盟友(11月)
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断ったというのに奈々に押し切られ、結局沢田家で夕飯を食べてしまった。
町は薄暗いが、奈々の手作り料理が詰められた成長期の胃袋は、幸福感で満ちている。
緩みそうになる口元を引き締めながら歩くと十字路、向かって右手側より人の気配がした。そちらを見やれば。
「お、獄寺じゃねーか」
「こんばんは!偶然ですね」
山本とハルだった。夜も近い夕方にぶつけられるには快活すぎる挨拶に、軽いめまいがする。
「お散歩ですか?」
「10代目のお宅にお邪魔してたんだよ」
「んじゃあ飯も」
「ごちそうになった」
「えぇ、いいなぁ……」
「んで、でめぇらは何してんだ」
「オレは暇だったからランニング。そしたら塾帰りのハルと会ってさ」
「そうなんですよ、それでそのままおしゃべりしてて」
そうか、と疑いもなく受け入れた。現に、彼らはハルの自宅方面に向かっている。
強いて言えば、夜道を女子一人で歩かせられないという山本の良心が隠れている程度か。
一般市民ではあるが、彼女がボンゴレの次代ボスやその守護者と近しい存在であることなど、調べればすぐに分かる。
治安のいい日本で堅気の人間相手に目立つ行為はしないだろうが、用心するに越したことはないはずだ。
奇しくもここから獄寺とハルの自宅方面は同じで、必然的に3人で並んで歩くことになってしまった。
横から飛んでくる呑気な声2つ。
獄寺が日本に来てからずっと聞いてきたせいか、もう耳に馴染んでしまっている。
会話の内容はツナのことを中心に、進路の話も混ざり始める。
私立に通うハルは、そのまま内部進学を予定しているのだという。その高校は市外とはいえ並盛の隣の市にあるため、高校に入ったら京子達とその町のスイーツを開拓するのだと意気込む。
ツナの選択次第では、まぎれもない一般人である彼女達の人生にも何らかの影響があったりするのだろうか。
しばらく歩けば、後ろから車のエンジン音が聞こえた。ゆっくりと速度を落とたセダンの中から声を掛けてきたのはハルの父親で、ハルはそのまま車に乗り込んで帰っていった。
ハルを乗せた車を見送って、山本と並んで歩く。
「なんでついてくんだよ」
「そっから走るから大丈夫だって」
「何がだ大丈夫だ!」
噛みついてもカラカラと笑うだけで手応えがないのはいつものこと。
暗くなった道で、ぽつと山本が口を開いた。
「なあ」
「あ?」
「……ツナ、どうだった?」
やはり山本も、親友が浮かない顔をしていたことが気にはなっていたようだった。
「悩まれている」
「まあ、そうだよな」
レイから聞いた話をざっくりと共有する。
話し終わるころには、山本は頭の後ろで手を組んで小さく唸った。
「オレらのことは気にしなくていいんだけど、そうもいかないんだろうな。ツナだから」
道端の石を蹴り飛ばす。カラカラと音を立てて転がり、そのまま排水溝の中に落ちてしまった。
「なあ、マフィアとスポーツ選手って両立できんのか?」
「……オレが知ってる中では数人だ。ただ、マフィアのダミー企業がスポンサーしてるケースも含めりゃ、もっとあるだろうな」
「じゃあ、オレはツナの選択に従う」
アイツが選んだことについてくなら、オレは絶対に後悔しねぇよ。
山本の言葉に、獄寺は無言で同意を示す。
しかし、自分より達観しているような物言いにむかっ腹が立ってくる。
「おい、前から言おうと思ってたけどな」
「ん?」
「瀬切のこと、あんま凝視し過ぎてそのうちクラス中にバレても知らねぇからな」
「……えっ」
いつも飄々とした山本が、ぎし、と動きを止めた。
それだけで少しだけ溜飲が下がる。
自分の他に2人、信頼のおける者が同じ方向を向いている。今はそれだけで十分だった。
