暗雲
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「いってきます」
「はーい、いってらっしゃい」
休日、あくびをしながら階段を下りるツナの耳に、母親と従妹の声が飛び込んできた。1階に降りる頃には、Tシャツとデニムのシンプルな服装の後ろ姿が玄関を出るところだった。扉がぱたんと音を立てて閉まる。
「あれ、レイ、どっか出かけんの?」
時計は午前10時半を指している。遅起きの息子をいさめるでもなく、奈々は冷蔵庫を指して言う。
「あら、おはよう。朝ご飯は冷蔵庫にあるからチンしなさい。レイちゃん、今日はクロームちゃんとお出かけって」
クロームも、レイが浮かない顔をしていたのは察していたようで、彼女なりに元気づけようと外出に誘ったのだろう。
開けた冷蔵庫から飛び出た冷気が顔にあたり、だんだん意識がはっきりしてくる。
京子と山本が立て続けに襲撃されて、数日が経った。この間、シモンやそれ以外の学校関係者も含め、特に何かがあったという話は聞かない。
そのせいかレイの緊張も日に日に解けていき、昨晩はツナの部屋で一緒に漢文の宿題に四苦八苦して、そのまま一時的に寝落ちるくらいには落ち着いていた。
そういえば、いつもなら休日であろうが朝8時に、文字通り叩き起こしてくる家庭教師の姿が見えない。
「母さーん、リボーンは?」
「お友達に会うとかで、朝早くに出て行ったわよ」
「ふーん」
元アルコバレーノの誰かだろうな、とぼんやり見当をつける。
代理戦争以降、日本に住み着いている者もいれば、母国に住みながらもたまに日本に顔を出す者もいる。今日は誰かを連れて帰ってくるだろうか。
唸るレンジをぼんやり眺めながら、ツナは「今日はリボーンが帰ってくるまでは存分にゲームができるな」と怠惰なことを考えた。
午前中は1人で、午後からはランボとフゥ太と共にテレビゲームに興じていた。現在女性陣は奈々の買い物に同行している。
時計を見れば、ちょうど午後3時を回ったところだ。ゲームではしゃぎ過ぎたからだろうか、暑いし喉も乾いた。
ランボの声もだいぶガサガサとしてきたため、ゲームを一時中断して1階に降りていく。
子ども達に麦茶を注いでやり、ツナは冷凍庫を覗く。
氷と保冷剤、あとは冷凍食品しか見当たらない。手を突っ込んで漁れば、二つ折りにできる氷菓が一本だけ出てきた。
放っておけば一人で丸々食べてしまいそうなランボを抑えながら容器ごと氷菓を折り、片方をランボに、もう片方をフゥ太に渡す。
「ツナ兄はいいの?」
「オレのはコンビニで買ってくるよ」
「わかった、ありがとう!」
氷菓をくわえたランボが早々にツナの部屋に戻っていく。切り口から溶けた液体が溢れそうになり、フゥ太も慌てて口に含む。
「もしかしたらちょっと散歩してから帰るかもしれないから、ランボのことよろしくな」
そう言えば少年は頷いて、弟分を追い掛けるように2階へと駆け上がっていった。
ポケットには携帯電話と家の鍵と500円玉。ちょっとお高めのアイスも選択肢に入れながら、ツナは曇天の下を歩きだした。
結局コンビニで買ったのは某メーカーのお高いアイスクリームではなく、果汁がたっぷり詰まった一口サイズの氷菓だ。選んだのはごくごく一般的なぶどう味。こんなの家で食べたらランボがうるさくてたまらない。
行儀が悪いことは承知で、コンビニを出てすぐ封を切った。1つ口に放り込めば、ぶどうの香りと共に広がる冷たさに、少しだけ汗が引く。思っていた以上に体が水分を欲していたようで、ぽいぽいと口に放り込めばあっという間に空になってしまった。
包装をコンビニのゴミ箱に入れて、のんびりと帰路につく。曇天のせいで湿度は高いが日差しは強くない。
ふと視線の先に見慣れた銀髪を見つけた。
完全に気の抜けた顔をしているので、ツナと同様に暇潰しでふらついているのだろうか。自動販売機を眺めて、商品を選んでいる。
ボタンを押した後、足音と視線に気付いたようだ。獄寺は顔を上げ、こちらを認めて顔を輝かせた。
「10代目!こんにちは」
「やっほ。何してるの?」
「いや、やることなさ過ぎてパトロール兼散歩みたいな……」
恥ずかしそうに頬を掻きながら、獄寺は取り出し口に手を突っ込む。出てきたのは、ツナは飲めない無糖のブラックコーヒーだった。
「10代目も何か飲みますか?」
「大丈夫。さっきアイス食べたところだし、小銭もあるし」
「今日はおひとりなんですね」
「母さん達は買い物で、レイはクロームと出かけてるし、リボーンもどっか行ってるし。さっきまでチビ達とゲームしてたんだよね。で、アイス食べたくなっちゃって、1人で」
「ああ、なるほど。ご自宅だとアホ牛がうるさそうですもんね」
他愛もない会話をしていると、ブブ、と尻ポケットが震えた。携帯電話の着信に、獄寺に断りを入れて携帯を取り出す。
