主人公の名前
20
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その日イルーゾォは任務がなかったので、何気なく外へ出ていた。彼は基本的にインドアな人間ゆえに外へ出て買い物をする、などはするような人間ではないのだがその日だけは気まぐれだった。しかしそれがいけなかったのだ、いつも通りにアジトで大人しくしておけば良かったんだと後悔する事になる。
イルーゾォはアジトからそう遠くはない街で様々なものを物色していた。特に何かを買いたい物は無かったのだが、そう、なんとなくだ。やはり自分のスタンド能力柄、鏡が気になることが多く良さそうな大きさやデザインは手に取ってしまう。そうやって物色して、そろそろ戻ろうかとアジトへ足を進めようとすると足元の方で何かとぶつかった。
「…あっ、ご、こめんなさい!」
「…………」
ぶつかった正体は、まだ5、6歳くらいの小さな子どもだった。少年はぶつかってしまった、自分よりも遥かに大きい大人に驚きながらもぺこりとお辞儀をして去って行ってしまった。イルーゾォは特に何も感じる事なく何事もなかったかのように再び足を進めたのだった。
ーーーーーーーーーーー
いつものリゾットの手伝いであるデスクワークを終わらせた海莉は、たまにはゴロゴロしようと思いリビングで本を読んでいた。そろそろ日本にいる家族に新しい書籍や漫画を頼んで送ってもらうかなぁ、なんて考えながらこの時間を有意義に過ごしているとアジトの扉が開く。彼女は反射的にそちらに目を向けた。
「あ、イルーゾォさんおかえりなさ………い、」
「おう…ただいま。って何だよ、人の顔じろじろみてよぉ」
「……あの、頭の…それは一体…?」
「は?頭だ?」
イルーゾォは海莉に指をさされ言われた通りに頭部に手を当てると、自身の髪の毛以外の何かに触れたのだ。髪以外頭部にあるわけがないのに。なんと彼の頭部には左右に生えていた、耳のようなものが。人間ではない動物の耳が。イルーゾォは顔面蒼白である。海莉はイルーゾォに近づき思わずそれめがけて手を伸ばす。
「……………み、耳ですね……猫の…多分」
「………嘘だろ?冗談言うなって」
「というかイルーゾォさん…その格好で外を……」
「…ハッ!!いや違うそれはねぇ!!さっき鏡見たときはそんな事はなかった!!」
先程お店を物色していた時彼は鏡を手に取った。その時自分の顔を見たが絶対に耳など生えていなかった、それだけは確実に覚えている。しかし一体何が、いつの間にこんな事が起きたのか海莉はもちろんイルーゾォも皆目見当もつかなかった。もう一度確認しても、耳はしっかりとそこに存在している。非情である。こんな姿をメンバーの誰かにでも見られてみろ、笑い物だ。絶対に馬鹿にしてくる事間違いない。イルーゾォは頭を抱えて必死に考える中、海莉はある事に気付きイルーゾォの後ろへと回る。
「……あの、イルーゾォさん」
「何だよ!?こっちは色々と考えてなぁ!!」
「ご丁寧にも、尻尾が……」
「………俺はもうダメだ、死ぬしかねぇ」
「ダメですって!!!!突然こうなったって事は…つまりですよ!!」
「スタンド攻撃を受けてるとでもいいたいのか?」
「何だイルーゾォ、妙な格好してんなぁおい」
海莉とイルーゾォの会話に、別の第三者の声に2人はぴたりと止まった。彼女はそちらを振り向けば昼寝から起きたばかりのプロシュートの姿があった。プロシュートから見れば、リビングに来てみてみれば海莉と猫耳をつけたイルーゾォが会話していてとても奇妙な光景ではあったが、まさかその耳が本物とは誰も思いはしないだろう。だからプロシュートは鏡に逃げようとするイルーゾォの首根っこを掴み、その耳に手を伸ばし触った。
「お前にそんな趣味があったとはな。長年の付き合いだが知らなかったぜ…」
「くっそ触るなてめぇ!!許可してねぇぞ!!」
