再会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
応接間の窓から橙の光が強く差し込んできた。
「そろそろ帰るぞ、あんま遅くなって9代目に余計な心配かけるわけにいかねーしな」
リボーンの一言で皆がぞろぞろと立ち上がる。
「アンディコ、送ってやれ」
「了解した」
「そんな、だ、大丈夫です!」
「イタリアの夜を舐めるなよ、ツナ。昼間のチンピラよりヤベェ奴がうじゃうじゃいるんだ。アジア系三人だけなんてカモもいいとこだぜ。無駄な騒ぎに巻き込まれたくなければおとなしくこいつを連れてけ」
ディーノより頭一つ半は大きい男が前に出る。五分刈りの赤い髪、顔にはまだ新しい、鋭利なもので切ったような傷が複数。その身長も相まって威圧感がとんでもないことになっている。
物理で圧倒されて慄くツナにレイが耳打ちした。
「アンディコさん、優しい人だよ。あの顔の傷も昨日路地裏で猫の喧嘩を止めてたからなんだ」
「おらチビ助、いらんことをボンゴレに吹き込むんじゃねえ」
濃い眉をハの字にしながらアンディコが苦言を呈する。
「お茶とお菓子、すごく美味しかったです」
「そいつは良かった。こいつはママンへの土産だ」
ずい、と差し出される紙袋には茶葉の入った缶と、お菓子の詰め合わせだった。いつの間にか大所帯になった沢田家への配慮なのか、やたらと多い。
「こ、こんなに!?」
「ママンにはいつも世話になってるからな!ツナ、贔屓目なしにここはいい街だ。いつでもお前のこと歓迎するぜ」
「はい、ありがとうございます!また来ます」
ツナの返事に笑顔を返すと、ディーノはななめ後ろに立つレイの背を軽く押した。一歩前に出たレイはツナの目の前に立つ形になった。
「えっと、レイ、またな」
「うん、また」
少しぎこちない再会の約束。獄寺と山本にも軽く手を挙げるレイを尻目に、一行はキャバッローネ邸の敷地から出て行った。
「えっと……、アンディコさん」
「どうした?」
「わざわざ送っていただいてありがとうございます」
「やめろやめろ、そんなんで一々礼なんか言ってたら身が持たんぞ」
低く落ち着いた声でアンディコは笑う。キャバッローネはボスといいファミリーの面々といい、根が穏やかな人間が多いようだ。
「貴方がボンゴレの次期ボスとその守護者ってのもあるが、何よりボスやチビ助にとっての大事な客だ。ここできちんと送り届けなけりゃオレが恥をかく」
アンディコの一歩は大きいが、ツナ達に合わせているのか歩調は少し遅い。強さや見た目だけではない、こういった心遣いができるからこそ、ディーノは護衛にこの男を選んだのだと理解した。
「『チビ助』ってレイのことですか」
ツナが問うと、アンディコは頷く。
「アイツが本当にガキだった頃から知ってるからな。もうそこまで子どもでないのは分かってるんだが、オレのように『チビ』呼ばわりが抜けん奴が多いんだ」
「な、なるほど……」
「アイツの兄貴、ヒロヤのことも知ってる。貴方と似たような髪色だったな、顔立ちは少し違うようだが」
懐かしそうに目を細めてツナを見たアンディコは、そのまま続ける。
「ボスとヒロヤは昔からの友人でな」
二人はディーノがまだキャバッローネファミリーのボスになる前に出会い、いつの間にか唯一無二の親友となっていた。
へなちょこだったディーノと、おっとりとしていたヒロヤ。
時が経ち、ボスとしての覚悟を決めたディーノと、両親を失ってから妹を守りながらもディーノのために生きる覚悟を決めたヒロヤ。
このまま二人は背中を預け合う生涯の友なるだろう、そう誰もが思っていた。
しかし。
「ヒロヤがいなくなったときのボスは、まあ見てられなかった」
血を吐きそうなほどに泣き叫び、一人残されたレイを見る度に己の不甲斐なさを責めたという。そしてレイも、兄の死とそれに苛まれるディーノの姿を目の当たりにしてかなり情緒不安定になっていた。
今でこそ二人とも立ち直り、幸い酷いトラウマも残っていないが、これを『強さ』の一言で片づけることは、アンディコにはできなかったという。
「ボスにとってのヒロヤは……、そうだな、貴方にとっての後ろの二人みたいなもんだろう」
ランボと口論している獄寺と、リボーンを肩に乗せた山本は数歩後ろを歩いている。
もしも彼等を失うことになったらきっと耐えられないことはツナにも十分に分かっていた。
リング争奪戦の時、継承式の数日前。あの時の喪失感や絶望感はもう二度と味わいたくない。
