主人公の名前
19
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待っていてくれたメローネと共にアジトへ帰ってきたのはいいが、今日は殆どのメンバーが任務の為にアジトに残っているメンバーはとても少なく、ホルマジオのみがいる。イルーゾォは今日中に戻ってくると聞いていたが、果たして何時になる事やら。人数も少ない為、今日の晩ご飯はちょっとだけ遅めに作ろうと海莉は頭の中で今日の残り時間の過ごし方を考えていた。海莉は部屋着に着替えようと服に手をかけると、自室なのであるはずのはい視線を感じそちらへ勢いよく振り向く。すると当たり前の様にメローネが立っていた。
「着替えないのか?」
「……えっ!?何でいるのッ!?」
「…んー、なんとなく今日の俺は…」
彼はそのまま、警戒する海莉に近づいて彼女の背後に回り自身の腕をお腹に回りぎゅーっと抱きしめたのだ。彼の長い金の髪が彼女の肩に垂れ落ち、彼の匂いが海莉の鼻をほんの少しだけくすぐった。
「君に甘えたくて仕方ないんだ」
「ちょっ…!!!」
メローネはそのまま顔を肩に埋めて深く深く鼻で息を吸った。
「ひぃぃぃぃいやぁぁぁぁぁ!!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿メローネ!!!何してんの、いや、ホントに!!!」
「頼むよ…今日一日、俺を甘やかしてくれ」
「意味わかんないって!!何、どうしたの…、ぎゃっ!!」
メローネは彼女の手を掴んでベッドへと引っ張ると、案の定2人はベッドへとダイブした。彼は横たわる海莉に上に覆い被さる。パニックで、一体何が起きているのかさっぱりな海莉であったが、メローネがおかしいという事だけは明確で、今のこの状況はとてもよろしくない。
「……一旦落ち着こうかメローネさん」
「俺は落ち着いている。うるさいのは君の方だろ」
「あのねぇ…。どうしたの?何か、あった?」
「…何もない、なにも」
「そんな思いつめたような顔しといてよく言うよ…ねぇ、何があったの?変だよメローネ」
「………、」
メローネ?と声をかけると、彼は自身の下唇を噛み、眉をひそめた。
「何もないって言ってるじゃあないか!!君はただ俺を甘やかしてくれればいいのに…!!なのにどうして君は…ずかずかと入って来るんだ…!!」
彼は声を荒げた。それは、思い通りにならないからと駄々をこねる小さな子どもみたいに。突然の怒りの声に海莉は目を丸くする。甘えを要求する彼の顔は、それとは裏腹にどこか追い詰めたような顔をしていた。だから気になった、いつもの彼じゃあないのは明確だったから。きちんと理由を聞いてその上でメローネの要求をできる範囲で受け入れようと思っていたのだが。彼女の質問にメローネは機嫌を損ねてしまったらしい。
しかし、海莉はなぜ自分がここで怒鳴られなければならないのかと疑問を抱いてしまう。さらに彼女の頭のどこかがプツンと切れる音がした。
「何で私が怒鳴られなきゃならないわけ!?ずかずかって何?私が?現にずかずか人の部屋に入ってきてるのメローネでしょ!?」
一度キレてしまった海莉は、もう自分でもどうにもできないくらい止まらなかった。
「大体ねぇ、人肌恋しいんならそういう店行くとか相手探すとかしてよ!!私には無理です!!!」
海莉は覆い被さるメローネの肩を押しのけて、ベッドから起き上がる。彼女はそのまま部屋を出ようとすると、手首あたりを掴まれたので何!?と勢いよく振り向く。きっと彼も、自分が怒鳴り散らした事によってさらに機嫌を損ねているだろう、怒っているだろうと思った。しかし、海莉の想像からかけ離れた顔、今にも泣きだしてしまうのではないかと思うくらい、顔が歪んでいるメローネがいたのだ。そんな彼に思わず海莉も驚き息を飲む。
「……他じゃあダメなんだ。君じゃあなきゃ……理由は、俺にも分からないが」
