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暗い廊下に人影が見える。窓越しに夜の海を眺めているのは、レイだった。
「レイ」
呼び掛ければ、影はパッとこちらを向いた。
「ディーノさん」
今は亡き親友の妹、今では兄弟を持たない自分にとっても妹のような弟のような存在となっていた。
この子は今年で15歳となる。アジア系ということもあり、同年代のイタリア人に比べて小柄だ。
とはいえそこらのチンピラにはくらいは返り討ちにできるし、大人のマフィア相手でもある程度はやり過ごすだけの実力はあるだろう。
そもそも一ファミリーのボスである以上、血縁関係のない、親友の妹というだけの存在に肩入れすることはできない。
理解のあるファミリーばかりとは言え、予期せぬところで要らぬ不和や問題を生む可能性も高い。
だからこそ自分の身だけでも守れるように、そしていざとなればファミリーの一つの駒として動けるよう努力していることはよく知っている。そして人を殺める技術を持ち、その経験があることも知っている。ディーノが必要以上に気に掛けなければならないほどほど弱くはないのだ。
それでも不安だった。あの弟分達のように突如として運命の大波に翻弄されないか、親友のように何かの拍子に二度と会えなくなってしまうのではないか、あの時のように目を真っ赤に腫らして泣いたりしていないだろうか。
「自分に何かあったら妹を頼むよ」と笑った親友を思い出す度に、独り善がりな不安に苛まれて中々その手を放してやれずにいた。
同時に、いつまでもここに置いておいていいのかという迷いもある。
学校に通わせていないのだ。イタリアの義務教育は6歳から16歳までとなっているが、本人が行きたがらないために、レイはそのどれもほとんど経験していない。
勉強だけならロマーリオをはじめとしたファミリーの面々が暇潰しがてら教えているし、本人も書庫を活用して好きに自習している。年齢相応の学力や教養は身についている。
問題は友人と呼べる存在がいないことだった。
ファミリーの面々は言わずもがな、町の人々もレイのことは受け入れており、おつかいにやればオマケに埋もれて抱えて帰ってくることも少なくない。
ただ本人に友人を作る気がないのか、あるいは方法を知らないのか。同世代の子どもと一緒に何かしているという話を聞いたことがない。
正確には一人だけそこそこの頻度で会っている同年代の者がいるが、相手はレイに身のこなしや戦い方を教えた張本人だ。傍目にはレイが一方的に切り付けられたり蹴り飛ばされたりと、実地訓練さながらのドライな関係で、友人とは言い難い関係性だと聞いている。
勝手な願いであることは承知しているが、友人を作ってほしかった。かけがえのない友人と出会い、この年頃でしか得られないきらめくような感情を記憶の中に残してほしい。
一方で、アジア系のこの子がイタリアの学校で上手く馴染めるかという点に不安もあった。
ヒロヤも日本人であることを理由に孤立していたことがある。全員が全員ではないが、人種の違いを受け入れられない人間はどこにでも存在するのだ。
そうこう悩む間に、日本でツナやその友人たちと出会った。面々の個性が強すぎる点は否めないが、日に日に彼らならばレイとよい関係を築けるのではないかという気持ちが強まっていた。
特に京子やハル、クロームは、レイにとってもよき同性の友人となるような、そんな気がしていた。
そして今日、ツナ達と談笑するレイを目の当たりにしたのだ。
「今日あいつらと会ってどうだった?」
「楽しかったです。ツナに久しぶりに会えて嬉しかったし、あの二人も……獄寺と山本もいい人だと思います」
昼間の楽しかったひと時を噛み締めているようだ。しかし、同時にどこか他人事な物言いにも聞こえてくる。いい映画を見た後のように微かな笑顔を浮かべながら、レイ夜のアドリア海を眺めている。
「年の近い人達と一緒にいるのって、あんなに感じなんですね。ちょっと緊張したけど、楽しかった」
こちらに顔を向けて、今度こそしっかりと笑顔になったレイを前に、ディーノは一つ決意した。
「レイ、一つお前にやってほしいことがある」
突如真剣な声色になったディーノに、レイもさっと笑みを消して真面目な顔になる。
「それは、命令ですか?」
「あ、いや。そこまで大層なもんじゃなくてだな……。こう、提案的なものなんだよ」
「提案?」
首を傾げるレイの顔に一抹の寂しさを飲み込んだ。
そして精一杯の笑顔を浮かべながら、新しい世界へと強く背中を押す。
