主人公の名前
7
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
家政婦、といっても海莉には特に勤務時間などというものはなかった。好きな時に掃除して頃合いを見て食事を作る、それ以外の空いた時間は自由に過ごす、こんな感じだ。最初はゴミがそこら辺に散乱していて汚くて薄暗かったアジトも海莉がなんとか綺麗に片付け、今はとても過ごしやすくなっている。メンバーには軽く感動されたが、よくもまぁあんな汚い場所で仕事していたものだなぁとこちらが感心してしまう程だ。とはいえそれが嫌で、リーダーは海莉を雇ったのだろうが。
本日の午前の仕事も一通り終わらせて午後は何をしようかと悩んでいると、数日ほど任務でいなかったプロシュートとペッシが帰ってきた。この2人は基本的にいつも一緒のようだ。
「あ、おかえりなさい。お疲れ様でした」
「おう。リーダーは?」
「自室にいます。ただあの人も仕事終わりでまだ寝てると思います」
「そーか…俺も寝る。夕飯には起こせ」
そう言ってプロシュートはアジトを後にして自室へと戻っていった。数日かけての任務は、やはり大変なんだろうか。海莉には彼らの仕事が一体どれほどのものかなんて、表面上でした理解できない。というよりも、深く考えないようにしていると言った方が正しい。理解しようがしまいが、自分が軽々しく関わっていいものではないのだから。
プロシュートの後ろをついて歩いていたペッシ。彼もまた自室に戻ろうとしたのたが、海莉は彼が怪我をしている事に気づく。それはなんと1箇所どころの話ではなかった。
「ペッシさん!!怪我が…!!」
「…え、あぁ…別にいつもの事だし」
「いつもこんな怪我してるんですか!?」
腕や足に傷をつくっているペッシを見るだけでとても痛々しかった。もう血が乾いて固まってしまっているのが更に見えてしまう。海莉は嫌がるペッシを無理やりソファに座らせて急いで救急箱を取りに行く。
「腕出してください、消毒しますから!少し痛いかもしれませんが…」
「お、おぉ…」
人の怪我の手当てなんて、正直あまりした事がないが最低限の知識くらいはある。その最低限の知識で傷だらけの彼を手当てしているわけだが、手際は良くも悪くもなくといった感じだ。痛みで少しだけ顔を歪ませるペッシを他所に海莉は患部を消毒していく。
「こうしてまともに手当てされんのは、すげぇ久しぶりだな」
「放ったらかしは駄目ですよ。ばい菌入ったらどうするんですか」
「あんたが思ってるよりも俺たちは頑丈だぜ?」
「そりゃあそうかもしれませんが…」
「あと喋りづらいからペッシでいいよ。俺あんたより年下だし」
「そう、ですか?じゃあ……ペッシ君で」
よろしくね、ペッシ君!と海莉が微笑むとペッシは若干頬を赤くしてそのまま俯いた。男所帯でしかなかったこの場に歳がそこそこ近い女性が増えたのは彼にとってはとても新鮮で、でもちょっとだけ恥ずかしさのような気持ちもあった。だからと言って特別何かが変わるわけでもないのだがとにかく今目の前にいる女性に、当たり前だったはずの怪我を手当てしもらうという状況は不思議で新鮮だと感じた。
「よし、出来た!他にどこか怪我してない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。グラッツェ海莉」
大袈裟にも巻かれた包帯を見てちょっとだけ摩ってみる。きっと彼女は自分と同じように、こういう怪我のない人生を送ってきたんだろう。自分だってこの世界に入ったのは最近で、ギャングに入ったばかりの頃はこんな怪我でもとても痛いと感じていたのに。いつの間にか当たり前で痛みも感じなくなっていた。自分が強く、なったんだと思っていたが…果たして本当の所は自分も分からない。でもいつか、プロシュートの兄貴に、メンバーに迷惑をかけないくらい一人前になって、こんな怪我をしないで済むくらい強くなりたいと思っている。
「あ、ペッシ君待って!顔も少し怪我してるよ」
「え、」
「こっち向いて」
静かに感傷に浸っていたら、海莉は傷口を消毒しやすいようにペッシの顔を両手で固定して自分の方へと向ける。その距離はとても近くてペッシは驚きのあまり反射的に息を止め、言葉を一瞬失ってしまった。
「お、おい海莉…!!」
「こら、じっとしててよ」
「………っ」
近すぎるこの距離に目のやり場に困ったペッシは、とりあえず目を瞑っておいた。できれば早く済ませてほしいと思いながら事が済むのをおとなしく待つ。ペタッと絆創膏が貼られたのが分かったと同時にペッシは目を開けると、もちろん彼女がいるわけで。いや、その彼女の後ろにもう1人いたのだ。ペッシが尊敬してやまない男、プロシュートが。