「オレに言われずとも、貴方はわかっているだろうが……。仲間の枠に収まりきらない友を失うことは何より辛いぞ」
「……はい」
「そろそろ帰るぞ、あんま遅くなって9代目に余計な心配かけるわけにいかねーしな」
リボーンの一言で皆がぞろぞろと立ち上がる。
「アンディコ、送ってやれ」
「了解した」
「そんな、だ、大丈夫です!」
「イタリアの夜を舐めるなよ、ツナ。昼間のチンピラよりヤベェ奴がうじゃうじゃいるんだ。アジア系三人だけなんてカモもいいとこだぜ。無駄な騒ぎに巻き込まれたくなければおとなしくこいつを連れてけ」
ディーノより頭一つ半は大きい男が前に出る。五分刈りの赤い髪、顔にはまだ新しい、鋭利なもので切ったような傷が複数。その身長も相まって威圧感がとんでもないことになっている。
物理で圧倒されて慄くツナにレイが耳打ちした。
「アンディコさん、優しい人だよ。あの顔の傷も昨日路地裏で猫の喧嘩を止めてたからなんだ」
「おらチビ助、いらんことをボンゴレに吹き込むんじゃねえ」
濃い眉をハの字にしながらアンディコが苦言を呈する。
「お茶とお菓子、すごく美味しかったです」
「そいつは良かった。こいつはママンへの土産だ」
ずい、と差し出される紙袋には茶葉の入った缶と、お菓子の詰め合わせだった。いつの間にか大所帯になった沢田家への配慮なのか、やたらと多い。
「こ、こんなに!?」
「ママンにはいつも世話になってるからな!ツナ、贔屓目なしにここはいい街だ。いつでもお前のこと歓迎するぜ」
「はい、ありがとうございます!また来ます」
ツナの返事に笑顔を返すと、ディーノはななめ後ろに立つレイの背を軽く押した。一歩前に出たレイはツナの目の前に立つ形になった。
「えっと、レイ、またな」
「うん、また」
少しぎこちない再会の約束。獄寺と山本にも軽く手を挙げるレイを尻目に、一行はキャバッローネ邸の敷地から出て行った。
「えっと……、アンディコさん」
「どうした?」
「わざわざ送っていただいてありがとうございます」
「やめろやめろ、そんなんで一々礼なんか言ってたら身が持たんぞ」
低く落ち着いた声でアンディコは笑う。キャバッローネはボスといいファミリーの面々といい、根が穏やかな人間が多いようだ。
「貴方がボンゴレの次期ボスとその守護者ってのもあるが、何よりボスやチビ助にとっての大事な客だ。ここできちんと送り届けなけりゃオレが恥をかく」
アンディコの一歩は大きいが、ツナ達に合わせているのか歩調は少し遅い。強さや見た目だけではない、こういった心遣いができるからこそ、ディーノは護衛にこの男を選んだのだと理解した。
「『チビ助』ってレイのことですか」
ツナが問うと、アンディコは頷く。
「アイツが本当にガキだった頃から知ってるからな。もうそこまで子どもでないのは分かってるんだが、オレのように『チビ』呼ばわりが抜けん奴が多いんだ」
「な、なるほど……」
「アイツの兄貴、ヒロヤのことも知ってる。貴方と似たような髪色だったな、顔立ちは少し違うようだが」
懐かしそうに目を細めてツナを見たアンディコは、そのまま続ける。
「ボスとヒロヤは昔からの友人でな」
二人はディーノがまだキャバッローネファミリーのボスになる前に出会い、いつの間にか唯一無二の親友となっていた。
へなちょこだったディーノと、おっとりとしていたヒロヤ。
時が経ち、ボスとしての覚悟を決めたディーノと、両親を失ってから妹を守りながらもディーノのために生きる覚悟を決めたヒロヤ。
このまま二人は背中を預け合う生涯の友なるだろう、そう誰もが思っていた。
しかし。
「ヒロヤがいなくなったときのボスは、まあ見てられなかった」
血を吐きそうなほどに泣き叫び、一人残されたレイを見る度に己の不甲斐なさを責めたという。そしてレイも、兄の死とそれに苛まれるディーノの姿を目の当たりにしてかなり情緒不安定になっていた。
今でこそ二人とも立ち直り、幸い酷いトラウマも残っていないが、これを『強さ』の一言で片づけることは、アンディコにはできなかったという。
「ボスにとってのヒロヤは……、そうだな、貴方にとっての後ろの二人みたいなもんだろう」
ランボと口論している獄寺と、リボーンを肩に乗せた山本は数歩後ろを歩いている。
もしも彼等を失うことになったらきっと耐えられないことはツナにも十分に分かっていた。
リング争奪戦の時、継承式の数日前。あの時の喪失感や絶望感はもう二度と味わいたくない。
「オレに言われずとも、貴方はわかっているだろうが……。仲間の枠に収まりきらない友を失うことは何より辛いぞ」
「……はい」