「お前はこれからツナ達と一緒に日本に、並盛に行け。そして、アイツ等と同じ学校に通ってこい」
「レイ」
呼び掛ければ、影はパッとこちらを向いた。
「ディーノさん」
今は亡き親友の妹、今では兄弟を持たない自分にとっても妹のような弟のような存在となっていた。
この子は今年で15歳となる。アジア系ということもあり、同年代のイタリア人に比べて小柄だ。
とはいえそこらのチンピラにはくらいは返り討ちにできるし、大人のマフィア相手でもある程度はやり過ごすだけの実力はあるだろう。
そもそも一ファミリーのボスである以上、血縁関係のない、親友の妹というだけの存在に肩入れすることはできない。
理解のあるファミリーばかりとは言え、予期せぬところで要らぬ不和や問題を生む可能性も高い。
だからこそ自分の身だけでも守れるように、そしていざとなればファミリーの一つの駒として動けるよう努力していることはよく知っている。そして人を殺める技術を持ち、その経験があることも知っている。ディーノが必要以上に気に掛けなければならないほどほど弱くはないのだ。
それでも不安だった。あの弟分達のように突如として運命の大波に翻弄されないか、親友のように何かの拍子に二度と会えなくなってしまうのではないか、あの時のように目を真っ赤に腫らして泣いたりしていないだろうか。
「自分に何かあったら妹を頼むよ」と笑った親友を思い出す度に、独り善がりな不安に苛まれて中々その手を放してやれずにいた。
同時に、いつまでもここに置いておいていいのかという迷いもある。
学校に通わせていないのだ。イタリアの義務教育は6歳から16歳までとなっているが、本人が行きたがらないために、レイはそのどれもほとんど経験していない。
勉強だけならロマーリオをはじめとしたファミリーの面々が暇潰しがてら教えているし、本人も書庫を活用して好きに自習している。年齢相応の学力や教養は身についている。
問題は友人と呼べる存在がいないことだった。
ファミリーの面々は言わずもがな、町の人々もレイのことは受け入れており、おつかいにやればオマケに埋もれて抱えて帰ってくることも少なくない。
ただ本人に友人を作る気がないのか、あるいは方法を知らないのか。同世代の子どもと一緒に何かしているという話を聞いたことがない。
正確には一人だけそこそこの頻度で会っている同年代の者がいるが、相手はレイに身のこなしや戦い方を教えた張本人だ。傍目にはレイが一方的に切り付けられたり蹴り飛ばされたりと、実地訓練さながらのドライな関係で、友人とは言い難い関係性だと聞いている。
勝手な願いであることは承知しているが、友人を作ってほしかった。かけがえのない友人と出会い、この年頃でしか得られないきらめくような感情を記憶の中に残してほしい。
一方で、アジア系のこの子がイタリアの学校で上手く馴染めるかという点に不安もあった。
ヒロヤも日本人であることを理由に孤立していたことがある。全員が全員ではないが、人種の違いを受け入れられない人間はどこにでも存在するのだ。
そうこう悩む間に、日本でツナやその友人たちと出会った。面々の個性が強すぎる点は否めないが、日に日に彼らならばレイとよい関係を築けるのではないかという気持ちが強まっていた。
特に京子やハル、クロームは、レイにとってもよき同性の友人となるような、そんな気がしていた。
そして今日、ツナ達と談笑するレイを目の当たりにしたのだ。
「今日あいつらと会ってどうだった?」
「楽しかったです。ツナに久しぶりに会えて嬉しかったし、あの二人も……獄寺と山本もいい人だと思います」
昼間の楽しかったひと時を噛み締めているようだ。しかし、同時にどこか他人事な物言いにも聞こえてくる。いい映画を見た後のように微かな笑顔を浮かべながら、レイ夜のアドリア海を眺めている。
「年の近い人達と一緒にいるのって、あんなに感じなんですね。ちょっと緊張したけど、楽しかった」
こちらに顔を向けて、今度こそしっかりと笑顔になったレイを前に、ディーノは一つ決意した。
「レイ、一つお前にやってほしいことがある」
突如真剣な声色になったディーノに、レイもさっと笑みを消して真面目な顔になる。
「それは、命令ですか?」
「あ、いや。そこまで大層なもんじゃなくてだな……。こう、提案的なものなんだよ」
「提案?」
首を傾げるレイの顔に一抹の寂しさを飲み込んだ。
そして精一杯の笑顔を浮かべながら、新しい世界へと強く背中を押す。
「お前はこれからツナ達と一緒に日本に、並盛に行け。そして、アイツ等と同じ学校に通ってこい」