「何してんだお前ら」
「あ、兄貴!!??」
「あれ、プロシュートさん。寝にいったんじゃあなかったんですか?」
「水飲みに来たんだよ。なんだぁペッシ、邪魔したか?」
「まさか!!!そんなわけねぇよぉ!!」
邪魔とは一体何の事か分からない海莉は首を傾げる。まぁいいやと心の中で自己解決し、広げていた道具を全て戻して救急箱の蓋を閉めた。
「みんなの仕事、怪我ひとつしないなんて無理だとは思うけど…ほんと、気をつけてね」
「はん!おめーに心配される程俺たちは柔じゃあねぇから安心しとけ」
「ならいいんですけど!ペッシ君、またどこか怪我したらちゃんと言ってよ?」
「わかったよ海莉」
「ペッシ、おめーはもっと自信を持て。だからそんな傷ができちまうんだ」
プロシュートの小言にペッシはしゅん、と頭を下げて大人しく彼の言うことを聞いている。なんだかんだ面倒見のいいプロシュートを兄貴と言って慕うペッシの気持ちは分かるような、分からないような。だがきっと厳しい言葉も彼にとっては全てがペッシを前に進めさせるための一歩になるんだろう。
説教が終わると、プロシュートは自室に戻らずそのままソファに寝転んだ。
「部屋に戻らないんですか?」
「リーダーは寝起きが良くねぇからな。下手に起こしちまったら面倒くせぇ。ここで寝る。」
そうなの?と言う意味でペッシの方を向くと頭を縦に振った。また新しくメンバーの情報を得た海莉は、それならリーダーの寝起きには気をつけようと頭に刻んでおいた。さて、ペッシ君の手当ても終わった事だし何をしようかと悩んでいるとプロシュートが海莉を呼ぶ。
「ここ座れ。膝貸せ、膝」
「……………!クッションをお使いください」
彼が何を要求したか勘付いた海莉はすかさずその場を離れようとしたが敵わず、がしりと手首を掴まれている。ペッシに助けを求めてもあはは…と、俺にはどうしようもできないと困った笑顔で誤魔化すだけで、無理だった。
「礼は体でいいって言ったろ」
「あー…はい。そうでしたね」
先日のお礼がまだだった事を思い出す。自分から礼をしたいと言った手前、断る事は出来ない。何はともあれ彼がそれを、所謂膝枕をご所望であるのなら海莉はそれに従うまでた。
「おやすみなさい」
自分の膝の上で目を瞑り、眠り始めるイケメン。とても贅沢な状況だ。思わず綺麗な髪の毛に手を伸ばして触ってみれば女性も羨むなめらかで繊細な金の髪。窓の隙間から流れる風がその髪と、自身の髪をゆっくりと揺らしていく。絶妙な風の心地よさに気づけば海莉も意識を手放した。ペッシがかけてくれた毛布の存在に気づくのは、この状況を見て若干の苛立ちを覚えたメローネが騒ぎだす時であった。
本日の午前の仕事も一通り終わらせて午後は何をしようかと悩んでいると、数日ほど任務でいなかったプロシュートとペッシが帰ってきた。この2人は基本的にいつも一緒のようだ。
「あ、おかえりなさい。お疲れ様でした」
「おう。リーダーは?」
「自室にいます。ただあの人も仕事終わりでまだ寝てると思います」
「そーか…俺も寝る。夕飯には起こせ」
そう言ってプロシュートはアジトを後にして自室へと戻っていった。数日かけての任務は、やはり大変なんだろうか。海莉には彼らの仕事が一体どれほどのものかなんて、表面上でした理解できない。というよりも、深く考えないようにしていると言った方が正しい。理解しようがしまいが、自分が軽々しく関わっていいものではないのだから。
プロシュートの後ろをついて歩いていたペッシ。彼もまた自室に戻ろうとしたのたが、海莉は彼が怪我をしている事に気づく。それはなんと1箇所どころの話ではなかった。
「ペッシさん!!怪我が…!!」
「…え、あぁ…別にいつもの事だし」
「いつもこんな怪我してるんですか!?」
腕や足に傷をつくっているペッシを見るだけでとても痛々しかった。もう血が乾いて固まってしまっているのが更に見えてしまう。海莉は嫌がるペッシを無理やりソファに座らせて急いで救急箱を取りに行く。
「腕出してください、消毒しますから!少し痛いかもしれませんが…」
「お、おぉ…」
人の怪我の手当てなんて、正直あまりした事がないが最低限の知識くらいはある。その最低限の知識で傷だらけの彼を手当てしているわけだが、手際は良くも悪くもなくといった感じだ。痛みで少しだけ顔を歪ませるペッシを他所に海莉は患部を消毒していく。
「こうしてまともに手当てされんのは、すげぇ久しぶりだな」
「放ったらかしは駄目ですよ。ばい菌入ったらどうするんですか」
「あんたが思ってるよりも俺たちは頑丈だぜ?」
「そりゃあそうかもしれませんが…」
「あと喋りづらいからペッシでいいよ。俺あんたより年下だし」
