接触(12月)
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「レイちゃんの誕生日って昨日だったの!?」
休み時間、机を枕にうたたねしていた山本の意識は、京子の声で引き揚げられた。
体ごと後ろを向きたい気持ちを抑え、机に突っ伏したまま背後の会話を盗み聞きする。
「うん」
「ちゃんとお祝いしたかったのに!」
近くで聞いていたほかのクラスメイトが、「ハッピーバースデー」「おめでとー」と軽く祝いの言葉を投げつける。レイは「あ、ありがとう」と少し戸惑いながらも礼を返した。
「どうして教えてくれなかったの?」
少し悲しそうなクロームの声に、レイの声にも焦りがにじんだ。
「えっと、訊かれてなかったし、言う必要もないかなって……」
「さすがに沢田は知ってるとして、他は?誰か知ってるの?」
「……ツナしか知らないかも」
「薄情者」
「えっ」
ばっさりと切り捨てる花に、山本も内心で同調する。
なんといっても誕生日前日の一昨日、山本とレイは手合わせをしていたのだ。プレゼントを贈ったかどうかは別としても、祝いの言葉を誕生日当日に伝えるくらいはできた。
いやしかし、教えてくれるものだと訊こうとしなかった自分も悪いか、と山本は静かに反省する。
「今度お祝いさせてね!ハルちゃんも呼ぶから!」
「ありがとう。ボクにも皆の誕生日も今度教えて」
女子だけの誕生日パーティを企画したところでチャイムが鳴り響いた。また後でね、と京子達の足音が遠ざかっていく。
体を起こして、軽く伸びをしてから後ろを見る。数学の教科書を机の上に出そうとしていたレイと目が合った。
先ほどの会話を山本が聞いていると思ってもいないのか、あるいは聞かれていたとしてなんとも思っていないのか。見てくるだけで何も言わない山本に対して、レイはいつもと全く変わらないトーンで「どうした?」と目を瞬かせた。
何でもないと返して前を向けば、ちょうど数学の教科担任が教室に入ってきた。
その日最後の授業が終わり、レイは京子に声を掛けられて席を立った。
廊下に向かう途中でレイはツナに何か声を掛け、彼が頷くのを見届けてから京子達と教室を出ていく。
山本もスクールバッグを肩に掛け、ツナの席に向かう。
「ツナ、帰ろーぜ」
今日は珍しく獄寺がいない。
最近、獄寺はリボーンに銃の師事を受けている。日本で銃が撃てる場所は極々限られていると思うが、そこはリボーンがどうにか用意しているのだろう。晴れて3人揃ってリボーンの正式な教え子となったわけだ。
今日はかなり実践に近い形でやるのだと、獄寺は息巻いていた。
そして「オレはリボーンさんのところに向かうから、10代目はお前がお守りしろ」とのご命令を受けている。まあ、守るといっても一緒に帰宅する程度のことなので、何らいつもと変わらないのだが。
「山本ってここから入学までに準備あるの?」
「指定の店でいろいろ買うくらいだな。挨拶はもうしたし」
「すごいなぁ。推薦とかオレには想像つかないや」
山本はすでに並盛北高のスポーツ推薦に合格している。まだ数か月の受験勉強が残る一般入試組よりはかなり気が楽だ。
「オレも頑張らないとヤバいや」
「合格圏内入ってんだろ?じゃあ大丈夫だって」
「そうなんだけどさぁ……」
今一つ自信が持てないようで、ツナは何とも言えない顔で首をかしげる。
「とうとう古文と漢文の点数もレイに抜かれて、いよいよって感じが……」
これだけはここまで勝ってたのになぁ、と呟いてから、ツナは「あ」と山本の顔を見上げた。
「レイの誕生日、言ってなくてごめん」
突然の謝罪と、その内容に面喰う。目を丸くして固まってしまった山本に、ツナは苦笑しながら「実はさ」自身の頬を掻く。
「休み時間に京子ちゃん達が話してるの聞こえてさ。あれ、山本起きてたよね?」
「はは、バレてたか」
正直、そこまで驚きはない。ツナならば京子が声を上げた時点でそちらを見るだろうし、ついでに山本の寝たふりにも気付いたのだろう。
