主人公の名前
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それなりに学があって、それなりにいい高校を出て、それなりにいい会社に入って、それなりにいい社会人生活を送っていた。だが入社して僅か2年ほど経ったある日、2年後イタリアの部署へ異動してもらいたい、と笑顔で言われた。もちろん自分の上司からだ。仕事とはいえ海外へ移住など不安しかなく、なぜ入社たった2年目の業績もまだあまり残していない自分なんだと、文句を垂れながらも空いている時間でイタリア語を勉強しなんとか日常会話は出来るようにしてから私は日本を旅立ち、今現在イタリアで日々を過ごしている。
とは言っても、4月にイタリアへ移住してからまだ2ヶ月しか経っておらず、まだまだ不安は拭えない。働く環境はもちろん、国にだって全く慣れない中、給料だけはいいこの会社で今日も仕事をしている。
「よし…、後はこれを纏めれば…」
今日の分の書類整理も後少しで終わりを迎えられる。だがその前にちょっとだけ休憩しよう、そう思い席を立つ。海莉は財布を片手に休憩所へと向かった。
飲み物を1つ買い、のどを潤す。今日の晩ご飯は何を作ろうか、冷蔵庫にはなにが入っていたっけ、帰りに何か買って帰らないといけないかも。そんな事をぼんやりと考えているとオフィスの方から悲鳴が聞こえた。それは何か素敵なものだとかカッコいい男性を見たときに出る黄色い声ではなく、何かに怯える恐怖の声。状況なんて分かってはいなくても勝手に脳が色んな想像を働かせれば、自然と自分の鼓動も早くなっていくのが嫌でも分かった。
手に汗を握りながら海莉はそうだ、と小さく呟き7、8歳の頃から突如現れ、出来た力を使った。
静かに目を閉じて、徐々に瞼の裏にビジョンが映っていく。デスクは荒らされていて、そこに置いてあったであろうパソコンの液晶や窓のガラスも無惨に割れていてる。
「何なの……なん、なの……やだ……」
更に視点を変えて見ていくと、怯えた顔をし呆然と立ち尽くす先輩や同僚、床に転がっている上司。そこからは確かに赤い液体が流れ出ていた。そして、顔をくしゃくしゃにしながら気が狂ったかのように暴れまわる1人の男。男の手には凶器が握られている。
もう、状況を整理せずともつまりそういう事がオフィスで起こっているのだ。力を解除すれば、再び悲鳴が耳に入ってくる。
「…………っ、」
あまりの恐怖に手足の震えが止まらない、汗も止まらない。だからと言って、このままこの場所で怯えていても男がやってくるかもしれないし、何よりあそこにいる人たちが全員殺されてしまう。電話で警察に連絡を入れる事も今は出来ない。幸いにも休憩所から裏口への扉はすぐ近くだ。海莉は急いで扉へと走り出し、外へ出た。
「こんなのっ!!!治安がいいとか悪いとかの話じゃないよ!!」
初めて見てしまった人の死体が何度も脳裏に浮かんで、今自分がちゃんと走れているのかも定かではなくて。それでも必死に足を動かして電話ボックスへと向かった。あと数十メートルで電話ボックスに辿り着く、というところで自身の腕を強く掴まれた。
まさか、いや、そんなはずは無い。分かるわけがないんだ。あの男から私は完璧に見える位置にいなかった。だから私は力を使ったんだ。追ってこれるわけないんだ。音だって立てずに扉を開けて出てきたのにーーーー。
ごくりと唾を飲み込んでゆっくりと、掴んだその手の先の人物へと顔を向けた。
「君、スタンド使いだな?」
「……………は、」
海莉の腕を掴んだその人物は、先程見た男とは全く違っていた。髪は長く、キラキラと輝くブロンドでちょっと特徴的なアシンメトリー。右目は前髪とそれからアイマスクで隠れていて良く見えない。服装もだいぶ派手だ。そして何より驚く程、とっても綺麗な顔をしている。いや、見惚れている場合ではないと自分に一括しこの男が言ったことを思い出す。スタンド。確かに今男はそう言った。
「すたんど?って…」
「…それ、今君が出しているやつだ。」
男が指差す方を辿ると、いつも力を使うときに出てくるものだった。状況が状況だっただけに出したまま忘れていたんだろう。海莉は慌ててそれを消した。