「そう、ですか?じゃあ……ペッシ君で」
よろしくね、ペッシ君!と海莉が微笑むとペッシは若干頬を赤くしてそのまま俯いた。男所帯でしかなかったこの場に歳がそこそこ近い女性が増えたのは彼にとってはとても新鮮で、でもちょっとだけ恥ずかしさのような気持ちもあった。だからと言って特別何かが変わるわけでもないのだがとにかく今目の前にいる女性に、当たり前だったはずの怪我を手当てしもらうという状況は不思議で新鮮だと感じた。
「よし、出来た!他にどこか怪我してない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。グラッツェ海莉」
大袈裟にも巻かれた包帯を見てちょっとだけ摩ってみる。きっと彼女は自分と同じように、こういう怪我のない人生を送ってきたんだろう。自分だってこの世界に入ったのは最近で、ギャングに入ったばかりの頃はこんな怪我でもとても痛いと感じていたのに。いつの間にか当たり前で痛みも感じなくなっていた。自分が強く、なったんだと思っていたが…果たして本当の所は自分も分からない。でもいつか、プロシュートの兄貴に、メンバーに迷惑をかけないくらい一人前になって、こんな怪我をしないで済むくらい強くなりたいと思っている。
「あ、ペッシ君待って!顔も少し怪我してるよ」
「え、」
「こっち向いて」
静かに感傷に浸っていたら、海莉は傷口を消毒しやすいようにペッシの顔を両手で固定して自分の方へと向ける。その距離はとても近くてペッシは驚きのあまり反射的に息を止め、言葉を一瞬失ってしまった。
「お、おい海莉…!!」
「こら、じっとしててよ」
「………っ」
近すぎるこの距離に目のやり場に困ったペッシは、とりあえず目を瞑っておいた。できれば早く済ませてほしいと思いながら事が済むのをおとなしく待つ。ペタッと絆創膏が貼られたのが分かったと同時にペッシは目を開けると、もちろん彼女がいるわけで。いや、その彼女の後ろにもう1人いたのだ。ペッシが尊敬してやまない男、プロシュートが。
「何してんだお前ら」
「あ、兄貴!!??」
「あれ、プロシュートさん。寝にいったんじゃあなかったんですか?」
「水飲みに来たんだよ。なんだぁペッシ、邪魔したか?」
「まさか!!!そんなわけねぇよぉ!!」
邪魔とは一体何の事か分からない海莉は首を傾げる。まぁいいやと心の中で自己解決し、広げていた道具を全て戻して救急箱の蓋を閉めた。
「みんなの仕事、怪我ひとつしないなんて無理だとは思うけど…ほんと、気をつけてね」
「はん!おめーに心配される程俺たちは柔じゃあねぇから安心しとけ」
「ならいいんですけど!ペッシ君、またどこか怪我したらちゃんと言ってよ?」
「わかったよ海莉」
「ペッシ、おめーはもっと自信を持て。だからそんな傷ができちまうんだ」
プロシュートの小言にペッシはしゅん、と頭を下げて大人しく彼の言うことを聞いている。なんだかんだ面倒見のいいプロシュートを兄貴と言って慕うペッシの気持ちは分かるような、分からないような。だがきっと厳しい言葉も彼にとっては全てがペッシを前に進めさせるための一歩になるんだろう。
説教が終わると、プロシュートは自室に戻らずそのままソファに寝転んだ。
「部屋に戻らないんですか?」
「リーダーは寝起きが良くねぇからな。下手に起こしちまったら面倒くせぇ。ここで寝る。」
そうなの?と言う意味でペッシの方を向くと頭を縦に振った。また新しくメンバーの情報を得た海莉は、それならリーダーの寝起きには気をつけようと頭に刻んでおいた。さて、ペッシ君の手当ても終わった事だし何をしようかと悩んでいるとプロシュートが海莉を呼ぶ。
「ここ座れ。膝貸せ、膝」
「……………!クッションをお使いください」
彼が何を要求したか勘付いた海莉はすかさずその場を離れようとしたが敵わず、がしりと手首を掴まれている。ペッシに助けを求めてもあはは…と、俺にはどうしようもできないと困った笑顔で誤魔化すだけで、無理だった。
「礼は体でいいって言ったろ」
「あー…はい。そうでしたね」
先日のお礼がまだだった事を思い出す。自分から礼をしたいと言った手前、断る事は出来ない。何はともあれ彼がそれを、所謂膝枕をご所望であるのなら海莉はそれに従うまでた。
「おやすみなさい」
自分の膝の上で目を瞑り、眠り始めるイケメン。とても贅沢な状況だ。思わず綺麗な髪の毛に手を伸ばして触ってみれば女性も羨むなめらかで繊細な金の髪。窓の隙間から流れる風がその髪と、自身の髪をゆっくりと揺らしていく。絶妙な風の心地よさに気づけば海莉も意識を手放した。ペッシがかけてくれた毛布の存在に気づくのは、この状況を見て若干の苛立ちを覚えたメローネが騒ぎだす時であった。