エルデナ王国物語
――廊下の空気はひんやりとしていて、時折遠くから魔物の声が聞こえてくる。
ここはお城の中、しっかりと湧き潰しがしてあるから魔物がスポーンすることはないと思うけど、この世界の夜は何年過ごしていてもやっぱりどこか怖い。
庭園にも出られる大きな大きな廊下はランタンの赤い光が灯されていて、じゃぱぱさんの話を最後まで聞かずに飛び出してしまった私はトボトボと歩いていた。
静寂を破るように風が吹き抜ける。石柱の間から差し込む月明かりが、私の足元を淡い光で照らし出していた。
前回の討伐で私は別のパーティに属していた。
現エルデナ王国の国王のじゃぱぱさん、ギルドマスターのたっつんさん、えとさんの魔法の師匠である賢者のもふくん。
そして私の最愛にして魂の片割れであった弟のヌーフ。ヌーフは私の双子の弟で魔剣の使い手だった。
顔は私にそっくりだったけど桃色の髪の毛は短髪で、瞳は私よりも赤みがかっているピンク色。「勇者」だった。
私が「静」ならヌーフは「動」。
長寿である私たちエルフにとっての人間と接点は人生の中の一瞬・一コマの出来事で
記憶にも残らない、エンダードラゴンの討伐が終わったらまた気が遠くなるような長い年月をともに歩んでいくものだと思っていた。
――だけどヌーフはこの世から去ってしまった。
エルフは長寿というだけで永遠の命を持っているわけではない。
命が尽きれば復活することはない、この当たり前のことを知る出来事だった。
ヌーフはエンダードラゴンに深手を与えながらもエンダードラゴンから身を挺して私を仲間を守るようにして倒れこの世をさったのだ。
「のあ……ねぇさん…………僕は先に逝くけれど
あなたの幸せを願っているよ………………。認めたくはないけど
あい……つはいい奴だよオレが保証する。」
ヌーフは私にまるで後を追ってくるなという様な言葉を残して息を引き取ったのだ。
私を一人にしないで…
今は傍にいる人たちもいつか私を置いて逝ってしまうのに…
そうしたら私は一人ぼっちになっちゃう…。
「――っ、ふっ……。」
あれから何年もたったはずなのに思い出すと、エンダードラゴンへの憎しみの熱と、深い絶望の冷たさが私を覆う。
あれだけ泣いたのに、また涙が止まらなかった。
――静寂だったはずの石畳の廊下に誰かの足音が鳴り響く。
それは徐々に近づいてきてこの広いお城の中をどれだけ走ったのだろうと思うぐらい肩で息をするじゃぱぱさんがやってきた。
「のあさん。…………はぁ……はぁ……ようやく見つけた。」
「…………じゃぱぱさん…………。」
息を整えながらじゃぱぱさんが昔のように八重歯をのぞかせながら人懐っこい笑顔をみせた。
そして次の瞬間じゃパパさんは涙でぐしゃぐしゃの顔をした私の腕をとり自分のほうへと引き寄せた。
私はその大きな力にあがなうこともせずじゃぱぱさんの胸の中にすっぽりと収まった。
昔と同じ……仲間のことになると一生懸命で、必死になってくれるやさしい人。
じゃぱぱさんの腕の中はとっても暖かかった。
「さっきは、大事な話の途中で逃げ出してごめんなさい。」
じゃぱぱさんの胸に顔をうずめたまま小さな声で謝った。
するとじゃぱぱさんは私の背に回した腕に力を込める。
「本当はのあさんには聞かせたくなかった……泣かせたかったわけじゃないんだ……ごめんな。」
じゃぱぱさんの心臓の音がドクドクと鳴っている。
国の王様をこんなに走らせて申し訳なかったな…。
私はじゃぱぱさんの胸に手を当てゆっくりと押しじゃぱぱさんの抱擁から抜け出した。
「…………わかってます。ごめんなさい。私も子供みたいに癇癪を…。慰めてくれてありがとうございます。」
今できる精一杯の笑顔でじゃぱぱさんをみた。
するとじゃぱぱさんは困ったような表情を浮かべたと思ったら「ふっ…」とため息を漏らしながらほほ笑んだ。
「別にのあさんを子供みたいに思っているわけでも、あやしているつもりはないよ。
昔から言っているでしょ……好きな人には笑顔でいてほしいんだよ……」
じゃぱぱさんの大きく骨ばった指が私の髪を一束すくい
「あのさ……討伐から帰ってきたら、昔みたいに髪……伸ばさない?」
