主人公の名前
8
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暗殺チームのメンバーのスタンド能力を知っているのは物体を小さくする能力を持つホルマジオ、そして定かでは無いが恐らく氷結系のギアッチョのみだ。だが恐らく自分は3人目のメンバーの能力を目の当たりにしているに違いない。海莉は日本から持ってきていた好きな漫画をベッドに寝転がっていて読んでいたのだが、不意に声をかけられたので驚いて扉の方へと顔を向けてもそこには人などおらず。自分は一体誰に声をかけられているのか、心霊現象でも起きてしまったのかと内心ビクついていると、なんとメンバーの1人が先日プロシュートから買ってもらったドレッサーの鏡から半身だけ出しているではないか。
「ずいぶん立派なドレッサーじゃあねぇか、お前がこんなの持ってるなんてちょっと意外だな」
「……な、なん!?」
「にしてもプロシュートも言ってたが、随分寂しい部屋だな…ある意味羨ましいぜ」
にゅるり。と、さも当たり前のように鏡から出てきたのは黒髪サラサラヘアのイルーゾォだった。いや普通にドアから入ってきてよ、なんて突っ込みも出来ないまま海莉はただ驚くしかなかった。頭ではスタンド能力だとわかっていても、いきなりの登場に驚かないわけがないだろう。
「それスタンド能力ですよね?鏡の中に入れるんですか?」
「あぁそうだ。俺のマン・イン・ザ・ミラーは鏡を出入り口にして対象をその中に引きずり込む事ができる」
「…鏡の中に入るなんて、漫画だけの世界だと思っていましたけど。やっぱりスタンドが絡むと何でもありですね」
「そりゃあおめーのスタンドも同じだろうが」
イルーゾォはびしっと海莉の方へ指を指す。まぁ透視や千里眼も普通に考えて有り得ないし、だからこその特別な力を持つスタンドなんだろう。彼の力、鏡の中に引きずり込むとは使い道によっては正にその仕事向きだ。身を潜めるならうってつけで、誰にも見られずにターゲットだけを引きずり込んで殺められる。そうやって、各々力を使って与えられた仕事をこなしているんだと、ぼんやりと考えた。
「なんなら鏡の中に入ってみるか?まぁ特別に入れてやらんこともねぇけど」
「えっ、いいんですか!?入ってみたいです!!」
お願いしますとイルーゾォに頼めば、彼は仕方ないと言わんばかりにフンと笑う。
「海莉、お前を鏡の中に入ることを許可してやる」
「うわ!!」
彼がそう一言叫ぶと、海莉の体はみるみるうちにドレッサーの鏡の中へと引きずりこまれた。思わず瞑ってしまった目を開けると、とくに変わりようがない自分の部屋のような、だが明らかに全てが反転された世界だった。棚にしまってある漫画の文字も、壁にかけていた時計も、家具の位置も反転している。ここは紛う事なきイルーゾォによって作られた鏡の世界だった。入ってきたばかりの鏡の向こう側を見れば、今自分も彼がいたであろう現実の世界がある。
「凄い、凄いです!!本当に鏡の世界に来たんですね」
「こんな事で一々騒ぐんじゃあねぇよ」
と言いつつ褒められた事自体は嬉しいため、口角が上がっている事に本人は気づいていない。
この家に人がいる、先程まで感じていたそんな人の気配というものは全くなく、どこか冷たい空気が漂っているような気がした。彼曰くこの鏡の中の世界とは、生物は存在しない「死の世界」になっているらしい。なので今ここにいるのは正真正銘、海莉とイルーゾォのみだ。
「死の世界、かぁ…ちょっとというか、普通に怖いですね」
「そうか?1人になりたい時とかありゃ便利だぜこの力」
確かに、と思わず強く頷いてしまった。自分1人だけの世界で静かに好きな本を読んだり好きな事ができたらそれはそれで良いのかもしれない。でもやっぱり、誰もそばにいないのは少しだけ寂しい気もする。
「これって、戻る時は入った場所から出るんですか?」
「いや、鏡がありゃどこでも入り口になるし出口になる。もう出るか?」
