日並
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「ただいま」
「レイー!」
「オカエ、リー!」
「うわ、どうしたの」
玄関の扉を開けると、ランボとイーピンが飛び付いてきた。ランボに関しては鼻水を垂らすほどに泣いている。
「あ、レイ姉おかえり!」
「おかえりなさい。その子、リボーンにちょっかい掛けて返り討ちにあったのよ」
「ああ、なるほど……」
フゥ太とビアンキもリビングから顔を出す。当のリボーンは、ビアンキの腕の中ですやすやと眠っていた。
リボーンの呪いが解けたとか何とかの話は聞いたが、まだ体は園児にも満たないので昼寝をすることも多いようだ。
昔からずっと変わらないリボーンが成長していくことが不思議でたまらない。一体どうなるのだろう。
足元にまとわりつく子どもをいなしながら靴を脱ぐ。リビングの奥から奈々の声が聞こえた。
「おかえりレイちゃん。あと10分くらいでご飯できるから、ツっ君達呼んできてー」
「はーい」
自室で制服から部屋着に着替え、レイはドアをノックする。
「ツナ、入るよ」
「どうぞー」
部屋の中ではツナと獄寺がくつろいでいた。ツナはマンガを、獄寺はよく分からない生物が描かれた雑誌を読んでいる。
「おかえり」
「ただいま。獄寺、来てたんだ」
「右腕だからな」
「関係あるか?」
「たりめーだろ」
「母さんが獄寺君も夕飯食べてけって」
「ああ、そういう」
夕飯に誘われただけで誇らしげにふん、と鼻を鳴らす獄寺は、正直面白い。
イタリアで聞いたスモーキン・ボムの噂は嘘だったのかと疑うほど、イメージが変わったのが彼だった。
最初はどう接するべきかと思案していたが、その迷いはすぐに晴れることになる。非常に愉快で、かつ情に厚い男だ。よほど故意に地雷を踏みぬかない限り、悪くない関係を維持できると思う。
また、一人暮らしということもあってか奈々に気に掛けられており、夕飯に呼ばれることもしばしば。沢田家の準レギュラーメンバーと化している。
ツナの部屋には見慣れない鞄が置かれている。普段身軽な獄寺が、小さくはない鞄を持ってくるとは珍しい。
「泊まり?」
「オレが宿題見てもらいたくてさ」
「10代目のためとあらば徹夜でもお付き合いしますよ!」
「いや、そこまではオレが無理」
「ボクも少し教えてほしいところがある」
「あ?てめぇは10代目のついでだ、ついで」
ちなみに、レイ自身は獄寺から特に敬意を持った対応はされていない。
いくらツナと従妹とは言え、ボンゴレと直接の血縁関係はないし、何よりそんな態度をされたら気持ち悪くて仕方ないので、これでいい。
「そうだ、あと5分くらいで夕飯できるって」
「んー、分かった」
ツナは緩慢な動きでマンガ本を閉じ、机の上に置いた。獄寺は雑誌を自身の鞄に突っ込み、「んじゃ、お母さまのお手伝いにいってきます!」と宣言し、一足先に部屋を出ていった。
「ツナ、ボク達も行こう」
「うん。腹減ったなぁ」
無防備に伸びをするその背中に、ふと悪戯心が湧いた。
そっと短剣を向ける。もちろん、鞘から抜くことはしない。そのまま背中に剣先を当て、軽く押し込む。厚くない背中の肉の奥、肋骨で短剣は止まる。
ツナが不思議そうに振り返り、そして硬直した。
「え……?な、なに……」
当然のように困惑しているが、予想していたほどの狼狽え方はしていない。
しばらく会わない間に、彼はどれほどの修羅場を潜り抜けてきたのだろうか。少なくとも、こうして刃を向けられても腰を抜かしたりしない程度には、色々と経験をしてきたのだろう。
チワワに吠えられただけで泣いていた昔とは、もうずいぶん変わってしまった。
「何でもないよ」
「え……、は!?ちょ、ちょっと!何だよ今の!」
「驚かせてごめん。超直観っていうのがどんなものか知りたかったんだ」
「どんなものって……!」