それだけ言うとメローネは手を離せば部屋を出て行った。更に謎が深まるばかりで、海莉は今さっきの彼の顔を思い出しては罪悪感に苛まれる。何なの、どういう事なの、とそんな言葉で今彼女の頭はいっぱいだ。力任せに自身の頭をがしがしとかいて、そのままソファに座ると再び部屋のドアが少しだけ開いた。メローネかと思いそちらへ目だけを向けると、ホルマジオが顔を覗き込んでいるではないか。
「…なーに騒いでんだ?」
「……う〜〜〜!!助けてホルマジオ兄貴ぃ!!」
「おいおい、なんだぁ?」
ホルマジオは別の部屋から口喧嘩のような騒がしい声を耳にして、気になりここへやってきたようだが…訪ねると口をへの字にして情けない顔で助けを求める海莉がいたのだ。呆れながらもどこか楽しそうに笑いながらホルマジオは彼女の部屋へとそのまま入りソファへと座った。海莉は今さっき起きたメローネとの事を話した。それに対して自分が抱いた怒りの気持ちも、しかしながら多少の後悔があるという気持ちも。
時間が経つにつれて、何もあそこまで言わなくても良かったのではないかと反省の気持ちが溢れて来る。ただ仕事で疲れたから甘えたかった、誰にだって言いたくない話は一つや二つあるわけだから、何もあんなにぐいぐい聞くことはなかったのではないか、と。それでもいつものメローネではなかった事は確かで、自分はそんな彼の事を心配しただけなのに。心配だなんて、時には大きなお世話になるのだから。後悔と、自分を擁護する言い訳と…色んな気持ちが混ざり合ってどうしたらいいのか分からない。海莉はため息を漏らす。
「なるほどな〜……」
「言うこと聞いて頭でも撫でれば良かったかな〜…」
「……、」
ホルマジオはなぜメローネがそうなったのか、なんとなく検討はついていた。というのも、ここ数日間彼が一体とどんな任務を請け負っていたのか知っているからだ。ホルマジオもメンバーに比べてそういった任務はある方だが、メローネやプロシュートに比べれば少ない方である。仕事と言えど好きでもない女と身体を重ね、心にもない言葉を吐くなどある意味地獄だ。しかしいつものメローネはそういった任務の後も特に何事もなくケロッとしてるのだが、なぜ今回は甘えたいなど言ったのか、そんな態度をとったのか。
ホルマジオの推理はこうである。海莉がメローネにとって、心の拠り所であり自分が“普通”でいられる唯一の存在なのではないか。やりたくもない女と身体を重ね、嘘の愛を吐き、そんな汚れた自分を少しでも和らげてくれるであろう彼女に多少の甘えを求めたのではないかと。これはあくまで彼の憶測でしかなく、仮にそうだったとしてもメローネ自身がそれをきちんと自覚しているのかは知らないが。
「お前には詳しくは言えねぇけど、あいつの今回の任務、少しいつもと違くてよ。その任務中に…何かこう、思う事があったのかもしれねぇな」
「……それを知ろうとしたら、私は怒鳴られたわけね」
「そんなに気にするなって」
ホルマジオは海莉の頭を無造作に撫で回す。しかし彼女はそれでもまだ悩み続け、シュンとしているので、彼はどうしたものかと腕を組んだ。正直、あんな面倒な事を言い出してきたメローネに対し海莉がそこまで思い悩む必要はないと感じているホルマジオではある。しかしそうやって相手の事をきちんと思い悩む所も彼女のいい所なのかもしれないが。
「おめぇ…いつまでもそんなショボくれた顔してるとなぁ」
「……へ、」
「こうすんぞ!!!」
「え、ちょっ!!」
ホルマジオは自身の手を海莉の脇腹めがけてそのまま掴むと、指先を動かすとその瞬間、海莉の笑い声が部屋に大きく響いた。
「あははははははッ!!!や、何してんの…っ!!くすぐったッ……!!!」
「やめて欲しけりゃもっと笑っとけ」
「笑ってるじゃん!!やだやだセクハラです!!!」
「こんなのセクハラに入んねぇよ」
