四十路男の回避術
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リセット・Sは俺が生まれたときからいた。
小さい時はコレが異常だなんて知らなかったし、親や友達に話すと決まって変な顔をされたのを覚えている。夜に親が話していた。俺にはイマジナリーフレンドがいるのだろうと。
その日から俺はコイツの話をすることをやめた。
コイツを否定した訳じゃあなく、相手に合わせることが大事だと思ったのだ。コイツは存在する。けれど、周りには見えていない。それだけだ。それに、リセット・Sは特別な力を持っている。時間を巻き戻すことが出来るのだ。俺は何度もリセット・Sに助けられている。ある時は豪雨の日、ある時は通り魔に出会う日、ある時は交通事故の日、俺はそのすべてを回避してきた。
そして、今俺はもう四十路になった。
事故や災害にあったことはまだ無い。
これからも何の弊害もなく真面目に仕事をして定年まで過ごす予定だった。
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「本当に何なんだよ今日は、厄日ってやつか?」
いつも通りの時間に出勤した俺は、いつもの通勤路で大きな交通事故にあった。当然リセット・Sで巻き戻して違う道から言ったわけだが。帰宅途中にもう一度巻き戻さなくちゃいけない状況になるなんて思いもしなかった。
しかも今度は殺人だ。
更に犯人が俺の目の前にいると来た。
「お前……いや確認する必要もないか…」
犯人の男が俺に手を伸ばす。
俺はのんきしている場合じゃないと、リセット・Sを出した。男がリセット・Sを見て驚く。
俺もその反応を見て驚く。
コイツはリセット・Sが見えている!?
犯人の男の殺気がぶわっと広がった。
リセット・Sを警戒したのだろう。
そして、男が一歩踏み出した瞬間、喉の奥が燃えるように熱くなった。続いて激しい痛みがはしる。
「うげっ、ッう!!!!???」
俺の喉から信じられない事だが大量のカミソリが出てきた。いってぇッ!
「くそっ、………リセット・Sッ!!!」
目の前の景色がどんどん後ろに遠ざかっていく。
そして、パッと白く光り、気が付くと俺は自分の店の前に立っていた。焦って発動させたが、リセット・Sはいつも通り時間を戻してくれたみたいだ。喉を触ってみても何の傷もない。無事に戻ってこられたようだ。まったく、ほんとうに今日はろくな目にあわない。深くため息を付いた。あの男に会わないためにも今日は、遠回りをして外食をしてから帰ろう。オレはあと20年、平穏無事に働きたいんだ。