ー新伝ー伝説を継ぐもの【4】

ー蒼天塔:闘士控室ー

紅「……」

寅「……」

十一「ふふっ。冗談ですよ。私とてここでのルールくらいは理解していますからね。それより、飲み物でもいかがです?」

目が見えているのならば当たり前だが盲目の物部は平然と飲み物を人数分用意して紅と寅の側に置いて行き、座っていた椅子に腰かける。

寅「……」

紅「……」

十一「遠慮しなくていいよ。っといっても、ここの備え付きの物だから私のいうセリフじゃないのだけどね。」

寅「……紅」

紅「あぁ、俺は駆け引きなんてことが出来るタイプじゃないから率直に聞くが……アンタ、街で人を襲ってないか?」

十一「襲っているよ」

紅「なに?」

十一「ただし、誤解はしないでくれたまえ。武術家を名乗る以上、緊急事態に背を向けるつもりはないという意味でだよ。」

紅「?」

十一「向こうから売って来た喧嘩を買っているという意味だ」

寅「つまり、諍いがあって逃げたふりをして不意打ちする……そういう意味か」

十一「はぁ?何を言っているのです。私は売られたケンカは正面から買いますよ。ただ、相手側の不意打ち、武器の使用、多人数……いずれも厭わないがね。」

紅「武器の使用って……アンタも武器組なんだろ」

十一「ぷふっ……。いや、失礼。そうだった私は「一応」は武器組だったね。」

寅「どういう意味だ」

十一「私は……暗器使いなどではない。空手家だよ」

紅「は?」

寅「なに?」

十一「武器を持つ者と闘いたくてね。暗器使いという名目でここに参加しているんだよ。この杖も鋼鉄製ではあるが武器じゃなくて鍛錬ようだよ。まぁ、確かに武器としても扱えるがね。」

紅「マジか……」

寅「……どうやら、お前の目的は外れたみたいだな。俺はちょっとだけ信憑性が出てきたぜ。盲目でありながら技量ナンバーワンの噂」

十一「正確ではないなその噂。技量にとどまらない実力、強さ、腕っ節、全局面にナンバーワンなのだよ」

寅「スゲェな。自ら闘らなくちゃならない流れを作りやがった」

十一「ふふっ」

紅「待て待て、ちょっと待った。それじゃあ、本当に暗器使いとは関係なし?」

十一「ないね。私はさっきもいった通り空手家だ」

紅「マジかぁ……。」

十一「ところで、君たちの話しを聞いたんだ。私の願いも聞いてくれないか?」

寅「……願い?」

十一「強き者。とびっきりの対戦相手を探してきては貰えないだろうか」

寅「俺が相手になってやる。」

十一「キミらではまだまだ若過ぎる。腹のすわりは褒めておくがね。」

寅「てめ……」

紅「強い相手か……わかった。考えとく」

寅「おいっ!」

十一「ふふっ、楽しみにしているよ」

寅「ちっ……邪魔したな」

紅「んじゃ、さいなら」

十一「あぁ、さようなら。若き修行者たちよ」
69/100ページ
スキ