エルデナ王国物語
(side u)
夜明けの光が、ひまわり畑一面を黄金色に染めていた。
無数の花々は、まだ眠たげにうつむきながらも、朝の風にそよぎ、夜露を纏った葉がきらりと光を跳ね返す。
野宿を終えたレッド・アイは、えとさんが準備したテント内の寝具から体を起こし、すこし肌寒く感じる冷えた空気に肩をすくめた。
土と草の匂いが鼻をくすぐり、焚き火の残り香がまだほんのり漂っている。
テントの中で各々が身支度を整え、準備ができたものから外に出てくる。
全員集合し、ゆあんくんが空を見上げると皆もそれに倣って空を見上げる。
頭上には澄み渡る青空。東の地平から昇る太陽が、ゆっくりとひまわりのオレンジ色の花弁を照らし始めると、
一斉にひまわりがその方角へと顔を上げた。
いろいろな思いが交錯する中でまた新しい一日が始まった――。
のあさんが簡単な朝食を準備しみんなはそれを口にした。
えとさんがテントを片付け、ゆあんくんが焚火の後始末やみんなが携帯する飲み水を川に汲みに行っている間、
オレはエンダーアイをなげて目指すべき方角を確認していた。
エンダーアイが指し示したのは今いる場所からも確認することができる、ひまわり畑の中にひっそりと佇む廃墟だった。
エンダーアイはこれまでと異なり、空高く跳ねあがり上空を旋回すると力を無くしたかのように落下をした。
「あそこが……エンダードラゴンが生息するジ・エンドへと続くエンドポータルがある位置なのか…………?。」
各々が支度を終えたみんなにもそのことを伝えたら緊張感がいっそう高まったのか
空気からビリビリと伝わってきた。
準備が整うと全員でエンダーアイが指し示した廃墟へと向かう。
黄色のひまわり畑の中にポツンとあるその廃墟は異質だった。
オレは地面に転がったエンダーアイを拾い、インベントリにしまうと、
採掘用のスコップとピッケルを代わりに取り出した。
やるべきことは一つ。
いつも通り安全の確保をしながら皆を目的地に導くことだった。
(side y)
うりの先導に導かれて
やがて苔むした石の並ぶ空間に辿りつく。
地下要塞――いろいろあった旅路の果てに、ようやくたどり着いた場所。
石の迷路を抜けたその先に、異様な静けさを纏った部屋が待っていた。
中央には、黒曜石の枠のような祭壇――まだ沈黙したままのエンドポータル。
虚ろな穴のように口を開け、俺達を待っているようだった。
――空気が、張り詰めていた。
要塞の奥深く、湿った石の匂いが漂う部屋に、祭壇のように鎮座するエンドポータルの枠は、
まるで古代からここに在り続けた殻のようで、その虚ろな穴は暗闇よりも深い色を宿していた。
じゃぱぱ王たちに託されたエンダーアイをインベントリから取り出し握りしめるとそれらがまるで反応しているかのようにかすかに脈打つように光を放つ。
これをはめ込めば、もう戻れない。
頭では理解していても、幼いころからじゃぱぱ王やたっつんたちからこの日の為に教えを受けていても、得体のしれない恐怖に縛られる。
喉がひどく渇き、唾を飲み込むだけで動悸の激しさを感じる。
「ついに…いくんだな」
誰に問うでもなく、かすれた声が漏れる。
返事はない。ただ冷たい沈黙が、答えを突きつける。
ゆっくりと腕を伸ばし、空いた枠にエンダーアイをすべてはめ込んだ――
石畳が微かに震え、眩い光が走る。
暗黒の穴がうごめくように広がり、黒曜石の湖面が目の前に現れた。
その光景は美しくも恐ろしく、一歩踏み出せば、未知と死が待つ世界。
吸い込まれるような闇が足元に広がっていた――。
「Lux Aeterna, corda nostra protege.(永遠の光よ、我らを守れ)」
隣にいた、えとさんが歌う様に古代語で呪文を唱える。
えとさんは目を閉じ、両手をゆるやかに掲げている。
指先から溢れ出した光は、最初は小さな火花のように瞬き、薄暗い地下要塞が音色を帯び始めた。
光と澄んだ鈴のような音色が鳴り響く。
いつも、緊張感が高まる戦闘前にかけてくれる『癒しと加護』の魔法だった。
