ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー職員室ー

教頭「夏休みも終わり…………っで、あるのと……最近はツィッターなどの……あと、しばしば気になるのが一年生の臥劉京さんのことなのですが……鹿又妙見(かまたみょうけん)先生?」

妙見「はい?彼女がどうかしましたか?」

教頭「えーと、まずあの子……いつまで私服登校を続けているのですか?」

妙見「そうですね……私(わたくし)の考えでは卒業まであのままで構わないのではないかと……思っております」

教頭「それはなぜ?」

妙見「なぜ……とは、どういう意味でしょうか?」

教頭「……ですから、転校当初は制服が間に合わなかった、というのは理解できますが、あれから何ヶ月たったとお思いですか?」

妙見「制服を買えるほど余裕がない」

教頭「え……?」

妙見「という、話しもあります。」

教頭「……真意のほどは?」

妙見「現在、臥劉さんは御親戚の家で暮らしているそうです。余裕があるか、というと分からないというほか答えがありません。」

教頭「それじゃあいかんだろ」

妙見「私のほうで私服登校許可は既に出してあります」

教頭「まさか……独断で?」

妙見「そんな恐れ多い。ちゃんと校長殿に申請しておきました」

教頭「……私のところには通っていませんが?」

妙見「ちょうどその時は不在だったので」

教頭「……」

妙見「なにか問題があったのだとしたら謝罪しますが?」

教頭「いいえ。では、次に……毎朝の奇行については?」

妙見「奇行?」

教頭「……毎朝見ているでしょう。あの、なんというか……」

妙見「愛の告白」

教頭「コホン、それです」

妙見「愛を伝えることの何処が奇行だというのでしょうか?」

教頭「それは……」

妙見「彼女なりの想いの伝え方が大胆なだけであるだけで、奇行というのはいささか語弊があると思われますが」

教頭「仮に想いの伝え方だとして、学生というのは……」

妙見「不純異性交遊、ではありませんよ」

教頭「ふじゅ……なっ?!」

妙見「彼女は想いを伝えているだけ、さらにいうと「不純異性交遊」とは「不健全性的行為」これを「18歳未満の健全育成上支障がある」と主張される性的行為を指す言葉です。場合によって「不純異性交遊」や「不純異性交際」、「性的逸脱行為」などとも通称される事もあるのです。これらの語は性的自由の制限を肯定する立場から使用されることです。彼女はそういうことを目的としている人間ではないと断言します。」

教頭「なぜいいきれます?」

妙見「逆になぜ言い切れないというのでしょうか……。」

教頭「それは…………。」

妙見「私はむしろ、もっと愛を告白する生徒が増えてもいいと思っています。愛は人と人が育む素晴らしいものです。愛とは至高なのですから。もちろん身の丈にあった育み方は大事ですがね。」

キーンコーン……

教頭「っと、チャイムが鳴ってしまったのでこのくらいにしておきます。皆さん、今日も一日頑張ってください。」

妙見「ふぅ」

黒井「なんや朝からしんどい目にあいましたねぇ」

妙見「いやいや、きっと教頭先生も生徒を思っての苦言だったのでしょう。」

黒井「そーでしょうかねぇ……嫌味をいうただけな気もするんですけど、まぁ何にしても鹿又センセのおかげでウチのほうにとばっちりがこんかったんが感謝です」

妙見「はい?」

黒井「ほら、ウチのクラスには問題児が居りますやろ。臥劉の告白相手の」

妙見「ああ、なるほど。そうでしたね……。これも一つの縁(えにし)でしょうか」

黒井「縁て……ところで、鹿又センセはご結婚は……?」

妙見「していませんが何故?」

黒井「あー、いや、随分と「愛」いうてましたから愛妻家なんかなぁーと思って」

妙見「なるほど。妻はいませんが私の実家は寺でしてね。愛を信仰しているのです」

黒井「……んん?」

妙見「おっと、HRが始まってしまいますね。いきましょう」
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