ー新伝ー伝説を継ぐもの【4】

ー池袋:とあるアパートー

紅「携帯は繋がらず、自宅にも気配なしっか……。」

弩躬「居留守使ってる様子じゃないな」

紅「郵便が突き刺さったままだしな。二、三日は帰ってない感じだ」

弩躬「んー……手掛かりが有ったと思ったのにまるでなしか」

紅「もう夕方か。」

弩躬「けど、もしかしたら夜に帰ってきてるかも知れないぞ。ここまで帰ってないってことは逆に」

紅「そういう考え方もあるか。……それにしてもこれで烏帽子ってのが犯人じゃなかったら俺なにしてるんだって話になるなぁ」

弩躬「そのときはキングさんに謝れば?」

紅「俺が謝るので済むのなら土下座でも何でもするけど、ソレじゃ何にも解決できないだろ」

弩躬「お前……カッコいいな」

紅「かっこ悪いよ。大見え切って失敗して謝罪ってバカみたいじゃん。いっそ殴られて怒鳴られた方がいい」

弩躬「変わってるな。普通は怒られたくないから必死になるのに。」

紅「いや、理不尽に怒られるのはおれだって嫌だよ。けどな、自分でやるっていいった手前で失敗して怒られないのはつらいんだよ。あの人……崇さんて厳しいとか恐ろしいとか言われてるけどちゃんとしてたら、そんなことはないんだよ。」

弩躬「ふーん……。想像できないな」

紅「そりゃそうだ。今言ってることだって俺の感想であって事実じゃない。崇さんの腹の中は読めないよ」

弩躬「あぁ、それ分かるわ。」

紅「ん?」

弩躬「俺もさ先生の考えてることとか腹の中をまったく先読み出来ないんだよ」

紅「あの人か……そりゃ無理だろ。笑ってる顔した見たことないし。なんか存在がうっすらしてて幽霊みたいだし」

弩躬「幽霊か……あながち間違いじゃないかもな」

紅「っていうと?」

弩躬「あのひと、年齢不詳だからな。だけど、十神将は老齢なひとが多いのに先生だけはずば抜けて若いし」

紅「んー……でも、真桜の嬢ちゃんのが若いだろ」

弩躬「秋宵月のお嬢さんは特別過ぎるだけだ。」

紅「でも、あの中じゃ真桜の嬢ちゃんは窮屈だろうな。」

弩躬「そうでもないみたいだぜ。この前なんて五対一同時の将棋とかしてたし」

紅「聞いてるだけで頭痛くなる。」

弩躬「それに十神将も変わっていくときだからな。」

紅「超ボインさんと弩躬が、九頭竜のおっさんと神姫の子猫ちゃんがてきな?」

弩躬「んー……ちょっと違う」

紅「ん?」

弩躬「十神将の存在理由は本来「小鳥遊弥一」対策の存在だった。その小鳥遊弥一が居ない今、存在理由も薄れつつある」

紅「ひとりに化け物十人で対策って言うんだからパナイな、悠の爺さん」

弩躬「ホントにな、しかもソレで圧倒とか拮抗じゃなくてあくまでも対策だからな……底が見えないじゃなくて天を貫いてるって感じだ」

紅「んっ、でもよ。悠の爺さんが死んだのは随分と前だろ?だったらもうとっくに解散してもいい話なんじゃね?」

弩躬「そうなんだけど弥一さんが死んだ後も色々と問題が残ってな。」

紅「例えば?」

弩躬「本当に死んだのかって問題」

紅「……いやいやいやぁ」

弩躬「普通ならあり得ないで済むけど、弥一さんと関わりが薄い俺ですら「もしかした」「万が一」って言葉がよぎってる。他の面々が危惧するのも無理はない」

紅「ふーん……。」

弩躬「なにせ十神将の面々でも人外なんだぞ?それを凌駕するって聞いたら……どう感じるよ?」

紅「……怪談を聞くのは少し時期が早い気がして」

弩躬「なっ?背筋が冷えるんだよ」
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