主人公の名前
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夕食を済ませて部屋に戻り、自分の時間を堪能していると扉からノック音が聞こえた。部屋の扉は開けっぱなしにしていたのだがホルマジオは律儀にノックしてくれたらしい。そういう所、他のメンバーは見習うべきだと思う。というか見習って欲しい。特にギアッチョだ。
「どうしたの?」
「リーダーが下でお前を呼んでるぞ」
「…え、なんだろう。私怒られるような事したかな」
「何で怒られる前提なんだよ」
ホルマジオ曰く、別に怒っている様子は無かったとの事。とりあえず海莉とホルマジオはリーダーが待っているリビングへと向かっていった。本日アジトに残っているのは海莉を含めて7人。リビングにペッシとリゾット、ソルベとジェラートは相変わらずべったりで部屋に引きこもり。それからプロシュートは仕事疲れで自室にて寝ている。メローネとイルーゾォ、ギアッチョの3人は任務中だ。ペッシはソファにちょこんと座り、ぼーとしながらテレビを眺めている。
海莉に気づいたリゾットは目だけをこちらに向け、座れと静かに言う。ホルマジオは怒ってないって言っていたけど本当だろうかと疑ってしまう程の謎の迫力があった。
「あの、お話とは…?もしかして解雇ですか…?」
「は?」
空気に耐えられなくなった彼女の妄想は遂に突拍子も無いものへと変わりつい言葉がポロリと出た。無表情でオーラを放つリゾットも流石に驚き、面食らったような顔をしている。テレビを見ていたペッシは解雇というワードにピクリと反応し、え?という不安が含まれた顔で彼女たちの方へ振り向いていた。
「なぜそう至ったのかは聞かないが、そんな話じゃあない。安心しろ」
「よ、よかった…」
「海莉、お前を呼んだのはこれを渡すためだ。遅くなって悪いな」
スッと封筒を彼女に差し出す。彼女はそれを受け取り中を覗くと、大金…とは言えないが少しばかりお金が入っていたのだ。そう、ギャングの家政婦として働いてから初めての給料だ。もちろん前職程の給料ではなく、本当に少し。だが全く貰えないよりはマシだった。
「ありがとうございます!」
「いや…。これからもよろしく頼む」
「はい!!あ…そういえば前から聞こうと思ってたんですけど…私の存在って上の人達?は知ってるんですか?」
「それ俺も気になってた」
「あぁ。ただ、スタンド使いとは言っていない。それから俺たちがお前を脅して雇わせている、何か怪しい動きがあれば即殺す。そういう状況下だと伝えている」
「脅して家政婦雇うって…。強ち間違いじゃあねぇけどよ…頼み込んでるの俺たちだしな」
「海莉の身を守る為だ。その方が都合が良い…が、上がどこまで鵜呑みにしているかは分からないがな」
「……そうですか」
何か情報が漏れれば怪しまれるのは海莉自身。最悪殺されてしまう事だってあるのだ。だが常に暗殺チームによっていつでも海莉の首に刃が突きつけられているのであれば恐怖で何もできない、だから仮に組織内で何かあった場合第一に疑われる事はまずないというリゾットの考えだ。暗殺が仕事でどんな些細な行動も見逃さない彼らなら尚更。
「因みにこのお給料って…皆さんの報酬からだったり…します?」
「あぁ」
「大事に使えよ?」
「やっぱりそうなんですね…」
いくら上に存在を伝えているとはいえ、家政婦を勝手に雇ったのは彼らである。もちろん給料も暗殺チームの報酬から引かれるに決まっているのだ。何となくわかっていたが実際そう聞くとなんだがとっても悪い気がしてならない。チームが命がけになりながら何とか得ている少ない報酬を更に減額してしまっているのだから。
「先に言っておくが、それを踏まえた上で俺は海莉を雇っているんだ。お前が気にする事じゃあない」
「そうだぜ〜?海莉のおかげで俺達は毎日美味い飯と綺麗な部屋で生活できてるんだから!」
「ペッシくん…」
側で会話を聞いていたペッシはこちらを向いてグラッツェと改めて彼女に礼を言った。彼らがそう言うのであればありがたく今回は受け取っておこう。とは言えだ。貰えないよりはマシと言ったが、結局は安月給。いくら今の自分に貯金がそれなりにあったとしてもそれがいつまでもという訳じゃあない。使えばなくなる、当たり前だ。お金が欲しいのなら前職をやめるべきでは無かった、などとはもちろん微塵にも思わない。とにかく日本に帰った後全くお金がない、そんな状況では困るのだ。だから海莉は考える、どうすれば良いのかを。
「リーダー、バイトしていいですか?」
「……バイト?」
「はい!!家政婦と言っても食事や掃除、それから書類の手伝いに買い出し。やる事はありますがそれ以外は暇を持て余してる状況です。なら空いている時間で外で働くのもアリですよね、掛け持ちするのと同じですし」
「まぁ……しかしな」
「もちろんここでの仕事も蔑ろにするつもりもありません。1週間に3日程度でいいんです!!暇してるくらいなら少しでも外に出て稼いだ方が効率的です!!」
「……、」
海莉の勢いのある説得に3人はややタジタジだった。やらねばならない仕事が無いのなら、ゆっくりしたり、適当にダラダラと過ごせばいいのに彼女はその時間でも働こうとしているのだ。少々理解し難い部分はあるが反対という訳でも無い。ただリゾットは内心不安であった。外の仕事で得る金と、こちらで与える金どちらが上かと考えた時外に決まっている。もし彼女が、やっぱり外の仕事の方が待遇も金もいいから家政婦を辞めるなどと言われた暁には…。またあの生活に戻る事になる。それからただ単純に彼女がここから居なくなってしまうのが嫌なのだ。
「ダメですか、リーダー…」
「……………、」
なかなかリゾットからの返事を貰えず、頭を下げてシュンとする海莉。ここで働いているとは言え外で他の仕事するという彼女を咎める権利は自分にはない。彼は参った、と言わんばかりのため息を一つ零し、一言分かったと承諾する。
「だが条件がある。なるべく近場を選べ。もしいい場所が無ければ諦めろ」
「はい!!ありがとうございます!!」
「良かったね海莉、バイト先が決まったら教えてくれよ。見にいくから」
「それはちょっと恥ずかしいなぁ〜」
許しが得ただけで、近場にいい働き口があるかも分からない中ペッシと海莉は盛り上がる。そんな2人をホルマジオはしょおがねぇなぁ〜とやや呆れたように言って眺めていた。
「随分心配性だなリーダーは」
「…違う。近場の方がこちらの仕事の負担もかけずに済むだろう」
「ほーん」
まるで何か言いたげな顔をするホルマジオにリゾットは怪訝そうに彼を見る。何だ、とリゾットはホルマジオに聞くが何でもねぇよと言って特にそれ以上は何も言わなかった。