エルデナ王国物語
クリーパーの爆風の中、確認ができた人影は2人
そこにえとさんの姿がないことにはすぐに気づいた
俺は今、真っ暗闇の中えとさんを追って急降下している――
「――ゆあんくん!!」
のあさんの叫ぶ声が聞こえたけど迷わず俺はえとさんを追ってぽっかりと空いた穴へと飛び込んだ。
暗闇の中を落ちていく中で目を凝らすと小さな赤い光が見える。
……俺がえとさんに贈ったレッドストーンのピアスが
魔力に反応して光っている。
えとさんが生きているということに安心したが、浮遊魔法を使わないところを見ると異常事態であることは間違いなさそうだ。
赤い光の位置を確認した俺はインベントリからエンダーパールを取り出した。
先に落ちてしまったえとさんと自分との距離を縮めるためにはこれしかない。
俺はわずかに光る赤い光の少し横をめがけてそれを投げた。
利用者が目的の方角へ投げると投げた先へとテレポートするエンダーパールは
予想通り俺を、気を失ったまま落下しているえとさんの傍まで近づけてくれた
「えと……さ…………ん。」
落下開始から体感にして数秒……
ものすごい重力と加速度によって生じた慣性力を体中に感じてきた。視界は狭まり、突き刺すような頭痛を感じてきた。
左手を伸ばし、えとさんの体を自分へと引き寄せ彼女の体をしっかりと抱きしめる。
――くそっ……いったい、どこまで落ちつづけるんだよ……
着陸地点までの距離を測るためにインベントリから松明を2,3本だして落下していく方にめがけて投げた。
――激しい慣性力に今にも鼓膜が破れそうだ……耳鳴りがどんどんひどくなっていく。
今にもブラックアウトしそうだが必死に目を凝らして松明を投げた先を見る。
数十メートル先に数本の松明の光を確認した
――よし!……地面だ
えとさん抱きしめる左腕に力をいれ、俺は冒険者であればだれもが習得している
水バケツ着地をするためにインベントリから水バケツを取り出した。
普段やっている自分の為の水バケツ着地ではなく、気を失った人を抱えての着地……そして最悪のコンディション……
松明が光る地面まであと残り僅か………ものすごい緊張が走る
――バシャ
「……っはぁ―――。」
落下中にあったダメージは残っているが、落下ダメージは今のところ感じない。
どうやら水バケツ着地は成功し、着陸時の衝撃を無効化できたようだ。
俺は安堵して細く深く長いため息をついたのだった。
水バケツ着地のせいで流れてしまった松明の代わりに新たな松明をたてなおした。
低レベルの魔物でも今の俺とえとさんが襲われたら一たまりもない……。
暗闇に目が慣れると俺とえとさんがいる場所は深緑色のブロックに覆われていることが分かった。
そして落下中に感じていた激しい耳鳴りが落ち着いてくると、自然界では聞きなれない金切り音が所かしこから聞こえてきた。
――まじかよ……。
一難去ってまた一難……。
思わず生唾を飲み込む――どうやら俺たちがたどり着いたのは「ディープダーク」のようだった。
―――古代都市を守るように生成されるディープダークは山岳の地下深くに生成されることが知られている。
俺達レッド・アイも任務で古代都市のチェストにしかないとされている素材を得る依頼を受けて踏み入れたことはあった。
深層岩は深緑色に浸食されスカルクに変化し、所々スカルクブエインに覆われている。
魚の尾びれのようなものが揺れ動いているのはスカルクセンサー。
…周りの振動(歩いたり落下した時)を検知しているのだ。
先ほど俺とえとさんが落下してきたからだろうか…
水バケツ着地はどんなに上手くいったとしても振動0にすることはできない。
スカルクセンサーが反応して金切り音を出していた。
ディープダークで厄介なのはこの振動を4回検知すると伝説級の魔物「ウォーデン」が生成されることだった。冒険者界隈では「ウォーデン」は戦うべき相手ではなく避けるべき相手とされている。
盲目であるにもかかわらず敵を音や振動で感知し、的確に攻撃してくる魔物だった。
今のところウォーデンが出現していないが――あと何回の振動が出現のキーになるかわからない。
俺はそっと音や振動を立てないように、今だ俺の腕のなかで力無く気を失っているえとさんの様子を確認することにした。
えとさんを俺の胡座の上で横抱きする。
一本の松明の光で確認できるのは、クリーパーの爆発の影響でできたと思われる火傷やすり傷…
痛々しく顔の所々にできていた。
えとさんの口元に顔を寄せると不規則で弱々しい呼吸音が感じられる。
爆破の影響がなかった俺ですら感じた落下中のダメージは負傷していたえとさんにとっては追い打ちをかけるものだっただろう。
えとさんの治癒を最優先しなければならない状況であることは明白だった。
ここにヒーラーの、のあさんはいない。治癒魔法が使えるえとさんはこの状況だ……。
俺はインベントリからこの討伐を出発するときにえとさんから渡されたポーションを取り出した。
つい最近までえとさんに頼まれて集めた素材でなおきりさんが作った「フルポーション」だ。
俺は小瓶のふたを開け、えとさんの耳元でささやいた。
「えとさん」
「――。」
「えとさん、ポーション飲める?」
「――。」
えとさんの反応はなかった。
一瞬、迷いが生じた…。
これが中身を浴びて回復するタイプのスプラッシュポーションだったら……。
この後、俺がとる行動を後で知った彼女はどんな反応を示すだろうか……。嫌悪感?拒絶?非難?