えとさんが放った輝きは光のシャワーのようにみんなの体に降り注がれ
そっと染み込むように身体へと溶け、心の奥の重苦しさを洗い流していくようだった。
えとさんのその幻想的な姿や、付与してくれる魔法の暖かさに目も心も奪われる……
昨夜は、焚き火を前にして親密な雰囲気を醸し出しているうりとえとさんの様子をじっと見ていた。
えとさんとうりのやり取りは、外から見ればただのじゃれあいにすぎないかもしれない。
けれど、俺の胸は締め付けられ、苦しい…。
俺ではない誰かに向けて心を配るえとさんの横顔が眩しければ眩しいほど、絶望と嫉妬が入り混じり、
こんな苦しい想いをするくらいならいっそあきらめてしまおうかとも思った。
えとさんが見せる仕草や、声の調子。
その一つひとつに揺さぶられる自分が情けなくて、目を逸らしたくなることもあった。
それでも、逸らしたところでえとさんを忘れられるわけじゃない。
むしろ、視界から消えれば消えるほど、彼女への想いは強くなるばかりだった。
魔法の詠唱を終えたえとさんが隣で見ていた俺の様子に気づき、何気なく笑みを向けてきた。
その瞬間、胸のざわめきは不思議と静まり返る。言葉もいらない。
ただ、その笑顔だけで、おれはやっぱりえとさんが好きで仕方がないという事実を、痛いほど思い知らされるのだ。
悔しさも、不安も、全部ひっくるめて。それでもなお、心の奥で決して揺らがない想いがある。
これから迎えるエンダードラゴンとの戦いは「命をかける」激戦になることだろう。
(ぜったい、勝つ。そして守り抜く…………)
俺はその決意を胸に押し殺すように深く息を吐き、拳を握りしめた。
「……えとさん、ありがとう。みんな、いくよ」
「おぉ。やってやるよエンダードラゴン」
うりは、フードを深くかぶり直し弓に矢を番える。
「わたしがみんなの傷を絶対に治します。」
かじっていたクッキーを飲み込み、真剣な表情ののあさん。
「みんな、無事で…生きて帰ってこようね」
笑顔の中にどこか不安をにじませるえとさん。
俺達は黒色の湖面の中に足を踏み入れたのだった。
(side e)
エンドポータルへ足を踏み出した瞬間――
視界が白く弾け、重力も音も失われた。
落ちているのか、浮かんでいるのかさえ分からない。
全身が引き裂かれるような恐怖の中で、ただ必死に目を閉じ、呼吸をすることに専念した。
唐突に――着地の衝撃。
私たちが立っていたのは、虚無の中に浮かぶ黒曜石の大地。
空は星ひとつない闇で覆われ、どこまでも広がる虚ろな空間には、風の音すら存在しなかった。
遠くに佇む黒い柱が、見下ろすように立ち並んでいる。
その頂には、妖しく光るピンク色の水晶が不気味に脈動していた。
喉を鳴らすことすらためらわれる。
背後を振り返っても、もう帰る道はない。
ただ、虚無の世界「ジ・エンド」が、私たちを迎え入れていた。
虚無の大地に、かすかなざわめきが広がった。
背の高い黒い人影――エンダーマン。現世(オーバーワールド)でも時折姿を見せるその人影は
これまでに遭遇した数を合わせても優に数を超えるほどの無数の影が立ち並んでいた。
赤紫に光る瞳が、虚空の闇に散らばる星のように瞬いていた。
彼らは静かに佇んでいるだけなのに、その存在は息を詰まらせるほどの圧を放っていた。
遠くの黒曜石の柱の頂には、ピンク色に光り輝く結晶――エンドクリスタル。
シャーマンのどぬが言っていた、そしてのあさん前回の戦いでみたというエンダードラゴンのエネルギーの
源であるそれは脈打つような白光が、闇を切り裂きながら天を照らしていた。
その光は美しさと同時に、絶望を告げる灯火のようでもあった。
――空気が裂けるような轟音が、世界を震わせた。
上空から、咆哮が降り注ぐ。
耳を塞いでも意味をなさない、胸の奥まで響き渡る重低音。
暗闇を切り裂いて舞い降りる巨大な影――翼を広げたエンダードラゴンが、私たちの頭上を旋回する。
その咆哮は、レッド・アイへの宣告。
戦いの開始と絶望を告げているかのようだった。
