エルデナ王国物語

ギルドから城へ向かう前、たっつんから餞別にと冒険には欠かせない携帯食をたくさんもらった。
えとはそれらを魔法でコンパクトにまとめ各々の鞄やポーチにいれた。
ゆあんは防具と武器を、うりは小道具類の最終確認を、のあさんは最後までたっつんさん特性のケーキを堪能していた。


「頑張って来いよ!」


ギルドマスターのたっつんに声を掛けられ『レッド・アイ』一行はじゃぱぱ王が待つ城へと向かうのであった。







 建国時代からそびえ立つ幻想的な城は、青い空と白い雲を背景に、まるで一枚の絵画のように美しい姿をしていた。
高くそびえる尖塔は、プリズマリンブロックで覆われ、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
閃緑岩でできている城の壁はところどころ苔むし、蔦が絡まりあっているため年月を経た風合いが感じられる。
城の周囲には、様々な花々が咲き誇る庭園が広がり、色とりどりの花びらが風に揺れていた。


 城の入口には、巨大な鉄製の扉があり、精巧な彫刻が施されている。
城内に入ると内部は広々とした大広間が広がり、高い天井には美しいシーランタンのシャンデリアが吊るされている。
その光は、まるで海の中で珊瑚が輝いているかのように幻想的だった。
壁には、歴代の勇者たちの肖像画が飾られ、彼らの栄光の物語が語りかけてくるようだった。

 
 謁見の間に通された『レッド・アイ』のメンバー、ゆあん・うり・えと・のあは、現エルデナ王国の国王『じゃぱぱ』と妹姫、『るな』の前で片膝を立てこうべを垂れている。
じゃぱぱ達の側には側近の『ヒロ』とシャーマンの『どぬく』も控えていた。


「よく来てくれたね。みんな!!元気だった?」

 
 静粛な雰囲気を真っ先に壊したのは国王じゃぱぱの大声だった。
金糸の刺繍が施された緑色の服をまとったじゃぱぱは、堂々とした姿勢で立ち、レッド・アイのメンバーを笑顔で歓迎している。



「じゃぱさん……もっと威厳のある態度を……」



 じゃぱぱに意見したのは側近のヒロだ。常に冷静な表情を浮かべている彼だが、じゃぱぱの一声目に困った表情をしていた。白髪はきっちりと整えられていて、銀糸の刺繡が施された青色のローブを身にまとっている。

 
「ヒロくん。じゃっぴに威厳は無理。諦めた方がいい。」

 
歌う様に話をしたのはシャーマンのどぬくだ。獣人族の彼は神秘的な魅力を放っていた。長い白髪、赤と青の眼を左右に持つどぬくは絹の反物で作られた着物を身に纏っている。

 
「お兄様、嬉しい気持ちはるなも一緒です!」
 

水色のドレスを着たルナ姫は、天窓から差し込む光を受けてきらきらと輝いている。袖はふんわりとしたデザインで、彼女の腕を優しく包み込み、ウエスト部分には 白の花をあしらったレースの装飾が施されている。
水色の長い髪は、波のように流れ、髪飾りには小さな水色の花があしらわれていた。
久しぶりのレッド・アイのメンバーとの対面が嬉しいらしく柔らかく、微笑みその頬がピンクに染まっていた。


レッド・アイの4人は片膝をついたまま、ゆあんが代表して挨拶をした。


「こうして再びお目にかかることができ我々レッド・アイ一同至極光栄にございます。我々にお命じいただけることがあれば、全力を尽くして遂行いたします。どうか、御指示をお聞かせください。」

 
じゃぱぱは、ヒロから注意をされたのもあって一つ咳払いをしてから発した。


「面をあげ、楽にせよ。」


4人は顔をあげて玉座に座るじゃぱぱを見上げる形をとった。


「エンダードラゴンが完全復活した」


その一言でここにいる全員に緊張が走る。
エンダードラゴン――
古より復活をするとこのオーバーワードをネザー化しようとするドラゴン、人類の最大の敵だ。
そして何代もの勇者とその仲間達が戦いに挑んだが完全討伐には至っていない。
前回は十数年前、不運の死を遂げた勇者、ソードの『じゃぱぱ』、レンジャーの『たっつん』、賢者の『もふ』、ヒーラーの『のあ』のパーティが討伐に向かい、ドラゴンの勢力を削いできたはず……今回の復活は過去にない早さだ。