「昨日家でちょっとした誕生日パーティしたんだ」
ツナの母が張り切って作った料理とケーキ、それといくつかのプレゼントと混沌で、人数のわりにそれは騒がしいパーティだったという。
「まさか全然誕生日教えてないなんて思ってなくてさ。オレも誰にも教えてないことになっちゃって……」
「あ、いや……。アイツ、そういうのほとんど気にしなさそうだし、別に誕生日を隠してたわけじゃねぇんだろ?」
「うん」
本当に悪気なく、訊かれなかったから教えなかったというだけで、ツナが少しだけ申し訳なさそうにしているのは、きっと山本がレイに向けている感情を知っているからだ。
少なくともツナと獄寺にはバレていると踏んでいる。あとはクロームと花あたりだろうか。薫は……山本と一緒にいるときにレイが視界に入るとそちらを見て、そして山本を見るのでわかっているかもしれない。
しかし彼らはいちいち追及してこない。こちらとしても慣れない感情なので、適度に距離を保ってくれるのはありがたかった。
「レイってあんまり物欲ないんだけどさ」
脈絡なくツナが言う。
「そう、だな?」
とりあえず同調する。
レイは決して無欲というわけではないが、「やりたいことはあるが欲しいものはあまりない」という印象を受ける。何より自分よりレイを知るツナがいうのだから、否定する理由がない。
戸惑いをにじませる山本に対し、ツナは楽しそうに笑みを浮かべている。
「物欲はないけど人から貰ったものはかなり大事にするっぽいんだよね。今日つけてたマフラーも、母さんが昨日プレゼントしたやつなんだ」
防寒着はあまり必要ない、というのはレイの言だ。真冬に半そでのTシャツ一枚はさすがに寒さを感じるようだが、上着はほぼ必要ないという。それでも着ているのは、周囲に溶け込むためだ。
そんな彼女が確かに今日はマフラーをしていた。珍しいため印象には残っていたが、あれば大好きな叔母からもらったものだったのか。
「山本」
いつの間にかいつのも分かれ道に差し掛かっていた。
「何かあげたら喜ぶと思うよ」
そう言って、ツナは珍しく山本の背中を軽く叩いた。
休み時間、机を枕にうたたねしていた山本の意識は、京子の声で引き揚げられた。
体ごと後ろを向きたい気持ちを抑え、机に突っ伏したまま背後の会話を盗み聞きする。
「うん」
「ちゃんとお祝いしたかったのに!」
近くで聞いていたほかのクラスメイトが、「ハッピーバースデー」「おめでとー」と軽く祝いの言葉を投げつける。レイは「あ、ありがとう」と少し戸惑いながらも礼を返した。
「どうして教えてくれなかったの?」
少し悲しそうなクロームの声に、レイの声にも焦りがにじんだ。
「えっと、訊かれてなかったし、言う必要もないかなって……」
「さすがに沢田は知ってるとして、他は?誰か知ってるの?」
「……ツナしか知らないかも」
「薄情者」
「えっ」
ばっさりと切り捨てる花に、山本も内心で同調する。
なんといっても誕生日前日の一昨日、山本とレイは手合わせをしていたのだ。プレゼントを贈ったかどうかは別としても、祝いの言葉を誕生日当日に伝えるくらいはできた。
いやしかし、教えてくれるものだと訊こうとしなかった自分も悪いか、と山本は静かに反省する。
「今度お祝いさせてね!ハルちゃんも呼ぶから!」
「ありがとう。ボクにも皆の誕生日も今度教えて」
女子だけの誕生日パーティを企画したところでチャイムが鳴り響いた。また後でね、と京子達の足音が遠ざかっていく。
体を起こして、軽く伸びをしてから後ろを見る。数学の教科書を机の上に出そうとしていたレイと目が合った。
先ほどの会話を山本が聞いていると思ってもいないのか、あるいは聞かれていたとしてなんとも思っていないのか。見てくるだけで何も言わない山本に対して、レイはいつもと全く変わらないトーンで「どうした?」と目を瞬かせた。
何でもないと返して前を向けば、ちょうど数学の教科担任が教室に入ってきた。
その日最後の授業が終わり、レイは京子に声を掛けられて席を立った。