「あのプロシュートさん…イルーゾォさん外から帰ってきたら耳が生えてたみたいで…多分スタンドか何かだとは思うんですけど…」
スタンドのせいだと思いたい、のが正直ではあるが。
「は?生えた?つけてんじゃあねぇの、それ」
「好き好んでこんなもん俺がつけるかぁ!?馬鹿かてめぇ!!」
隣でぎゃあぎゃあ喚くイルーゾォがうるさくて、プロシュートは耳を塞ぐ。海莉はサラッと事の流れを、この状況に参っているイルーゾォと共に説明した。イルーゾォも暗殺を生業としている身、相手がスタンド攻撃をする瞬間に気づかないわけがない。だからスタンドではないのかもしれないが、スタンド攻撃のせいで耳が生えた訳じゃあなければ、一体何のせいなのか。そう考えると元に戻る方法がさっぱりわからないので、やはりスタンドのせいだろう。プロシュートは過程はどうでも良さげに聞いており、今現在彼の興味はイルーゾォのリアルな猫耳であった。
「ずっとこのままでもいいんじゃあねぇの、支障ねぇだろ」
「あるだろうが!!支障しかねぇ!!」
「さっきからうるせぇな、勝手に生えたんなら勝手に消えるかもしれねぇしそこまで騒ぐもんでも…」
騒ぐ程ではない、そうプロシュートが言おうとした瞬間ボンッ!!と大きな音がなり煙がどこからか吹き出た。3人とも突然の煙に驚き、ゲホゲホと咳き込む。薄まってきた煙の中で、海莉は大丈夫ですかと2人に聞けばしっかり返事は帰ってきたので安堵した。
「ったく、何なんだ!?」
「お前のスタンドが暴発したんじゃあねぇの」
「まず出してねぇよ」
「…………あの…ぷ、プロシュート、さん」
まだ完璧には消えない煙の中でも、懲りずに言い合う2人の会話を海莉は呆れたように聞いていたのだが、イルーゾォではなくプロシュートに違和感があった。違和感という名の、デジャヴ。なんとプロシュートの頭に彼と同じような耳が左右に生えているではないか。尻尾もご丁寧に存在しており、イルーゾォとプロシュートの姿は全く同じだった。海莉はゆっくり彼の頭に生えてるそれを指差すと、プロシュートは察してまさかと言う表情で自身の頭を触った。
「………………、」
「ハハハハハッ!!!バーカバーカてめぇも同じじゃあねぇか!!!俺をバカにするからだぜ」
「どうしてくれんだおい!!!お前のせいだろうが!!!!」
「だから俺が知るかってんだよ!!」
「お前が持ち込んだ面倒ごとだろうが!!」
「いい加減にして下さい2人とも!!!ここで言い合ったって仕方ないでしょう!?いつまで子どもみたいに言い合うつもりですか!!」
「「…っ、」」
海莉の目の前でいつまでも繰り広げられる2人の不毛な言い合いに彼女の堪忍袋の緒が切れた。そんな海莉の怒鳴り声に、イルーゾォとプロシュートは驚き目を丸くして、開いていた口は閉じられ黙った。海莉も一つため息を吐き、自身を落ち着かせる。
とにかくこれはある意味非常事態であった。元に戻す方法も皆目見当もつかつず、ましてや何故か2人目の犠牲者まで増えた。自分ではもうどうにもできないと思った海莉はチーム全員をリビングに集める事にした。それはやめろ!と、自身の情けない姿をメンバーに見られる事が嫌な2人の意見を強引に押し切って、だ。仕方ないのだ、非常事態なのだから。
ーーーーーーーーーーー
「プッ…それで?2人とも猫の耳が生えたと…フフッ…」
「すげぇ、超本物じゃんか。なぁソルベ」
「…尻尾もだ」
「とんでもなく可愛げのねぇ猫だな、つまんねぇ」
「あ、兄貴…」
メローネ、ジェラート、ソルベ、ホルマジオは次々に言いたい放題だった。この状況にうんざりしている猫耳を生やした2人を他所に、ソルベとジェラートは好奇心ゆえに耳やら尻尾やらを遠慮なく触っていた。メローネはその似合わない異様な姿にクスクスと笑い、猫好きのホルマジオはあまりの可愛げのない猫に幻滅している。それはそうだ、ただのプロシュートとイルーゾォの姿に耳と尻尾が生えただけなのだから。完全なる猫の姿ではない。ペッシは慕う兄貴の姿に動揺が隠せず、ギアッチョはくだらねぇと吐き捨て、ソファに座る海莉の隣に腰を下ろした。