そしてこのことを、ツナが知っていて欲しいような、知らずにいて欲しいような、複雑な気持ちを抱えて、夜道を歩く。
町は薄暗いが、奈々の手作り料理が詰められた成長期の胃袋は、幸福感で満ちている。
緩みそうになる口元を引き締めながら歩くと十字路、向かって右手側より人の気配がした。そちらを見やれば。
「お、獄寺じゃねーか」
「こんばんは!偶然ですね」
山本とハルだった。夜も近い夕方にぶつけられるには快活すぎる挨拶に、軽いめまいがする。
「お散歩ですか?」
「10代目のお宅にお邪魔してたんだよ」
「んじゃあ飯も」
「ごちそうになった」
「えぇ、いいなぁ……」
「んで、でめぇらは何してんだ」
「オレは暇だったからランニング。そしたら塾帰りのハルと会ってさ」
「そうなんですよ、それでそのままおしゃべりしてて」
そうか、と疑いもなく受け入れた。現に、彼らはハルの自宅方面に向かっている。
強いて言えば、夜道を女子一人で歩かせられないという山本の良心が隠れている程度か。
一般市民ではあるが、彼女がボンゴレの次代ボスやその守護者と近しい存在であることなど、調べればすぐに分かる。
治安のいい日本で堅気の人間相手に目立つ行為はしないだろうが、用心するに越したことはないはずだ。
奇しくもここから獄寺とハルの自宅方面は同じで、必然的に3人で並んで歩くことになってしまった。
横から飛んでくる呑気な声2つ。
獄寺が日本に来てからずっと聞いてきたせいか、もう耳に馴染んでしまっている。
会話の内容はツナのことを中心に、進路の話も混ざり始める。
私立に通うハルは、そのまま内部進学を予定しているのだという。その高校は市外とはいえ並盛の隣の市にあるため、高校に入ったら京子達とその町のスイーツを開拓するのだと意気込む。
ツナの選択次第では、まぎれもない一般人である彼女達の人生にも何らかの影響があったりするのだろうか。
しばらく歩けば、後ろから車のエンジン音が聞こえた。ゆっくりと速度を落とたセダンの中から声を掛けてきたのはハルの父親で、ハルはそのまま車に乗り込んで帰っていった。
ハルを乗せた車を見送って、山本と並んで歩く。
「なんでついてくんだよ」
「そっから走るから大丈夫だって」
「何がだ大丈夫だ!」
噛みついてもカラカラと笑うだけで手応えがないのはいつものこと。
暗くなった道で、ぽつと山本が口を開いた。
「なあ」
「あ?」
「……ツナ、どうだった?」
やはり山本も、親友が浮かない顔をしていたことが気にはなっていたようだった。
「悩まれている」
「まあ、そうだよな」
レイから聞いた話をざっくりと共有する。
話し終わるころには、山本は頭の後ろで手を組んで小さく唸った。
「オレらのことは気にしなくていいんだけど、そうもいかないんだろうな。ツナだから」
道端の石を蹴り飛ばす。カラカラと音を立てて転がり、そのまま排水溝の中に落ちてしまった。
「なあ、マフィアとスポーツ選手って両立できんのか?」
「……オレが知ってる中では数人だ。ただ、マフィアのダミー企業がスポンサーしてるケースも含めりゃ、もっとあるだろうな」
「じゃあ、オレはツナの選択に従う」
アイツが選んだことについてくなら、オレは絶対に後悔しねぇよ。
山本の言葉に、獄寺は無言で同意を示す。
しかし、自分より達観しているような物言いにむかっ腹が立ってくる。
「おい、前から言おうと思ってたけどな」
「ん?」
「瀬切のこと、あんま凝視し過ぎてそのうちクラス中にバレても知らねぇからな」
「……えっ」
いつも飄々とした山本が、ぎし、と動きを止めた。
それだけで少しだけ溜飲が下がる。
自分の他に2人、信頼のおける者が同じ方向を向いている。今はそれだけで十分だった。
そしてこのことを、ツナが知っていて欲しいような、知らずにいて欲しいような、複雑な気持ちを抱えて、夜道を歩く。