そういうと、長い指が、涙でぬれた私の頬をなでた。
ここはお城の中、しっかりと湧き潰しがしてあるから魔物がスポーンすることはないと思うけど、この世界の夜は何年過ごしていてもやっぱりどこか怖い。
庭園にも出られる大きな大きな廊下はランタンの赤い光が灯されていて、じゃぱぱさんの話を最後まで聞かずに飛び出してしまった私はトボトボと歩いていた。
静寂を破るように風が吹き抜ける。石柱の間から差し込む月明かりが、私の足元を淡い光で照らし出していた。
前回の討伐で私は別のパーティに属していた。
現エルデナ王国の国王のじゃぱぱさん、ギルドマスターのたっつんさん、えとさんの魔法の師匠である賢者のもふくん。
そして私の最愛にして魂の片割れであった弟のヌーフ。ヌーフは私の双子の弟で魔剣の使い手だった。
顔は私にそっくりだったけど桃色の髪の毛は短髪で、瞳は私よりも赤みがかっているピンク色。「勇者」だった。
私が「静」ならヌーフは「動」。
長寿である私たちエルフにとっての人間と接点は人生の中の一瞬・一コマの出来事で
記憶にも残らない、エンダードラゴンの討伐が終わったらまた気が遠くなるような長い年月をともに歩んでいくものだと思っていた。
――だけどヌーフはこの世から去ってしまった。
エルフは長寿というだけで永遠の命を持っているわけではない。
命が尽きれば復活することはない、この当たり前のことを知る出来事だった。
ヌーフはエンダードラゴンに深手を与えながらもエンダードラゴンから身を挺して私を仲間を守るようにして倒れこの世をさったのだ。
「のあ……ねぇさん…………僕は先に逝くけれど
あなたの幸せを願っているよ………………。認めたくはないけど
あい……つはいい奴だよオレが保証する。」
ヌーフは私にまるで後を追ってくるなという様な言葉を残して息を引き取ったのだ。
私を一人にしないで…
今は傍にいる人たちもいつか私を置いて逝ってしまうのに…
そうしたら私は一人ぼっちになっちゃう…。
「――っ、ふっ……。」
あれから何年もたったはずなのに思い出すと、エンダードラゴンへの憎しみの熱と、深い絶望の冷たさが私を覆う。
あれだけ泣いたのに、また涙が止まらなかった。
――静寂だったはずの石畳の廊下に誰かの足音が鳴り響く。
それは徐々に近づいてきてこの広いお城の中をどれだけ走ったのだろうと思うぐらい肩で息をするじゃぱぱさんがやってきた。
「のあさん。…………はぁ……はぁ……ようやく見つけた。」
「…………じゃぱぱさん…………。」
息を整えながらじゃぱぱさんが昔のように八重歯をのぞかせながら人懐っこい笑顔をみせた。
そして次の瞬間じゃパパさんは涙でぐしゃぐしゃの顔をした私の腕をとり自分のほうへと引き寄せた。
私はその大きな力にあがなうこともせずじゃぱぱさんの胸の中にすっぽりと収まった。
昔と同じ……仲間のことになると一生懸命で、必死になってくれるやさしい人。
じゃぱぱさんの腕の中はとっても暖かかった。
「さっきは、大事な話の途中で逃げ出してごめんなさい。」
じゃぱぱさんの胸に顔をうずめたまま小さな声で謝った。
するとじゃぱぱさんは私の背に回した腕に力を込める。
「本当はのあさんには聞かせたくなかった……泣かせたかったわけじゃないんだ……ごめんな。」
じゃぱぱさんの心臓の音がドクドクと鳴っている。
国の王様をこんなに走らせて申し訳なかったな…。
私はじゃぱぱさんの胸に手を当てゆっくりと押しじゃぱぱさんの抱擁から抜け出した。
「…………わかってます。ごめんなさい。私も子供みたいに癇癪を…。慰めてくれてありがとうございます。」
今できる精一杯の笑顔でじゃぱぱさんをみた。
するとじゃぱぱさんは困ったような表情を浮かべたと思ったら「ふっ…」とため息を漏らしながらほほ笑んだ。
「別にのあさんを子供みたいに思っているわけでも、あやしているつもりはないよ。
昔から言っているでしょ……好きな人には笑顔でいてほしいんだよ……」
じゃぱぱさんの大きく骨ばった指が私の髪を一束すくい
「あのさ……討伐から帰ってきたら、昔みたいに髪……伸ばさない?」
そういうと、長い指が、涙でぬれた私の頬をなでた。