先程とは打って変わって笑い転げる海莉。そろそろやめてやろうかと手を止めようとした瞬間、彼女が身をよじってこの擽りから逃れようと身体を動かす。しかしここはソファの上、決して広くはない。
「あ、バカ!!」
彼は瞬間的に彼女の頭を抱え、2人でそのまま落下してしまった。ホルマジオがうまく海莉を庇ったため幸い彼女が体を打つ事はなかったが、ホルマジオは海莉の下敷になっていた。
「……怪我ねぇか?」
「う、うん!!ごめんホルマジオ!!」
「何でお前が謝ってんだよ」
「何してるんだ」
「…え、」
突然2人以外の別の誰かの声に、2人は驚きその声のする方へゆっくり顔を向ける。すると、先程まで話題の中心になっていたメローネがドアの直ぐ手前に立っていたのだ。しかも状況を知らないメローネにとって今2人の体制というのは、まるで海莉がホルマジオを押し倒しているかのような図なのである。ホルマジオは身の危険を察知しマズイという顔を浮かべるが、メローネの行動は早かった。足早に2人に近づき、まるで米俵を担ぐかの様に海莉を抱き上げた。メローネは特に何かを発する事無く海莉の部屋を出ていけば、残されたのはホルマジオのみ。
「……………やべぇ、」
ーーーーーーーーーーーー
担がれたまま連れてこられたのはメローネとイルーゾォの部屋だった。彼は海莉をベッドの上へ降ろすと、また先程の様に彼女の上へと覆い被さりこれでもかというくらい顔を近づける。しかしその顔はとっても不機嫌だ。
「…あの、メローネ…さん」
「俺にはそういう店に行けなんて言っといて、何でホルマジオはいいんだ?」
「あのね!!あれはちょっとふざけ合ってたらソファから落ちちゃって、ホルマジオは私を庇ったらそういう体制になっただけなの!変な事はしてないよ!!」
怪訝な顔つきで彼女を見るメローネ。海莉はこのままだとまた同じような事で喧嘩してしまうのではないかと思い、言葉を切り出そうとしたら、海莉…と彼が静かに名前を呼ぶので、彼女も何?と返した。
「さっきは怒鳴って悪かった」
「……、」
彼の長い髪がうまいこと顔を隠しているので、メローネが一体どんな表情をしているのかは分からない。が、声色から考えて反省しているのは嫌でも分かった。
「私、いつものメローネじゃあないなって思って、心配したんだ。だって突然甘えたいって言うんだもん…でも、メローネだって聞かれたくない事もあるもんね。私の方こそ、ごめん」
「……海莉」
「あなたが言うように本当に何でもないならいいの。ま、何かあったとしても私がメローネにちょっと優しくすればそれで元気になるなら……」
たまになら、甘えさせてやらないこともない、とボソボソと呟く。しかしその言葉ははっきりと彼に届いていた。先程まで不機嫌で、反省の色が見えていた彼の顔は見る見るうちに笑顔になっていく。あ、余計な事言った、と海莉は後悔するが時すでに遅し。メローネは覆いかぶさっていた状態から彼女に抱きついた。
「ちょっと…!!」
「良いんだろう?甘えても。夕飯の支度までまだ時間あるんだしこのまま一緒に寝てくれ」
「えぇー…」
文字通りぎゅうぎゅうと抱きつかれているので身動きが取れない。その上子どもみたいに嬉しそうな顔を浮かべている。自分がいいよと言った手前、拒否する事も出来なかった。海莉は、仕方ないと諦めて力を抜き、母親が子どもに向けるような優しい眼差しで彼の頭をゆっくり撫でた。指が綺麗に通ってしまう羨ましいくらいの金の髪は撫でる側としても心地がいい。
「ディ・モールト……ベネ…、」
「そりゃあ良かったです」
うとうとしながら呟くメローネ。次第に海莉も目をつむり意識を手放し眠った。
数時間後、帰宅したイルーゾォが寄り添って寝ている彼らを目撃し思わずあげた奇声によって2人は目覚める事になる。しかし、目覚めた時の体制が、なぜか海莉がメローネに抱きつくかのような最初とは真逆の体制になっている事に彼女は驚き困惑するしかなかった。
