ー新伝ー伝説を継ぐもの【4】

ー池袋:一ノ瀬組事務所ー

拳二「おうっ!どうなった!」

組員「あっ、拳二さん……それがいきなり発砲ですよ」

拳二「若頭は!」

組員「腕にかすった程度で今は病院です」

拳二「そうか……。」

上組員「おい!なんでガキがいる!」

愛「ガキじゃない愛だ」

拳二「あぁ、スマン。そのガキは俺ぁのツレだ」

組員「えぇっ?!け、拳二さんの?まさか……娘?」

拳二「違ぇわ!」

上組員「拳二、ちょっと来い」

拳二「あぁ?おい、そいつちょっと見てろ」

組員「へいっ!」

上組員「お前よぉ、拳二、テメーなめてんだなっ?」

拳二「あぁ?」

上組員「若頭が撃たれたって時にガキ連れて呑気に社会見学かああ!?」

拳二「襲撃があることなんざ、誰かが予知できるってのか?あぁん?そういうテメーこそ若頭の盾にならねぇで踏ん反りかえってんじゃねーぞ!!」

上組員「てめぇ…」

愛「ズズッ。うまい、さすが最高級玉露」

組員「それ百均のだよ」

上組員「……チッ、テメーはオヤジのお気に入りだし喧嘩がとりえなんだ。他のやつより適任だろ」

上組員のひとりが机の引き出しから黒い塊を取りだして拳二の前においた。トカレフ、いわゆる銃だ。

拳二「……」

上組員「お前がやれ」

愛「……」

組員「ちょ、待ってくださいよ。拳二さんがなんで……」

拳二「いい。俺ぁがいってくる。けどな……こんなもんはいらねぇーよ。車借りてく。おい、帰けぇーるぞ。来い」

愛「……」

組員「拳二さん……。」

上組員「ざけやがって…。」





ー一ノ瀬組専用車内ー

組員『自宅には戻ってません。神埼組長は事務所にいますよ』

拳二「分かった。御苦労」

組員『拳二さん、気つけてください……』

ピッ!

拳二「はぁー……組員うじやうじゃいるんだろうなぁ。クソ、めんどくせぇ事になっちまったぜ。」

愛「ねぇ」

拳二「うぉっ?!」

愛「うるさ……。」

拳二「てめぇ、寝てたんじゃねーのかよ。ってか、いいや。とっとと降りろ。俺ぁ今から用事が出来た、お前の面倒はみれねぇ」

愛「私にやれって命令しないの?」

拳二「馬鹿かてめぇ。ガキにそんな真似させられるか。第一お前にゃかんけーねーことだろが」

愛「……」

ガチャ!

拳二「……」

愛「私がやる」

拳二「あぁ!?」

愛「元の場所だと人の願いを叶えることが存在価値だった。瓦谷は私の知ってる人間とは全然違う。瓦谷といるのは楽しい」

拳二「お前ぇ初めて名前で……じゃねえ名字呼び捨てかよコノヤロー待て!」

ー神埼組事務所ー

愛「……」

「何だお前?えっ、ぎゃああ!!」

出入り口の自動ドアをブチ破って人が飛んできた。

拳二「え……?」

「何だコイツ!ぎゃあああ!」

「死ねゃ!ぐあぁぁっ!」

ドッ、がっ、ゴッ、一階から順に窓がどんどん割れていきその度に人や机、観葉植物が飛びだしてくる。

「ひいい!」

「なんじゃこいつっっ!!」

ついには二階に達して当然のように大きなハメ殺しであるはず(しかも多分防弾)の窓は砕け散り、ソファーから高そうな机、金庫に札束が次々と投げ捨てられる。ピタッと音がやんでしばらくすると。

愛「……」

拳二「……」

愛「こいつがくみちょー?」

手足がおかしな方向に曲がって微動だにしない男を浮遊させながら愛は小首を傾げた。

拳二「……そ、だな。たぶん、っーか、生きてるかそれ?」

愛「…………多分」

こうして拳二は組随一の武闘派の称号を得て、素手で組の事務所をひとつ完全に潰したという新たな伝説を作ったとか何とか……。
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