でも……えとさんを救うには…………。
「ごめん。えとさん」
スカルクシュリーカーの金切り音が鳴る中で
俺はえとさんの顎を手で掬い上げ気道を確保した。
そして小瓶の中の青色透明の液体を口に含み、うっすらと開いた彼女の唇に自身の唇を重ね、少しずつポーションを渡していく。
えとさんが飲みこむのを確認すると再度同じことを繰り返してーー
初めは乾いて冷たかった唇が徐々に潤いと熱を取り戻してくるのがわかった。
顔の傷は綺麗に消えて、呼吸も安定してきた。
俺も口に含んだ僅かなポーションが効いたのか落下中に受けたダメージがいつのまにか消えていた。
あとはえとさんが目を覚ますのを静かに待つだけだった。
状況が好転したことに安堵した俺は乱れてしまったえとさんの長い髪を指で掬い横に流すと華奢な体を抱きしめる腕にほんの少し力を込めて
これが最後と、眠るえとさんの頬に唇を落としたのだった。
そこにえとさんの姿がないことにはすぐに気づいた
俺は今、真っ暗闇の中えとさんを追って急降下している――
「――ゆあんくん!!」
のあさんの叫ぶ声が聞こえたけど迷わず俺はえとさんを追ってぽっかりと空いた穴へと飛び込んだ。
暗闇の中を落ちていく中で目を凝らすと小さな赤い光が見える。
……俺がえとさんに贈ったレッドストーンのピアスが
魔力に反応して光っている。
えとさんが生きているということに安心したが、浮遊魔法を使わないところを見ると異常事態であることは間違いなさそうだ。
赤い光の位置を確認した俺はインベントリからエンダーパールを取り出した。
先に落ちてしまったえとさんと自分との距離を縮めるためにはこれしかない。
俺はわずかに光る赤い光の少し横をめがけてそれを投げた。
利用者が目的の方角へ投げると投げた先へとテレポートするエンダーパールは
予想通り俺を、気を失ったまま落下しているえとさんの傍まで近づけてくれた
「えと……さ…………ん。」
落下開始から体感にして数秒……
ものすごい重力と加速度によって生じた慣性力を体中に感じてきた。視界は狭まり、突き刺すような頭痛を感じてきた。
左手を伸ばし、えとさんの体を自分へと引き寄せ彼女の体をしっかりと抱きしめる。
――くそっ……いったい、どこまで落ちつづけるんだよ……
着陸地点までの距離を測るためにインベントリから松明を2,3本だして落下していく方にめがけて投げた。
――激しい慣性力に今にも鼓膜が破れそうだ……耳鳴りがどんどんひどくなっていく。
今にもブラックアウトしそうだが必死に目を凝らして松明を投げた先を見る。
数十メートル先に数本の松明の光を確認した
――よし!……地面だ
えとさん抱きしめる左腕に力をいれ、俺は冒険者であればだれもが習得している
水バケツ着地をするためにインベントリから水バケツを取り出した。
普段やっている自分の為の水バケツ着地ではなく、気を失った人を抱えての着地……そして最悪のコンディション……
松明が光る地面まであと残り僅か………ものすごい緊張が走る
――バシャ
「……っはぁ―――。」
落下中にあったダメージは残っているが、落下ダメージは今のところ感じない。
どうやら水バケツ着地は成功し、着陸時の衝撃を無効化できたようだ。
俺は安堵して細く深く長いため息をついたのだった。
水バケツ着地のせいで流れてしまった松明の代わりに新たな松明をたてなおした。
低レベルの魔物でも今の俺とえとさんが襲われたら一たまりもない……。
暗闇に目が慣れると俺とえとさんがいる場所は深緑色のブロックに覆われていることが分かった。