そうか。長年いつも自分の側にいたそれはスタンドというものだったのか。
「ふぅん…あのターゲットの仲間ってわけでもなさそうだな。その首にぶら下げてる社員証が証拠だ。つまり君はあそこで働いていたただの社員で、スタンドを使って逃げていたって事か。なぁ、一体どういう力を…」
「オイ メローネよぉ!!!!」
淡々と喋り始めた男の言葉を遮ってこちらに走ってくる別の男がもう1人現れた。何なんだ、一体。さっきから自分の目の前で一体何が起きているというのだ。
「てめぇ!!任務ほっぽって女ナンパとはいい度胸じゃあねぇか、えぇ!?」
「違うぜギアッチョ。この女、そのターゲットがさっきいた建物から出てきたんだ。しかもスタンドと一緒に。追いかけるだろう普通」
「あぁ…?ターゲットの仲間かぁ!?」
「どうやら違うみたいだ。あの場から幸運にも逃れられたただの被害者だ。それに奴に仲間がいたという情報は出ていないだろ」
ブロンドの髪の男とは正反対に、くるくるとパーマがかかっている水色の髪、そして赤縁のメガネをかけた男の名はギアッチョというのだろうか。ブロンドの方は先ほど呼ばれたのが合っているならばおそらくメローネという名前だろう。
「私は仲間でもなんでもありません…っ!!とにかく手を離して下さい!!早く警察に連絡を…!!でないと…!!」
「それに関してはもう心配いらない、なぁギアッチョ。ターゲットは始末したんだろう?」
「あたりめぇだ!!ま、ほぼ自滅って感じだったけどな」
「………あの…中にいた人たちは…?」
「あ?既に死体だ。やられちまってたよ」
「そ、んな……」
自分だけが、あの中から生き残ってしまったようだ。それはそうだろう。運良く力を持っていて、運良く被害のあった場から離れた所にいた。特別に仲がいい人がいた訳でもなかったが、それでも共に日々働いて、他愛もない会話をした人が既にこの世にいないなんて。そんな事直ぐに受け止められるわけもない。
おまけに現在進行形で不審な人物に絡まれているし、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか海莉はただただ今の状況に対し混乱するしかなかった。
「貴方達は何者なんですか……さっきの男は一体何なんですか…ターゲットって………貴方達もアレが、スタンドが見えるんですか?」
「知りたければ教えてあげるさ」
「は!?おいメローネ テメェ…」
「但しその前に君が持つスタンドの能力を教えてほしい。とても興味がある。君みたいなひ弱そうな人間があの場から1人逃れられる程の力を持っているなんて、考えられない」
口元は弧を描き、目は細め確実に真っ直ぐに見つめ海莉を捕らえて放さない。
能力。幼い頃から突如現れ使えるようになったこの能力の事など誰にも話た事はなかったし、スタンド自体も見える人などいなかった。だから自分だけがこの能力を身につけているとばかり思っていたけれど。もしかしたら彼らも自分と同じような力を持っているとしたら。いや、きっと恐らくそうなのだろう。
「私は…先程の現場に直接いたわけじゃないんです」
「…と、いうと?」
「騒ぎが起きた場所はオフィスでしたが、その前に私は仕事が一区切りついたのでオフィスから少し離れた休憩所にいました。そしたら突然悲鳴が聞こえてきたので…そこから、何が起きているのかをスタンドを通して“見た”んです」
「……へぇ…なるほど」
「千里眼ってやつか」
「はい。結論的にいうと、私の力は本来人の目に見えないものを見ることができる、そういう力になります」
「…見えないものを見る?それって、ほぼ何でも見えるって事か!?」
とはいえ、今自分にできる事といえば物体や人体の透視だったり、先ほど使った現状を把握するための千里眼といったくらいなんですよね、と加えて言うとギアッチョは、なぁんだと言わんばかりの表情を浮かべる。だがメローネはふと数秒考えてからまた少し口角を上げて海莉の腕を掴んだ。
「約束通り俺たちのこと、君の知りたいこと、教えてあげるよ。ただここでは話せないからな…ついておいで」
「……え、いや、どこへ…?」
「決まってるだろう。俺たちのアジトへ」
は?