「うーん…折角なのでこの世界というか、鏡の中のアジトを探索してみたいなぁなんて…」
「…何だ何だ?人の部屋でも覗こうってか」
覗き見という言葉を避けて探索という言葉を選んだのに言い直されては意味がない。とは言えイルーゾォのいう事が合っているので否定も出来ず、そのまま黙った。自分の部屋が質素だの可愛げがないだのつまらないだの散々言われてきたので他の人達の部屋は一体どんなものかと気になったまでだ。
「つうかよ、それ、お前のスタンドでも出来んるんじゃあねぇの?」
「…………た、確かに!?」
「お前…」
「いえ、あの…普段の生活でこの能力を使う事、そうなかったので…そこまで習慣付いていないというか…」
幼い時から使えた能力とは言え、それを酷使するような状況になったことはあまりなかった。使うとするなら社会人になった今であり、例えば好きでない上司や先輩と会わない為にその人の場所を千里眼で把握して、避けて通るなどだった。
「んー…やっぱやめときます」
「なんだよ、やめるのかよ。つまんねぇな」
「やっぱ覗き見なんて罪悪感があると言いますか…非常識かなぁって」
「ふん。あいつらに罪悪感なんて抱かなくてもいいだろう別に」
「あぁ…だから私の部屋、躊躇なく鏡から入ってこれたんですよね…」
いや、そもそもここにいる人達に常識というものを求めてはいけなかったのかもしれない。全くないとは思っていないが、それを持ち合わせている人というのは恐らく数人だ。
「おい、そりゃあ俺に対しての嫌味かぁ?まるで俺に常識がねぇみてぇな言い方だな」
ぐにっと、イルーゾォは片手の指で顎の下から海莉の頬っぺたを挟む。そうすれば当然彼女の頬は上へと釣り上がる訳なのだが、その顔があまりにおかしくイルーゾォは少しだけ笑っている。
「だってそうでしょう!?もしあのタイミングで私が着替えたいたらどうするんですか!!」
「お前の着替えてる姿見ようが裸見ようが俺は欲情したりしねぇよ、安心しろ」
「…っそういう問題ではなく!!!」
なんて失礼な言葉を吐くのだろう、この人は。欲情しないからと言ってずかずか女性の部屋に入ってもいいなんて、そんな事許されるはずが無いのに。というか欲情して欲しいわけでもないが、しないとはっきり断言されるのも複雑である。それはある意味女性として終わっている。まったく魅力がないのと同じだ。
「もういいです!とにかくこれからは鏡からじゃあなくて、普通にドアから入ってきてください!」
「それを決めるのはお前じゃなくて俺だ。まぁ気分次第ではドアから入ってやるよ」
気分とかではなく必ずドアからお願いしますと強く言うと頬っぺたを挟んでいる彼の指はさらに力を加え嫌でも海莉の頬は釣り上がり唇はとがっている。これでは上手く喋ることができない。海莉は話を聞かず人の顔で遊び始めたイルーゾォに対し不満げに目を細めて彼を睨むと、不細工になるからやめろと笑いながら言うのだった。一体誰のせいだと思っている。ここにいる人間は基本的に顔が良い人たちばかりなので、自分の顔の悪さが目立ってしまう。それは重々承知だし、生まれながら持ったこの顔など今更変えられないのだ。メローネやプロシュートもカッコいいが目の前にいるイルーゾォだって、睫毛は長いし背は高いし、おまけに髪はすごく綺麗でイケメンだ。
ようやく彼から解放された頬っぺたをさすり形を直していく。
「不細工なんてもうとっくに知ってます。でも更に不細工になんかしないでくださいよ、もう…」
「はぁ?別に俺はそうは思ってねぇよ」
「あー、不細工っていう表現じゃ足りないって事ですかそうですか」
流石の自分もそこまで言われるとショックだ、イケメンに言われると尚更。そう悲観的になっている海莉にイルーゾォは言葉を続けた。
「東洋人の事はよく知らないってのが本音だ。けど別に海莉はそうじゃあねぇと思ってる。あぁ、俺はな」
