ー新伝ー伝説を継ぐもの【4】

ー鳥居神社ー

紅「それにしても結構長いな。この階段」

寅「なんだ、もうバテたのか?」

紅「正直だるい」

風太郎「お前単純作業嫌いだろ」

紅「あー、嫌いかも」

寅「そんなのでよく身体鍛えられるな。鍛錬なんて反復運動と単純行動の繰り返しなのに」

紅「いや、そういう目的があってなら、まだやる気も出るけど……普段生活してて長い階段とかを登ろうとは思わないだけ。お前らは違うのか?」

寅「よっぽど疲れてなきゃロードワークとして取り組む」

風太郎「雷と一緒ならどんな例え火の中、水の中でも一緒に進む」

紅「……」

寅「……」

風太郎「なんだお前らその目は」

紅「いや、別に」

寅「なんでもねぇよ」

風太郎「下賤なことを考えてるのかもしれないけど、俺と雷の関係はプラトニックだからな。まぁ、別にお前らにどう思われようとも構わないけど」

紅「まぁ、そんじゃその話しは置いといて【鬼状態】だっけか?あれってどんな感じなんだ?」

寅「……」

風太郎「……」

紅「あれ、俺なんか変なこと聞いた?」

寅「お前なぁ……誰が好きこのんで自分の手札(持ち技)を教えるヤツが居るんだよ……」

風太郎「別に教えてやってもいいぞ」

寅「いいのかよ?!」

風太郎「どうせ言っても真似できるものじゃないしな。それに口で説明しても分かりにくい」

紅「それでも聞きたいもんじゃん。やっぱり」

風太郎「……鬼状態は心臓の操作がキモだ。長々と詳しく説明するのはメンドイから端的かつ砕いてに言うけど、心臓の動きをヤバい所まで持っていってスゲー強くなるってことだ」

寅「本当に適当な説明だな、おい」

紅「すげーっていうのは分かったけど、鬼状態って身体に悪いんだろ?」

風太郎「控え目にいって寿命はガンガン削っていく」

寅「命がけの技か笑えねーな」

風太郎「ちなみについでだから教えてやるけどちゃんとした【鬼状態】を使えるのは先生くらいだぞ」

寅「あー?お前らも悠も使ってるだろ」

風太郎「精度が全然違う。いいか、【鬼状態】っていうのは死の淵、一瞬心臓を停止するか否かの域から毎分数百回の鼓動に持っていって、その時に爆発的身体能力と千里眼級の読みを手にするのが【鬼状態】の完成系だ。」

紅「うん、お前らが使ってるのはそうなんじゃないのか?」

風太郎「一応はな、でも俺らがやってるのは心臓の鼓動を振り上げさせてる状態だ。まだ心臓停止寸前からの発生が出来ない。いわば燃えているところに油をぶち込んでる状態だ」

紅「わからないな。別にそれでなにが間違いなんだ?」

風太郎「全然違う。動から動で得られる力と、静から動で得られる力この差は大きい。火にぶち込むのと、時限爆弾が爆発する差がある」

紅「分かるか?」

寅「ぼんやり、とはな…」

風太郎「ま、こればかりは口で説明しても分かんないだろうね。でもな……俺も雷もようやく【鬼状態】を物にしてきて自分に見合ったようになってきた。」

寅「ほぉ……」

紅「見合うものって鬼状態に違いがあるのか?」

風太郎「根っこの部分は変わらないさ。けどあえて名づけるなら【疾風鬼状態(フウジンモード)】と【迅雷鬼状態(ライジンモード)】かな」

このとき、風太郎はしっかりと微笑んでいた。それは嘘をついていない絶対の笑顔。だが、同時に真実は教えないという意味も孕んでいる。

紅と寅は推理する。名前の通りフウジンモードは風太郎専用の鬼状態で、ジンライモードが雷太郎専用の技だと。そして、おそらくは超スピードと超パワーを生むタイプだと。
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