あまり納得していない様子ではあったが、最終的に「まあ……、リボーンみたいにマジで発砲したりしたわけじゃないし」と言って許してくれた。
ツナの基準がだいぶ緩くなってしまっている。これは少しばかり心配だ。
まだ少しむくれながらも「先に降りてるからな」と言い、再度無防備に背中を向けて部屋を出ていく。
あんなことがあってなお、信頼の表れか、あるいは何か起きても対処ができるという自信の表れだろうか。
背中を眺めて呆けていると、足元に気配を感じた。
「随分な悪戯しやがって」
「リボーン……」
「ま、平和ボケしてきたツナにはいい刺激だな。これからもやってやれ」
「それはボクの役割じゃないでしょ」
ボルサリーノの下から、釣り上げられた口端が見える。相変わらず、教え子には厳しい人だ。
不意に帽子のつばが持ち上がり、大きな黒い瞳がしっかりとレイを捉える。責めるわけでもなく、ただ見ているだけの目だ。
「お前の願いは叶いそうか?」
「どうだろうね」
もうすでにほとんど肌の色と馴染んで分かりづらくなった左手首の痣を、そっと右手で撫でる。
「まだちょっと勇気がないかな」
「ンな状態じゃ一生無理だな。どっちにしても、アレが片付かなきゃお前は進めねぇだろ」
「……そう、だね」
「まったく……。さっさと行くぞ。ママンのせっかくの飯が冷めちまう」
リボーンが少し長くなった足で廊下を歩いていく。気に掛けてくれているのだろうな、と思う。
「本当に、どうしようね」
どういった感情を発露させるべきか分からず、結局浮かんだのは苦笑いだった。
今抱えている恐れも、隠している願いも、どちらも打ち明けるには勇気がいる。恐れが解消し、願いが叶う保証もない。どうしたものだか。
「レイー!早く降りて来いって!」
階下からツナの声がする。いったん考えるのは止めよう。せっかくの美味しいご飯が台無しになってしまう。
「今行く!」
そっと部屋のドアを閉めて、階段を駆け下りた。
→
おまけ。転入当日、教室で紹介をされる前の話。
「レイー!」
「オカエ、リー!」
「うわ、どうしたの」
玄関の扉を開けると、ランボとイーピンが飛び付いてきた。ランボに関しては鼻水を垂らすほどに泣いている。
「あ、レイ姉おかえり!」
「おかえりなさい。その子、リボーンにちょっかい掛けて返り討ちにあったのよ」
「ああ、なるほど……」
フゥ太とビアンキもリビングから顔を出す。当のリボーンは、ビアンキの腕の中ですやすやと眠っていた。
リボーンの呪いが解けたとか何とかの話は聞いたが、まだ体は園児にも満たないので昼寝をすることも多いようだ。
昔からずっと変わらないリボーンが成長していくことが不思議でたまらない。一体どうなるのだろう。
足元にまとわりつく子どもをいなしながら靴を脱ぐ。リビングの奥から奈々の声が聞こえた。
「おかえりレイちゃん。あと10分くらいでご飯できるから、ツっ君達呼んできてー」
「はーい」
自室で制服から部屋着に着替え、レイはドアをノックする。
「ツナ、入るよ」
「どうぞー」
部屋の中ではツナと獄寺がくつろいでいた。ツナはマンガを、獄寺はよく分からない生物が描かれた雑誌を読んでいる。
「おかえり」
「ただいま。獄寺、来てたんだ」
「右腕だからな」
「関係あるか?」
「たりめーだろ」
「母さんが獄寺君も夕飯食べてけって」
「ああ、そういう」
夕飯に誘われただけで誇らしげにふん、と鼻を鳴らす獄寺は、正直面白い。
イタリアで聞いたスモーキン・ボムの噂は嘘だったのかと疑うほど、イメージが変わったのが彼だった。
最初はどう接するべきかと思案していたが、その迷いはすぐに晴れることになる。非常に愉快で、かつ情に厚い男だ。よほど故意に地雷を踏みぬかない限り、悪くない関係を維持できると思う。
また、一人暮らしということもあってか奈々に気に掛けられており、夕飯に呼ばれることもしばしば。沢田家の準レギュラーメンバーと化している。