夜明けの光が、ひまわり畑一面を黄金色に染めていた。
無数の花々は、まだ眠たげにうつむきながらも、朝の風にそよぎ、夜露を纏った葉がきらりと光を跳ね返す。
野宿を終えたレッド・アイは、えとさんが準備したテント内の寝具から体を起こし、すこし肌寒く感じる冷えた空気に肩をすくめた。
土と草の匂いが鼻をくすぐり、焚き火の残り香がまだほんのり漂っている。
テントの中で各々が身支度を整え、準備ができたものから外に出てくる。
全員集合し、ゆあんくんが空を見上げると皆もそれに倣って空を見上げる。
頭上には澄み渡る青空。東の地平から昇る太陽が、ゆっくりとひまわりのオレンジ色の花弁を照らし始めると、
一斉にひまわりがその方角へと顔を上げた。
いろいろな思いが交錯する中でまた新しい一日が始まった――。
のあさんが簡単な朝食を準備しみんなはそれを口にした。
えとさんがテントを片付け、ゆあんくんが焚火の後始末やみんなが携帯する飲み水を川に汲みに行っている間、
オレはエンダーアイをなげて目指すべき方角を確認していた。
エンダーアイが指し示したのは今いる場所からも確認することができる、ひまわり畑の中にひっそりと佇む廃墟だった。
エンダーアイはこれまでと異なり、空高く跳ねあがり上空を旋回すると力を無くしたかのように落下をした。
「あそこが……エンダードラゴンが生息するジ・エンドへと続くエンドポータルがある位置なのか…………?。」
各々が支度を終えたみんなにもそのことを伝えたら緊張感がいっそう高まったのか
空気からビリビリと伝わってきた。
準備が整うと全員でエンダーアイが指し示した廃墟へと向かう。
黄色のひまわり畑の中にポツンとあるその廃墟は異質だった。
オレは地面に転がったエンダーアイを拾い、インベントリにしまうと、
採掘用のスコップとピッケルを代わりに取り出した。
やるべきことは一つ。
いつも通り安全の確保をしながら皆を目的地に導くことだった。
(side y)
うりの先導に導かれて
やがて苔むした石の並ぶ空間に辿りつく。
地下要塞――いろいろあった旅路の果てに、ようやくたどり着いた場所。
石の迷路を抜けたその先に、異様な静けさを纏った部屋が待っていた。
中央には、黒曜石の枠のような祭壇――まだ沈黙したままのエンドポータル。
虚ろな穴のように口を開け、俺達を待っているようだった。
――空気が、張り詰めていた。
要塞の奥深く、湿った石の匂いが漂う部屋に、祭壇のように鎮座するエンドポータルの枠は、
まるで古代からここに在り続けた殻のようで、その虚ろな穴は暗闇よりも深い色を宿していた。
じゃぱぱ王たちに託されたエンダーアイをインベントリから取り出し握りしめるとそれらがまるで反応しているかのようにかすかに脈打つように光を放つ。
これをはめ込めば、もう戻れない。
頭では理解していても、幼いころからじゃぱぱ王やたっつんたちからこの日の為に教えを受けていても、得体のしれない恐怖に縛られる。
喉がひどく渇き、唾を飲み込むだけで動悸の激しさを感じる。
「ついに…いくんだな」
誰に問うでもなく、かすれた声が漏れる。
返事はない。ただ冷たい沈黙が、答えを突きつける。
ゆっくりと腕を伸ばし、空いた枠にエンダーアイをすべてはめ込んだ――
石畳が微かに震え、眩い光が走る。
暗黒の穴がうごめくように広がり、黒曜石の湖面が目の前に現れた。
その光景は美しくも恐ろしく、一歩踏み出せば、未知と死が待つ世界。
吸い込まれるような闇が足元に広がっていた――。
「Lux Aeterna, corda nostra protege.(永遠の光よ、我らを守れ)」
隣にいた、えとさんが歌う様に古代語で呪文を唱える。
えとさんは目を閉じ、両手をゆるやかに掲げている。
指先から溢れ出した光は、最初は小さな火花のように瞬き、薄暗い地下要塞が音色を帯び始めた。
光と澄んだ鈴のような音色が鳴り響く。
いつも、緊張感が高まる戦闘前にかけてくれる『癒しと加護』の魔法だった。