「何やってんのお前ら!?そういう関係なのかぁ!??」
「ち、違います!!これには深いワケが…!!」
「先に言っとくけど、寝てる時君が抱きしめてきたんだからな」
「嘘だーーッ!!!」
「何でもいいけど、飯まだかぁ?」
「着替えないのか?」
「……えっ!?何でいるのッ!?」
「…んー、なんとなく今日の俺は…」
彼はそのまま、警戒する海莉に近づいて彼女の背後に回り自身の腕をお腹に回りぎゅーっと抱きしめたのだ。彼の長い金の髪が彼女の肩に垂れ落ち、彼の匂いが海莉の鼻をほんの少しだけくすぐった。
「君に甘えたくて仕方ないんだ」
「ちょっ…!!!」
メローネはそのまま顔を肩に埋めて深く深く鼻で息を吸った。
「ひぃぃぃぃいやぁぁぁぁぁ!!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿メローネ!!!何してんの、いや、ホントに!!!」
「頼むよ…今日一日、俺を甘やかしてくれ」
「意味わかんないって!!何、どうしたの…、ぎゃっ!!」
メローネは彼女の手を掴んでベッドへと引っ張ると、案の定2人はベッドへとダイブした。彼は横たわる海莉に上に覆い被さる。パニックで、一体何が起きているのかさっぱりな海莉であったが、メローネがおかしいという事だけは明確で、今のこの状況はとてもよろしくない。
「……一旦落ち着こうかメローネさん」
「俺は落ち着いている。うるさいのは君の方だろ」
「あのねぇ…。どうしたの?何か、あった?」
「…何もない、なにも」
「そんな思いつめたような顔しといてよく言うよ…ねぇ、何があったの?変だよメローネ」
「………、」
メローネ?と声をかけると、彼は自身の下唇を噛み、眉をひそめた。
「何もないって言ってるじゃあないか!!君はただ俺を甘やかしてくれればいいのに…!!なのにどうして君は…ずかずかと入って来るんだ…!!」
彼は声を荒げた。それは、思い通りにならないからと駄々をこねる小さな子どもみたいに。突然の怒りの声に海莉は目を丸くする。甘えを要求する彼の顔は、それとは裏腹にどこか追い詰めたような顔をしていた。だから気になった、いつもの彼じゃあないのは明確だったから。きちんと理由を聞いてその上でメローネの要求をできる範囲で受け入れようと思っていたのだが。彼女の質問にメローネは機嫌を損ねてしまったらしい。
しかし、海莉はなぜ自分がここで怒鳴られなければならないのかと疑問を抱いてしまう。さらに彼女の頭のどこかがプツンと切れる音がした。
「何で私が怒鳴られなきゃならないわけ!?ずかずかって何?私が?現にずかずか人の部屋に入ってきてるのメローネでしょ!?」
一度キレてしまった海莉は、もう自分でもどうにもできないくらい止まらなかった。
「大体ねぇ、人肌恋しいんならそういう店行くとか相手探すとかしてよ!!私には無理です!!!」
海莉は覆い被さるメローネの肩を押しのけて、ベッドから起き上がる。彼女はそのまま部屋を出ようとすると、手首あたりを掴まれたので何!?と勢いよく振り向く。きっと彼も、自分が怒鳴り散らした事によってさらに機嫌を損ねているだろう、怒っているだろうと思った。しかし、海莉の想像からかけ離れた顔、今にも泣きだしてしまうのではないかと思うくらい、顔が歪んでいるメローネがいたのだ。そんな彼に思わず海莉も驚き息を飲む。
「……他じゃあダメなんだ。君じゃあなきゃ……理由は、俺にも分からないが」
それだけ言うとメローネは手を離せば部屋を出て行った。更に謎が深まるばかりで、海莉は今さっきの彼の顔を思い出しては罪悪感に苛まれる。何なの、どういう事なの、とそんな言葉で今彼女の頭はいっぱいだ。力任せに自身の頭をがしがしとかいて、そのままソファに座ると再び部屋のドアが少しだけ開いた。メローネかと思いそちらへ目だけを向けると、ホルマジオが顔を覗き込んでいるではないか。