そして落下中に感じていた激しい耳鳴りが落ち着いてくると、自然界では聞きなれない金切り音が所かしこから聞こえてきた。
――まじかよ……。
一難去ってまた一難……。
思わず生唾を飲み込む――どうやら俺たちがたどり着いたのは「ディープダーク」のようだった。
―――古代都市を守るように生成されるディープダークは山岳の地下深くに生成されることが知られている。
俺達レッド・アイも任務で古代都市のチェストにしかないとされている素材を得る依頼を受けて踏み入れたことはあった。
深層岩は深緑色に浸食されスカルクに変化し、所々スカルクブエインに覆われている。
魚の尾びれのようなものが揺れ動いているのはスカルクセンサー。
…周りの振動(歩いたり落下した時)を検知しているのだ。
先ほど俺とえとさんが落下してきたからだろうか…
水バケツ着地はどんなに上手くいったとしても振動0にすることはできない。
スカルクセンサーが反応して金切り音を出していた。
ディープダークで厄介なのはこの振動を4回検知すると伝説級の魔物「ウォーデン」が生成されることだった。冒険者界隈では「ウォーデン」は戦うべき相手ではなく避けるべき相手とされている。
盲目であるにもかかわらず敵を音や振動で感知し、的確に攻撃してくる魔物だった。
今のところウォーデンが出現していないが――あと何回の振動が出現のキーになるかわからない。
俺はそっと音や振動を立てないように、今だ俺の腕のなかで力無く気を失っているえとさんの様子を確認することにした。
えとさんを俺の胡座の上で横抱きする。
一本の松明の光で確認できるのは、クリーパーの爆発の影響でできたと思われる火傷やすり傷…
痛々しく顔の所々にできていた。
えとさんの口元に顔を寄せると不規則で弱々しい呼吸音が感じられる。
爆破の影響がなかった俺ですら感じた落下中のダメージは負傷していたえとさんにとっては追い打ちをかけるものだっただろう。
えとさんの治癒を最優先しなければならない状況であることは明白だった。
ここにヒーラーの、のあさんはいない。治癒魔法が使えるえとさんはこの状況だ……。
俺はインベントリからこの討伐を出発するときにえとさんから渡されたポーションを取り出した。
つい最近までえとさんに頼まれて集めた素材でなおきりさんが作った「フルポーション」だ。
俺は小瓶のふたを開け、えとさんの耳元でささやいた。
「えとさん」
「――。」
「えとさん、ポーション飲める?」
「――。」
えとさんの反応はなかった。
一瞬、迷いが生じた…。
これが中身を浴びて回復するタイプのスプラッシュポーションだったら……。
この後、俺がとる行動を後で知った彼女はどんな反応を示すだろうか……。嫌悪感?拒絶?非難?
でも……えとさんを救うには…………。
「ごめん。えとさん」
スカルクシュリーカーの金切り音が鳴る中で
俺はえとさんの顎を手で掬い上げ気道を確保した。
そして小瓶の中の青色透明の液体を口に含み、うっすらと開いた彼女の唇に自身の唇を重ね、少しずつポーションを渡していく。
えとさんが飲みこむのを確認すると再度同じことを繰り返してーー
初めは乾いて冷たかった唇が徐々に潤いと熱を取り戻してくるのがわかった。
顔の傷は綺麗に消えて、呼吸も安定してきた。
俺も口に含んだ僅かなポーションが効いたのか落下中に受けたダメージがいつのまにか消えていた。
あとはえとさんが目を覚ますのを静かに待つだけだった。
状況が好転したことに安堵した俺は乱れてしまったえとさんの長い髪を指で掬い横に流すと華奢な体を抱きしめる腕にほんの少し力を込めて
これが最後と、眠るえとさんの頬に唇を落としたのだった。