えとさんが放った輝きは光のシャワーのようにみんなの体に降り注がれ
そっと染み込むように身体へと溶け、心の奥の重苦しさを洗い流していくようだった。
えとさんのその幻想的な姿や、付与してくれる魔法の暖かさに目も心も奪われる……
昨夜は、焚き火を前にして親密な雰囲気を醸し出しているうりとえとさんの様子をじっと見ていた。
えとさんとうりのやり取りは、外から見ればただのじゃれあいにすぎないかもしれない。
けれど、俺の胸は締め付けられ、苦しい…。
俺ではない誰かに向けて心を配るえとさんの横顔が眩しければ眩しいほど、絶望と嫉妬が入り混じり、
こんな苦しい想いをするくらいならいっそあきらめてしまおうかとも思った。
えとさんが見せる仕草や、声の調子。
その一つひとつに揺さぶられる自分が情けなくて、目を逸らしたくなることもあった。
それでも、逸らしたところでえとさんを忘れられるわけじゃない。
むしろ、視界から消えれば消えるほど、彼女への想いは強くなるばかりだった。
魔法の詠唱を終えたえとさんが隣で見ていた俺の様子に気づき、何気なく笑みを向けてきた。
その瞬間、胸のざわめきは不思議と静まり返る。言葉もいらない。
ただ、その笑顔だけで、おれはやっぱりえとさんが好きで仕方がないという事実を、痛いほど思い知らされるのだ。
悔しさも、不安も、全部ひっくるめて。それでもなお、心の奥で決して揺らがない想いがある。
これから迎えるエンダードラゴンとの戦いは「命をかける」激戦になることだろう。
(ぜったい、勝つ。そして守り抜く…………)
俺はその決意を胸に押し殺すように深く息を吐き、拳を握りしめた。
「……えとさん、ありがとう。みんな、いくよ」
「おぉ。やってやるよエンダードラゴン」
うりは、フードを深くかぶり直し弓に矢を番える。
「わたしがみんなの傷を絶対に治します。」
かじっていたクッキーを飲み込み、真剣な表情ののあさん。
「みんな、無事で…生きて帰ってこようね」
笑顔の中にどこか不安をにじませるえとさん。
俺達は黒色の湖面の中に足を踏み入れたのだった。
(side e)
エンドポータルへ足を踏み出した瞬間――
視界が白く弾け、重力も音も失われた。
落ちているのか、浮かんでいるのかさえ分からない。
全身が引き裂かれるような恐怖の中で、ただ必死に目を閉じ、呼吸をすることに専念した。
唐突に――着地の衝撃。
私たちが立っていたのは、虚無の中に浮かぶ黒曜石の大地。
空は星ひとつない闇で覆われ、どこまでも広がる虚ろな空間には、風の音すら存在しなかった。
遠くに佇む黒い柱が、見下ろすように立ち並んでいる。
その頂には、妖しく光るピンク色の水晶が不気味に脈動していた。
喉を鳴らすことすらためらわれる。
背後を振り返っても、もう帰る道はない。
ただ、虚無の世界「ジ・エンド」が、私たちを迎え入れていた。
虚無の大地に、かすかなざわめきが広がった。
背の高い黒い人影――エンダーマン。現世(オーバーワールド)でも時折姿を見せるその人影は
これまでに遭遇した数を合わせても優に数を超えるほどの無数の影が立ち並んでいた。
赤紫に光る瞳が、虚空の闇に散らばる星のように瞬いていた。
彼らは静かに佇んでいるだけなのに、その存在は息を詰まらせるほどの圧を放っていた。
遠くの黒曜石の柱の頂には、ピンク色に光り輝く結晶――エンドクリスタル。
シャーマンのどぬが言っていた、そしてのあさん前回の戦いでみたというエンダードラゴンのエネルギーの
源であるそれは脈打つような白光が、闇を切り裂きながら天を照らしていた。
その光は美しさと同時に、絶望を告げる灯火のようでもあった。
――空気が裂けるような轟音が、世界を震わせた。
上空から、咆哮が降り注ぐ。
耳を塞いでも意味をなさない、胸の奥まで響き渡る重低音。
暗闇を切り裂いて舞い降りる巨大な影――翼を広げたエンダードラゴンが、私たちの頭上を旋回する。
その咆哮は、レッド・アイへの宣告。
戦いの開始と絶望を告げているかのようだった。