主人公の名前
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新しいバイト先が無事見つかり、既にそこのバールで働くようになって数日。店長も周りのスタッフもとても親切に接してくれたり、教えてくれる人たちでかなり彼女にとって働きやすい環境だった。海莉よりも少し年齢が上の女性が多い中、1人だけ彼女よりも年下の男の子が1番気さくに接してくれている。まだ学生のようで、彼もまた合間を縫ってお金を稼いでいるらしい。名前はジョット、どちらかというと可愛らしい顔立ちをしていた。どうやら日本が気になっているようで、日本の文化や習慣、伝統などを話すといつも目を輝かせて彼女の話を聞いているのだ。そんな事もあってか、彼はまるで海莉を姉のように慕っている。
大分慣れてきた作業をこなし一息つくと、他のスタッフから定時だよと声をかけられた。もうそんな時間だったのかと、時計を確認しつつお先に失礼しますと告げると海莉は事務所へと戻り、帰る支度を済ませて外へ出ると待って下さい!とジョットは慌てて店を出てきていた。
「俺も今日この時間で終わりなんで、せっかくだし一緒に帰りませんか?時間も時間だし、女性1人じゃ危険です。海莉さん一人暮らしなんですよね?」
「…あー…ごめんね、私これから買い物しなくちゃならないんだ。気持ちだけ受け取っておくね」
「なら尚更ですよ、手伝います!!家までちゃんと荷物も待ちますから!」
「いやでも、そういう訳には…!!」
手伝うという彼の申し出は素直に嬉しいし、ありがたい。が、それでは非常にマズイのだ。リゾットやホルマジオからの忠告があったように極力他人と深入りしたり、それからアジトの場所がバレるなど、約束を破ってしまう事になる。もしこのまま彼が引いてくれないのなら、適当にここが家だと言って入るふりをしてその後こっそり帰ろうか、そんな事を考えてながら周りをふと見ると見覚えのある人物が歩いていた。
「い、イルーゾォ!!!」
「…あ?」
海莉は手を振りながらかけより、そのままイルーゾォの腕に自らの腕を絡ませた。普段は絶対にしない彼女のその奇行に、イルーゾォは困惑の眼差しで見ている。
「ごめんねジョットくん、えっと今日は…か、彼と帰るから!!」
「…は、」
「………そうですか、分かりました。じゃあまた」
ぺこっとお辞儀をして、ジョットはそのままとぼとぼと帰っていく。その姿に、何やら罪悪感のような申し訳ない気持ちにかられた。この数分でとんでもない程のエネルギーを使ったような気がして気が抜けたように大きなため息を吐くと、イルーゾォは何が何やら分からないような声音で彼女に問いかけた。
「何が彼、だぁ?俺がいつお前の彼になったんだよおい」
「ごめんなさいイルーゾォさん!!さっきの子に一緒に帰ろうって誘われて、そのまま一緒に帰ったらアジトの場所バレちゃいますし…イルーゾォさんがたまたまいたのでつい…」
「嘘つくならもう少しマシな嘘をつけ。まったく困ったビンバだ」
イルーゾォは彼女が絡んでいた腕をするりと離し、今度は彼が海莉の腰を抱いて体を密着させた。すると自然と顔も近くになるわけで。イルーゾォの端整な顔が目の前で、更に腰に手が当たっているのが物凄くこそばゆい。海莉は慌ててイルーゾォの胸に手を当てて距離を取ろうとする。
「ど、どうしたんですか!?なんかプロシュートさんみたいですよ!!」
「いいからこのまま続けろ。さっきの野郎まだいるぞ」
彼の言葉にはっとして、海莉は距離を取ろうとした両手を放してゆっくりとイルーゾォに抱きつくように近づいた。だがなぜ、さよならと別れたはずのジョットはまだ近くにいるのだろうか。とにかく考えても答えは見つからないので、まるで本当の恋人のように2人はお互いを密着させてそのまま歩いた。
「何だお前、一丁前にストーカーされてんのか?」
「どういう意味ですかそれ。ていうか、そんな子じゃあないですよジョットくんは!!」
「なら何でまだ付いてくるんだよ」
「…分かるんですか?」
「暗殺者舐めんなよ」
側から見たら並ぶ2人は恋人同士なのに、話す内容はとても物騒で滑稽である。
「あ、スーパーに寄りたいのでそっちの道行ってもらっていいですか?」
「……………」
「そんな怖い顔で睨まないで下さいよぉ!!今日のご飯抜きでもいいんですか」
面倒なことに巻き込まれたイルーゾォにとって現状から早く逃れたい、真っ直ぐアジトに帰りたいと思いながら歩いていたというのに。まさかスーパーへ寄れと言われると思っていなかった彼は露骨に嫌な顔を彼女に向けた。イルーゾォに迷惑かけた事はとても申し訳ないが、ジョットが海莉の後を追う理由も分からないし、本当にストーカー紛いのことをしてるかさえも定かではない。が、自分達とは明らかに反対方向へと帰っていったはずのジョットが、Uターンしてこちらを追うように歩いてきているのは確かなのだ。
スーパーへたどり着いた2人は、兎に角影の方に隠れるように身を置いて周囲を見渡した。
「一旦鏡の中に隠れるか……いや、お前の能力で周囲を確認してみろ。できるだろう?」
「はい!」
海莉は言われた通りに能力を使い、何度も視点を変えて確認する。だが特にそれらしい人物は彼女の目には写らなかった。ゆっくりと能力を解除するとスタンドも消えていく。
「念入りに確認しましたが、ジョットくんらしき人はいなかったです」
「…そうか。ったく何なんだぁ?」
「すみません…」
「…別に、海莉は悪くねぇだろ。人に好かれるのも考えもんだなこりゃ」
バシッと軽く海莉の背中を叩き、さっさと済ますぞと言いながら彼はカゴを持ち歩き始めた。好かれているからストーカー…いや、彼から友情ではない方で好かれているかどうかも分からないのに、そのように決めつけてしまうのも海莉はあまりいい気分ではない。だからと言って何故付けてきているのか、などとも本人に聞けるはずもなく、ただただジョットに対する疑心のみが残っている。イルーゾォには、警戒しておけと注意されてるがその言葉に黙って頷く事しかできなかった。