エルデナ王国物語
深緑色の深層岩で埋め尽くされている古代都市は静寂の中に時折奏でるスカルクシュリーカーの金切り音が
その場にいる冒険者の恐怖心を増大させると語られていた。
そんなスカルクシュリーカーが奏でる不規則な音と暗闇の中にともる青白い光源のなかで私はゆっくりと目を開けた。
幼いころの懐かしい夢を見ていたからか……
浮遊魔法を使っている意識はないのに体がふわふわとして、
大きくて暖かいものに包まれている心地よさを感じているからか……
今、自分が夢の続きを見ているのか……起きた状態なのかはっきりとせず、ぼんやりと青白い光を見つめていた。
「あっ、えとさん気づいたんだね。」
いつもより声量を抑えた低くて安心する声のほうに視線をやると
薄暗い中でもはっきりとわかるくらいの至近距離にゆあんくんの顔があった。
夢の中でみた少年時代と変わらない綺麗な赤眼には私が映しだされていて柔らかな笑みの中には安堵の色も混じっていた。
「ゆあんくん?……ここは?」
夢か現実かまだ意識がはっきりしない私はぼんやりと聞いた。
「ここは古代都市の中央部分……だと思う。山の麓でクリーパーの爆発に巻き込まれて
大きな穴が開いてえとさん落ちたんだよ……。よかった意識が戻って。」
そういうとゆあんくんは「はぁ…」と深く息を吐いた。
「クリーパー…………?」
「うん、すぐに俺が追いかけてたんだけど……。
えとさん、爆撃をうけて負傷したままかなりの距離を落下していったからダメージも大きくて…。」
ゆっくりと、どこか歯切れの悪そうに、静かに説明をしてくれるゆあんくんの
表情が薄暗い中でもだんだんとクリアになってくるとゆあんくんの頬にできている傷に気づいた。
夢の中でみた過去の記憶、少年ゆあんくんに助けてもらった時と同じ場所の傷だ。
__あぁ……これは夢の続きなの…かな。
短髪だけど真っ黒でさらさらとした柔らかいゆあんくんの髪の毛が頬の傷に触れそうだったので
私はゆっくりと手を伸ばし彼の頬にそっと触れた。
ゆあんくんはビクッと体を強張らせたけどそれに構わず私は「ヒール……」と回復魔法の呪文を唱えた。
私の掌からほんのりと金色の光が灯ったがそれはすぐに消えた。
回復魔法は相手の症状によって発せられる光の量と時間が変わってくる。
一瞬でヒールの光が消えたということは、そこまでひどい傷ではなかったということだ。
「よかった……ゆあんくん他に痛いところはない?」
ゆっくりと手を放そうとしたときに悲しそうな表情を浮かべるゆあんくんと目が合った。
__どうしたんだろう…もっとひどい怪我でもしているのかな。
心配になって声を発しようとしたけれどそれは叶わず、私の体はすっぽりと大きな暖かいものに包まれた。
__ゆあんくんに抱きしめられているのだと気づいたのは、それから数秒経ってからのことだった
「えっ…ゆ、ゆあんくん!?えっ?」
「……えとさん、人の事ばっかりじゃなくて自分のことももっと、大事にしてよ」
耳元でダイレクトに届くゆあんくんの低い声に体の芯がしびれる感覚に襲われた。
その時私はこれが夢の中ではなく現実世界の出来事なのだとようやく覚醒したのだった。
はっきりと意識が戻ったらしいえとさんは、ようやく今の状況を認識したようで動揺していた。
話し声もいつもの調子に戻ったし、
落下直後、応急処置をしていた時から変わらず抱きしめていた腕の中で小さな抵抗を見せるようになっていた。
自身が大変な目にあったにもかからず目覚めてすぐに他人心配をするえとさん。
もっと自身を大切にしてほしいと思う気持ちと、自分に向けられた心配が嬉しいという感情がごじゃまぜになっている。
そんな相反する感情を見せたくなくて、
また頬に触れられた彼女の小さな手とぬくもりと自身に向けられた柔らかい笑みに心が昂ぶり、思わず強く抱きしめていた。
「ちょ……、ゆあんくん、えっ……?」
先ほどまでは気にならなかったお互いの服がこすれる音さえも心拍数を上げる要素の一つになる。
必死で俺の腕の中から逃れようと胸を両手で押す弱弱しい力さえも愛おしく思う。
このままこの思いを伝えたいけど……。
――いま自分たちがいる場所(古代都市)がどんなに危険なところか思い出し冷静になるように努めることにした。
抱きしめる腕の力を少し弱めてえとさんの耳元で「しっ」とささやくと腕の中でえとさんの体が小さく跳ねた。
「えとさん、ここ古代都市。俺達落下して着地には成功したんだけど衝撃音出しちゃったみたいで
あと何回でウォーデンが出現するかわからないんだ。」
それを聞くとえとさんは冷静さを取り戻したのか
「……まじ?そっかそれは慎重にここから離れないとまずいね。」といった。
「俺は離れたくないけどね……」
「えっ?」
俺はわざとえとさんに聞こえるかわからないくらいの音量で本音を言い、
名残り惜しくはあるがえとさんを抱きしめる腕の力を弱めることにした。
するとえとさんはゆっくりと立ち上がり俺もそれに倣って立ち上がると強張った体の筋をゆっくりと伸ばしながら周囲を見渡した。
視線の先、えとさんの背後から2つの松明の光がこちらに向かってくるのが見える。
そこには、えとさんと俺を迎えに来たうりとのあさんがスニーク状態でゆっくりと歩きながら向かってきていて