「…なーに騒いでんだ?」
「……う〜〜〜!!助けてホルマジオ兄貴ぃ!!」
「おいおい、なんだぁ?」
ホルマジオは別の部屋から口喧嘩のような騒がしい声を耳にして、気になりここへやってきたようだが…訪ねると口をへの字にして情けない顔で助けを求める海莉がいたのだ。呆れながらもどこか楽しそうに笑いながらホルマジオは彼女の部屋へとそのまま入りソファへと座った。海莉は今さっき起きたメローネとの事を話した。それに対して自分が抱いた怒りの気持ちも、しかしながら多少の後悔があるという気持ちも。
時間が経つにつれて、何もあそこまで言わなくても良かったのではないかと反省の気持ちが溢れて来る。ただ仕事で疲れたから甘えたかった、誰にだって言いたくない話は一つや二つあるわけだから、何もあんなにぐいぐい聞くことはなかったのではないか、と。それでもいつものメローネではなかった事は確かで、自分はそんな彼の事を心配しただけなのに。心配だなんて、時には大きなお世話になるのだから。後悔と、自分を擁護する言い訳と…色んな気持ちが混ざり合ってどうしたらいいのか分からない。海莉はため息を漏らす。
「なるほどな〜……」
「言うこと聞いて頭でも撫でれば良かったかな〜…」
「……、」
ホルマジオはなぜメローネがそうなったのか、なんとなく検討はついていた。というのも、ここ数日間彼が一体とどんな任務を請け負っていたのか知っているからだ。ホルマジオもメンバーに比べてそういった任務はある方だが、メローネやプロシュートに比べれば少ない方である。仕事と言えど好きでもない女と身体を重ね、心にもない言葉を吐くなどある意味地獄だ。しかしいつものメローネはそういった任務の後も特に何事もなくケロッとしてるのだが、なぜ今回は甘えたいなど言ったのか、そんな態度をとったのか。
ホルマジオの推理はこうである。海莉がメローネにとって、心の拠り所であり自分が“普通”でいられる唯一の存在なのではないか。やりたくもない女と身体を重ね、嘘の愛を吐き、そんな汚れた自分を少しでも和らげてくれるであろう彼女に多少の甘えを求めたのではないかと。これはあくまで彼の憶測でしかなく、仮にそうだったとしてもメローネ自身がそれをきちんと自覚しているのかは知らないが。
「お前には詳しくは言えねぇけど、あいつの今回の任務、少しいつもと違くてよ。その任務中に…何かこう、思う事があったのかもしれねぇな」
「……それを知ろうとしたら、私は怒鳴られたわけね」
「そんなに気にするなって」
ホルマジオは海莉の頭を無造作に撫で回す。しかし彼女はそれでもまだ悩み続け、シュンとしているので、彼はどうしたものかと腕を組んだ。正直、あんな面倒な事を言い出してきたメローネに対し海莉がそこまで思い悩む必要はないと感じているホルマジオではある。しかしそうやって相手の事をきちんと思い悩む所も彼女のいい所なのかもしれないが。
「おめぇ…いつまでもそんなショボくれた顔してるとなぁ」
「……へ、」
「こうすんぞ!!!」
「え、ちょっ!!」
ホルマジオは自身の手を海莉の脇腹めがけてそのまま掴むと、指先を動かすとその瞬間、海莉の笑い声が部屋に大きく響いた。
「あははははははッ!!!や、何してんの…っ!!くすぐったッ……!!!」
「やめて欲しけりゃもっと笑っとけ」
「笑ってるじゃん!!やだやだセクハラです!!!」
「こんなのセクハラに入んねぇよ」
先程とは打って変わって笑い転げる海莉。そろそろやめてやろうかと手を止めようとした瞬間、彼女が身をよじってこの擽りから逃れようと身体を動かす。しかしここはソファの上、決して広くはない。
「あ、バカ!!」
彼は瞬間的に彼女の頭を抱え、2人でそのまま落下してしまった。ホルマジオがうまく海莉を庇ったため幸い彼女が体を打つ事はなかったが、ホルマジオは海莉の下敷になっていた。
