したいの?」
「決まってねぇんだよな」
「じゃあ、レイにプレゼントをどうしてほしい?」
「え?」
クロームの質問に言葉が止まる。
「毎日使ってほしいとか、大事に飾っておいてほしいとか、見るたびに思い出してほしいとか……。相手が欲しいものを選ぶのも大事だけど、その人の本当に欲しいものなんてわからないから、私は相手にプレゼントをどうしてほしいかで選ぶのも、いいと、思う……」
山本と京子に凝視されたせいか、クロームの声が尻すぼみになっていく。耳を真っ赤にしながら俯いてしまった。
「私もそう思うよ」
「京子ちゃん……」
京子はそんなクロームの腕に手を置き、穏やかな笑みを浮かべて山本を見る。
「レイちゃんってぬいぐるみみたいな可愛いもの持ってるイメージ、あんまりないでしょ?」
「そうだな」
「でも私はレイちゃんがぬいぐるみを見たり触ったりしてほっこりしてほしいとか、そうしてるレイちゃんがいてくれたら嬉しいなと思ってこの子にしたの」
袋の中のぬいぐるみが返事をするように、紙袋が風に揺れる。
「ほしいものが分からないなら、その人に渡したいな、持っていてほしいなって思えるものをあげるのが一番だと思うよ。受け取る人の気持ちも大事だけど、渡す人の気持ちだって大事だもん」