サブディスプレイには『古里炎真』の文字が表示されていた。
「はーい、いってらっしゃい」
休日、あくびをしながら階段を下りるツナの耳に、母親と従妹の声が飛び込んできた。1階に降りる頃には、Tシャツとデニムのシンプルな服装の後ろ姿が玄関を出るところだった。扉がぱたんと音を立てて閉まる。
「あれ、レイ、どっか出かけんの?」
時計は午前10時半を指している。遅起きの息子をいさめるでもなく、奈々は冷蔵庫を指して言う。
「あら、おはよう。朝ご飯は冷蔵庫にあるからチンしなさい。レイちゃん、今日はクロームちゃんとお出かけって」
クロームも、レイが浮かない顔をしていたのは察していたようで、彼女なりに元気づけようと外出に誘ったのだろう。
開けた冷蔵庫から飛び出た冷気が顔にあたり、だんだん意識がはっきりしてくる。
京子と山本が立て続けに襲撃されて、数日が経った。この間、シモンやそれ以外の学校関係者も含め、特に何かがあったという話は聞かない。
そのせいかレイの緊張も日に日に解けていき、昨晩はツナの部屋で一緒に漢文の宿題に四苦八苦して、そのまま一時的に寝落ちるくらいには落ち着いていた。
そういえば、いつもなら休日であろうが朝8時に、文字通り叩き起こしてくる家庭教師の姿が見えない。
「母さーん、リボーンは?」
「お友達に会うとかで、朝早くに出て行ったわよ」
「ふーん」
元アルコバレーノの誰かだろうな、とぼんやり見当をつける。
代理戦争以降、日本に住み着いている者もいれば、母国に住みながらもたまに日本に顔を出す者もいる。今日は誰かを連れて帰ってくるだろうか。
唸るレンジをぼんやり眺めながら、ツナは「今日はリボーンが帰ってくるまでは存分にゲームができるな」と怠惰なことを考えた。
午前中は1人で、午後からはランボとフゥ太と共にテレビゲームに興じていた。現在女性陣は奈々の買い物に同行している。
時計を見れば、ちょうど午後3時を回ったところだ。ゲームではしゃぎ過ぎたからだろうか、暑いし喉も乾いた。
ランボの声もだいぶガサガサとしてきたため、ゲームを一時中断して1階に降りていく。
子ども達に麦茶を注いでやり、ツナは冷凍庫を覗く。
氷と保冷剤、あとは冷凍食品しか見当たらない。手を突っ込んで漁れば、二つ折りにできる氷菓が一本だけ出てきた。
放っておけば一人で丸々食べてしまいそうなランボを抑えながら容器ごと氷菓を折り、片方をランボに、もう片方をフゥ太に渡す。
「ツナ兄はいいの?」
「オレのはコンビニで買ってくるよ」
「わかった、ありがとう!」
氷菓をくわえたランボが早々にツナの部屋に戻っていく。切り口から溶けた液体が溢れそうになり、フゥ太も慌てて口に含む。
「もしかしたらちょっと散歩してから帰るかもしれないから、ランボのことよろしくな」
そう言えば少年は頷いて、弟分を追い掛けるように2階へと駆け上がっていった。
ポケットには携帯電話と家の鍵と500円玉。ちょっとお高めのアイスも選択肢に入れながら、ツナは曇天の下を歩きだした。
結局コンビニで買ったのは某メーカーのお高いアイスクリームではなく、果汁がたっぷり詰まった一口サイズの氷菓だ。選んだのはごくごく一般的なぶどう味。こんなの家で食べたらランボがうるさくてたまらない。
行儀が悪いことは承知で、コンビニを出てすぐ封を切った。1つ口に放り込めば、ぶどうの香りと共に広がる冷たさに、少しだけ汗が引く。思っていた以上に体が水分を欲していたようで、ぽいぽいと口に放り込めばあっという間に空になってしまった。
包装をコンビニのゴミ箱に入れて、のんびりと帰路につく。曇天のせいで湿度は高いが日差しは強くない。
ふと視線の先に見慣れた銀髪を見つけた。
完全に気の抜けた顔をしているので、ツナと同様に暇潰しでふらついているのだろうか。自動販売機を眺めて、商品を選んでいる。
ボタンを押した後、足音と視線に気付いたようだ。獄寺は顔を上げ、こちらを認めて顔を輝かせた。
「10代目!こんにちは」
「やっほ。何してるの?」
「いや、やることなさ過ぎてパトロール兼散歩みたいな……」
恥ずかしそうに頬を掻きながら、獄寺は取り出し口に手を突っ込む。出てきたのは、ツナは飲めない無糖のブラックコーヒーだった。
「10代目も何か飲みますか?」
「大丈夫。さっきアイス食べたところだし、小銭もあるし」
「今日はおひとりなんですね」
「母さん達は買い物で、レイはクロームと出かけてるし、リボーンもどっか行ってるし。さっきまでチビ達とゲームしてたんだよね。で、アイス食べたくなっちゃって、1人で」
「ああ、なるほど。ご自宅だとアホ牛がうるさそうですもんね」
他愛もない会話をしていると、ブブ、と尻ポケットが震えた。携帯電話の着信に、獄寺に断りを入れて携帯を取り出す。
サブディスプレイには『古里炎真』の文字が表示されていた。