「……怪我ねぇか?」
「う、うん!!ごめんホルマジオ!!」
「何でお前が謝ってんだよ」
「何してるんだ」
「…え、」
突然2人以外の別の誰かの声に、2人は驚きその声のする方へゆっくり顔を向ける。すると、先程まで話題の中心になっていたメローネがドアの直ぐ手前に立っていたのだ。しかも状況を知らないメローネにとって今2人の体制というのは、まるで海莉がホルマジオを押し倒しているかのような図なのである。ホルマジオは身の危険を察知しマズイという顔を浮かべるが、メローネの行動は早かった。足早に2人に近づき、まるで米俵を担ぐかの様に海莉を抱き上げた。メローネは特に何かを発する事無く海莉の部屋を出ていけば、残されたのはホルマジオのみ。
「……………やべぇ、」
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担がれたまま連れてこられたのはメローネとイルーゾォの部屋だった。彼は海莉をベッドの上へ降ろすと、また先程の様に彼女の上へと覆い被さりこれでもかというくらい顔を近づける。しかしその顔はとっても不機嫌だ。
「…あの、メローネ…さん」
「俺にはそういう店に行けなんて言っといて、何でホルマジオはいいんだ?」
「あのね!!あれはちょっとふざけ合ってたらソファから落ちちゃって、ホルマジオは私を庇ったらそういう体制になっただけなの!変な事はしてないよ!!」
怪訝な顔つきで彼女を見るメローネ。海莉はこのままだとまた同じような事で喧嘩してしまうのではないかと思い、言葉を切り出そうとしたら、海莉…と彼が静かに名前を呼ぶので、彼女も何?と返した。
「さっきは怒鳴って悪かった」
「……、」
彼の長い髪がうまいこと顔を隠しているので、メローネが一体どんな表情をしているのかは分からない。が、声色から考えて反省しているのは嫌でも分かった。
「私、いつものメローネじゃあないなって思って、心配したんだ。だって突然甘えたいって言うんだもん…でも、メローネだって聞かれたくない事もあるもんね。私の方こそ、ごめん」
「……海莉」
「あなたが言うように本当に何でもないならいいの。ま、何かあったとしても私がメローネにちょっと優しくすればそれで元気になるなら……」
たまになら、甘えさせてやらないこともない、とボソボソと呟く。しかしその言葉ははっきりと彼に届いていた。先程まで不機嫌で、反省の色が見えていた彼の顔は見る見るうちに笑顔になっていく。あ、余計な事言った、と海莉は後悔するが時すでに遅し。メローネは覆いかぶさっていた状態から彼女に抱きついた。
「ちょっと…!!」
「良いんだろう?甘えても。夕飯の支度までまだ時間あるんだしこのまま一緒に寝てくれ」
「えぇー…」
文字通りぎゅうぎゅうと抱きつかれているので身動きが取れない。その上子どもみたいに嬉しそうな顔を浮かべている。自分がいいよと言った手前、拒否する事も出来なかった。海莉は、仕方ないと諦めて力を抜き、母親が子どもに向けるような優しい眼差しで彼の頭をゆっくり撫でた。指が綺麗に通ってしまう羨ましいくらいの金の髪は撫でる側としても心地がいい。
「ディ・モールト……ベネ…、」
「そりゃあ良かったです」
うとうとしながら呟くメローネ。次第に海莉も目をつむり意識を手放し眠った。
数時間後、帰宅したイルーゾォが寄り添って寝ている彼らを目撃し思わずあげた奇声によって2人は目覚める事になる。しかし、目覚めた時の体制が、なぜか海莉がメローネに抱きつくかのような最初とは真逆の体制になっている事に彼女は驚き困惑するしかなかった。
「何やってんのお前ら!?そういう関係なのかぁ!??」
「ち、違います!!これには深いワケが…!!」
「先に言っとくけど、寝てる時君が抱きしめてきたんだからな」
「嘘だーーッ!!!」
「何でもいいけど、飯まだかぁ?」