ー新伝ー伝説を継ぐもの【4】

ーとある山中ー

拳二「ここだ」

愛「ピクニック?」

拳二「違う」

愛「ハイキング?」

拳二「一緒だろ!しかも、ちげぇし!」


~悠お兄さんのよく分かる解説~

悠『ピクニックとハイキング、どちらもちょっと出掛けて楽しむ、お弁当を広げて昼食というイメージがある。混同されがちだがもちろん違いがある。それは出掛けるその目的だ。 ピクニック(picnic)は屋外で食事を取る、パーティーをすることがメイン。距離は特に関係なく、近所の公園でも家の庭でもみんなが集まって食事という形であればピクニックと呼ぶ。ハイキング(hiking)は自然散策。自然を楽しみながら歩くことがメインで、軽登山もハイキングに含まれることがある。ちょっとした徒歩旅行。ドイツ語ではワンダーフォーゲル(Wandervogel)と呼ぶが、ワンゲルはスポーツ的な意味でもよく使われているぞ。

~~

愛「じゃあ何しに来たの?」

拳二「お前を暴れさせにきたんだよ。けど、まずこれを見ろ」

拳二は何枚かの写真と一枚の地図を懐から取り出して愛に見せる。

愛「見た」

拳二「まず、この範囲なら好きに暴れていい」

愛「オーケー」

拳二「好きにっていっちまったが、次の写真みたいに根元から木をひっこ抜かなきゃいけねぇし、ちゃんと整地も出来ねぇと困るんだよな」

愛「出来るよ」

拳二「じゃあ、この写真の順番やってみろ。まず、木をひっこ抜く、並べる、整地」

愛「んっ……」

愛は軽く手をあげるとみしみしと大木は揺れて一気に大地から離れた。まるで根菜類でも抜いてるような軽々しさだ。数分もしないうちに予定地の木々が全て抜きつくされた。

拳二「いやぁーしかし……」

愛「こんなもん?」

拳二「やらせておいて何だが底がみえんな……んじゃ、掘り起こされた土を平にしてくんない?」

愛「はいはい」

穴ぼこだらけだった地面もロードローラーをかけたように平になった。

拳二「お疲れさーん」

愛「終わりでいい?」

拳二「いや、出来たらでいいんだが、こんな風にできねーか?」

最後に出した写真は、枝と葉を落として丸太状にカットして並べられた写真。

愛「はいはい」

見えない巨大な包丁で断っていくが如く、大木は上下を落とされ、邪魔な枝もそぎ落とされ積みあげられた。どこからどうみても完璧な資材だ。




ー車内ー

拳二「いやーすげーよこりゃいいや!!」

愛「……」

拳二「かっかっか、土地造成費木材丸儲けじゃねーか!くっそー今が開発バブルだったら最高だったのによぉー」

愛「……」

拳二「いやぁーしかし、お前ぇの力も使いようだな」

愛「……」

拳二「さっきから黙ってどしたよ」

愛「……今の瓦谷、私の知ってる目、大人の目」

拳二「ぁん?」

愛「……」

拳二「なるほどなぁ、かっかっか。おめーはガキだから、いいように使われてたんだな。まあ、待ってろよ」



ー料亭ー

店員「これはこれは、瓦谷様。ようこそいらっしゃいました。」

拳二「おう、あのな……で頼む」

店員「分かりました。どうぞ、おくつろぎくださいませ」

愛「……」

拳二「いつまで突っ立ってんだ飯食いたくないのか座れよ」

愛「私はもうだまされない」
ぐー

拳二「盛大に腹なってんぞ」

愛「本能には勝てない。メニュー」

拳二「もう注文してある」

愛「勝手に注文!!」

拳二「ふー……まぁ、待ってろや」

店員「お待たせいたしました。お嬢さまのまえ、失礼します」

愛「こ、これは……」

愛の前に運ばれて来たのはどんぶりに山盛りもられたウニ。

拳二「丹波の特上うに丼だ。普段はこんな出し方してくれねーぞ」

愛「こんな大量にウニを食べる方法があったのか……寿司屋はなんだったんだ……」

拳二「ふー……愛よ。大人の社会ではな労働に見合った報酬を得るんだ。」

愛「これが……大人の世界」

拳二「どうよ、美味ぇか」

愛「言葉では言い表せられない。あえていうならとても美味い」

拳二「表現力ゼロだな」

愛「これで私も大人の女」

拳二「それは違う」
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