エルデナ王国物語

 燃え盛る炎、竜胆色の霧、漆黒の人ならざるものの集団。
 

 「私のことはいいから2人とものあさんを連れて逃げて!」
 

 必死に叫んでも私の盾になる様に戦う2人の男はその場から離れようとはしない。


 鉄の甲冑に身を包む黒髪の剣士と
 黒のローブから栗色の髪をなびかせるアサシン


 ヒーラーの、のあさんはドラゴンからの攻撃を真向から受けてしまい頭から血を流して瀕死の状態だ。
私も次から次へと沸いて出てくる敵に対して休む間もなく攻撃魔法を打ち込んでいたからMP・HP共にギリギリ、足も負傷してしまったので身動きをとることができなくなってしまった。


 回復の手段となるポーションも食料も底を尽きてしまった。
仲間に回復魔法をかけることも、攻撃することも出来ない私はこの場ではただのお荷物だ。
こんな時に仲間を救う魔法も使えなくてなにが大魔法使いの生まれ変わりだ。
不甲斐ない自分への怒りと仲間を助けたい焦りが襲う。


 しかし、そんな焦る私の気持ちになんてお構いなく無常にもエンダードラゴンが何度目になるかわからないエンダーブレスを吐く。
目の前が一面の竜胆色の霧の中で包まれたと思ったらついに視界の中の2人が倒れた。



「ちょ、大丈夫!?しっかりして!!」



 こんなにも叫んでいるのに、二人には声が届かないのかピクリとも動かない。

 嘘でしょ、嘘、うそだ。。

 体から一気に血の気が引くのを感じ、考えたくもない最悪のシナリオが頭を過ぎる


「嫌、、、やめてよ、私の前からこれ以上誰もいなくならないで……」


私の叫び声と共に黄金の発光色があたり一面を覆う。
目の前で倒れてしまった2人のことも、のあさんのことも見えない。。。



 ――――――――



「はっ!!」


 朝日が窓から差し込む部屋の中、私はベットから勢いよく飛び起きた。
寝ていたはずなのに息はきれているし、ずっと泣いていたのか涙が頬をつたったので、寝巻きの裾でグッと拭う。
 

 ――――また、あの夢か。。


最近頻繁に見る夢があった。大事な人達を失う夢。
繰り返しに同じシーンを見せられ、うなされ叫びながら起きる夢。
なぜこんなにも経験したこともない状況を繰り返し夢で見るのかわからなかったので
師匠に相談したらそれは予知夢かもしれないと言われた。


 予知夢ってあれでしょ、「夢で見たことが現実でも起こる」ってやつ。。
もしそれが本当ならと絶対夢の通りになんてなっちゃいけないわけで、どうしたらそのような状況にならないか、なったとしてもどうしたら対処できるのか考えていた。
繰り返し繰り返し本当に起こるか、わからない夢のことを考えて、最悪のケースを考えて、
最近の私は寝る間も惜しんで新魔法の研究に没頭していた。そして昨晩ついに形になったところだった。


 久しぶりにベットで寝たからか頭はスッキリしているようだ。両腕をあげて伸びをすると強張った筋肉がほぐれるのを感じた。
ベットから足を下ろしてルームシューズに足を入れて立ち上がった。
オークの木材で作られた温かみのある部屋のなか、数歩歩めば届く窓を開けて新鮮な外の空気を肺いっぱいに吸い込んだ。


「いい天気。。」


空は雲ひとつない真っ青な青空で太陽の柔らかい光が外を照らしていた。
ぼんやりと外を眺めていたら部屋の扉をノックする音がした。


「えとさん、そろそろ起きてー、って起きていたんですね」
「うん。おはよう、のあさん。」


ピンク色の髪が肩のあたりでふわふわと揺れている同居人の、のあさんが部屋に入ってきた。
身にまとっている服は、自然の美しさをそのまま映し出すようなデザインで、柔らかな緑と淡い茶色が絶妙に融合していた。生地は軽やかで、動くたびに木の葉のようにしなやかに風に舞っていた。


涙ちゃんと拭けているよね…?
悪夢にうなされて泣いていたなんて子供っぽいところは見せたくないので私は髪を耳にかけるついでに、もう一度寝巻きの袖口でそっと頬を撫でる様にした。

 
「昨日も遅くまで、魔法の研究をしていたんですね。女の子なんだから夜更かしはお肌の大敵ですよー」
「ごめんごめん。ついつい夢中になっちゃって…時間が経っているのもわからなくなっちゃうんよね。
でも大丈夫、一区切りついたから研究は休止する。」


 私は胸のあたりで小さくバンザイをする様に手を挙げた。


「そうですね。しばらくは研究はお休みした方がいいとおもいます。先ほどお城から早馬がきて登城するように連絡が入りました。
『ギルドに寄って準備を整えてから来るように』だそうですよ」
 
「登城?またなにか厄介な仕事でも押し付けてくるのかなー王様。」
 
「どうですかね。じゃ……じゃなかった王様勅命の仕事で厄介ごとじゃなかったことなんてなかったですから
きっとまた無理なこといってくると思いますよ」



 そう言うとのあさんは「はぁ…」と小さなため息をついた。


 私達が暮らしているこの国、エルデナ王国を統治している王様とのあさんは昔からの知り合いだ。
昔から無茶苦茶なことを言ってくる困った人なのだと、のあさんはいう。
のあさんはこの国でも珍しい種族「エルフ」だ。エルフの寿命は長く、一代前の勇者と一緒に冒険もしていたらしい。
その仲間の1人だったのが現国王のじゃぱぱ王ってわけ。
 

のあさんに実際の歳は聞いたことはない。見た目は私よりも幼く見え行動や発言も幼さを感じることはあるけど、
私が幼い頃、親を亡くした私を引き取って育ててくれた母であり、姉であり、親友でもある、優しくて時に厳しくて、可愛いくて大好きな人だ。
 

「わかった。じゃあ、身支度整えるね」
「はちみつたっぷりのパンケーキと紅茶を準備してありますから、それを食べてから出発しましょう」
「やったー!!のあさんのパンケーキ美味しいんよね」


側から見たら同年代女子のやりとり。のあさんはお茶を入れてきますといって部屋からでていった。
私は顔を洗い、寝巻きからチャコールグレーのワンピースに着替えショートブーツに履き替え黒のローブを着る
私は鏡に向かって耳たぶに触れた。
数か月前に無くしてしまったピアスはまだ見つからない。


「気に入っていたのになぁ・・・」


じゃぱぱ王の勅命だったらきっとのあさんと2人暮らしのこの家にもしばらく帰ってくることはできないだろう。
折角あけたピアスホールも帰ってきたころにはふさがってしまうかもしれない。そんなことを思いながら、遠征の支度をした。
荷物は魔法で小さくできるのでかさばることはない。


 支度が済んだ後食べた、のあさんの朝ごはんはほっぺたが落ちそうなくらい美味しかった。


勅命か・・・。今朝もみた悪夢のことが頭をよぎったけど
家の戸締りをしっかりして、登城前の目的地、城下町の中心にあるギルドへとのあさんと向かったのだった。
 
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