他の奴らは知らねぇよ、とやや頬を赤くしながら最後に付け加えた言葉は海莉の耳には届かない。なぜなら今彼に言われた言葉が純粋に嬉しかったからだ。つまり今のは凄く遠回りな言葉で可愛いと言ってもらえたという事だと海莉は思っている。例えそうじゃなくても顔は悪くないと言ってもらえたのだ、イケメンに。海莉は思わず口許が緩んでしまう。そんな彼女をイルーゾォが怪訝な顔で見ようとも、海莉は一切気付かない。すっかり機嫌が良くなってしまった海莉は、そう褒めてくれたイルーゾォに今日の夕飯のリクエストを聞くのであった。
「ずいぶん立派なドレッサーじゃあねぇか、お前がこんなの持ってるなんてちょっと意外だな」
「……な、なん!?」
「にしてもプロシュートも言ってたが、随分寂しい部屋だな…ある意味羨ましいぜ」
にゅるり。と、さも当たり前のように鏡から出てきたのは黒髪サラサラヘアのイルーゾォだった。いや普通にドアから入ってきてよ、なんて突っ込みも出来ないまま海莉はただ驚くしかなかった。頭ではスタンド能力だとわかっていても、いきなりの登場に驚かないわけがないだろう。
「それスタンド能力ですよね?鏡の中に入れるんですか?」
「あぁそうだ。俺のマン・イン・ザ・ミラーは鏡を出入り口にして対象をその中に引きずり込む事ができる」
「…鏡の中に入るなんて、漫画だけの世界だと思っていましたけど。やっぱりスタンドが絡むと何でもありですね」
「そりゃあおめーのスタンドも同じだろうが」
イルーゾォはびしっと海莉の方へ指を指す。まぁ透視や千里眼も普通に考えて有り得ないし、だからこその特別な力を持つスタンドなんだろう。彼の力、鏡の中に引きずり込むとは使い道によっては正にその仕事向きだ。身を潜めるならうってつけで、誰にも見られずにターゲットだけを引きずり込んで殺められる。そうやって、各々力を使って与えられた仕事をこなしているんだと、ぼんやりと考えた。
「なんなら鏡の中に入ってみるか?まぁ特別に入れてやらんこともねぇけど」
「えっ、いいんですか!?入ってみたいです!!」
お願いしますとイルーゾォに頼めば、彼は仕方ないと言わんばかりにフンと笑う。
「海莉、お前を鏡の中に入ることを許可してやる」
「うわ!!」
彼がそう一言叫ぶと、海莉の体はみるみるうちにドレッサーの鏡の中へと引きずりこまれた。思わず瞑ってしまった目を開けると、とくに変わりようがない自分の部屋のような、だが明らかに全てが反転された世界だった。棚にしまってある漫画の文字も、壁にかけていた時計も、家具の位置も反転している。ここは紛う事なきイルーゾォによって作られた鏡の世界だった。入ってきたばかりの鏡の向こう側を見れば、今自分も彼がいたであろう現実の世界がある。
「凄い、凄いです!!本当に鏡の世界に来たんですね」
「こんな事で一々騒ぐんじゃあねぇよ」
と言いつつ褒められた事自体は嬉しいため、口角が上がっている事に本人は気づいていない。
この家に人がいる、先程まで感じていたそんな人の気配というものは全くなく、どこか冷たい空気が漂っているような気がした。彼曰くこの鏡の中の世界とは、生物は存在しない「死の世界」になっているらしい。なので今ここにいるのは正真正銘、海莉とイルーゾォのみだ。
「死の世界、かぁ…ちょっとというか、普通に怖いですね」
「そうか?1人になりたい時とかありゃ便利だぜこの力」
確かに、と思わず強く頷いてしまった。自分1人だけの世界で静かに好きな本を読んだり好きな事ができたらそれはそれで良いのかもしれない。でもやっぱり、誰もそばにいないのは少しだけ寂しい気もする。
「これって、戻る時は入った場所から出るんですか?」
「いや、鏡がありゃどこでも入り口になるし出口になる。もう出るか?」
「うーん…折角なのでこの世界というか、鏡の中のアジトを探索してみたいなぁなんて…」
「…何だ何だ?人の部屋でも覗こうってか」
覗き見という言葉を避けて探索という言葉を選んだのに言い直されては意味がない。とは言えイルーゾォのいう事が合っているので否定も出来ず、そのまま黙った。自分の部屋が質素だの可愛げがないだのつまらないだの散々言われてきたので他の人達の部屋は一体どんなものかと気になったまでだ。