「早くないですか?」
眉間に皺を寄せながら、のあが言う。


「うん。早い。今回の戦いも厳しいものになると思うが、これが最後の戦いになる可能性が見えてきた。」
「どういう意味ですか?」
「どぬ、ヒロくん……説明を頼む。」


じゃぱぱがどぬくとヒロを指名した。


『古の龍、果てのクリスタルより力を得て再生ののち再び現る。
 今日の勇者、それを破壊し古の竜を打てば長き戦いの終焉を迎えるだろう』


シャーマンのどぬくは神秘的な歌のように言葉を紡いだ。
そしてこの場にいる人が全員その言葉の意味が理解できるよう、側近のヒロが補足した。


「古の龍、これは歴代の勇者一行が相対しているエンダードラゴンのことです。
 これまでドラゴンを瀕死の状態まで追い込んでも時がたてば復活していた。
 これの理由が『果てのクリスタルより力を得て再生』です。じゃぱさんには確認しましたが
 のあさん、過去の戦闘の場、エンダードラゴンが生息していた『ジ・エンド』で宙に浮く
 ピンク色の光輝く箱のようなものは浮いていませんでしたか?」


「…………あったよ。何個か覚えていないけれどかなりの数があってそこからエンダードラゴンに
 つながる線のようなものがみえていた。戦闘中に何個か壊れたけどもの凄い爆発で負傷者もでた。」


普段の柔らかい雰囲気は一切感じることのない、張りつめた声で話すのあ。


「そう、あれがエンダードラゴンのエネルギ―源だったんだ……。あれをすべて破壊してからでないと
 どんなにドラゴンを叩いても復活してくるってわけ。」


昔の戦闘を思い出すようにじゃぱぱの声も張りつめている。


「…………そんな。」
「のあさん?」


急に立ち上がったのあは震えていて、目にはいっぱいの涙を溜めていた。


「のあさん!!」
 
えとが呼びかけるのも聞かずのあはその場から駆け出し謁見の間から飛びだして行ってしまった。


「大丈夫、のあさんのところにはみんなへの話が終わったら俺がいくから…。」


突然の、のあの様子に驚きを隠せないえとを制するようにじゃぱぱは言った。


「つまり……俺たちは、これからジ・エンドに向かいエンダードラゴンのエネルギー源であるクリスタルを破壊してからエンダードラゴンを討伐すればいいってことですか?」


うりは、これまでの話をつなぎ合わせ自分たちに課せられる任務を導き出した。


「……そう。さっきも言った通り長きにわたるエンダードラゴン復活の理由も
 どぬくのいう通りならこれで終結を迎えることができると思う。
 ジ・エンドへの入り口は毎度変わるけど入口の方向を示すエンダーパールはすでに準備ができている
 明朝より出立しエンダードラゴン討伐に向かってほしい。」


じゃぱぱは自分よりも歳下の冒険者たちに自分達と同じ過酷な運命を背負わせることがどうしても辛かった
できることなら再度自身で戦いたい。
そんなじゃぱぱの気持ちを汲み、ゆあんは口を開いた


「これまでの冒険者たちの経験と知恵、そして今回の新たな情報を合わせて完全討伐してきますよ。
 運命の色(赤)を色濃く継いだ俺たちなら……。
 じゃぱぱ王とたっつんにしごかれて育った俺とうり、大魔法使いの生まれ変わりといわれるほどの
 えとさん、そして前回の経験者であり俺たちを癒してくれるヒーラーののあさんがいればきっと!」

ゆあんは、うりとえとのほうを向くと二人とも力強くいった。

「大丈夫ですよ、おこちゃま達だけだと危なっかしいけど、俺がしっかりサポートします。」とうり。
「頑張って、エンダードラゴンをぶっ飛ばしてきますね!」とえと。


じゃぱぱは言った。「ありがとう、みんな気をつけて……まずいと思ったら命を優先して帰ってくるように」


「言い忘れていたことがある。この詞が下りてきたときに見えたイメージがある。
 赤の炎、紫色の霧、黄色の光、これが良いことなのか悪いことなのかわからないけど君たちに伝えておくよ」


どぬくの言葉にえとはハッとした。


――最近繰り返し夢で見る景色と一緒だ。
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