主人公の名前
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2人はその後も様々な店を見て回り、その度に靴やらアクセやら次々とプロシュートは購入していった。服は買ってもらったので、残りは自分が払うと何度言っても彼は聞く耳を全く持たず全て買ってもらう事になってしまった。一応彼らは収入が少ないと聞いていたはずなのだが、本当にこれで大丈夫なのだろうかと疑問を口にすると彼はそんな事お前が気にするなと言う。こちらが心配になる程の量を買っている事に気付いて欲しい。
「買うもんも買ったし、そろそろ帰るか」
「そうですね。…というか、メローネって結局どこに行ったんですかね」
「あぁ、あいつなら既にアジトに戻ってるぞ。連絡があった」
「そう、ですか」
別に、忘れていたわけじゃあない。ずっと頭の隅には存在していたのだ。まだ怒ってるかと聞かれればそうなのだが、正直とてもつまらない内容だというのも海莉自身分かっている。それでもやっぱり、嫌なものは嫌なのだ。
心にわだかまりを残したまま、海莉とプロシュートはアジトへと戻り玄関のドアを開けると何故だがリビングに全員が集合していたのだ、文字通り全員だ。2人が帰ってきた事に気付いたメンバーはおかえり、と声をかけた。
「あれ、なんか海莉雰囲気違うね」
「プロシュートがコーディネートしたんだろう、流石だな」
「良いんじゃあねぇの、似合ってるぜ」
ジェラート、ソルベ、ホルマジオがいつもとは少しだけ変わった海莉に気づき各々感想を述べていく。先程のプロシュートの言葉を思い出して彼女は照れくさそうにありがとうと素直にお礼を言った。リゾットもいつもの真顔の表情ではあるが良かったなと言ってくれた。が、そこでプロシュートの持つ紙袋の量を見て徐々に眉をひそめていくのが分かった。いくらなんでも使いすぎだろう、俺の金だ俺が好きに使って何が悪い、と2人の口論が始まってしまい海莉が仲裁に入ろうとすると、肩を叩かれたので振り向くと、出かけた直前にケンカをしてしまったメローネだった。
「正直、君がなぜあそこまで怒ったのか俺はまだ理解が出来てない。でも海莉を傷つけたのなら謝る。悪かった」
「……………」
彼の今のバカ正直な言葉で、本当に悪気が無かったのがよく分かった。本来なら分かってないなら謝らないでよ、何で私が怒ったのか考えてよ!と一言言いたくなるがこれが彼なのだ、これがメローネなのだ。
「あぁ、それから。女性はこういう物が好きだろう?」
「え、」
彼から箱を渡されたので恐る恐る開けてみると、それにはドルチェが入っていた。イチゴが乗ってあるカップケーキ、チョコがふんだんに使ってあるプリンなど確かに女の子が喜びそうな食べ物ばかりだ。
彼なりに悪いと思って、こうしてドルチェまで買って謝ってくれたのだ。こちらもいつまでもぷりぷり怒ったままは良くない。海莉は開けた箱を一旦閉じてからメローネを見れば彼もまた少しだけ気まずそうに彼女を見ていた。
「…もういいよ、私もつまんない事で怒りすぎた」
「あぁ、俺もそう思うぜ」
「口には気をつけてね!!?…ドルチェもありがとう。せっかくだし後で一緒に食べようよ」
とりあえず一旦冷蔵庫にしまわなきゃと、キッチンへと移動しようとすると視界が何かに迫られる。気づいた時には彼、メローネにぎゅうぎゅうと抱きしめられていた。それは好きな人を抱きしめるように、と言いたい所だが全くもってそんなものには感じられず人形でも抱きしめているかのようにとても力任せだった。危なく貰ったばかりのドルチェを落とすところだったがそんな悠長なことを考えている場合ではない。他のメンバーも抱き合っている2人に気づいて驚きの声を発する者もいれば、ニヤニヤと笑っている者もいるではないか。
「え!?何!?どうしたのちょっと!!」
「分からない。こうしたくなった…」
それは、自分でもなぜなのかさっぱりわからないといった声音で彼自身もどうやら驚いているみたいだった。更に抱きしめる力が強くなる一方で海莉は放して!と一心に伝えると彼はようやく解放してくれた。メローネの予想もしなかった驚きの行動に、心臓がばくばくと音を立てて一向に鳴り止まない。言動に問題はあっても如何せん顔だけは良いので、ずるい男である。ため息を吐いて落ち着かせようとすると、彼はまだ性懲りもなく海莉をジッと見ていた。
「…な、何?」
「その服似合うと思って見ていただけだ!そこまで警戒されると俺だって傷つくんだからな」
「警戒されるような事を自分がやってるって気づいてないの?」
「まったく。君、これなら処女だと言われても文句言えないぜ」
「「ブッ!!!」」
「………あ、」
「……………。」
素直に謝り、ドルチェまで買って彼女の機嫌を直したというのに。先程まで笑って許してくれた彼女の笑顔はだんだんと消えていった。このアジトには今日に限って何故か全員揃っており、タイミングが良くも悪くもエスプレッソを飲んでいたイルーゾォ、水を飲んでいたギアッチョは処女というワードに勢い良くそれを吹き出していた。ペッシは顔を赤くし、プロシュートとホルマジオは頭を抱えて何やってんだと呆れて、あいも変わらずリゾットは真顔だが何かを察したような表情で、ソルベとジェラートはきっとこの海莉によって凍てついたこの空気をただだ面白そうに笑っていた。
「あー……その、海莉?」
しまった…と、流石のメローネもこのヤバイ状況を理解したようだが、もう遅いのだ。ぷるぷると怒りで震えているであろう彼女の拳がそれを物語っている。ごめん、とまた謝罪の言葉を言おうとした瞬間メローネの頬に平手が飛んでいた。恥ずかしさと怒りでどうにかなってしまいそうな海莉だったが、その限界はやがて超えて冷たい眼差しでメローネを睨みつけ部屋に戻っていった。その日の夕飯は何時になっても何も用意されず、久しぶりにメンバーが作ったお世辞でも美味いとは言えないご飯を食べる事になる。
「海莉のビンタ、ディ・モールトベネ…」
「お前いっぺん死んでこいよ」