ツナの部屋には見慣れない鞄が置かれている。普段身軽な獄寺が、小さくはない鞄を持ってくるとは珍しい。
「泊まり?」
「オレが宿題見てもらいたくてさ」
「10代目のためとあらば徹夜でもお付き合いしますよ!」
「いや、そこまではオレが無理」
「ボクも少し教えてほしいところがある」
「あ?てめぇは10代目のついでだ、ついで」
ちなみに、レイ自身は獄寺から特に敬意を持った対応はされていない。
いくらツナと従妹とは言え、ボンゴレと直接の血縁関係はないし、何よりそんな態度をされたら気持ち悪くて仕方ないので、これでいい。
「そうだ、あと5分くらいで夕飯できるって」
「んー、分かった」
ツナは緩慢な動きでマンガ本を閉じ、机の上に置いた。獄寺は雑誌を自身の鞄に突っ込み、「んじゃ、お母さまのお手伝いにいってきます!」と宣言し、一足先に部屋を出ていった。
「ツナ、ボク達も行こう」
「うん。腹減ったなぁ」
無防備に伸びをするその背中に、ふと悪戯心が湧いた。
そっと短剣を向ける。もちろん、鞘から抜くことはしない。そのまま背中に剣先を当て、軽く押し込む。厚くない背中の肉の奥、肋骨で短剣は止まる。
ツナが不思議そうに振り返り、そして硬直した。
「え……?な、なに……」
当然のように困惑しているが、予想していたほどの狼狽え方はしていない。
しばらく会わない間に、彼はどれほどの修羅場を潜り抜けてきたのだろうか。少なくとも、こうして刃を向けられても腰を抜かしたりしない程度には、色々と経験をしてきたのだろう。
チワワに吠えられただけで泣いていた昔とは、もうずいぶん変わってしまった。
「何でもないよ」
「え……、は!?ちょ、ちょっと!何だよ今の!」
「驚かせてごめん。超直観っていうのがどんなものか知りたかったんだ」
「どんなものって……!」
あまり納得していない様子ではあったが、最終的に「まあ……、リボーンみたいにマジで発砲したりしたわけじゃないし」と言って許してくれた。
ツナの基準がだいぶ緩くなってしまっている。これは少しばかり心配だ。
まだ少しむくれながらも「先に降りてるからな」と言い、再度無防備に背中を向けて部屋を出ていく。
あんなことがあってなお、信頼の表れか、あるいは何か起きても対処ができるという自信の表れだろうか。
背中を眺めて呆けていると、足元に気配を感じた。
「随分な悪戯しやがって」
「リボーン……」
「ま、平和ボケしてきたツナにはいい刺激だな。これからもやってやれ」
「それはボクの役割じゃないでしょ」
ボルサリーノの下から、釣り上げられた口端が見える。相変わらず、教え子には厳しい人だ。
不意に帽子のつばが持ち上がり、大きな黒い瞳がしっかりとレイを捉える。責めるわけでもなく、ただ見ているだけの目だ。
「お前の願いは叶いそうか?」
「どうだろうね」
もうすでにほとんど肌の色と馴染んで分かりづらくなった左手首の痣を、そっと右手で撫でる。
「まだちょっと勇気がないかな」
「ンな状態じゃ一生無理だな。どっちにしても、アレが片付かなきゃお前は進めねぇだろ」
「……そう、だね」
「まったく……。さっさと行くぞ。ママンのせっかくの飯が冷めちまう」
リボーンが少し長くなった足で廊下を歩いていく。気に掛けてくれているのだろうな、と思う。
「本当に、どうしようね」
どういった感情を発露させるべきか分からず、結局浮かんだのは苦笑いだった。
今抱えている恐れも、隠している願いも、どちらも打ち明けるには勇気がいる。恐れが解消し、願いが叶う保証もない。どうしたものだか。
「レイー!早く降りて来いって!」
階下からツナの声がする。いったん考えるのは止めよう。せっかくの美味しいご飯が台無しになってしまう。
「今行く!」
そっと部屋のドアを閉めて、階段を駆け下りた。
→
おまけ。転入当日、教室で紹介をされる前の話。