「……しかしだ、イルーゾォもそうだがなぜ関係のないプロシュートまでもがそうなったんだ?」
リーダーであるリゾットはこの状況に多少の驚きを見せたが、冷静に対処しようとしている。さすがリーダーである。
「そこなんですよね…何か法則的なものが働いてなのか…それとも距離?イルーゾォさんとの…」
「いやそれは無いな。海莉、君はプロシュートよりも先にイルーゾォと一緒にいたんだろう?なら、海莉が先にそうなるはず。だが君は変化なしだ」
「あ、たしかに…じゃあ何だろう…」
「他に伝染しちまうタイプは結構面倒だぞ、ここにいる全員がそんな姿になるなんてごめんだ」
伝染するその特定の理由が分からなければ、ここに全員いるのはかなり危険だ。イルーゾォのスタンド能力で2人を一旦鏡の中に隔離するのも手だが、もし元に戻らなければ伝染阻止のために永遠に隔離する事になってしまう。そして何より、結果的にチームのメンバーを失う事にもなるのだ。早急に解決策を見つけなければならないのだが…。一部のメンバーが真面目に考えていたら、また先程のようにボーン!!と大きな音と共に煙が吹き出した。
「な、何だ!?敵か!?」
「気配はないぞ!?」
「違います多分これ…っ、」
薄まる煙の中で、海莉は目を凝らし全員の姿を確認した。メローネ、リゾット、ホルマジオ、ペッシと順々に頭やら腰あたりやらに必死に確認するがそれらしいものは見当たらない。大丈夫そう…?と安心したのもつかの間、煙が晴れたので再度全員を見るとあの2人組の頭にも生えていた、猫の耳が。
「あソルベ、耳が!!」
「ジェラートも生えてるぞ」
「アッハッハ!!俺たちもなっちまったな〜!!」
「「なっちまったな、じゃあねぇだろ!!!」」
驚くほど呑気な2人にギアッチョとホルマジオの声が重なる。ソルベとジェラートはお互いに生えてしまった耳や尻尾やらを触り合い特に焦る様子はない。そんな軽い神経でいられるのが他のメンバーにはかなり理解に苦しむ光景だった。犠牲者が増えたと、頭を抱えるリゾットは更にもう一つの異変に気付いた。
「…プロシュートとイルーゾォはどこだ?」
「あぁ、見当たらないな」
「自分の姿に耐えきれなくなって鏡の中に引っ込んだじゃあねぇの?」
きょろきょろとリビングを見回すがどうやっても2人の存在が確認できない。すると、どこからか猫の可愛いらしいニャ〜という鳴き声が聞こえた。状況が状況なだけに、メンバーは瞬時に理解できた。そして彼らはゆっくりと自分らの足元へと目を向けると、いたのだ。いるはずのない猫が2匹。見た事もない見事な金の毛を持つ猫と、濃い茶色の毛を持つ猫が。しかもその2匹の下にはイルーゾォとプロシュートが着ていたであろう服が散乱している。
「ニャーッ(うわぁぁぁなんだこりゃあ!!!) 」
「ニャ!(どうなってんだマジで!!) 」
「………まさか、兄貴とイルーゾォ…?」
「段階進んでんじゃあねぇか!!!!」
「立派な猫になったな…」
「言ってる場合ですか!?これ本格的にまずいですよ!!」
海莉は猫になってしまった彼らを抱き上げようと手を伸ばすと、リゾットは待てと彼女のその手を取った。
「触るな、海莉」
「え!?」
「聞くが海莉、プロシュートはイルーゾォに生えた耳や尻尾には触れていたか?」
「……あ!触ってました!そういえばジェラートたちもさっき触って…」
「「触ったな」」
「もしかして触れるとそうなのか?」
プロシュートもイルーゾォが嫌がる中遠慮なく触っていた。そして数分後に爆発し、あの姿になっていた、これは確かだ。ソルベたちも面白がって2人の頭を触っていたので、もしかしたらメローネの言う通りその姿になった人に触れると自らも変身してしまうのかもしれない。しかし彼女は自身の行動を思い出した。