「つうかよ、それ、お前のスタンドでも出来んるんじゃあねぇの?」
「…………た、確かに!?」
「お前…」
「いえ、あの…普段の生活でこの能力を使う事、そうなかったので…そこまで習慣付いていないというか…」
幼い時から使えた能力とは言え、それを酷使するような状況になったことはあまりなかった。使うとするなら社会人になった今であり、例えば好きでない上司や先輩と会わない為にその人の場所を千里眼で把握して、避けて通るなどだった。
「んー…やっぱやめときます」
「なんだよ、やめるのかよ。つまんねぇな」
「やっぱ覗き見なんて罪悪感があると言いますか…非常識かなぁって」
「ふん。あいつらに罪悪感なんて抱かなくてもいいだろう別に」
「あぁ…だから私の部屋、躊躇なく鏡から入ってこれたんですよね…」
いや、そもそもここにいる人達に常識というものを求めてはいけなかったのかもしれない。全くないとは思っていないが、それを持ち合わせている人というのは恐らく数人だ。
「おい、そりゃあ俺に対しての嫌味かぁ?まるで俺に常識がねぇみてぇな言い方だな」
ぐにっと、イルーゾォは片手の指で顎の下から海莉の頬っぺたを挟む。そうすれば当然彼女の頬は上へと釣り上がる訳なのだが、その顔があまりにおかしくイルーゾォは少しだけ笑っている。
「だってそうでしょう!?もしあのタイミングで私が着替えたいたらどうするんですか!!」
「お前の着替えてる姿見ようが裸見ようが俺は欲情したりしねぇよ、安心しろ」
「…っそういう問題ではなく!!!」
なんて失礼な言葉を吐くのだろう、この人は。欲情しないからと言ってずかずか女性の部屋に入ってもいいなんて、そんな事許されるはずが無いのに。というか欲情して欲しいわけでもないが、しないとはっきり断言されるのも複雑である。それはある意味女性として終わっている。まったく魅力がないのと同じだ。
「もういいです!とにかくこれからは鏡からじゃあなくて、普通にドアから入ってきてください!」
「それを決めるのはお前じゃなくて俺だ。まぁ気分次第ではドアから入ってやるよ」
気分とかではなく必ずドアからお願いしますと強く言うと頬っぺたを挟んでいる彼の指はさらに力を加え嫌でも海莉の頬は釣り上がり唇はとがっている。これでは上手く喋ることができない。海莉は話を聞かず人の顔で遊び始めたイルーゾォに対し不満げに目を細めて彼を睨むと、不細工になるからやめろと笑いながら言うのだった。一体誰のせいだと思っている。ここにいる人間は基本的に顔が良い人たちばかりなので、自分の顔の悪さが目立ってしまう。それは重々承知だし、生まれながら持ったこの顔など今更変えられないのだ。メローネやプロシュートもカッコいいが目の前にいるイルーゾォだって、睫毛は長いし背は高いし、おまけに髪はすごく綺麗でイケメンだ。
ようやく彼から解放された頬っぺたをさすり形を直していく。
「不細工なんてもうとっくに知ってます。でも更に不細工になんかしないでくださいよ、もう…」
「はぁ?別に俺はそうは思ってねぇよ」
「あー、不細工っていう表現じゃ足りないって事ですかそうですか」
流石の自分もそこまで言われるとショックだ、イケメンに言われると尚更。そう悲観的になっている海莉にイルーゾォは言葉を続けた。
「東洋人の事はよく知らないってのが本音だ。けど別に海莉はそうじゃあねぇと思ってる。あぁ、俺はな」
他の奴らは知らねぇよ、とやや頬を赤くしながら最後に付け加えた言葉は海莉の耳には届かない。なぜなら今彼に言われた言葉が純粋に嬉しかったからだ。つまり今のは凄く遠回りな言葉で可愛いと言ってもらえたという事だと海莉は思っている。例えそうじゃなくても顔は悪くないと言ってもらえたのだ、イケメンに。海莉は思わず口許が緩んでしまう。そんな彼女をイルーゾォが怪訝な顔で見ようとも、海莉は一切気付かない。すっかり機嫌が良くなってしまった海莉は、そう褒めてくれたイルーゾォに今日の夕飯のリクエストを聞くのであった。