エルデナ王国物語

――あんな風にじっと見つめられるとは思わなくて…手が震えた




まさかもらえるとは思っていなかった贈物。
ゆあんくんから受け取ったそれは私の魔力に反応して赤い光を灯していた。
レッドストーンは主に工業用途で使われることが多い鉱石だけど
きれいに磨かれてファセットカットされた石は宝石のようで、ゆあんくんの瞳のように赤くて透き通っていた。


ピアスを失くしてしまったのだと話したのは少し前のことなのに覚えていてくれたんだ。


贈物よりもそのことがうれしくて、身に着ける前にしっかり見ておきたいと思って
ギルドの室内を灯すランプの光にかざしてみたり、意識的に魔力を出力してみてきらきらと光るピアスを眺めていた。


「折角だからつけて見せてくれない?」


腕を組んでふんわりと笑いながらゆあんくんはいった。
最後にパーティを組んで討伐に出たのはいつだったっけ?
まだ数か月くらいしか経っていないはずなのに、また身長が伸びた気がする。
声も低くなったかな…さっき呼びかけられたとき、知らない男の人に声をかけられたと思ってドキッとした。


「うん。」


私は、コンパクトに収納してきた鏡を魔法で出して、もらったピアスをさっそくつけてみることにした。
ただ、ピアスをつけるだけだったら鏡なんてなくてもいいけど折角なら初めてつけてみた姿は見てみたい。
外した留め具を落とさないようにしながら鏡に自分の姿を映して着けようとする。すると


「相変わらず魔法ってすげーな」


私に言っているのか、思っていることが口に出てちゃっているのかわからないけど、ぽそりとゆあんくんが呟いた。
さっきは久しぶりに会って『男の人』みたいに感じて少し緊張しちゃったけど
私の知っているゆあんくんがそこにいるみたいで緊張が解けかけていた。


さくっと着けちゃおうと思った次の瞬間だった。
私の背後にゆあんくんが移動して髪の毛を束ねてくれたのだ。
鏡に映ったゆあんくんは、真剣な表情でピアスが装着されるのを待っているようだった。
鏡越しに視線があったけど、思わず目を逸らしてしまった


手が震える……


これまでだったら秒で着けていたピアスがこんなに着けづらいなんて……
どうしよう……





―――――




「おまえら、公衆の面前でなにいちゃついてるの?」


栗色の髪の毛に、オレンジ色味がかった赤眼を持つ整った顔の人物が鏡に映りながら言った。


「「うり!!」」


鏡の中で久しぶりの『レッド・アイ』のもう一人のメンバー『うり』との再会だった。
うりもS級ランクの冒険者(アサシン)で情報収集や、隠密活動、奇襲攻撃担当など
多彩な才能と高い戦闘能力を兼ね備えたマルチプレーヤーだった。
これで『レッド・アイ』は全員揃った。



「遠くからみてたけどさ、さっきからずっと、なにいちゃいちゃしてんの?」
「「いちゃついてなんかない!!」」



否定の反応はゆあんくんと息ぴったりだった。
うりは私の固まった様子をみてすぐに状況を察したらしい。



「あぁ、なるほどね。えとさん、貸してみ」
「うぅ~。お願いします」



私はうりに着けられなかったピアスを渡した。
うりは少しかがむと私のピアスホールの位置を確認して起用にピアスを両耳つけてくれた。
さっき揶揄ってきたからうりが至近距離にいて、別の緊張が走ったことは言わない。


手で束ねられていた髪がほどかれ、ゆあんくんが私の正面にたつ。


「うん。似合ってる。」


また大人びた笑みで見つめられる。
ゆあんくんのその笑顔はしばらく慣れそうにないなぁ…。


「俺としちゃあ、えとさんもいい歳なんだからもう少し飾ってもいいと思うけどなぁ。そうだ、これ。」


そう言ってうりはポケットから何かを取り出し私の正面に立ち、私の首のあたり両手を通し何かを着けてきた。


「ん?なにこれネックレス?」
「あぁ、彼女にプレゼントしようと思っていたけど、別れたからあげそびれたやつ」
「はぁぁ?なに、それ!!?」
「まぁそれくらい飾ってもいいと思うぜ俺は、捨てようかと思ったけどよかったらどうぞ」


うりが私に着けてくれたネックレスは鏡を通してよく見てみると、ゆあんくんがくれたピアスとペアなのか?
と思うくらいのよく似た赤い石がついているネックレスだった。
うりは昔からモテる。彼女がいないことはないのではと思うくらい常に隣に誰かがいた。


「うり、お前それって…」


ゆあんくんがなにか言いたそうにすると、「ゆあんくんは、ちょっと黙ってろ」と、うりはゆあんくんを軽くどついていた。
2人がじゃれあっている様子を見るのも久しぶりだな。
物(ネックレス)に罪はないからこのまま受け取ることにしようか。
私はうりの前で分かりやすくため息をつきながらお礼をいった。
 

「うりもありがと。大事にするね」


「おぅ!」


うりはニカッと歯を見せて笑った。



カウンターの奥からたっつんがいった。

「これで『レッド・アイ』集結やな!」

ギルド内が少しざわついたような気がした。
のあさんはケーキを頬張っていた。
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