「…あれ?私もイルーゾォさんをはじめに見たときに普通に耳とか触りましたけど変化ないですね…」
「性別によって変身するタイミングが違うか、それとも女はならない、とか?」
「触ってから結構時間経ってるんですよね…」
「……うむ、」
とりあえず彼らは、男性陣だけは猫に変身した4人…いや2人と2匹には触れてはいけないとだけ決めた。理由は分からないが海莉は触れても特に問題はないようなので、彼らの面倒などは極力彼女が請け負う事になった。海莉にとっては、とても不本意な事だが。このままいけばソルベやジェラートも完全なる猫に変身してしまうのは時間の問題だ。
海莉はイルーゾォとプロシュートの方へと向きを変えると、猫の姿になっていてもショックを受けているのがよく分かるくらい項垂れていた。そりゃあそうだ、人間から猫になってしまったのだから。彼女は2人に近づき、茶の毛を持つイルーゾォを抱き上げた。
「ンニャッ!?(おい!何だ!?) 」
「イルーゾォさん、それからプロシュートさんもソルベもジェラートも私が何とかします!頑張って戻れる方法探してみせますから…」
「ニャ…(海莉…) 」
「あぁぁごめんなさい!!こんな事言うのもアレですけどイルーゾォさん可愛いです…!!」
「おいおい…」
相手はイルーゾォだと分かっていも、それでもやはり見た目は猫なので弱々しく小さく鳴いたその声に海莉はメロメロだった。彼女はそのまま抱きしめると、イルーゾォはやめろぉ!!と言わんばかりに大きく鳴いた。果たしてそれはただ単に嫌がっているのか、それとも照れているのか。その状況が面白くないと感じたプロシュートは海莉の足元に近寄って可愛らしい肉球をぺしぺしと当てた。
「プロシュートさん?」
「………」
「ぐっ!!可愛いっ!!」
無言で見つめられれば、当たり前に可愛いと思うわけで。海莉は次にプロシュートを抱き上げる。この調子で本当に大丈夫なのかと、元に戻す気はあるのかと、不安を覚えるリゾット達であった。
「なーにあれ、ズルくないか?俺も猫になりたい」
「真顔で何言ってんだテメェ」
「やめてくれ、人員不足になる」
イルーゾォはアジトからそう遠くはない街で様々なものを物色していた。特に何かを買いたい物は無かったのだが、そう、なんとなくだ。やはり自分のスタンド能力柄、鏡が気になることが多く良さそうな大きさやデザインは手に取ってしまう。そうやって物色して、そろそろ戻ろうかとアジトへ足を進めようとすると足元の方で何かとぶつかった。
「…あっ、ご、こめんなさい!」
「…………」
ぶつかった正体は、まだ5、6歳くらいの小さな子どもだった。少年はぶつかってしまった、自分よりも遥かに大きい大人に驚きながらもぺこりとお辞儀をして去って行ってしまった。イルーゾォは特に何も感じる事なく何事もなかったかのように再び足を進めたのだった。
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いつものリゾットの手伝いであるデスクワークを終わらせた海莉は、たまにはゴロゴロしようと思いリビングで本を読んでいた。そろそろ日本にいる家族に新しい書籍や漫画を頼んで送ってもらうかなぁ、なんて考えながらこの時間を有意義に過ごしているとアジトの扉が開く。彼女は反射的にそちらに目を向けた。
「あ、イルーゾォさんおかえりなさ………い、」
「おう…ただいま。って何だよ、人の顔じろじろみてよぉ」
「……あの、頭の…それは一体…?」
「は?頭だ?」
イルーゾォは海莉に指をさされ言われた通りに頭部に手を当てると、自身の髪の毛以外の何かに触れたのだ。髪以外頭部にあるわけがないのに。なんと彼の頭部には左右に生えていた、耳のようなものが。人間ではない動物の耳が。イルーゾォは顔面蒼白である。海莉はイルーゾォに近づき思わずそれめがけて手を伸ばす。
「……………み、耳ですね……猫の…多分」
「………嘘だろ?冗談言うなって」