廊下に向かう途中でレイはツナに何か声を掛け、彼が頷くのを見届けてから京子達と教室を出ていく。
山本もスクールバッグを肩に掛け、ツナの席に向かう。
「ツナ、帰ろーぜ」
今日は珍しく獄寺がいない。
最近、獄寺はリボーンに銃の師事を受けている。日本で銃が撃てる場所は極々限られていると思うが、そこはリボーンがどうにか用意しているのだろう。晴れて3人揃ってリボーンの正式な教え子となったわけだ。
今日はかなり実践に近い形でやるのだと、獄寺は息巻いていた。
そして「オレはリボーンさんのところに向かうから、10代目はお前がお守りしろ」とのご命令を受けている。まあ、守るといっても一緒に帰宅する程度のことなので、何らいつもと変わらないのだが。
「山本ってここから入学までに準備あるの?」
「指定の店でいろいろ買うくらいだな。挨拶はもうしたし」
「すごいなぁ。推薦とかオレには想像つかないや」
山本はすでに並盛北高のスポーツ推薦に合格している。まだ数か月の受験勉強が残る一般入試組よりはかなり気が楽だ。
「オレも頑張らないとヤバいや」
「合格圏内入ってんだろ?じゃあ大丈夫だって」
「そうなんだけどさぁ……」
今一つ自信が持てないようで、ツナは何とも言えない顔で首をかしげる。
「とうとう古文と漢文の点数もレイに抜かれて、いよいよって感じが……」
これだけはここまで勝ってたのになぁ、と呟いてから、ツナは「あ」と山本の顔を見上げた。
「レイの誕生日、言ってなくてごめん」
突然の謝罪と、その内容に面喰う。目を丸くして固まってしまった山本に、ツナは苦笑しながら「実はさ」自身の頬を掻く。
「休み時間に京子ちゃん達が話してるの聞こえてさ。あれ、山本起きてたよね?」
「はは、バレてたか」
正直、そこまで驚きはない。ツナならば京子が声を上げた時点でそちらを見るだろうし、ついでに山本の寝たふりにも気付いたのだろう。
「昨日家でちょっとした誕生日パーティしたんだ」
ツナの母が張り切って作った料理とケーキ、それといくつかのプレゼントと混沌で、人数のわりにそれは騒がしいパーティだったという。
「まさか全然誕生日教えてないなんて思ってなくてさ。オレも誰にも教えてないことになっちゃって……」
「あ、いや……。アイツ、そういうのほとんど気にしなさそうだし、別に誕生日を隠してたわけじゃねぇんだろ?」
「うん」
本当に悪気なく、訊かれなかったから教えなかったというだけで、ツナが少しだけ申し訳なさそうにしているのは、きっと山本がレイに向けている感情を知っているからだ。
少なくともツナと獄寺にはバレていると踏んでいる。あとはクロームと花あたりだろうか。薫は……山本と一緒にいるときにレイが視界に入るとそちらを見て、そして山本を見るのでわかっているかもしれない。
しかし彼らはいちいち追及してこない。こちらとしても慣れない感情なので、適度に距離を保ってくれるのはありがたかった。
「レイってあんまり物欲ないんだけどさ」
脈絡なくツナが言う。
「そう、だな?」
とりあえず同調する。
レイは決して無欲というわけではないが、「やりたいことはあるが欲しいものはあまりない」という印象を受ける。何より自分よりレイを知るツナがいうのだから、否定する理由がない。
戸惑いをにじませる山本に対し、ツナは楽しそうに笑みを浮かべている。
「物欲はないけど人から貰ったものはかなり大事にするっぽいんだよね。今日つけてたマフラーも、母さんが昨日プレゼントしたやつなんだ」
防寒着はあまり必要ない、というのはレイの言だ。真冬に半そでのTシャツ一枚はさすがに寒さを感じるようだが、上着はほぼ必要ないという。それでも着ているのは、周囲に溶け込むためだ。
そんな彼女が確かに今日はマフラーをしていた。珍しいため印象には残っていたが、あれば大好きな叔母からもらったものだったのか。
「山本」
いつの間にかいつのも分かれ道に差し掛かっていた。
「何かあげたら喜ぶと思うよ」
そう言って、ツナは珍しく山本の背中を軽く叩いた。