2人は俺たちの様子を確認すると安堵した表情を浮かべ手を振っていたのだった。
その場にいる冒険者の恐怖心を増大させると語られていた。
そんなスカルクシュリーカーが奏でる不規則な音と暗闇の中にともる青白い光源のなかで私はゆっくりと目を開けた。
幼いころの懐かしい夢を見ていたからか……
浮遊魔法を使っている意識はないのに体がふわふわとして、
大きくて暖かいものに包まれている心地よさを感じているからか……
今、自分が夢の続きを見ているのか……起きた状態なのかはっきりとせず、ぼんやりと青白い光を見つめていた。
「あっ、えとさん気づいたんだね。」
いつもより声量を抑えた低くて安心する声のほうに視線をやると
薄暗い中でもはっきりとわかるくらいの至近距離にゆあんくんの顔があった。
夢の中でみた少年時代と変わらない綺麗な赤眼には私が映しだされていて柔らかな笑みの中には安堵の色も混じっていた。
「ゆあんくん?……ここは?」
夢か現実かまだ意識がはっきりしない私はぼんやりと聞いた。
「ここは古代都市の中央部分……だと思う。山の麓でクリーパーの爆発に巻き込まれて
大きな穴が開いてえとさん落ちたんだよ……。よかった意識が戻って。」
そういうとゆあんくんは「はぁ…」と深く息を吐いた。
「クリーパー…………?」
「うん、すぐに俺が追いかけてたんだけど……。
えとさん、爆撃をうけて負傷したままかなりの距離を落下していったからダメージも大きくて…。」
ゆっくりと、どこか歯切れの悪そうに、静かに説明をしてくれるゆあんくんの
表情が薄暗い中でもだんだんとクリアになってくるとゆあんくんの頬にできている傷に気づいた。
夢の中でみた過去の記憶、少年ゆあんくんに助けてもらった時と同じ場所の傷だ。
__あぁ……これは夢の続きなの…かな。
短髪だけど真っ黒でさらさらとした柔らかいゆあんくんの髪の毛が頬の傷に触れそうだったので
私はゆっくりと手を伸ばし彼の頬にそっと触れた。
ゆあんくんはビクッと体を強張らせたけどそれに構わず私は「ヒール……」と回復魔法の呪文を唱えた。
私の掌からほんのりと金色の光が灯ったがそれはすぐに消えた。
回復魔法は相手の症状によって発せられる光の量と時間が変わってくる。
一瞬でヒールの光が消えたということは、そこまでひどい傷ではなかったということだ。
「よかった……ゆあんくん他に痛いところはない?」
ゆっくりと手を放そうとしたときに悲しそうな表情を浮かべるゆあんくんと目が合った。
__どうしたんだろう…もっとひどい怪我でもしているのかな。
心配になって声を発しようとしたけれどそれは叶わず、私の体はすっぽりと大きな暖かいものに包まれた。
__ゆあんくんに抱きしめられているのだと気づいたのは、それから数秒経ってからのことだった
「えっ…ゆ、ゆあんくん!?えっ?」
「……えとさん、人の事ばっかりじゃなくて自分のことももっと、大事にしてよ」
耳元でダイレクトに届くゆあんくんの低い声に体の芯がしびれる感覚に襲われた。
その時私はこれが夢の中ではなく現実世界の出来事なのだとようやく覚醒したのだった。
はっきりと意識が戻ったらしいえとさんは、ようやく今の状況を認識したようで動揺していた。
話し声もいつもの調子に戻ったし、
落下直後、応急処置をしていた時から変わらず抱きしめていた腕の中で小さな抵抗を見せるようになっていた。
自身が大変な目にあったにもかからず目覚めてすぐに他人心配をするえとさん。
もっと自身を大切にしてほしいと思う気持ちと、自分に向けられた心配が嬉しいという感情がごじゃまぜになっている。
そんな相反する感情を見せたくなくて、
また頬に触れられた彼女の小さな手とぬくもりと自身に向けられた柔らかい笑みに心が昂ぶり、思わず強く抱きしめていた。
「ちょ……、ゆあんくん、えっ……?」
先ほどまでは気にならなかったお互いの服がこすれる音さえも心拍数を上げる要素の一つになる。
必死で俺の腕の中から逃れようと胸を両手で押す弱弱しい力さえも愛おしく思う。
このままこの思いを伝えたいけど……。
――いま自分たちがいる場所(古代都市)がどんなに危険なところか思い出し冷静になるように努めることにした。
抱きしめる腕の力を少し弱めてえとさんの耳元で「しっ」とささやくと腕の中でえとさんの体が小さく跳ねた。
「えとさん、ここ古代都市。俺達落下して着地には成功したんだけど衝撃音出しちゃったみたいで
あと何回でウォーデンが出現するかわからないんだ。」
それを聞くとえとさんは冷静さを取り戻したのか
「……まじ?そっかそれは慎重にここから離れないとまずいね。」といった。
「俺は離れたくないけどね……」
「えっ?」
俺はわざとえとさんに聞こえるかわからないくらいの音量で本音を言い、
名残り惜しくはあるがえとさんを抱きしめる腕の力を弱めることにした。
するとえとさんはゆっくりと立ち上がり俺もそれに倣って立ち上がると強張った体の筋をゆっくりと伸ばしながら周囲を見渡した。
視線の先、えとさんの背後から2つの松明の光がこちらに向かってくるのが見える。
そこには、えとさんと俺を迎えに来たうりとのあさんがスニーク状態でゆっくりと歩きながら向かってきていて
2人は俺たちの様子を確認すると安堵した表情を浮かべ手を振っていたのだった。