「というかイルーゾォさん…その格好で外を……」
「…ハッ!!いや違うそれはねぇ!!さっき鏡見たときはそんな事はなかった!!」
先程お店を物色していた時彼は鏡を手に取った。その時自分の顔を見たが絶対に耳など生えていなかった、それだけは確実に覚えている。しかし一体何が、いつの間にこんな事が起きたのか海莉はもちろんイルーゾォも皆目見当もつかなかった。もう一度確認しても、耳はしっかりとそこに存在している。非情である。こんな姿をメンバーの誰かにでも見られてみろ、笑い物だ。絶対に馬鹿にしてくる事間違いない。イルーゾォは頭を抱えて必死に考える中、海莉はある事に気付きイルーゾォの後ろへと回る。
「……あの、イルーゾォさん」
「何だよ!?こっちは色々と考えてなぁ!!」
「ご丁寧にも、尻尾が……」
「………俺はもうダメだ、死ぬしかねぇ」
「ダメですって!!!!突然こうなったって事は…つまりですよ!!」
「スタンド攻撃を受けてるとでもいいたいのか?」
「何だイルーゾォ、妙な格好してんなぁおい」
海莉とイルーゾォの会話に、別の第三者の声に2人はぴたりと止まった。彼女はそちらを振り向けば昼寝から起きたばかりのプロシュートの姿があった。プロシュートから見れば、リビングに来てみてみれば海莉と猫耳をつけたイルーゾォが会話していてとても奇妙な光景ではあったが、まさかその耳が本物とは誰も思いはしないだろう。だからプロシュートは鏡に逃げようとするイルーゾォの首根っこを掴み、その耳に手を伸ばし触った。
「お前にそんな趣味があったとはな。長年の付き合いだが知らなかったぜ…」
「くっそ触るなてめぇ!!許可してねぇぞ!!」
「あのプロシュートさん…イルーゾォさん外から帰ってきたら耳が生えてたみたいで…多分スタンドか何かだとは思うんですけど…」
スタンドのせいだと思いたい、のが正直ではあるが。
「は?生えた?つけてんじゃあねぇの、それ」
「好き好んでこんなもん俺がつけるかぁ!?馬鹿かてめぇ!!」
隣でぎゃあぎゃあ喚くイルーゾォがうるさくて、プロシュートは耳を塞ぐ。海莉はサラッと事の流れを、この状況に参っているイルーゾォと共に説明した。イルーゾォも暗殺を生業としている身、相手がスタンド攻撃をする瞬間に気づかないわけがない。だからスタンドではないのかもしれないが、スタンド攻撃のせいで耳が生えた訳じゃあなければ、一体何のせいなのか。そう考えると元に戻る方法がさっぱりわからないので、やはりスタンドのせいだろう。プロシュートは過程はどうでも良さげに聞いており、今現在彼の興味はイルーゾォのリアルな猫耳であった。
「ずっとこのままでもいいんじゃあねぇの、支障ねぇだろ」
「あるだろうが!!支障しかねぇ!!」
「さっきからうるせぇな、勝手に生えたんなら勝手に消えるかもしれねぇしそこまで騒ぐもんでも…」
騒ぐ程ではない、そうプロシュートが言おうとした瞬間ボンッ!!と大きな音がなり煙がどこからか吹き出た。3人とも突然の煙に驚き、ゲホゲホと咳き込む。薄まってきた煙の中で、海莉は大丈夫ですかと2人に聞けばしっかり返事は帰ってきたので安堵した。
「ったく、何なんだ!?」
「お前のスタンドが暴発したんじゃあねぇの」
「まず出してねぇよ」
「…………あの…ぷ、プロシュート、さん」
まだ完璧には消えない煙の中でも、懲りずに言い合う2人の会話を海莉は呆れたように聞いていたのだが、イルーゾォではなくプロシュートに違和感があった。違和感という名の、デジャヴ。なんとプロシュートの頭に彼と同じような耳が左右に生えているではないか。尻尾もご丁寧に存在しており、イルーゾォとプロシュートの姿は全く同じだった。海莉はゆっくり彼の頭に生えてるそれを指差すと、プロシュートは察してまさかと言う表情で自身の頭を触った。
「………………、」
「ハハハハハッ!!!バーカバーカてめぇも同じじゃあねぇか!!!俺をバカにするからだぜ」
