ー新伝ー伝説を継ぐもの
ー池袋:溜まり場ー
目と鼻の先でリアルな殺し合いを繰り広げられる最中柏はタバコを吸ってひと息で灰にした、口から吐き出す煙りの量も半端ではない。足元に転がっている男に腰かけて独り言のように話はじめる。
「エデン(楽園種)に与える薬は通称ライフ(楽園種用投与薬)。19××年に東西統一戦争において、西連合軍が開発した生体強化薬だ。身体能力を極限まで高めると同時に痛みを感じなくなる。さらに麻薬と同じ依存性があり、毒性による心身喪失や死亡例を相次ぎ報告された。19××年、戦争終結と同時にその目的での使用が一切禁止された…。」
「あ、アンタ…なんの話をしてるんだ?こ、この薬はアイツの発作を抑える薬じゃないのか?」
柏は首を振った。
「何も知らないのか……。まぁ、いいお前は後でじっくり絞ってやる。様子からして……まだアッパーは使ってないようだな……。光臣!済ませろ。」
柏の声を受け事態は一瞬で一変した。柄を握っていた右手を離し、自らに向けられたサバイバルナイフの刃を掴んだ。ブチュチュッと斬り裂ける手のひら。飛び散る鮮血。
「!!」
どれほどの力を込めて握っているのかナイフはピクリとも動かない。それと同時に投げ離し空を舞う長刀の柄を左逆手でつかみ居合い抜いた。もちろん刃は鞘に収まったままだが柄の先が砕の横面、正確にいえば顎の辺りにめり込み打ちのめした。
仮にライフにより痛みを感じなくなっていたとしても鉄の金具装飾を施した柄先の一撃は意識を吹き飛ばすのには十二分な威力を誇った。たれ流れる水のようにフードの男は地面にゆっくり倒れた。
光臣は息ひとつ切らず、汗ひとつかかずにナイフの刃を握ったまま。柏の方に振り返りひざまずいた。
目を閉じて心重くに口を開く。
「申し訳ありません。時間が掛かりました。」
「いや、エデン相手にならギリギリ合格点はやる。」
決して誉め言葉は与えない悪魔だが光臣は肩を震わした。ギリギリ合格点だけで十二分に褒美なのだ。
「さて、とりあえず……手はどうだ?」
光臣はナイフを離し血濡れる手のひらを見つめ指を動かしてみる。
「多少痛みはありますが……問題は在りません。刀も振るえます。」
「そうか。じゃあ……後ろのやつを担げ。さて、お前はどうするかな……」
柏は尻の下にいる男を見た。既に戦意も何もない。ただ呆然としているだけだ。この男からは有益な情報は聞き出せないと悟り掛けていた手錠を外した。 立ち上がりその場から去り際にひとことだけいいのこす。
「お前は用済みだ。どうしようが構わないが……なにをするにしても其れなりの覚悟をしておけよ……?」
目と鼻の先でリアルな殺し合いを繰り広げられる最中柏はタバコを吸ってひと息で灰にした、口から吐き出す煙りの量も半端ではない。足元に転がっている男に腰かけて独り言のように話はじめる。
「エデン(楽園種)に与える薬は通称ライフ(楽園種用投与薬)。19××年に東西統一戦争において、西連合軍が開発した生体強化薬だ。身体能力を極限まで高めると同時に痛みを感じなくなる。さらに麻薬と同じ依存性があり、毒性による心身喪失や死亡例を相次ぎ報告された。19××年、戦争終結と同時にその目的での使用が一切禁止された…。」
「あ、アンタ…なんの話をしてるんだ?こ、この薬はアイツの発作を抑える薬じゃないのか?」
柏は首を振った。
「何も知らないのか……。まぁ、いいお前は後でじっくり絞ってやる。様子からして……まだアッパーは使ってないようだな……。光臣!済ませろ。」
柏の声を受け事態は一瞬で一変した。柄を握っていた右手を離し、自らに向けられたサバイバルナイフの刃を掴んだ。ブチュチュッと斬り裂ける手のひら。飛び散る鮮血。
「!!」
どれほどの力を込めて握っているのかナイフはピクリとも動かない。それと同時に投げ離し空を舞う長刀の柄を左逆手でつかみ居合い抜いた。もちろん刃は鞘に収まったままだが柄の先が砕の横面、正確にいえば顎の辺りにめり込み打ちのめした。
仮にライフにより痛みを感じなくなっていたとしても鉄の金具装飾を施した柄先の一撃は意識を吹き飛ばすのには十二分な威力を誇った。たれ流れる水のようにフードの男は地面にゆっくり倒れた。
光臣は息ひとつ切らず、汗ひとつかかずにナイフの刃を握ったまま。柏の方に振り返りひざまずいた。
目を閉じて心重くに口を開く。
「申し訳ありません。時間が掛かりました。」
「いや、エデン相手にならギリギリ合格点はやる。」
決して誉め言葉は与えない悪魔だが光臣は肩を震わした。ギリギリ合格点だけで十二分に褒美なのだ。
「さて、とりあえず……手はどうだ?」
光臣はナイフを離し血濡れる手のひらを見つめ指を動かしてみる。
「多少痛みはありますが……問題は在りません。刀も振るえます。」
「そうか。じゃあ……後ろのやつを担げ。さて、お前はどうするかな……」
柏は尻の下にいる男を見た。既に戦意も何もない。ただ呆然としているだけだ。この男からは有益な情報は聞き出せないと悟り掛けていた手錠を外した。 立ち上がりその場から去り際にひとことだけいいのこす。
「お前は用済みだ。どうしようが構わないが……なにをするにしても其れなりの覚悟をしておけよ……?」