ー新伝ー伝説を継ぐもの

ー池袋西口三番街路ー

拳二「チッ……完全に逃げられた。」

羅漢「本気で追う気も無かっただろ。」

拳二「まぁな。」

羅漢「どうする?」

拳二「……追い込みかけるっとでもいうと思うか?」

羅漢「ヤクザものの考えなんかしらねぇよ。」

拳二「ふんっ。気にくわないが……俺ぁ、表立って動けねぇからな。」

羅漢「そのために裏から追い込むんだろ。」

拳二「本来ならな。だが、組のメンツがある。ガキ相手に本気を出す訳にゃいかねぇ。」

羅漢「メンドクサイものだなヤクザも」

拳二「仁義ってのはなんでもめんどくさい道だ。しかし、個人的にあの野郎は逃がさん」

羅漢「仁義はどうした?」

拳二「俺ぁの個人的な気持ちの問題に仁義は関係ない」

羅漢「卑怯な考えだな」

拳二「おたくらと違って正々堂々なんて看板は掲げてないからなぁ。」

羅漢「それにしても、俺ぁの獲物はよこどって逃げられたのはどう償ってくれる?」

拳二「今度、悠にでも何か美味いもん作らせて酒といっしょに届けてやる」

羅漢「そうか。そいつぁ楽しみだ。それで、あの悠らしい小僧はどうする?」

拳二「……面ぁ撮っとくんだったぜ。」

羅漢「だなぁ。」

拳二「しっかし……俺ぁを背負い投げるとは柔道ってのも侮れねぇな」

羅漢「それだけじゃない。奴の初発の蹴りは空手の型だ。自然とやってのけてたがな。」

拳二「おたくの門はじゃないのか?」

羅漢「東京中にいくつ空手を教えているところがあると思う……。」

拳二「そんでも、有名人の羅漢先生のお顔は知ってたじゃねぇか。っていうか、お前さんの知り合いで「空手」と「柔道」を教えてる奴はいねぇのか?」

羅漢「本来は一方、一方を極めるものだ。どっちかというのならいくらかかは居るが両方を教えるような、そんな知り合いに当ては無い。」

拳二「じゃあ、質問の仕方を変えるぜ「空手」と「柔道」に似た動きの格闘技でそれを教えてるような知り合いは?」

羅漢「中国武術系か軍隊格闘技や総合格闘技の類だろうな……。探せばこれもいくらでもある。こんな探し方では一生見つからねぇよ。」

拳二「だよなぁ……。」

羅漢「お預けだな」

亮「あれ……師範と拳二さん?」

拳二「おう、岡崎じゃねぇか」

羅漢「どうした。こんなところでなにしてる。」

亮「むしろ、俺のセリフなんですけど……。」

羅漢「俺ぁは散歩だ。」

拳二「俺ぁ、偶然あった。」

亮「どろどろですけど……なんかありました?」

拳二「ちょっと投げられてな。」

亮「は?」

羅漢「そうだ。亮、お前、打撃だけでなく足や投げも得意としてるような奴とかに心当たりないか?」

亮「有りますよ」

拳二「マジか?!名前は!」

亮「小鳥遊悠」

拳二「……」

羅漢「……」

亮「え、な、なんで、そんな落胆した顔してんスか?」

拳二「いや、なんでもねぇよ…」
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