「どうしてくれんだおい!!!お前のせいだろうが!!!!」
「だから俺が知るかってんだよ!!」
「お前が持ち込んだ面倒ごとだろうが!!」
「いい加減にして下さい2人とも!!!ここで言い合ったって仕方ないでしょう!?いつまで子どもみたいに言い合うつもりですか!!」
「「…っ、」」
海莉の目の前でいつまでも繰り広げられる2人の不毛な言い合いに彼女の堪忍袋の緒が切れた。そんな海莉の怒鳴り声に、イルーゾォとプロシュートは驚き目を丸くして、開いていた口は閉じられ黙った。海莉も一つため息を吐き、自身を落ち着かせる。
とにかくこれはある意味非常事態であった。元に戻す方法も皆目見当もつかつず、ましてや何故か2人目の犠牲者まで増えた。自分ではもうどうにもできないと思った海莉はチーム全員をリビングに集める事にした。それはやめろ!と、自身の情けない姿をメンバーに見られる事が嫌な2人の意見を強引に押し切って、だ。仕方ないのだ、非常事態なのだから。
ーーーーーーーーーーー
「プッ…それで?2人とも猫の耳が生えたと…フフッ…」
「すげぇ、超本物じゃんか。なぁソルベ」
「…尻尾もだ」
「とんでもなく可愛げのねぇ猫だな、つまんねぇ」
「あ、兄貴…」
メローネ、ジェラート、ソルベ、ホルマジオは次々に言いたい放題だった。この状況にうんざりしている猫耳を生やした2人を他所に、ソルベとジェラートは好奇心ゆえに耳やら尻尾やらを遠慮なく触っていた。メローネはその似合わない異様な姿にクスクスと笑い、猫好きのホルマジオはあまりの可愛げのない猫に幻滅している。それはそうだ、ただのプロシュートとイルーゾォの姿に耳と尻尾が生えただけなのだから。完全なる猫の姿ではない。ペッシは慕う兄貴の姿に動揺が隠せず、ギアッチョはくだらねぇと吐き捨て、ソファに座る海莉の隣に腰を下ろした。
「……しかしだ、イルーゾォもそうだがなぜ関係のないプロシュートまでもがそうなったんだ?」
リーダーであるリゾットはこの状況に多少の驚きを見せたが、冷静に対処しようとしている。さすがリーダーである。
「そこなんですよね…何か法則的なものが働いてなのか…それとも距離?イルーゾォさんとの…」
「いやそれは無いな。海莉、君はプロシュートよりも先にイルーゾォと一緒にいたんだろう?なら、海莉が先にそうなるはず。だが君は変化なしだ」
「あ、たしかに…じゃあ何だろう…」
「他に伝染しちまうタイプは結構面倒だぞ、ここにいる全員がそんな姿になるなんてごめんだ」
伝染するその特定の理由が分からなければ、ここに全員いるのはかなり危険だ。イルーゾォのスタンド能力で2人を一旦鏡の中に隔離するのも手だが、もし元に戻らなければ伝染阻止のために永遠に隔離する事になってしまう。そして何より、結果的にチームのメンバーを失う事にもなるのだ。早急に解決策を見つけなければならないのだが…。一部のメンバーが真面目に考えていたら、また先程のようにボーン!!と大きな音と共に煙が吹き出した。
「な、何だ!?敵か!?」
「気配はないぞ!?」
「違います多分これ…っ、」
薄まる煙の中で、海莉は目を凝らし全員の姿を確認した。メローネ、リゾット、ホルマジオ、ペッシと順々に頭やら腰あたりやらに必死に確認するがそれらしいものは見当たらない。大丈夫そう…?と安心したのもつかの間、煙が晴れたので再度全員を見るとあの2人組の頭にも生えていた、猫の耳が。
「あソルベ、耳が!!」
「ジェラートも生えてるぞ」
「アッハッハ!!俺たちもなっちまったな〜!!」
「「なっちまったな、じゃあねぇだろ!!!」」
驚くほど呑気な2人にギアッチョとホルマジオの声が重なる。ソルベとジェラートはお互いに生えてしまった耳や尻尾やらを触り合い特に焦る様子はない。そんな軽い神経でいられるのが他のメンバーにはかなり理解に苦しむ光景だった。犠牲者が増えたと、頭を抱えるリゾットは更にもう一つの異変に気付いた。