その言葉は綺麗にギアッチョと重なった。
かくして今日起きてしまったこの事件、そして私と2人の出会いが、私の運命は大きく変わることになる。果たしてそれが幸運なのか不運なのか今の私になんてわかるはずもなかったのである。
とは言っても、4月にイタリアへ移住してからまだ2ヶ月しか経っておらず、まだまだ不安は拭えない。働く環境はもちろん、国にだって全く慣れない中、給料だけはいいこの会社で今日も仕事をしている。
「よし…、後はこれを纏めれば…」
今日の分の書類整理も後少しで終わりを迎えられる。だがその前にちょっとだけ休憩しよう、そう思い席を立つ。海莉は財布を片手に休憩所へと向かった。
飲み物を1つ買い、のどを潤す。今日の晩ご飯は何を作ろうか、冷蔵庫にはなにが入っていたっけ、帰りに何か買って帰らないといけないかも。そんな事をぼんやりと考えているとオフィスの方から悲鳴が聞こえた。それは何か素敵なものだとかカッコいい男性を見たときに出る黄色い声ではなく、何かに怯える恐怖の声。状況なんて分かってはいなくても勝手に脳が色んな想像を働かせれば、自然と自分の鼓動も早くなっていくのが嫌でも分かった。
手に汗を握りながら海莉はそうだ、と小さく呟き7、8歳の頃から突如現れ、出来た力を使った。
静かに目を閉じて、徐々に瞼の裏にビジョンが映っていく。デスクは荒らされていて、そこに置いてあったであろうパソコンの液晶や窓のガラスも無惨に割れていてる。
「何なの……なん、なの……やだ……」
更に視点を変えて見ていくと、怯えた顔をし呆然と立ち尽くす先輩や同僚、床に転がっている上司。そこからは確かに赤い液体が流れ出ていた。そして、顔をくしゃくしゃにしながら気が狂ったかのように暴れまわる1人の男。男の手には凶器が握られている。
もう、状況を整理せずともつまりそういう事がオフィスで起こっているのだ。力を解除すれば、再び悲鳴が耳に入ってくる。
「…………っ、」
あまりの恐怖に手足の震えが止まらない、汗も止まらない。だからと言って、このままこの場所で怯えていても男がやってくるかもしれないし、何よりあそこにいる人たちが全員殺されてしまう。電話で警察に連絡を入れる事も今は出来ない。幸いにも休憩所から裏口への扉はすぐ近くだ。海莉は急いで扉へと走り出し、外へ出た。
「こんなのっ!!!治安がいいとか悪いとかの話じゃないよ!!」
初めて見てしまった人の死体が何度も脳裏に浮かんで、今自分がちゃんと走れているのかも定かではなくて。それでも必死に足を動かして電話ボックスへと向かった。あと数十メートルで電話ボックスに辿り着く、というところで自身の腕を強く掴まれた。
まさか、いや、そんなはずは無い。分かるわけがないんだ。あの男から私は完璧に見える位置にいなかった。だから私は力を使ったんだ。追ってこれるわけないんだ。音だって立てずに扉を開けて出てきたのにーーーー。
ごくりと唾を飲み込んでゆっくりと、掴んだその手の先の人物へと顔を向けた。
「君、スタンド使いだな?」
「……………は、」
海莉の腕を掴んだその人物は、先程見た男とは全く違っていた。髪は長く、キラキラと輝くブロンドでちょっと特徴的なアシンメトリー。右目は前髪とそれからアイマスクで隠れていて良く見えない。服装もだいぶ派手だ。そして何より驚く程、とっても綺麗な顔をしている。いや、見惚れている場合ではないと自分に一括しこの男が言ったことを思い出す。スタンド。確かに今男はそう言った。
「すたんど?って…」
「…それ、今君が出しているやつだ。」
男が指差す方を辿ると、いつも力を使うときに出てくるものだった。状況が状況だっただけに出したまま忘れていたんだろう。海莉は慌ててそれを消した。
そうか。長年いつも自分の側にいたそれはスタンドというものだったのか。
「ふぅん…あのターゲットの仲間ってわけでもなさそうだな。その首にぶら下げてる社員証が証拠だ。つまり君はあそこで働いていたただの社員で、スタンドを使って逃げていたって事か。なぁ、一体どういう力を…」
「オイ メローネよぉ!!!!」