「…プロシュートとイルーゾォはどこだ?」
「あぁ、見当たらないな」
「自分の姿に耐えきれなくなって鏡の中に引っ込んだじゃあねぇの?」
きょろきょろとリビングを見回すがどうやっても2人の存在が確認できない。すると、どこからか猫の可愛いらしいニャ〜という鳴き声が聞こえた。状況が状況なだけに、メンバーは瞬時に理解できた。そして彼らはゆっくりと自分らの足元へと目を向けると、いたのだ。いるはずのない猫が2匹。見た事もない見事な金の毛を持つ猫と、濃い茶色の毛を持つ猫が。しかもその2匹の下にはイルーゾォとプロシュートが着ていたであろう服が散乱している。
「ニャーッ(うわぁぁぁなんだこりゃあ!!!) 」
「ニャ!(どうなってんだマジで!!) 」
「………まさか、兄貴とイルーゾォ…?」
「段階進んでんじゃあねぇか!!!!」
「立派な猫になったな…」
「言ってる場合ですか!?これ本格的にまずいですよ!!」
海莉は猫になってしまった彼らを抱き上げようと手を伸ばすと、リゾットは待てと彼女のその手を取った。
「触るな、海莉」
「え!?」
「聞くが海莉、プロシュートはイルーゾォに生えた耳や尻尾には触れていたか?」
「……あ!触ってました!そういえばジェラートたちもさっき触って…」
「「触ったな」」
「もしかして触れるとそうなのか?」
プロシュートもイルーゾォが嫌がる中遠慮なく触っていた。そして数分後に爆発し、あの姿になっていた、これは確かだ。ソルベたちも面白がって2人の頭を触っていたので、もしかしたらメローネの言う通りその姿になった人に触れると自らも変身してしまうのかもしれない。しかし彼女は自身の行動を思い出した。
「…あれ?私もイルーゾォさんをはじめに見たときに普通に耳とか触りましたけど変化ないですね…」
「性別によって変身するタイミングが違うか、それとも女はならない、とか?」
「触ってから結構時間経ってるんですよね…」
「……うむ、」
とりあえず彼らは、男性陣だけは猫に変身した4人…いや2人と2匹には触れてはいけないとだけ決めた。理由は分からないが海莉は触れても特に問題はないようなので、彼らの面倒などは極力彼女が請け負う事になった。海莉にとっては、とても不本意な事だが。このままいけばソルベやジェラートも完全なる猫に変身してしまうのは時間の問題だ。
海莉はイルーゾォとプロシュートの方へと向きを変えると、猫の姿になっていてもショックを受けているのがよく分かるくらい項垂れていた。そりゃあそうだ、人間から猫になってしまったのだから。彼女は2人に近づき、茶の毛を持つイルーゾォを抱き上げた。
「ンニャッ!?(おい!何だ!?) 」
「イルーゾォさん、それからプロシュートさんもソルベもジェラートも私が何とかします!頑張って戻れる方法探してみせますから…」
「ニャ…(海莉…) 」
「あぁぁごめんなさい!!こんな事言うのもアレですけどイルーゾォさん可愛いです…!!」
「おいおい…」
相手はイルーゾォだと分かっていも、それでもやはり見た目は猫なので弱々しく小さく鳴いたその声に海莉はメロメロだった。彼女はそのまま抱きしめると、イルーゾォはやめろぉ!!と言わんばかりに大きく鳴いた。果たしてそれはただ単に嫌がっているのか、それとも照れているのか。その状況が面白くないと感じたプロシュートは海莉の足元に近寄って可愛らしい肉球をぺしぺしと当てた。
「プロシュートさん?」
「………」
「ぐっ!!可愛いっ!!」
無言で見つめられれば、当たり前に可愛いと思うわけで。海莉は次にプロシュートを抱き上げる。この調子で本当に大丈夫なのかと、元に戻す気はあるのかと、不安を覚えるリゾット達であった。
「なーにあれ、ズルくないか?俺も猫になりたい」
「真顔で何言ってんだテメェ」
「やめてくれ、人員不足になる」
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