淡々と喋り始めた男の言葉を遮ってこちらに走ってくる別の男がもう1人現れた。何なんだ、一体。さっきから自分の目の前で一体何が起きているというのだ。
「てめぇ!!任務ほっぽって女ナンパとはいい度胸じゃあねぇか、えぇ!?」
「違うぜギアッチョ。この女、そのターゲットがさっきいた建物から出てきたんだ。しかもスタンドと一緒に。追いかけるだろう普通」
「あぁ…?ターゲットの仲間かぁ!?」
「どうやら違うみたいだ。あの場から幸運にも逃れられたただの被害者だ。それに奴に仲間がいたという情報は出ていないだろ」
ブロンドの髪の男とは正反対に、くるくるとパーマがかかっている水色の髪、そして赤縁のメガネをかけた男の名はギアッチョというのだろうか。ブロンドの方は先ほど呼ばれたのが合っているならばおそらくメローネという名前だろう。
「私は仲間でもなんでもありません…っ!!とにかく手を離して下さい!!早く警察に連絡を…!!でないと…!!」
「それに関してはもう心配いらない、なぁギアッチョ。ターゲットは始末したんだろう?」
「あたりめぇだ!!ま、ほぼ自滅って感じだったけどな」
「………あの…中にいた人たちは…?」
「あ?既に死体だ。やられちまってたよ」
「そ、んな……」
自分だけが、あの中から生き残ってしまったようだ。それはそうだろう。運良く力を持っていて、運良く被害のあった場から離れた所にいた。特別に仲がいい人がいた訳でもなかったが、それでも共に日々働いて、他愛もない会話をした人が既にこの世にいないなんて。そんな事直ぐに受け止められるわけもない。
おまけに現在進行形で不審な人物に絡まれているし、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか海莉はただただ今の状況に対し混乱するしかなかった。
「貴方達は何者なんですか……さっきの男は一体何なんですか…ターゲットって………貴方達もアレが、スタンドが見えるんですか?」
「知りたければ教えてあげるさ」
「は!?おいメローネ テメェ…」
「但しその前に君が持つスタンドの能力を教えてほしい。とても興味がある。君みたいなひ弱そうな人間があの場から1人逃れられる程の力を持っているなんて、考えられない」
口元は弧を描き、目は細め確実に真っ直ぐに見つめ海莉を捕らえて放さない。
能力。幼い頃から突如現れ使えるようになったこの能力の事など誰にも話た事はなかったし、スタンド自体も見える人などいなかった。だから自分だけがこの能力を身につけているとばかり思っていたけれど。もしかしたら彼らも自分と同じような力を持っているとしたら。いや、きっと恐らくそうなのだろう。
「私は…先程の現場に直接いたわけじゃないんです」
「…と、いうと?」
「騒ぎが起きた場所はオフィスでしたが、その前に私は仕事が一区切りついたのでオフィスから少し離れた休憩所にいました。そしたら突然悲鳴が聞こえてきたので…そこから、何が起きているのかをスタンドを通して“見た”んです」
「……へぇ…なるほど」
「千里眼ってやつか」
「はい。結論的にいうと、私の力は本来人の目に見えないものを見ることができる、そういう力になります」
「…見えないものを見る?それって、ほぼ何でも見えるって事か!?」
とはいえ、今自分にできる事といえば物体や人体の透視だったり、先ほど使った現状を把握するための千里眼といったくらいなんですよね、と加えて言うとギアッチョは、なぁんだと言わんばかりの表情を浮かべる。だがメローネはふと数秒考えてからまた少し口角を上げて海莉の腕を掴んだ。
「約束通り俺たちのこと、君の知りたいこと、教えてあげるよ。ただここでは話せないからな…ついておいで」
「……え、いや、どこへ…?」
「決まってるだろう。俺たちのアジトへ」
は?
その言葉は綺麗にギアッチョと重なった。
かくして今日起きてしまったこの事件、そして私と2人の出会いが、私の運命は大きく変わることになる。果たしてそれが幸運なのか不運なのか今の私になんてわかるはずもなかったのである。